2019年度

2011年度までRDSセミナーとして開催してきたセミナーを,2012年度は明治非線型数理セミナー(キックオフイヤー)として開催しました.2013年4月に総合数理学部現象数理学科が開設され,ここに,新たな気持ちで明治非線型数理セミナーをスタートしていきます.理工学部数学科と2学科協働で新たな非線型数理のあり方を模索しながら情報発信していく所存です.場所は,中野キャンパスと生田キャンパスの両方を使用予定です.

(中止)2020.3.6 (金) 14:10〜17:30@中野キャンパス6階研究セミナー室3

新型コロナウイルスの影響により中止になりました。

2019年度第11回明治非線型数理セミナー

講演者: 相木雅次(東京理科大学)

講演題目:On the Interaction of a Pair of Coaxial Circular Vortex Filament

概要:本講演では,非圧縮非粘性流体内を運動する同軸上に並んだ2つの渦輪について考察する.特に,2つの渦輪が交互に互いの中を通って繰り返し追い越しあう「Leapfrogging」と呼ばれる現象に焦点をあてる.

Helmholtz による1858年の研究から始まり,2つの渦輪の相互作用に関する研究は今日まで様々なアプローチによって行われてきた.現在,同軸上に並んだ渦輪の運動を記述するモデル方程式として盛んに研究されているのが1893年に Dyson によって提唱された渦輪の半径 R と軸に沿った位置 z に対する常微分方程式系(以後 Dyson モデルと呼ぶ)である.Dyson モデルに対しては,leapfrogging を含む様々な運動パターンに対応する解の存在が Borisov, Kilin, and Mamaevによって示されている.Dyson モデルはその導出の過程で渦輪の形が円であることを仮定している.そのため,leapfrogging 現象の安定性の議論などをする際には対称性のある摂動(円形を変えない摂動)しか扱えないなど,leapfrogging 現象の数学解析においては限定的であるという側面を持つ.

そこで本講演では,渦輪を含むより一般的な形をした渦糸の運動を記述するモデル方程式として講演者が導出した偏微分方程式系(以後,新モデルと呼ぶ)を紹介する.渦糸とは,流体の渦度が空間曲線上に集中して分布したもので,その運動は曲線の運動として記述される.特に渦輪の運動は空間内の円の運動として表すことができる.新モデルは,円以外の一般的な形の渦糸も扱えるので,leapfrogging 現象の非対称な摂動下での安定性など,Dyson モデルでは扱えないような問題も扱える.

今回は最初の一歩として,新モデルに対する初期値問題の解で leapfrogging に対応するものの存在,および解が leapfrogging に対応するための初期値やパラメータに対する必要十分条件について得られた結果を紹介する.時間が許せば,新モデルの解で leapfrogging 以外の特徴的な挙動を示すものについても紹介したい.

2020.2.20 (木) 16:30〜17:30@中野キャンパス6階研究セミナー室3

2019年度第10回明治非線型数理セミナー

講演者: Quentin GRIETTE(ボルドー大学)

講演題目:Concentration estimates in a multi-host epidemiological model structured by phenotypic traits

概要:I will talk about an epidemic system modelling the evolution of a spore-producing pathogen within a multi-host population of plants, and more precisely about the stationary solutions for this model. The infectious fungi that I consider spread in a population of plants (typically vines) by releasing a cloud of spores to reach susceptible hosts. I consider a situation in which the phenotype of the spores produced by a fungi can differ slightly from the phenotype of its parent because of mutations. When keeping track of the phenotype of the population of fungi as quantitative traits, the evolution of this host-pathogen system can be modeled by a system of integro-differential equations which is nonlocal with respect to the traits variable. I will discuss the existence and uniqueness of stationary solutions for this system in a situation where two hosts are involved and the fitness functions of the pathogen in the hosts are separated. In the regime of small mutation, concentration estimates can be obtained for the population of pathogen in the two hosts and lead to a uniqueness result for the stationary solution. This is a joint work with A. Ducrot, J.-B. Burie and Q. Richard.

2020.1.22 (水) 第1部 15:00〜16:30, 第2部 17:00〜18:30@生田キャンパスA302

2019年度第9回明治非線型数理セミナー

講演者: 田崎創平(京都大学)

講演題目:

15:00--16:30 第1部:細菌の細胞ダイバーシティー(講演と実演,顕微鏡で遊ぶ!?)

