sw2.5replay

おひとりさまご案内

GM「ではセッションをはじめます。今回のセッションは1on1コンセプトで、SW2.5を遊ぶノウハウを蓄積したい、ということで行きますよ!」

PL「はいはい、作ってきましたよ! 見てください、このわたしの器用貧乏さ(笑)」

GM「どれ? ファイター1、プリースト1、スカウト1、セージ1ね。素晴らしい。戦って癒して探して鑑定できる、まさにワンマンアーミー」


PL「名前はオデュッセウスをもじって、オーデシアとしました。やはり一人旅なら神官戦士ですね。神官だとNPCとも絡みやすいかな、と思って」

GM「フェローのルールを活用したい、と思っているからね。援助NPCにはご期待ください。でも最初はやはりニューゲームですから、GMにとってもルール習熟を兼ねたシンプルな練習シナリオからいきます」

PL「ぜひぜひ」



■そなたの16歳の誕生日!


GM「さて、オーデシアはある朝、父親に呼ばれる。父親は元は傭兵だったんだけど、現在はハーヴェス王国の兵士長の一人として、すでにきちんとした立場を持っている」

オーデシア「おやじどの、うまくやりましたね。でもきっとすねに傷持つ人物に違いない」

GM「その父親への敵愾心、いいね。まさに彼はそういう人物。煮ても焼いてもくえない男と噂されているようだ。王宮の一角の立派な部屋で、君を待ち受けている。『おお、よくきたオーデシア、わが娘よ。お前も16歳になったのだな』」

オーデシア「ごきげんよろしゅうございます、父上。はて、わたしは今日が誕生日でしたっけ」

GM「いや、きちんとは覚えていないが、先月あたりだったかな。とにかく、わしが言いたいのは、お前ももう年頃だということじゃ」


オーデシア「いいかげんだなあw あれ、こん棒持って龍王を倒しに行けと言われるかと思ったら、嫁に行けということですか?」

GM「逆じゃ。お前は旅立たねばならない。そう、ドラゴンでも倒しに行くというのがよいじゃろうな」

オーデシア「はあ!? 言っている意味がわからないんですけど」

GM「ほら、なんだったかな、お前のハマっている宗教、タテガミとかのお告げがあった、ということにするがよい」

オーデシア「不敬罪でぶっとばしますよ、親父殿」

GM「判るように説明するとだな、実はお前には許婚者がいるのだ」

オーデシア「あら」

GM「お前が幼き日に、勝手ながらわしが約束してしまった16歳になったら娘をそちらの息子の嫁に出そうと」

オーデシア「いいじゃないですか。ちょっと会ってみたいですね。いまんとこわたしには心に決めた人はおりませんので……あれ、で、なぜ旅立たないといけないんです?」


GM「一人ではないのだ」

オーデシア「はい?」

GM「まあ、覚えているだけで、4人にそんな約束をしてしまっておる。まあそのうち一人は死んだとか聞いているのだが、お前だって一度に3人夫の妻になるわけにもいくまい」


明かされた衝撃の事実。

そして、あまりにあんまりな冒険に出かける理由。


オーデシア「なにがいくまい、ですか。勝手に16歳の花も恥じらう乙女を安売りしないでいただけますか、くそ親父どの」

GM「嫁にいくのが嫌で、冒険に出る、とかよくある話ではないか」

オーデシア「父親が複数の契約を結んだので、そこから逃げるために冒険に出るというのは初耳ですけどね」

GM「耳が痛いな。実際に金をもらったりもしているからなあ。さてさて、そのうちの一人が、正式にこの話を蒸し返してきたのだ。先方の息子さんが、今度、20歳になるので妻を娶らせたいと」

オーデシア「いいですよ、会わせてくださいよ、自分で断りますから」

GM「良いのか? 断るともったいないぞ将来有望で、なかなかのイケメンじゃぞ」

オーデシア「結婚させたいのかさせたくないのかどっちなんだよ!」


GM「だいたい、断ると違約金ということで、数万ガメルの大金を返さなくてはならない」

オーデシア「かわいい娘をなぜ金で売ったか!?」

GM「ああ、かわいそうなわしのオーデシア」

オーデシア「100パーセントあなたのせいですけどね! いいです、わたしは旅に出てしばらく戻ってきませんから、あとのことは父上がどうとでもしてください!」


まあ、オーデシアはそもそも旅に出ようと思っていたので、その理由はどうでもよかった。これが大きな物語の伏線となっていたことは、まだ知る由もない……。



■冒険者の店にいこう!


