台風倒木:2回目の攻撃には弱い

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この台風は、左の図のような経路を通り、9月4日14時30ごろ、まさに京都の上空を通過しました。

図 2018年台風21号の経路(地理院タイルに2018年台風21号の経路を追記して岡本透氏作成) 

その日、関西支所にいた研究者たちから「午前から強い風が吹いていたが、午後2時過ぎ、台風の目が通った後に木が倒れた」と証言が寄せられていました。倒木の森を歩くと樹木は一見、ばらばらな方角に倒れているように見えましたが、念のため解体した根鉢7個体のスギについて、倒れた方角を測定し(下図左)、AMeDASの風向、風速のデータと照合しました(下図右)。

図  スギが倒れた方向(左図)、2018年9月4日 台風21号上陸日の京都気象台における最大瞬間風速と風向の10分ごとの変化(右図、気象庁AMeDASデータ)(Tanikawa et al., 2021を改変)

 a  風向は北がゼロになるように設定している。b 14:30ごろ 風向は急激に変化し、同時に その日の最大瞬間風速を記録した。そこで00:00~14:30 の風を1度目の襲撃、14:30~24:00の風を2度目の襲撃と定義した。  C 陰影で示した矢印は、 1度目の襲撃を平均した風向、2回目の襲撃を平均した風向である。

スギの倒れた方向は、2度目の襲撃方向と7本中6本が一致しました。このことから「樹木は左右など二方向に揺らされることに弱く、倒れる可能性が高くなる」ということが推察されました。


「1方向からの攻撃の後、反対側からもう一度攻撃されると弱い」、このことは、生物なら種を問わず当てはまるのではないでしょうか?


(引用文献)

Tanikawa, T., Ikeno, H., Todo, C., Yamase, K., Ohashi, M., Okamoto, T., Mizoguchi, T., Nakao, K.,  Kaneko, K.,  Torii, T.,  Inagaki, I., Nakanishi, A.,  Hirano, Y. (2021) A quantitative evaluation of soil mass held by tree roots. Trees 35, 527–541. DOI 10.1007/s00468-020-02054-y   PDF via RG


谷川東子、池野英利、藤堂千景、山瀬敬太郎、大橋瑞江、岡本透、溝口岳男、中尾勝洋、金子真司、鳥居厚志、稲垣善之、中西麻美、平野恭弘 (2022) スギ根系が抱きかかえている土壌の量はどれくらい?-台風21号が地上に残した根鉢の解体- (水利科学33巻  1-35ページ) PDF