16:30--17:00 休憩

17:00--18:30 第2部:枯草菌の集団形態形成(主として,講演)

概要:枯草菌は環境に応じて多様な集団形態を示す。また、適当な条件下では頑強なバイオフィルムを形成する。このような集団形態の多様性と頑健性を支えているのが、枯草菌の細胞ダイバーシティーである。枯草菌は環境条件や自身の細胞密度情報、コロニー内の部位などに応じて異なる細胞タイプを選択する。そして、各々の細胞タイプの形成する部分集団は、環境変化に応じて非常に細やかに活動を調節している。さらに、これらの集団間の分業によって、コロニー全体の頑健な成長を実現している。特に多様な細胞タイプからなるバイオフィルムの構造は、様々な機能を実現して長期生育を可能としている。本講演では枯草菌の集団形態について概説する。特に、集団形態の環境応答に関する我々の一連の研究は、枯草菌のコロニーパターン形成機構について未解決であった問題たちにひとつの答えを与えるものである。このことに基づき、新たな枠組みの数理モデルを用いて、環境変動に対する集団形態形成を統一的に説明する試みについても紹介したい。

この講演では、小型のデジタル顕微鏡を用いて細胞ダイバーシティーを実際に観察する。微生物の集団形態形成はマルチレベルな現象であるが、各々の空間スケールや時間スケールを体感できるよう、いろいろ試してみる予定である。

2020.1.21 (火) 14:10〜15:40, 16:00〜17:30@中野キャンパス6階研究セミナー室3

2019年度第8回明治非線型数理セミナー

講演者: 熊谷 隆(京都大学)

講演題目:複雑な系の上の異常拡散現象

概要:本講演では、複雑な系における確率過程の異常拡散現象について概説を行う。ここで対象とする複雑な系は、フラクタルを始め、パーコレーションクラスター、エルデシュ-レーニィのランダムグラフ、一様全域木などのランダムな系である。

講演の前半では、フラクタルを典型例とする自己相似性を持った系の解析から話を起こし、当該研究がランダムな系の解析へと発展して行った流れを時系列に沿って解説する。講演の後半では、もう一つの異常拡散現象として分数時間微分の微分方程式に関する解の挙動を取り上げる。離散系のランダム媒質のスケール極限としてこのような微分方程式が現れるメカニズムを説明し、分数時間微分のポアソン方程式に関する講演者の最近の研究を報告する。

2019.12.17 (火) 16:00〜17:00@中野キャンパス6階研究セミナー室3

2019年度第7回明治非線型数理セミナー

講演者: 只野 之英(東京大学)

講演題目:離散シュレディンガー作用素のスペクトル・散乱理論について

概要:離散シュレディンガー作用素は結晶固体中の電子の挙動を表す作用素であり,通常のシュレディンガー作用素のラプラシアンを差分ラプラシアンに置き換えることで得られる.シュレディンガー作用素の研究は20世紀半ばから現在に至るまで盛んになされている一方,離散シュレディンガー作用素については比較的近年になってから研究され始めている.離散シュレディンガー作用素は空間の離散性故に通常のシュレディンガー作用素とは異なる性質を持つが,それと同時に似た性質を持つことも分かっている.本講演では離散シュレディンガー作用素のスペクトル・散乱理論で講演者が得た結果を,シュレディンガー作用素の場合と比較しながら紹介する.

2019.11.25 (月) 13:30〜17:00@中野キャンパス6階研究セミナー室3

2019年度第6回明治非線型数理セミナー

講演者: 四ツ谷 晶二(龍谷大学)

講演題目:非局所アレン・カーン・南雲方程式の解の表示式と大域的分岐シートの表示式

概要:ノイマン境界条件を満たす,1次元アレン・カーン・南雲方程式において,非線形項の零点の1つが,求めるべき解の定積分から決まる非局所問題を考える.このような問題は,細胞極性の数理モデルをはじめとしていろんなところにあらわれ,ここ数年で急速に研究がすすんでいる.本講演では,まず,基本となるアレン・カーン・南雲方程式のすべての解を楕円関数を用いて表示する方法について初歩的な部分から説明する.この表示式を用いて非局所問題のすべての解を得る方法,さらに,つい最近発見した,2次分岐以降もすべて含む大域的分岐シート(等高線が分岐曲線となる曲面)の陽的パラメータ表示式を得る方法を説明する.加えて線形化安定性に関する結果について触れたい.これらの結果は,ここ数年の,辻川亨氏(宮崎大),久藤衡介氏(早稲田大),宮本安人氏(東京大),森竜樹氏(武蔵野大学)との共同研究に基づくものである.