オーデシア「まあ、理由はどうあれ、晴れて一人立ち、そして前には希望の青空が広がる冒険者生活のスタートです!」

GM「ソードワールド2.Xでは、冒険者の店はいい意味で信頼できるチェーン店みたいな感じだからね。面倒見もいいし、ギルドとしてきちんと機能している」


オーデシア「では、すうっと深呼吸してから、店のドアを開きます」

GM「中には、店番の女の子がせっせと机を磨いているところだね」

オーデシア「あっ、ごめん、開店前?」

GM「いえ、大丈夫ですよー、と少女は慌てて席を作る。すみません、お掃除していたものですから」

オーデシア「かわいい。ちょっと好感度」

GM「お食事ですか? それともお泊りになります?」

オーデシア「うーん、何か頼まないと悪いかな。あのね、わたし、ちょーっと事情があって冒険者になったものですから、なにか依頼みたいなのないかな、と思って」


GM「えーっと、と店番さんは掲示板を見る。ドラゴン退治とか……」

オーデシア「それがこの地方の定番なのかいっ」

GM「パーティメンバーはどんな構成なんですか?」

オーデシア「そう聞かれるよねえ。ごめん、わたし一人なんだ」

GM「あっ、すみません、じゃあパーティ参加のご希望で?」

オーデシア「ソロシナリオやるって言っておいて、そうやっておひとり様ネタでいじるのかっ、陰険GMめ。あのね、パーティ参加はあまり考えていないの。まずは自分でなにかできる軽い仕事がないかなって思ったんだけど」


GM「えーっと、波止場の荷下ろしの仕事の募集があったかしら。あと、お堀の周りの草刈りの仕事……」

オーデシア「冒険者の店はアルバイトニュースかっ。そして16歳の乙女にガテン系かっ」

GM「だって……あの、どのようなお仕事をご希望なんですか?」

オーデシア「ほら、『奈落の魔域』が湧いたりすることあるじゃない? わたし、これでも奈落の楯神イーヴさまの信徒で、まだ駆け出しだけど未来の聖戦士さんだったりするの。ゴブリン湧いたりして困ったりしてない?」

GM「ああ、ゴの字ならたしかによく這い出てきたりして」

オーデシア「それ、違うGよね? カサカサ足音を立てる嫌な虫のほうでしょ!」

GM「そういえば、下水道掃除をしてくれる人がないかって、マスターが探していたんですけれど……」



■花嫁修業は下水掃除のあとで


オーデシア「えっと、GM、メタで質問いいですか?」

GM「はい、なんでしょ」

オーデシア「これ、シナリオトリガーってことですかね。それともフレーバートーク? この娘、やることなければ下水掃除でもなんでもいっちゃうかなあと思うんですけど」

GM「おお、それは心強い。もちろん攻略ルートのひとつです。下水掃除依頼は、TRPGでは古典的な最初の依頼パターンの一つだよね」

オーデシア「ウォーハンマーとかT&Tの常識かっ!これはもっと萌え萌えしたライトファンタジーRPGではありません?」

GM「大丈夫! 僕を信じろ! この先にそういう展開が待っているから!」


オーデシア「うーん、でも買ったばかりの革鎧にニオイがついたら最悪だなあ」

GM「あ、大丈夫です、と店番さんが語る。汚れるのでツナギを用意してあります。下水溝に溜まった汚泥状の油汚れを、詰まらないように、バケツで汲み上げる仕事なんです。狭い下水道なので、一人しか入れないんですけど」

