目次

1. 否定による反語
2. 疑問による反語
3. その両方
   1. zu ja

1. 否定による反語

2. 疑問による反語

すべての問い・疑いの形式は反語表現になり得る。一般的な反語形式として「やも」がある。

• 万978］士(をのこ)やも空(むな)しくあるべき万代(よろづよ)にお語り継ぐべき名は立てずして

「疑問詞―已然形」の句型で反語を表すこともある。

• 万102］玉葛花のみ咲きて成らざるは誰(た)が恋ならめ我は恋ひ思ふを
• 万393］見𛀁ずとも誰(たれ)恋ひざらめ山のはにいさよふ月を外(よそ)に見てしか
• 万1412］我が背子をいづち行かめとさき竹のそがひに寝しく今し悔しも

未然形+ばこそ」は反語的に「~であるはずがない」の意を表す。

• 宇津保 俊蔭］里に住めども吾子より他に見え通ふ人のあらばこそ
• 宇治8-3］さまでも入るべきことのあらばこそ（=それほど入用なはずはない）とて

3. その両方

3.1. zu ja

zu jaは否定の疑問も示すが，文末にあって[2]「～ではないか」のように反語の意も表す。[1]

• 万829］梅の花咲きて散りなば桜花つぎて咲くべくなりにてあら受也(ズヤ)

3.2. ja pa … nu

「どうして…しないのか」の意を表す。

• 古今1037］ことならば思はずとやは言ひはてぬなぞ世の中の玉だすきなる
• 後撰596］定めなくあだに散りぬる花よりはとこいはの松の色をやは見ぬ
• 後撰455］もみぢ葉も時雨もつらしまれに来て帰らむ人を降りやとどめぬ

註

[1]旺文社全訳古語辞典

[2]精選版日本国語大辞典