AFF2eシナリオソース

シュリンプディル・ガイド

これはAFF2eでプレイするために作成されたシナリオソースです。

この「シュリンプディル」という土地を舞台に、(おそらくこの地の領主の子孫であるところの)ヒーローは継承と支配の再建の問題、村人たちの幸福の問題、そしてより古い魔法的な因縁についてひも解いてゆくことになります。


ゲームスタイルは「箱庭型」を想定しています。語られる物語は常に、ヒーローの自主的な行動に基づいて現れてきます。

シナリオとしては、このテキストに必要なデータがすべてそろっているわけではありません。ディレクターは随時、状況に合わせてデータを作成して提示してゆく必要があります。


さあ、物語の扉を開きたまえ!




■王国滅亡と善き竜アルバルドン

暴力的で悪意に満ちた存在の多いアランシアにおいて、善なる存在の噂を聞くことは稀です。ましてそれが、最悪の危険をもたらすドラゴンにおいては。AC254年、かの魔術師ザゴールによる火吹き山の占拠と、ドワーフの王国レッドウィードの滅亡に関わる様々な逸話のなかにある、善竜アルバルドンの存在は、そんな稀な物語です。

この戦いのさなか、サラモニスの外交武官の一人としてレッドウィード王国に駐留していたアディン・パールス卿も戦死しました。その妻であったシンドラの神官ラマティも抗戦を断念し、幼い二人のわが子を連れて、複雑な地下迷宮を伝って脱出を図ることとなりました。

その地下迷宮で迷った彼女が出会ったのは、一匹の幼い龍でした。火吹き山周辺はドラゴンの繁殖地であり、その卵は長い時間をかけて地熱で温められます。産まれた龍が親龍に出会わぬままに成長してゆくのは珍しいことではありません。恵まれた環境で育った龍は、その本来の暴力性ではなく、好奇心と知性が勝る個体に育つ可能性があります。

神官ラマティの短くも必死な交渉により、龍に彼女と子供たちを餌ではなく庇護すべき対象と理解してもらうことに成功しました。彼女は龍にアルバルドンという名前を与え、月岩山地にあるサラモニスの遠隔砦の一つ、シュリンプディルへと運ばせることができました。そこで善龍アルバルドンは、友好の証としてエメラルドの冠を与えられ、再び荒野へと帰っていったのです。

ラマティはサラモニス本国に戻り、AC260に病で生涯を終えました。脱出後も、たびたび火吹き山やストーンブリッジ王国に出かけてゆき、悪の勢力との戦いを続けた彼女を、人々は「幸運を使い切った聖女」と呼びました。この皮肉げな呼称は、火吹き山の平和がその後も取り戻されることなく、魔術師ザゴールの暗い存在感が、より濃く濃く、この地を覆っていったことによります。

二人の子は父親の財産を引き継ぐことになり、それぞれサラモニスの貴族として成人しました。AC285現在、当時6歳だった姉のタイモーヌは37歳、生まれたばかりだった弟のアディンJrも32歳になっています。


■レコンキスタ

アディンJrは父譲りの責任感と誠意で、サラモニスで高く評価される騎士へと育ちましたが、高潔なだけでは生きてはいけないのが世の常でした。

やがて彼は行き詰まりを感じてゆきます。サラモニスの北方作戦が停滞し、ことに彼においてはこれまでの半生をかけた火吹き山の攻略計画が却下され、南方への転地を命じられたことで、失意はより深くなりました。

父の倒れた地へ、その復讐を。

しかし、そのためにすべてを捨てるほど非常識にもなれないアディンJrが選んだのは、姉のタイモーヌの子供たちに所領相続を行い、自らは無領地卿として文官の任に専念することでした。

そして、アディン卿の孫たち(それが、あなたのヒーローかもしれません。あるいはその協力者、依頼者であるところの魅力的なNPCを設定してください)は、世代の宿命を背負って、北の地へと旅立ちます。自分たちの血統を救ってくれた善龍アルバルドンを探索すること。そして、火吹き山を悪の魔法使いザゴールの手から取り戻すことです。


