原子炉の燃料として主に使われるのはウランとプルトニウム(トリウムもありますが、使っている原子炉はかなり少ない)ですが、どのような原子も、原子の違いで特性が異なります。原子の名前になっているウランや、プルトニウムという原子の大きな性質を決めるものは陽子の数で、ウラン原子は92個の陽子、プルトニウム原子は94個の陽子を持っています。
原子は中性子も持っており、ウラン原子の場合、天然で存在する最も多いウラン原子は146個の中性子を持っています。陽子と中性子の質量(いわゆる重さ)はほとんど同じであり、陽子と中性子の数を両方を足した数を質量数(重さ)として扱い、原子の種類を表します。
例えば、先ほど述べた、天然で存在する最も多いウラン原子は146個の中性子を持っていますが、質量数は92+146=238となり、原子力の世界ではウラン238またはU238と記載されることが多いようです。ウラン原子で、天然で次に多いものは中性子を143個持っています。これは、質量数は92+143=235となり、ウラン235またはU235と記載されます。天然に存在するウラン原子のうち、U238は約99.3%、U235は約0.7%です。U238やU235のように陽子数が同じで中性子数が違うものは同位体と呼ばれます。
ウランより陽子数の多い原子、プルトニウムやキュリウムなどは天然には存在しません。これらは人工的に作られます。これらもウランと同様に、陽子の数が同じでも中性子の数が違うものができます。プルトニウムであれば、有名なものはPu239であり、Pu238, Pu240, Pu241, Pu242などがあります。世界中でこれらの天然に存在しないはずの元素が検出されるのは過去の原爆実験や原子力発電所事故などが原因と思われます。
このウェブページでは便宜的にウランをU、プルトニウムをPuと記載しています。U235は質量数(いわば、重さのようなものです)が235のもの、U238は質量数が238のものを示します。Pu239ならば質量数が239のプルトニウムになります。
核分裂してできる原子のことを核分裂生成物といいます。
核分裂する原子や核分裂を引き起こす中性子のエネルギーにもよりますが、低エネルギーの中性子で引き起こされるウランの核分裂では、質量数が90前後、140前後の生成物が 多いようです。右の図にあるように、この形相はU235とPu239でそんなに大きく変わらないようです。(右図は核データJENDL4のU235とPu239の核分裂収率)
このグラフの見方は横軸に核分裂生成物の質量数となっていて、縦軸は核分裂したときに得られる核分裂生成物の個数(少数ですが、割合と考えていいと思います)になっています。同じ質量数の中には異なる原子番号で同じ質量数のものが含まれていますのでご注意ください。
例えば、1個の原子が核分裂すると、右の図から、だいたい2個の核分裂生成物ができます。そのうち質量数が100の原子は約0.2個ぐらい、質量数が120の原子は0.001個ぐらいできることがわかります。なので、1000回核分裂が起こると、2000個の核分裂生成物ができて、うち200個は質量数が100ぐらい、1個は質量数が120ぐらいといった感じになります。
核分裂生成物で、我々一般の人が特に注意する必要があるのは以下の特徴があるものだと思います。
以下は、人への影響も考慮して注意する必要があるもの例です。福島事故時にも話題になったのでご存じの方も多いと思います。
原子力エネルギーを利用するにあたって重要となるのは、放射性物質とそれから出る放射線です。
細かくいうと、「放射能」というのは放射線を出す能力であり、放射線を出す物質とその強度を示します。物質を示すのか放射線を示すのか、強度を示すのか、人によってあいまいなのであまり使いたくない言葉です。おそらくradioactivityからきている言葉だと思います。
使うのであれば、放射線を出す物質は「放射性物質 (radioactive material)」、放射線は「放射線 (radiation or ray)」、放射線強度は「放射線強度 (radiation strength)」を使うのがいいのではないかと思います。
放射線で特に重要なのは以下のものがあります。
核分裂には、以下の2つがあります。
原子は陽子と中性子が結合してできていますが、それらの間には核力といわれる強い引力などが働いていて、離れにくくなっています。
しかし、ウランのように重い原子の場合、原子に中性子がくっつくと、安定した状態よりも多くのエネルギーを持った状態になります。人でいえば、余計な仕事を与えられてイライラした状態と言えばいいでしょうかね。
その時に、中性子がくっついた原子が安定した状態を保てるだけのひきつける余力を持っていれば分裂せずに安定しますが、その余力がない場合、分裂してしまいます。これが核分裂です。人でいえば、イライラした状態でも心に余裕があって、「まっ、いいさ」と思える人なら、安定した状態を保てますが、心に余裕のない人は、爆発するか、うつになってしまうなど、壊れてしまうことに似ていますかね。
U238は前者で核分裂しにくく、U235は後者で核分裂しやすいです。U238も、高いエネルギーを持った中性子がくっついてくると我慢できず、核分裂してしまいます。質量数が奇数の原子は核分裂しやすく、偶数はしにくい傾向があるようです。
自発核分裂ですが、これはまれにしか起こりません。ごくたまに状態を保つのが我慢できず核分裂してしまう現象です。人でいえば、ごくたまに、青天のへきれきのように、何もないのに突然、ぶち切れる人がいますよね。これに似ているかもしれません。
以下では便宜的にウランをU、プルトニウムをPuと記載しています。U235は質量数(いわば、重さのようなものです)が235のもの、U238は質量数が238のものを示します。Pu239ならば質量数が239のプルトニウムになります。
核分裂で発生するエネルギーは液体、ガス等の媒体を利用して、核燃料から熱エネルギーとして回収します。
以下は、代表的な原子力発電所タイプで使われるエネルギを回収する媒体です。
核分裂で発生するエネルギー(右図参照)