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日琉祖語とは,琉球の諸言語と本土の諸言語の分岐する前の言語である。琉球語には中古日本語的特徴も見られるため,中古日本語の子孫であるとする説があったが,上代日本語には無い特徴(*əi, *oi, *ui, *e, *oの反映の相違)が保存せられていることが判明した現在は否定せられている。この参照文法はあくまでも上代日本語の記述が主目的であり,これについてはPellard(2012)などを参照されたい。
日琉祖語が想定せられる年代としては,[この部分の加筆が望まれます][日琉祖語として想定する共時態はどこからどこまでなのか]
日琉祖語の母音体系は,六母音とするのが現在の通説であるが,Frellesvig & Whitman(2004)は七母音説を提案している。
二つの中央母音を再構するのは,服部四郎によって提案せられた。[1]琉球祖語における*e,*oが上代日本語にî, uとして反映するものに対して,*e, *oを日琉祖語に再構する。ただし,語末の*oは中央母音高舌化(mid vowel raising)が起きることがある。(著重2019cでは,これを音節の配置の問題であるとする。)
母音連続
*ai>ë
*əi>ë
例)
se ~ sö「背」më ~ mö「芽,藻」
kë ~ ka「毛」te ~ ta「手」
*ui>ï
*oi>ï
例)
kamï ~ kamu「神」
pï ~ pô「火」
*əi>ï
*ia>ê
*iə>ê
例)
kï ~ kö「木」
saki-ari>sakêri「咲けり」
utusi-əmi>utusemi「現身」
母音体系
close: *i, *u
close-midもしくはmid:*ə
mid:*e, *o
open: *a
母音の反映
*o>u(非語末)ô(語末)
*e>î(非語末)ê(語末)
例)
*moko>mukô「婿」
*peru>piru「蒜」
*ə>ö
*i>î
*a>a
*u>u
例)
*kətə>kötö「言」
*kik->kîk-「聞く」
*jama>yama「山」
*kuro>kurô「黒」
《PJ母音説の通説》
英:6-Vowel Hypothesis
服部四郎の提案する七母音説から説明する。此れは,恐らく最初に比較手法によって行われた日琉祖語の再建である。[2]
[1]Thomas Pellard(2016).Ryukyuan perspectives on the proto-Japonic vowel system
[2]琉球祖語と古代日本語―日琉祖語の再建にむけて―卷末
[3]日本祖語の母音体系 一上代東国方言資料による再構 一日野資成福岡女学院大学