■シュリンプディル砦の物語

サラモニス王国は、アランシアの各地に遠隔砦と呼ばれる拠点をいくつも持っています。これは王国の計画によるものではなく、それぞれの領主や騎士たちが拠点をつくったものです。軍事的な拠点である場合もありますし、狩猟や探索の拠点として建設されることもあります。旧世界の常識では、他国内やまったく経済圏から切り離された場所にこのような植民を行うことは理解したがいものですが、騎士たちはこのような試みによって、それぞれの勢力の拡大を競っているという面があります。

アランシアは危難の大地。しかしそれは一攫千金の大地でもあります。シュリンプディルは前述のアディン・パールス卿によって建設された砦です。アディン卿はドワーフたちの手を借りながらこの砦を拡張して、いずれは北方に新領土を拡げたいという野心を持っていました。

アディン卿が健在のおりは、シュリンプディルには五十名からなる兵士の一隊が駐屯し、モンスター討伐で腕を磨きながら有事に備えていました。最盛期にはその家族や使用人により、人口は三百人にもふくれあがっていたのです。

しかし火吹き山陥落の後は、その存在意義を失い、三十年の月日の中で、徐々にその数を減らしてゆきました。砦の責任者はアディン卿の直属の部下であったマリスですが、もう七十歳を超える老境にあります。その娘婿のベントゲンは粗暴な猟師で、もはやこの地がサラモニスの支配地であることを認める気はありません。それどころか彼は、より暗い勢力と手を結ぶことが荒野のなかで生き抜く唯一の手段であると信じるに至っています。ベントゲンは行商人ルースと組んで、オークの一党に荒野の産物を集めさせ、代わりに武器を売り渡しています。

一方、村人たちは素朴で善良な気性の者たちが多く住んでいます。シュリンプディルはさながら山地に隠された桃源郷。美しく、自然の恵み豊かな場所です。谷川には多くの魚が育ち、大型の怪物が入り込みにくい地形で、狩猟に適した小動物たちが多く生息しています。村人たちは世慣れておらず、教育も行き届いていませんが、彼らなりの共同体を作ってこの地の生活を続けているのです。



■シナリオの進め方

このシナリオは「箱庭型シナリオ」として作成されたもので、定められたエリアのなかを自由に行動することによって物語が進んでゆきます。

ヒーローの行動によっては、ある事件はおこらないかもしれません。あるいはこのシナリオフレームを超えた事件へと発展するかもしれません。

メインストーリーは次のようなものが考えられます。


1)村長の息子ベントゲンは、アディン卿の子孫の登場に対し、表面的には協力を装うが、次々と村の危険な事件の解決を求めては、その冒険のなかで子孫が死んでしまうことを願う。しかし、だんだんと彼の陰謀はあきらかになってゆく。それは村を二分する争いになり、村の独立と、再支配という構図で演出がなされてゆくが、結果的には悪しき企ては倒されることになる。


2)ザゴールの配下、黒き嘴は、ザゴールに従う姿を見せつつも、独立した戦力を有するようになることを秘めた希望として抱いている。ベントゲンに協力しながらも、その陰謀とは別に、この地で暮らすこと、闇から離れて暮らすことも密かに考え始めている。好敵手でありながら、ヒーローに対して友情、共感、期待を育ててゆくことになる。


3)シュリンプディルは、妖精の地に直結した聖地があり、シンドラの教団はかつてより、その再動によって、火吹き山の悪の力の運を奪うことができる、と考えている。その秘密を知っていたのは領主の妻であり、また村長の妻であったシンドラ司祭である。その謎をときあかすヒーローは、アランシアのより深い秘密に触れてゆくことになる。


■ロケーションガイド


シュリンプディルの砦

崖近い斜面に建てられた三階建て石造りの砦。龍が接近しにくい場所を選んで建てられた。直径五十メートルの円筒状の石造りの外枠の内側に、木造の建造物が作られている。古いドワーフの物見台を元に再建されたものであり、地下には隠された迷宮がある。

