地中レーダーで根を視るためには測線を工夫しよう  

2020年までのレーダチームの研究結果は、本HPの別ページ 水利科学2020 374号「地中レーダがもつ樹木の根系可視力を減災に生かす試み」にまとめてあります。

土の中の根を、土を掘らずに見る技術の中に、地中レーダ(ground-penetrating radar)というものがあります(図1)。電磁波を地中に発して、根にぶつかるとその反射波が得られるという仕組みです。 

貴重な樹木を扱う樹木医さんは、この木は立派な根を持っているかな?と確認したくても、地面を掘れないときがあります。また住民の方々が、近くの森の木々について、根はしっかり張っているかな?ということが知りたいときにも、地面を掘るのは難しい場合があります。そんな時、この地中レーダが役に立つようにしたい!と、私たちは実用化を目指し研究を行っています。

しかしこの地中レーダ、ちょっと癖があり、そこを理解しないと根を検出してくれません。その例として、根が伸びている方向と、レーダが通る線がつくる角度が、45-135 °の範囲であることが望ましい・・(*_*; という癖をご紹介します。

図2は、地中で根の伸びる方向と、地表でレーダが通る道がつくる角度を15度刻みで360度まわしたときに得られたレーダ画像です。直角に交わるときに(青い図) 、最も鮮明な根の反射波が得られ、直角でなくても緑色の図の範囲(45~135°)では、反射波はきれいに映っています。でもそれ以外では、鮮明な波は見られません。

ではこの癖を理解したうえで、地中レーダをどのように根の探査に利用すれば良いかと申しますと、まずは測線(レーダが通る道)を工夫することが思いうかばれます。もし測線を格子状(図3)にすれば、縦方向の測線で良い角度に納まらなかった根は、横方向の測線では良い角度で収まる確率が高そうです(よほど急激に曲がっている根は・・・その理屈に当てはまりませんけれど・・)。それから測線を同心円状(図3)にすると、見やすい角度の範囲に入る根が多く、きれいな反射波が得られやすいかな、と考えられます。 

根を見つけるだけでなく、レーダ信号を用いて根の直径を推定する場合には、角度問題による信号の減衰を補正しなければなりません。海外での研究も含め、その補正案の構築が進められています。

引用・参考文献