ポルフィリンは、一般的に Rothemund らによって開発された、ピロールとアルデヒド誘導体との酸による縮合と酸化的芳香族化反応により合成されます。本合成法が報告されて以降、ポルフィリン誘導体は数多くの機能性材料において中心的な役割を担ってきました。我々は、白金を鋳型とすることで進行する、“錯形成・環化・脱水芳香族化”を含むカスケード反応を用いた ABCD-ポルフィリンの新規合成法を開発しました[1]。本手法では、対応するジピリナト白金錯体とビスホルミルジピリンを塩基性・窒素条件下で還流することで、良好な収率で ABCD-ポルフィリン白金錯体を与えます。今後本合成法を用いた機能分子を報告予定です。
上述のテンプレート合成における反応温度を適切に制御すれば、脱水芳香族化ではなく酸化的芳香族化が優先しAB-ジヒドロキシポルフィリンを与えます。我々は最近、この中間体をマイルドな酸化剤であるMnO2で処理することで、簡便にAB-ポルフィリンキノンを合成することが可能であることを発見しました[2]。我々はこれをポルフィリノイドの重要なシントンとみなし、機能性巨大分子へと構造変換予定です。
キラリティを持つポルフィリンはこれまで光機能材料や触媒化学の領域において重要な学術的知見を残してきました。Ptポルフィリンは、ソーレー帯による優れた光補修機能と効率的な三重項系間交差、室温りん光特性をもつ有用な材料ですが、屈強な平面性とPt原子がルイス塩基性であることから、キラル誘導が困難でした。
上述の白金テンプレート合成において簡便に合成が可能な、ABCDヒドロキシポルフィリンは、Pd触媒で官能基変換可能なトリフラート化を行うことができます。このABCDポルフィリン-OTfは、内在キラリティをもつポルフィリンの有用な前駆体です。今回我々は鈴木宮浦クロスッカップリング反応により、外部キラリティを持たない(内在キラル型)光学活性ABCDポルフィリンの合成に成功しました[3]。
得られた化合物は、ポルフィリンのソーレー帯、室温りん光特性、効果的なキラル誘導により、極めて明るい円偏光りん光(Bcpp > 10^1 M-1cm-1, 世界で二番目に明るい) を示すことがわかりました。
[3] Chem. Commun. 2025, accepted DOI: 10.1039/D4CC05684A.