二十年ほど前から、砦の外側の馬小屋であった場所が住居に改装されており、村長家族が暮らしている。現在は老いたマリス村長、次男嫁のギーリス、孫のフッターの三人が暮らしている。


砦坂下共同住宅

あるいは「坂下(さかした)」と呼ばれる。もともとは領主の屋敷として建てられた。中庭を持つ石造りの大きな建物である。この建物はシュリンプディルで最も大きく安全な場所であり、お腹が大きくなるとこの館で過ごし、子供が産まれると、充分に育つまでは3歳まではここで預かることになっている。他に老人や病人が暮らすこともある。

現在は寮母のマーガレットと、12歳のマルメリア、14歳のメノールの二人の少女と、58歳になるドワーフのスバインに管理され、1歳と2歳の幼児、4歳、6歳、9歳の児童を養育している。妊婦は今はいない。シュリンプディルの出生率は決して低くはないが、坂下を出てそれぞれの家に戻ったのちに、病気や事故で死んでしまう子供は少なくない。子供たちは「XXの子」と呼ばれており、この館から出るときにはじめて名前を与えられる慣習になっている。

この建物は旅人も宿泊・逗留ができるようになっているが、子供たちがうるさいので、敬遠される。


モントール屋敷

空き家になっている屋敷。以前は兵士長の屋敷であった。だれかが住みつくことはあるが、主がいなくなるとまた手入れもせずに放置され、建物はかなり傷んでしまっている。

ここがヒーローに提供されることもおおいに考えられる。


野営地

石組みのある広場。兵士のための野営地として用いられていた。また、過去に幾度かあったオーク襲撃の戦いのときは陣地として使われることがあった。


雑貨店

村で唯一の商店。行商人ルースが女主人ブローチェに店を任せている。地下階があり、広い倉庫としての機能ももっている。


猟師小屋

シュリンプディルに入る道への見張り台となっている木製の塔と、いくつかのツリーハウスがロープでつながれている。塔はたびたび古くなって(あるいは怪物に攻撃されて)倒れては建て替えられる。ここには村長マリスの長男であるベントゲンと、その配下の四名のならずもの達が住んでいる。彼らは村の嫌われ者であるが、なくてはならない存在でもある。


農園

農夫プランスが麦を中心に広い農地を管理している。ヤギも飼われ、チーズ作りも行っている。


六角

それぞれ違った家庭環境の六軒の小農家が管理している農地。


川辺の庵

呪術師ブルムトが暮らす庵。草を編んで作られた小さな建物であり、静かに水面を見つめているブルムトの姿が見られる。周囲には薬草となる植物がたくさん植えられている。


グドンの淵

地下水脈からの湧出口であり、深さは計り知れない。この奥には怪物がいるという噂と宝があるという噂がある。村人たちはこの淵には近づかない。


湿地帯

背の高いアシが生い茂る湿地帯。水棲の怪物が巣食っている場所である。


石の塚

古い妖精崇拝の聖地。人間ではない種族によって、この地で祭事が行われていた。神聖な領域であり、怪物はここに近づくことができない。


ラットワーズの森

小動物が多く暮らす森。狩猟に向いているが、それを狙ってオークも出没するようになっている。


ヘミュの森

ラットワーズの森より、さらにうっそうと茂り、人が立ち入ったことのない場所も多い。怪物を狩猟するためにここの探索が行われることがある。オークもここで獲物狩りをすることがあるが、逆に土着の怪物の餌食となってしまうこともある。


南の洞穴

薄暗い洞穴に、オークが住みつくようになっている。ときおり、討伐が行われるが、オークの数は増えており、駆除するのは困難な状態になっている。


ドワーフ塚

使われなくなったドワーフの半地下小屋。オークたちを率いる「黒き嘴」がここを拠点としている。村人はそのことを察しているが、ここを攻める戦力を持っていない。


北の洞穴

古いドワーフの採掘穴跡。多くは岩によって丁寧にふさがれており、アンデッド発生も抑える封印が施されているため、静かな廃墟となっている。しかし盗掘が行われた跡は、はぐれものやならずもの、怪物の棲家となってしまっているものもある。