2019.11.20 (水) 16:00〜17:00@中野キャンパス6階研究セミナー室3

2019年度第5回明治非線型数理セミナー

講演者: 利根川 吉廣(東京工業大学)

講演題目:Modica-Mortolaエネルギーの特異摂動極限について

概要:Modica-Mortola(またはAllen-Cahn, Ginzburg-Landau)エネルギーの特異極限は,2つの相を分離する界面の曲面積に丁度対応することが幾何学的測度論を用いて様々な条件下で証明されている.これら結果についての解説を行う.またその応用として不安定な極小超曲面の存在定理や,与えられたベクトル場をその平均曲率ベクトルとして持つ超曲面の存在定理について説明する.

2019.11.12 (火) 17:30〜18:30@生田キャンパスA301

2019年度第4回明治非線型数理セミナー

講演者: 齋藤保久(島根大学)

講演題目:診療限度を考慮した感染症流行モデルの基本再生産数と後退分岐

概要:医療機関における診療は感染流行を抑制する役割として有効であるが,診療の容量に限りがある場合,その限度を超えた感染者は診療を受けられず,これの感染流行への影響が危惧される.本発表では,感染者集団を,診療不要な軽度感染者と診療を要する重度感染者に内分した感染症流モデルにおいて,診療の限度,及びその容量からあふれた重度感染者の有する感染力が,(基本再生産数が1より小さい状況のもつ直観を超えて)予想外に感染症流行を引き起こす可能性(後退分岐)について論じる.

2019.10.21 (月) 16:00〜17:00@中野キャンパス6階研究セミナー室3

2019年度第3回明治非線型数理セミナー

講演者: 中村 健一(金沢大学)

講演題目:Existence and stability of symmetric solutions of a variational problem for plane curves

概要:表皮基底膜の数理モデルに関連した変分問題について考察する。対象となるエネルギー汎関数は、平面曲線の弾性エネルギーと接着エネルギーの和で定義されており、前者は曲線が真っ直ぐになるほど、後者は曲線が凹になるほど小さくなり、両者のバランスで解が構成される。本講演では、接着エネルギーを定める係数が非一様な場合に、エネルギー汎関数の臨界点が存在するための条件を与えるとともにその安定性を議論する。本講演の内容は、上坂 正晃 (東京大学), 上田 肇一 (富山大学), 長山 雅晴(北海道大学)各氏との共同研究に基づく。

2019.10.11 (金) 16:00〜17:00@中野キャンパス6階研究セミナー室3

2019年度第2回明治非線型数理セミナー

講演者: 森 洋一朗(ペンシルバニア大学)

講演題目:細胞の電解質及び浸透圧調節と細胞の動きの数理

概要:細胞は内外でイオン濃度が大きく異なるが、その1つの理由は細胞の体積調節にある。そのメカニズムおよびこれを記述する数理モデルについて説明し電気生理学との関係を解説する。さらに細胞の体積調節・電解質バランスと細胞の動きが密接に関わっているのではないかという仮説を紹介し、この関係に関する我々の最近の数理研究を紹介する。

2019.7.29 (月) 16:30〜17:30@中野キャンパス6階研究セミナー室1

2019年度第1回明治非線型数理セミナー

講演者: Chang-Hong Wu (National University of Tainan)

講演題目:On the dynamics of some neural field models

概要:Neural fields model macroscopic parts of the cortex that involve several populations of neurons. Since the pioneering works of Wilson and Cowan, and Amari, there have been tremendous efforts in the literature to generalize these works. In this talk, we shall review some recent work and discuss the models including transmission delays. Some numerical results are presented to see the dynamics of neural field models.

このセミナーは,

  • 科研費基盤研究(A) 「非線形偏微分方程式の定性的理論と特異性の研究」(16H02151 研究代表者:俣野 博)

  • 科研費基盤研究(B) 「不整脈および除細動のための数学的基盤整備」(16KT0022 研究代表者:二宮広和)

  • 科研費基盤研究(B) 「均質化法と連鎖反応理論による電気化学触媒反応の数理モデル構築」(16KT0023 研究代表者:小川知之)

  • 科研費基盤研究(B) 「燃焼前線および火災旋風の動く曲線を用いた追跡法の確立」(19H01807 研究代表者:矢崎成俊)

  • 科研費若手研究(B) 「双曲型 Threshold Dynamics: 応用と数理解析」 (17K14229 研究代表者:Elliott Ginder)

の補助を受けています.