オーデシア「確認だけど、モンスターが出たりはするの?」


GM「えーっと、グレムリンってご存知ですか?」

オーデシア「ようやく来た! 判定ですね?」

GM「魔物知識判定だね。セージ技能が1、知識修正値が2、そこに2d6です」

オーデシア「出た目は8で、11です」

GM「知名度はクリア、弱点は不明だね。君はグレムリンを知っている。下水に流される残飯を狙って、グレムリンがときどき出ることがあるんですよねえ。弱いから人間を襲うことはまずないんですけど」

オーデシア「ふむふむ。グレムリンならいけそう。むしろなにも出ないでただの汚泥処理だけだとより悲しいかも」


GM「では、お受けいただけるんですね。報酬は300ガメルです」

オーデシア「少なっ!」



■下水探検隊の栄光


GM「それでは装備の確認です。着ているのは支給品の作業用革ツナギでソフトレザー相当とします。そしてオーデシアの虎の子のスピアは大きいので持ち込み不可です」

オーデシア「うわあ、この革ツナギ、すでに臭い~、そしてぶかぶか~」

GM「いいロールプレイですね。それに敬意を示して、回避の判定に-1としておきましょう」


オーデシア「あ、やっぱりモンスターがでるんだ」

GM「ぎくぎく」


オーデシア「わたし、これでもけっこう知性派なので、さっきのセージ判定の成功から、ちょっと計算させてくださいよ。グレムリンの防御点は0で、HPが14。ファイター技能が1で筋力ボーナスが+3なので、追加ダメージは4。2発で沈めるには、ほんとは平均値のダメージが3は欲しいから、ナイフじゃ非力、サーベルか……いや、ハンドアックスならいけるかな」

GM「ちゃんと技能やキャラ設定を生かしているね」

オーデシア「伊達にあの父親に育てられていませんから。というわけで、ハンドアックスを借りていきたいと思います。まき割り用の斧ぐらいありますよね?」

GM「はい、どうぞ!と店番さんはハンドアックスを差し出すよ。よろしくお願いします、がんばってください!」


オーデシア「その前に、この建物の図面もあったら見せてもらいたいんですけど」

GM「業者さんか!?w 知性派を超えてめんどくさいキャラになってきたぞ」

オーデシア「下水道なめたらいけません! ちょっとした施工ミスが一大事になるんですよ」

GM「ごめんなさい、図面はないんです。でも、ちょっと説明しますね、と店番さんはメニューを書く黒板にチョークで構造を描く。中庭の階段から地下室に降りて、さらにマンホールを開けると、敷地内下水構になっている。そこから本下水へと水路が伸びてるんだけど、本下水への排水溝には鉄格子がはまっている。その鉄格子にこびりついて詰まりの原因となる汚泥を取り除くのが任務」

オーデシア「うう、空気も悪そう……」

GM「こことここに、ランタンをひっかけるポイントがあります。もしもランタンの火が消えたり、激しく燃えたり消えたりしたら、危険な精霊がいるってことなので、避難してくださいね」

オーデシア「メタンガスさんとか、酸素さんとかの精霊ですね、わかります。えーっと、もしも私が1時間たって帰ってこなかったら、申し訳ないですけど、救援にだれかよこしてもらえます?」