■村の人々

シュリンプディルの人々は出会い、交流してゆくうちに、以前には見せなかった一面を見せるようになる。一般的に出会い、親密さの段階を踏んでゆくことによって次の一面を見せる。この段階を進めるか、まだ進めないほうが良いかは、シナリオの進行速度でディレクターが決定することができる。


村長マリス(72歳 男)

アディン・パールス卿に仕え、シュリンプディル砦を任されていた兵士。アディン卿とその家族への忠誠心は高いが、現実的な人物であり、アディン卿が亡くなってからは兵士たちが村から離れることを寛容に許していた。結果、この地には他の地に住むことができない「弱き者たち」が残っている、という状況にもなった。妻はアディン卿の妻ラマティの妹のセルティで、彼女もシンドラの司祭だった(すでに亡くなっている)。

彼はこの地の謎を知る存在である。

また、息子ベントゲンが更生することを期待しているが、できなかったら自分の手で処断しようとも考えている。


猟師ベントゲン(50歳 男)

村長マリスの長男。自分が村長の後継者である、と考えているが、マリスからはそれを拒否されていることを恨みに思っている。若き日に弟のレガンゲンを殺害し、実権を握ろうとしたが、それを父であるマリスに悟られ、右手の親指を切り落とされて、剣が持てない体になっている。弓を使うことはでき、その技量を磨いている。未婚であるが、雑貨屋のブローチェが愛人である(もう十年も求婚しているが、秘められた関係から進展していない)。

実は闇の勢力と通じており、この村を支配しようと残忍な空想にふけっている。


ノケ、ボブ、クソッチ、ビビリス(30代 男)

ベントゲンの配下のならずもの達。ろくな教育をうけておらず、下品な冗談と互いへの嘲りしか口にせず、見た目も含めてまるでオークやゴブリンのようである。しかし恐れ知らずの訓練された兵士であり、この地に怪物が闖入してきたり、危険な動物が出たときは駆除にあたる。また狩猟をしてその肉や毛皮を提供している。酒が楽しみであるが、その量はベントゲンによって厳しく管理されており、猟犬のように報酬としてのみ与えられる。ずっとこのように育ってきたので、ベントゲンに逆らうことは発想のなかにない。

しかし、ヒーローとの交流のなかで、彼らも変わってゆくかもしれない。


フッター(20歳 男)

村長マリスの次男レガンゲンの息子。楽天的で快活な青年であり、高い身体能力を持っている。ただしあまり賢くはなく、読み書きもできない。祖父思いで、村長の身の回りの世話をしている。しかし村長からは、早く村から出て新たな人生を歩むように求められている。

伯父に頼る気持ちがあるが、やがて心理的に自立してゆき、村の中核となることが期待される、


ギーリス(38歳 女)

フッターの母。美人とは言えない地味な女性で、性格も控えめであり、意欲にも乏しい。村長の家の使用人のように見える。フッターは周囲に女性もいないことから、この母に強いマザコン依存をしており、村から離れたくない理由にもなっている。

彼女自身は、火吹き山から逃げてきたという経験を秘めている。しかしいずれは過去の恐怖を乗り越え、人が変わったように若返り、人間的で魅力的に見える。火吹き山のことで知っていることを教えてくれるだろう。


ブローチェ(37歳 女)

雑貨屋の女店主。美しく妖艶な女性で、魔女とも呼ばれている。行商人ルースの紹介によってこの地に住むようになって十年になるが、彼女はポート・ブラックサンド出身の盗賊であり、その地では裏切りの罪により追われ、隠れ住む身の上である。彼女にはいくつもの秘密があり、その中でも一番の秘密は実年齢が60歳であるということだ。

