BEGIN T&T

エンカウンターでつなぐ、T&Tビギナーズバンドル

 『T&Tビギナーズバンドル』の発売おめでとうございます!

 導入しやすいゲームとして、短く区切っての「遭遇」のシナリオを用意してみました。


 想定しているキャラクターは一人だけ。

 作成してもいいですし、サンプルキャラクターも使えます。


 RPGが初めての人や仲良しの人と、LINEでも、カフェテリアでも、居酒屋でも、雑談のようにちょっと遊ぶという導入として、使ってみてください。もちろん、あなたが「GMとプレイヤーの一人二役」になってソロプレイしてみてもいいですよ。


 使用するのはもちろん『T&Tビギナーズバンドル』の、たった10ページのT&Tミニルールだけです!


■エンカウンター1 『崖下』


・きみは一人で、カザンから離れた北岸の『ロズリーン地方』を旅している。崖沿いの隘路で、うっかり足を滑らせば、激しく波が叩きつける岩場に真っ逆さまだ。そのうえ冷たい霧がたちこめている。


・前方、霧の向こうで舌打ちが聞こえた。背の高いトロールが一体、反対側からこの隘路をこっちに向かって進んできたところだ。


・知性SR20に成功すると判る。本来ならこの獰猛なトロールはMR40だが、この狭い道ではMR20として扱われる。セービングロールに失敗したら、MR40だと評価する(それでも実際に戦闘になったとして振られるダイスはMR20のものになるが)


・トロールは霧をすかし見る。そして君の姿を認めると、吠え声ひとつ、決心したかのように棍棒を振り上げ、こっちに向かって進んでくる。


・きみも後ろを向いて逃げ出してもいい。その場合、速度SR20で成功すれば逃げ切れることができる。トロールをまいて終了だ。賢い選択に冒険点20点が加算される。失敗したらおのずとトロールと戦いになる。


・トロールに戦って勝利したら、勇敢な選択に冒険点30点が加算される。


・トロールを迎え撃ち、なんらかの手段で崖下に落とすことができるかもしれない。うまく知恵を働かせてドラマティックに勝利できたら、冒険点40点を与えよう!

■エンカウンター2 『通行税』


・街道を進む君の前に、騎馬に乗った二人の男が現れた。彼らは君に気づくと、自分たちはロズリーンの騎兵で、街道をパトロールしている、よそ者がいたら名前と目的を聞き、通行税として50gpを徴収している、と告げる。都市の入門税として5gpぐらいを求められるという例は聞いたことがあるが、これは少し法外ではあるまいか。


・知性SR20に成功すると判る。男たちの身なりはならず者にも見えないが、きちんとした騎兵にも見えない。故郷に戻った兵士、というぐらいの身分のはずだ。だったら通行税徴収の任務についているわけではなさそうだ。失敗すると、彼らは盗賊だろう、と判断する。金を払っても払わなくてもきみを殺すつもりだと思い込む。


・きみが手持ちの金があるなら、従順に支払ってもいい。彼らは良き市民を笑顔で通してくれる。冒険点10点を与えよう。


・騎士たちから逃げるには、速度SR30の成功が必要だ。失敗すれば、彼らはやすやすと回り込んできみの前後をふさぐ。もしきみも騎馬を持っているなら、SR25でいい。走って逃げのびたら冒険点15点を与えよう。


・うまい交渉で話をまとめるには、適切なロールプレイが必要だ。うまい理由を考えたロールプレイなら魅力SR20、ちょっと無理がある説得なら魅力SR25が必要となる。成功すれば、彼らは「50gpではなく5gpだ。言い間違えた」と言い直し、支払えばきみを安全に街まで案内してくれる。交渉上手のきみには冒険点30点を与えよう。


・SRに失敗するか、5gpも払いたくないと言うなら、彼らは態度を硬化させ、きみに向けて槍先を向ける。騎兵はそれぞれのMR20のモンスターとして扱う。まず一名がきみと戦い、もう一人は見守っている。劣勢だと思ったら、もう一名が加勢に入る(合計MR40となる)。それでも劣勢になれば、騎兵たちは戦いをやめ「腕が立つな! おまえのような奴を見つけて連れてくるようにと領主さまに言われている」と告げる。