GM「はい、じゃあそのときはわたしが見に……」

オーデシア「いやいや、なんかこう、呼吸しなくても生きられそうなエルフや機械人とか、丈夫がとりえのドワーフとかよこしてください、ぜひ!」


大きなブーツをはき、手にはスコップとバケツ。

かなり情けない様子ですが、オーデシアの最初の冒険が始まります。



■闇に囁くもの


GM「中に入ると、地下室から差し込む明かりでけっこう周囲が見えますね。しかし床には傾斜があり、汚物まみれですべりやすい状態です」

オーデシア「うむむむ……転んだら最悪ね」

GM「いくつかの側道は、それぞれ下水溝やトイレにつながっており、そこからちょろちょろと汚物が流れ込んできています。いやもう、その匂いはものすごい!」

オーデシア「人が入っているときぐらい、トイレ使うのを遠慮しろおお!(涙)」

GM「小さいころ、バキュームカーがまだあって、汲み取り型のトイレからの回収を見たことがあるんだけどもね……」

オーデシア「やめて、まじ気持ち悪くなってきたから……」


GM「ごめん。じゃあ、描写を切り替えて、脳内補正してください。とにかくここは地下道状の構造物で、天井の高さはようやく立てるぐらい、道幅は2mぐらい」

オーデシア「本下水への排水溝に、とにかく進みます」


GM「ちょっと待って。げえっ、げえっという音が聞こえてくる」

オーデシア「だれか先客が!? そして吐いている?」

GM「かどうか、セージ判定をしてもらえる?」

オーデシア「セージ入れといてよかったあ。達成値7」

GM「では詳細は判らないけど、それが生き物の鳴き声であることがわかるね。きみの前の汚泥のなかに、全長1mぐらいのぶっくりと太ったカエル状の生き物がいる!」

オーデシア「ツァトゥグァ!?」

GM「SAN値減らすぞ! 違いますって」


オーデシア「んー、こっちのランタンを見ても逃げる様子はないですか」

GM「ないみたい。道に居座っている感じですね。もちろんこれを飛び越してゆくことはできない」

オーデシア「しかたがないわ。これより強制排除を開始します!」


この怪物はポイズントード(sw2.0改Ⅱ P265)。セージ判定でデータは判らない状態になります。全身を覆うイボから、毒が出ていることを、オーデシアは知らないで挑むことに!


GM「では、そちらの先行でどうぞ」

オーデシア「攻撃します。基本命中値が2で、ダイス目は10。12ですがいかが?」

GM「命中しました。固定値でいくからね。ダメージをください」

オーデシア「では6の目で3ダメ、追加を載せて7になります」

GM「追加ダメージ強いよね。弾力のあるものを叩いた感覚、でも表皮を切り裂いて、そこから刺激臭のある渋きが散ります」

オーデシア「やばっ、これって、毒系の……」


GM「そいつの巨体が汚水の中から跳ね上がって、体当たりをしてくるよ! 回避どうぞ」

オーデシア「基本回避は3、ダイス目は6、防具の修正で-1の合計は8。どうです?」

GM「残念、どん!と重い体がきみに打ち付けられてよろめく。ダメージは……通らなかったね。でも耐毒の生命抵抗力判定をしてみて?」

オーデシア「怖い! 基本値が3でサイコロは5。8になります」

GM「では6点の毒ダメージを食らう!防具は無効です」

オーデシア「やばい! HPが18から12へ!」



■ギリギリの生還


GM「さあ、きみのターンだ。どうする?」

オーデシア「むう……」


PLはちょっと熟考。

まだたった一撃を食らっただけだが、このまま6ダメージを食らうとすると、あと2ターンはもたない計算になる。であれば、安全な逃亡も試せるのはこのターンのみ。使える呪文は「フィールドプロテクション」のみで、まだ回復呪文も使えない状態……。