その秘密を守る協力者には、魔術的アイテムを提供してくれることもある。


プルーファ(20歳 女性)

シンドラの若き神官。愛らしい容姿の持ち主で、密かに信頼できる恋人とめぐり合うことを夢見ている。サラモニスからこの地にある聖祠を復旧しようと一年前にここに来たが、まだその任務を果たせていない。猟師ベントゲンからの性的アプローチに悩まされている。ごく真面目で常識人であり、村人たちに頼られもするが、この地の独特な雰囲気に溶け込めてはいない。優れた才能の持ち主だが、自己評価は低い。

結婚にあこがれており、ヒーローに恋心を持つことになるかもしれない。


エルメネント(54歳 男性)

アディン卿に雇われた傭兵魔法使いであり、この地から旅だったり、戻ったりを繰り返している。自分なりにこの地の調査を行っている。ロガーンを密かに信仰する混沌主義者であり、善にも悪にも与する。魔術能力はかなり高く、火吹き山の探索を成し遂げたいという野望も持っており、究極的な目標はザゴールの財産を手に入れることである。


プランス(55歳 男性)

アディン卿に雇われた傭兵戦士だった男。現在は山間の農地を持ち、使用人を使いながら麦を耕作している。彼の農地は、村の穀物供給の80%を担っている(残りは購入するか、穀物以外で補う)。かつては腕の立つ戦士だったが、今は戦いの場に戻ろうとはしない。この美しい土地で暮らしていることが、彼の喜びなのだ。農場には、他には彼の妻、娘、二名の使用人、使用人のために連れてきた妻たちとその子供たち、合わせて十五名がおり、村で一番の大所帯となっている。


プランシス(17歳 女性)

農夫プランスの娘。男勝りの凛々しい女性であり、父親から自衛のために戦闘術を教わってから、その魅力に取りつかれ、また己の才能に目覚めることとなっている。村長家のフッターと共にサラモニスに行くことが彼女の夢であるが、フッターは気乗りしていない(彼女はフッターに初恋的な感情を持っているが、フッターにその気はない)。神官プルーファとは年齢も近いが、考え方が違うために避けている。


ブルムト(80歳 女性)

謎めいた妖術師の老婆。漆黒の肌をしており、ケープにくるまる体は人間とは思えないほどに痩せている。旧世界から来たという噂のある人物で、アディン卿がこの地に遠隔砦を建設する前から、川辺の庵に一人で住んでいた。妖精と語り合う力を持ち、人々は敬意をこめて、この庵に貢物をもってきている。


ピューレン(30歳 男性 エルフ)

ブルムトの噂を聞いて、三年前からこの地に暮らすようになったエルフ。多才で、職業を聞かれると、植物学者、と名乗る。この地を拠点として、辺境地の調査を行っており、いつもいるわけではない。


ピッケル兄弟(36歳 男性 ドワーフ)

三人組のドワーフの兄弟で、タフィン、マフィン、コフィンというのが本名。十年前から北の洞穴の一つに工房を持っており、それぞれ、樵と炭焼き、鍛冶、採掘に手分けして働いている。汚れてしわの多い顔は若くは見えず、また人間から見たら兄弟の見分けはつかないため、まとめてピッケル兄弟と呼ばれている。


マーガレット(30歳 女性)

砦の坂下の共同住居で管理者をしている女性。村長マリスの弟の子である。父母は亡くなり、きょうだいはすでにこの地を離れている。温和で母性愛の強い人物であるが、結婚はしていない。過去には未婚の母として出産経験はあるが、その子は病没してしまっている。


メルマリア、メノール(10代 女性)

坂下で暮らしながら働いている少女たち。マーガレットのことを慕っている天真爛漫な少女である。メルマリアは農夫フィリガンの妹で、農夫モーリスと婚約しているが、両人にその気はない。メノールは旅人に託された捨て子で、フラットランドの少数民族の出と考えられるが、身寄りはない。


モーリス(22歳 男性)