・騎士と戦ったうえで和解したなら、一目置かれた存在になる。冒険点40点を与えよう。騎兵たちを許さずに倒してしまったら、犯罪者として追われるかもしれない。冒険点30点を与えよう。


■エンカウンター3 『美しいひと』


・きみはロズリーンの街に到着した。ここは美しいが古い城塞都市で、現在は敵もいないため、街を囲む壁のあちこちに、通行を便利にするための穴が開けられている。


・騎兵、衛兵、通行人、その誰に対してでも、魅力SR20に成功すれば、ここの領主は昔から続くロズリーン家であるが、現在はその権力をカザンの百人隊長ブルザッハに握られているということを教えてくれる。カザン軍は怪物を手なずけて兵士とすることで有名だ。この街にも50名のMR30の正規兵に加え、50体のMR40のオーク兵が駐屯している。そしてブルザッハ自身もオークである。判定に失敗すれば、人々は口を開くことはなく、ただ状況からこの街の様子を察するだけである。


・さらに、魅力SR25に成功すれば、噂を教えてくれる。ブルザッハはロズリーン家の令嬢エミラーに求婚した。名実ともに権力を握り、ここの領主となるためである。市民たちは反感を感じている。判定に失敗すれば、人々のブルザッハへの反感だけが判るが、他は口を閉ざして語らない。


・もしも騎兵たちと一緒だったら、彼らは城に報告してくるから、ここらへんで待っていてくれ、と言って離れる。


・きみは路地裏で、ある女性に呼び止められる。彼女は深いフードをかぶって顔を隠しているが、まさに渦中の人であるエミラー・ロズリーンである。彼女はきみを自分の正体を知らない旅人と見込んで、この地から脱出する護衛に雇おうとしている。隣の侯爵領であるアトキンス領の出身だと偽り、同行していた夫が急死したため遺骨を持って帰らなくてはならないが、カザン軍のオークたちにつきまとわれて怖い思いをした、と説明する。知性SR20に成功すれば、彼女の依頼は切実だが嘘だろう、と判断できる。SR30に成功すれば、彼女がエミラーであると見抜くことができる。


・そこに一体のオーク兵が通りかかる。エミラーは慌ててきみの後ろに隠れるが、その動きを怪しいと感じたオーク兵は、かえってきみのほうに歩み寄ってくる。


・オーク兵にエミラーを渡してもいい。エミラーは抗議するが、逆らうことはできずに、オークに護送されて城へ戻ることになる。あまり冒険的とは言えないので、冒険点10点だけを与えよう。


・オーク兵と交渉してもいい。さまざまな交渉方法や対応方法があるだろう。それに沿ってSRを設定し、結果を描写しよう。オークをごまかすこともできるかもしれないし、逃げ出すことになるかもしれない。そのドラマチックさによって、冒険点20点から40点を決めて与えよう。


・オーク兵と戦闘するなら、MR40である。オークは応戦するが、これはあまり良い選択肢ではない! 百名の兵団を敵に回して、きみは逃げきれるか、あるいは投獄されることになるだろうか。緊迫した状況を描写しよう! 冒険点30点を与えよう。

そしてこの先に……


 ここまでのエンカウンターを終了させたら、T&Tのシンプルさって、自分のスタイルに合わせてどんどんカスタマイズできるんだ、と思えたはずです。


 たくさんでワイワイ遊ぶたのしさも、1対1でワクワク遊ぶたのしさも、どちらも受け止めることもできます。そして、T&Tのプレイ文化って、とにかく寛容なんです。


 そして、ここから広がってゆくドラマのアイディアも湧いてきたはずです。

 みんなでビギナーになろう! そして新たに始まる、「世界で二番目に古いファンタジーRPG」の旅を、一緒に楽しんでいきましょう!



注)ロズリーン、アトキンスという地名や人名はシナリオオリジナルのもので、世界設定上のものではありません。また、カザンのモンスター兵という設定は、時代設定に制限があります。