論文ピックアップ:研究論文の一部を紹介します
広視野角ドームスクリーンに提示した視覚刺激(Appendix A2)
視野中心と周辺で色の経験は異なるのか?
色の弁別実験を行うと視野周辺は感度が低く、視野周辺にも鮮やかに色がついた世界を経験しているという我々の直感が誤ったものであるかのような言説もある。
広視野角ドームスクリーンを用いて、色の類似度評定実験を行い、その構造を解析することで、色の意識的経験は視野の中心と周辺で等価であることを発見した。
ポジティブな記憶を思い出しやすい脳のネットワークを発見
ポジティブ記憶の想起しやすさに関わる脳のしくみの理解は、それに基づくストレス耐性向上法やうつ病治療のニューロフィードバック訓練法開発等につながることが期待される。
ポジティブ記憶を想起しやすい人ほど脳の前頭葉と側頭葉のネットワーク結合が強い
過度に失敗を恐れて行動が消極的になりがちな人の脳で何がおきているのか?
不安障害やうつ病、疼痛障害に関連する行動抑制系にかんする脳の働きの理解は、それに基づく治療戦略を立てる上で有用な知見になることが期待できる。
不安や抑うつ症状が強いと、上手くいくかわからないことや、予期しない新しい状況などに対して行動が消極的になり、罰を回避する傾向が強くなる。
罰を回避する傾向の強い人は、不安や抑うつなどの負の感情抑制に関わる前頭葉脳機能ネットワークの働きが弱く、セロトニン2A受容体密度が低いということがわかった。
世界が色褪せて見えるのはなぜか
視床ノルアドレナリンとうつ病
うつ病患者は視床のノルアドレナリン神経伝達機能に異常が生じており、これが注意・覚醒機能の高まりと相関していることを見出しました。
優越の錯覚はなぜ生じるのか
自分は平均より優れていると思うことは心の錯覚で、脳内メカニズムがこの錯覚に関係していることを明らかにしました。
私たちの脳はどのように情状酌量を行うのか?
同情と量刑判断に関連する脳活動から情状酌量に関わる脳基盤を初めて証明しました。
Yamada M, Camerer C, Fujie S, Kato M, Matsuda T, Takano H, Ito H, Suhara T, Takahashi H.
Neural circuits in the brain that are activated when mitigating criminal sentences.
Affiliations expand.PMID: 22453832 PMCID: PMC3316876 doi: 10.1038/ncomms1757.Free PMC article