小農家「六角」の一人。十年前から一人だけで住んで、古い葡萄の畑を管理している変人の若者。朝から晩まで虫を追い、へとへとになって倒れ込む生活を送っている。出荷量もほとんどゼロであり、ワインを仕込むのにも足りない。葡萄なんて育てても役に立たない、とバカにされているが、やめようとしない。


フィリガン(22歳 男性)

小農家「六角」の一人。姉さん女房のリーベル(26歳 女性)と結婚し、子供が一人いる(坂下に預けている)。モーリスを気にかけ、食べ物を差し入れたりしているが、妻は快く思っていない。


ダン(36歳 男性)

小農家「六角」の一人。四人の高齢者を抱えており、その面倒を妻のベス(19歳 女性)に任せている。猟師ベントゲンと親しく、食料を提供するかわりに酒を受け取っている。しかしこの酒は粗悪なものだったため、彼の体調は悪化の一途にある。


ルビリー(34歳 男性)

かつては傭兵として旅していた人物。父はかつてアディン卿に仕えていた兵士であり、現在はサラモニスに戻っている。二年前に彼なりの騎士道にもどついてこの地にたどり着いた。農家をやっているが、彼自身は自分を戦士だと思っている。しかし農業の知識は少なく、失敗が多い。独身で、結婚したいと思い始めている。


ジャマス(42歳 男性)

妻のヨリス(40歳 女性)と共に、全員で8名の子だくさんの夫婦であり、それゆえに村の有力者ともなっている。子供たちの中には、旅だった者も、この地に暮らす者もいる。ダンの妻べス、ベントゲンの配下のボブ、坂下で養育中の子供のうち二人はこの夫婦の子である。ごく現実主義者であり、子供をたくさんもつ理由も「子供は死にやすいから」というものだ。


プロント(50歳 男性)

農家のなかで唯一のドワーフ。友人のエルフのモッサブ(50歳 男性)と共に暮らし、珍しい果実や薬草を栽培しているという変わり種の人物である。それを知る者は少ないが、ストーンブリッジ王国の血縁者であり、アディン卿とも面識があった。ただし、ここに移り住んで来たのは三年ほど前である。


エオネック(20歳 女性)

エルフの農夫、モッサブのところに半同居している美しいエルフ。ダークウッドに集落がある魔術研究会ラフィネスサークルの一員である証のメダルを身につけている。この村ではエルフは珍しいので、彼女にもモッサブにも語りかける者はいない。


黒き嘴/くろきくちばし(28歳 男性)

ザゴールの配下の一人。ポート・ブラックサンドのごろつきの一人だったが、冒険者として火吹き山に潜入したおりに捕らえられ、悪の魔法使いに仕えるようになっている。彼の背中にある入れ墨が、裏切りを許さぬ呪いである、と聞かされており、それがときおり痛むことからおびえているが、この入れ墨にはそのような魔力は実はない。片方の睾丸をつぶされる拷問を受け、ザゴールのことを心底恐れている。猟師ベントゲンと通じて、良質なサラモニスの武器を入手して暗き勢力の戦士を武装させている。いつもはカラスをかたどった仮面をかぶっているが、素顔は美男子。本名はジョンロン。


ユリック(16歳 女性)

ザゴールの配下の一人。ポートブラックサンドの孤児であり、黒き嘴に拾われて悪の勢力の一員となっている。同じくカラスの頭をかたどったヘルメットをいつもかぶっている。オークに命令できる自分の力に酔いしれているが、すぐに実力を伴わないことを露呈する。大事にしているピンク色のネズミのぬいぐるみをヘルメットにぶらさげている。黒き嘴が自分に女性としての興味を示さないことを不満に思っている。


ススルー(?歳 男性)

黒き嘴配下のオークのリーダー。ことに大きな体を持っている強力な個体。黒き嘴とユリックの命令に従っているが、内心では反感を感じて、反乱の機会を密かに狙っている。オークすべてであるが、そのメンタリティは知的種族のそれとは大きく違っており、本当の友好関係を作ることはできない。