オーデシア「だめだ、詰んだ。撤退します!」

GM「おお、いさぎよい選択?」

オーデシア「まあ、こういう敵がいる、とわかっていればまた対処はできますからね。ここで無理をする必要はありませんもの」


GM「では撤退準備の行動ということになり、相手の攻撃を1回受けるよ。それも回避は-4。さあ、飛びついてくる敵をかわしてみて?」

オーデシア「お願い! 基本回避は3の-1の-4で-2。ダイスの目は8で6です。だめかあ」

GM「ではまずはしっかりぶつかって、防具で引いても5ダメージ。さらに抵抗してみて」

オーデシア「ぐはあ、こんども8です!」

GM「では6点の毒ダメージ。生きている?」

オーデシア「HP1!」


しかし、オーデシアはなんとかこの魔の迷宮から脱出することができたのであった。

……ただの足元に広がる下水道ですけれども。


オーデシア「はあっ、はあっ、はあっ! 感動! わたし、生きている!」

GM「はい、わずか2ターンしかいませんでしたが。でも撤退も賢明な判断だったと言えます。パチパチパチ」

オーデシア「毒の影響というのは、継続的に残るものではないんですよね?」

GM「これは大丈夫だよ。店番さんが慌てて寄ってくる。大丈夫ですか?」

オーデシア「ぜいぜい、危なかったわ、すごくでっかい毒カエルがいた!」


GM「まあ! とにかく、体を洗いましょう。バケツで水をかけてあげますから、脱げるものは脱いでください」

オーデシア「はあい、お願いします~。もう、ぽいぽい脱ぎますよ。ばんばん水かけてかけて!」

GM「サービスシーン?」

オーデシア「……というには臭くて汚くて、さらに死にそうですが。もう、蚊に刺されただけで死ぬ一歩手前だから!」


GM「確かに。店番さんは慌ててヒールポーションをもってきます。これを飲んでください! あと湯桶にお湯を準備しますから、ちょっと待っててください」

オーデシア「わあ、助かる~」

GM「ポーションの回復量を2d6振ってください」

オーデシア「3,1で4だけど、運命変転で36の9にしようかな」

GM「ここで使うのね。さっきのピンチにどこか使えるところはなかったんか!」

オーデシア「夢中だったしよくわからない(笑)。7点回復。ふう、生き返るわあ~。今日はもう働く気がしない~」

GM「運命変転も使い切ったしね」



■そして動き出す運命


GM「店番さんは、この店で一番いい部屋にお風呂を準備してくれます。部屋のなかにしつらえられた木桶に、たっぷりのお湯と、乾燥バラの花びらを散らしてあります」

オーデシア「わお、ぜいたく~。死にかけた後だから、なおさら素晴らしく感じる」


GM「匂いもすぐに抜けて、あたりはいい香りでいっぱいです」

オーデシア「このお湯を下水構に流したら、あのカエルもいいニオイになっちゃったりして」

GM「それはどうかな」

オーデシア「……いやむしろ、ハイターとパイプフィニッシュを流してから……」

GM「ハイターもパイプフィニッシュもありません。と、オーデシアがお湯を楽しんでいると、部屋にだれか入ってくる物音が」


オーデシア「はーい、はいってまーす♪」

GM「けっこう無防備お気楽キャラなのですな。シーフの判定させようと思ったけど省略。すると、カーテンを開いて、びっくりした顔の冒険者ふうの青年が顔を出します。『わっ!女の子がいる!』」

オーデシア「きゃっ! ぜんぜん無警戒でした。店番さんかと思った」


GM「青年はびっくりしたようすで、頬を赤らめながら君の体をまじまじと見ています。『き、君は誰?』」

オーデシア「あなたこそ誰!……っていうか、おそらくはこの部屋を借りている人なんですね? 留守中に店番さんの判断で勝手に使っちゃったとか」

GM「そんな感じだね」

オーデシア「あ、あの、なにか手違いがあったみたいですから、あがりますから、ちょっと部屋から出ていてくださいますか?と訴えます」

GM「『そ、そうだね、ごめん、悪かった、ごめん!』と、青年はぎくしゃくした足取りで出てゆきました」


オーデシア「あら、いい人そうだわ。むしろぱんつ忘れていったりしてからかうか?」

GM「そういうキャラだったのかー」

オーデシア「いえ、キャラはそうじゃありません。中身がそうなだけです(笑)」

GM「16歳の乙女、どこにいった(笑)」

オーデシア「はあい(苦笑)。というわけで、慌てて湯から上がって、服を着て、私物忘れてないかちゃんとチェックして、出てゆきます」

GM「さっきの青年は緊張した顔で、廊下で待っていました。二十歳前ぐらい、裕福な冒険者という感じだね。貴族の子弟かも」

オーデシア「ぺこり、と頭を下げて冒険者の店のほうに行きます。あまり接触するのもへんな感じだし。むしろ店番さんに抗議しなければ!」



■あらためて、冒険者生活


GM「冒険者の店は、徐々に人が集まり始めている。すでにカウンターのところで、店番さんがマスターに叱られている様子。勝手に依頼したり、勝手に部屋を使ったり、ということみたいだね」

