土壌がイオウを保持する力

産業革命以降、石油や石炭といった化石燃料の消費により、大量のイオウが大気に放出されてきました。イオウが溶け込んだ酸性の雨は、森林土壌から養分を洗い流して土壌の酸性を強め、植物に有害なアルミニウムを溶解させることが欧米の研究からわかってきました。日本の降雨にも土壌の酸性化が問題になった欧米と同程度のイオウが含まれていますが、欧米ほど深刻な土壌の酸性化は報告されていないようです。なぜなのでしょうか。

火山国である日本には、火山灰から生成した土壌(以下、火山灰土)が広く分布しています。本研究で火山灰土のイオウ含量を調べたところ、欧米の森林土壌に対し、とても多いことが分かりました(図1はドイツと私たちの調べた日本の火山灰土との比較の例です)。

なぜ火山灰土が多くのイオウを取り込めるのか調べたところ、そこには遊離酸化物と呼ばれる鉱物のカケラや、微細構造をもつ粘土鉱物(アロフェンなど)が多く存在し、それらがイオウを取り込む能力を高めていることがわかりました。

火山灰土のようにイオウ保持能が高い土壌をもつ森林では、雨に含まれるイオウが土壌に取り込まれるので、養分やアルミニウムの流出が抑えられます(図2)。それに対し、イオウ保持能の低い土壌の森林では養分やアルミニウムの流出が起こりやすい、といえます。

日本では、火山の近くでは火山灰が多く、そして火山から遠く離れた場所でも薄く降ってきたので、その火山灰が国土を守ってくれているのでしょうか。

引用・参考文献