オーデシア「あら、かわいそうに。こっちも挨拶に行きます」


GM「マスターは、『おお、あんたが下水の女の子か。無事でなによりだったよ。ろくな準備もしないでやらせたようですまなかった』と言って、きみを迎えます」

オーデシア「下水の女の子!そんな二つ名はやめてー」

GM「あんたが出会ったのは、ポイズントードだな。意外と手ごわくて、やっかいな相手だ。そんな奴が下水に巣食っていたんだな」

オーデシア「小さいうちに本下水から入り込んで、出れなくなっちゃったのかもしれないわねえ」

GM「あいにくと栄養もたっぷりだしな。わっはっは」

オーデシア「なんかこの店の食べ物、食べたくないような気分になってきたなあ……」


GM「さて、報酬をあげよう、というわけにはいかないが、傷が癒えるまではここに留まってもらってもいい。あの上部屋じゃなく、大部屋になるがね」

オーデシア「ご親切に。でも、神殿に寄って相談するつもりです。わたし、これでも盾神の使徒でありますから」

GM「そうかい、じゃあ、下水掃除の仕事は嬢ちゃんのためにとっておいてやるから、気が向いたらまた頼むよ」

オーデシア「うわ、微妙だなー。自分でやり遂げたいような、もう二度とあそこには潜りたくないような……またなにか役に立てる仕事があったら教えてください。お寄りしますから、と言って、まずは癒しを受けるために神殿に向かおうと思います」


GM「はい、ハーヴェス王都のイーヴ神殿は本社のほかにいくつかあるのですが、オーデシアの師がいる小神殿が、町はずれにありますね」

オーデシア「旅立つなら、最初にそっちに行けばよかったー」

GM「冒険者の店を出て少し歩くと、後ろから『待ってください~』と叫びながら追ってくる人がいます」

オーデシア「あら。さっきの人かしら?」


GM「そうですね。青年は追いつくと、息を切らせて『すみません、お詫びにお食事でもと思ったんですけど、もうお出かけになったと聞いて追ってきてしまいました』」

オーデシア「うははは、さてはこのわたしに惚れちゃった、というやつですね」

GM「まあ、その様子ですな(笑)。頬を赤らめて、落ち着きのない様子です」

オーデシア「お詫びするのはこちらのほうです。だから、どうぞ、お気になさらないでください、とこちらも照れながら言いますよ」


GM「あの、せめて、お名前を……」

オーデシア「盾神の神官戦士オーデシアといいます。まだほんの駆け出しなのですが。あなたは?」


GM「『オーデシア、さん?』と、青年の表情が変わります」

オーデシア「は?」


GM「『ひょっとして、五百人隊長バランシア殿のご子女のオーデシアさんでは?』と」

オーデシア「えーと、それがうちのバカ親父のことなのですね? ……ということはこの青年こそがひょっとして許婚者さん?」

GM「『なんという運命! わたしは貴女が旅立ったと聞いてその後を追おうと……!』」

オーデシア「えーと……そこまで思い詰めておいて、スタート地点でどこのだれか判らない女の子の入浴シーンを見たら、目的を変えるってどうなの!」

GM「あ、手厳しい指摘を(笑)。そう言うんですか?」

オーデシア「さすがに言わないけどっ(笑)。すべてはこのわたしの愛らしさが罪ってことで。神官らしいしぐさで頭を下げて『もったいないお言葉。しかし、わたしには盾神の使命がございます。どうぞ、わたしのことはお忘れくださいませ』と言って走り去りますよ」

GM「無理やり逃げた!」

オーデシア「今、金返せとか言われても困るし!」


走り去る乙女の姿を、しばし、茫然と見送る青年。

二人の運命に、どのような未来が待っているのだろう!?


(第一話 完)