坐禅について

ここでは曹洞宗の坐禅のやり方を説明します。

(なお、以下の説明は曹洞宗宗務庁教化部発行の「坐禅のすすめ」の平成29年7月5日発行第13版によるもので、許可を得て転載したものであり、無断転載を禁じます。)

1 .合掌(がっしょう)・叉手(しゃしゅ)


合掌

相手に尊敬の念をあらわす作法です。両手のひらを合わせてしっかりと指をそろえます。指の先を鼻の高さにそろえ、鼻から約10cm離します。ひじを軽く張り、肩の力は抜くようにします。

叉手

立っている時、歩く時の手の作法です。左手を、親指を内にして握り、手の甲を外に向け、胸に軽く当てて右手のひらでこれを覆います。

手の甲を上に向けるやり方もあり、東林寺は上に向けるやり方です。


2.入堂(にゅうどう)の仕方

手は叉手にして、入口の左側の柱(襖・障子等)のそばを、柱側の足(左足)から、坐禅堂に入ります。坐蒲(ざふ)を持って入る場合は、必ず両手で持ちます。坐禅堂に入ったらいったん立ち止まり、坐禅堂のご本尊様〔聖僧さま〕に合掌低頭(がっしょうていず〔問迅;もんじん〕)します。手を叉手にもどして、右足から進んで自分の坐る位置(坐位;ざい)に行きます。

なお、堂内では聖僧さまの前は横切らず、必ず後を通るようにします。

3.隣位問訊(りんいもんじん)・対坐問訊(たいざもんじん)


隣位問訊

坐る両隣の人への挨拶です。自分の坐る位置に着いたら、その場所に向かって合掌低頭します。両隣に当たる二人はこれを受けて合掌します。

対坐問訊

坐る向かいの人への挨拶です。隣位問訊したら、合掌のまま右回りをして向かいに坐っている人に合掌低頭します。向かい側の人は、これを受けで合掌します。

東林寺では坐辱 (ざにく;座布団)の上に坐布を置いて坐ります。12.止静鐘(しじょうしょう)が鳴るまでは壁を背にして坐り、止静鐘が鳴ったら右回りに回って面壁になり、姿勢を調えて坐禅に入ります。

4.足の組み方;結跏趺坐(けっかふざ)・半跏趺坐(はんかふざ)

まず坐蒲がおしりの中心に位置するようにして、深すぎず浅すぎず坐り、足を組みます。結跏趺坐でも半跏趺坐でも、大切なことは、両膝とおしりの三点で上体を支えるということです。ただし、体調・体質には個人差がありますから、無理をせず坐り方を工夫すると良いでしょう。

結跏趺坐

両足を組む坐り方です。右の足を左の股(もも)の上に深くのせ、次に左の足を右の股の上にのせます。

左右逆でも構いません。

半跏趺坐

片足を組む坐り方です。右の足を左の股の下に深くいれ、左の足を右の股の上に深くのせます

左右逆でも構いません。


5.手の組み方〔法界定印(ほっかいじょういん)〕

坐禅の時の、手の組み方です。右手を左の足の上におき、その上に左の手をのせて(右手の指の上に左の指が重なるように)両手の親指を自然に合わせます。この手の形を法界定印といいます。組み合わせた手は、下腹部のところにつけ、腕と胸の間をはなして楽な形にします。両手の親指はかすかに接触させ、力を入れて押しつけたり、離したりしないようにします。

6.上体の姿勢

背筋をまっすぐにのばし、頭のてっぺんで天井を突き上げるようにしてあごをひき、両肩の力をぬいて、腰にきまりをつけます。この時、耳と肩、鼻とおへそとが垂直になるようにして、前後左右に傾かないようにします。

7.口の閉じ方

舌先はかるく上あごの歯の付け根につけて口を閉じ、口の中に空気がこもらないようにします。

8.視線の位置

目は、半眼といって、見開かず細めず自然に開き、視線はおよそ1メートル前方、約45度の角度におとします。目をつむると眠気を誘うので、目は閉じないようにします。

9.呼吸の仕方〔欠気一息(かんきいっそく)〕

坐禅の姿勢が調ったら、静かに大きく深呼吸を数回します。その後、静かにゆっくりと、鼻からの呼吸にまかせます。

10.左右揺振(さゆうようしん)

上体を振り子のように左右へ、始め大きく徐々に小さく揺すりながら、左右どちらにも傾かない位置で静止し、坐相をまっすぐに正しく落ちつかせます。

11.坐禅の用心

さまざまな思いにとらわれないことです。坐禅をしている間にも、さまざまな思いが浮かんでは消えていくとは思いますが、思いは思いのままにまかせ、体と息を調えて坐ります。

12.止静鐘(しじょうしょう)

坐禅の始まる合図です。参禅者の坐相が調ったころ、堂頭(どうちょう)が入堂して堂内を一巡し、正しい坐にあるかを点検します。これを検単(けんたん)といいます。堂頭が自分の後に巡ってきた時は合掌をし、通り過ぎた後に、法界定印にもどします。この後、止静鐘(鐘3回)が鳴ります。止静鐘が鳴ったら堂内に出入りをしてはいけません。

13.警策(きょうさく)の受け方

坐禅中に眠くなったり、姿勢が悪かったり、心がまとまらなかったりした時は、警策で肩を打ってもらいます。この警策は、聖僧さまから励ましとしていただくのです。

警策は自分から合掌して受ける方法と、直堂(じきどう;堂内を監督し警策を行ずる者)が入れる方法と、二通りあります。どちらの場合も右肩を軽く打って予告しますので、そうしたら合掌のまま首を左に傾け、右肩をあけるようにします。 

警策を受けおわったら合掌低頭して、もとの法界定印にもどします。

14.経行(きんひん)の仕方

坐禅を一炷(いっちゅう;40分ぐらい)行った後、引き続き坐禅をする場合には、途中で経行を行います。経行とは、堂内を静かに歩行することをいいます。

坐禅中に経行鐘(鐘2回)が鳴ったら合掌低頭し、左右揺身して足を解き、右まわりで向きを変え静かに立ちあがります。坐蒲を直してから隣位問迅、対位問迅をし、そのあと叉手にしてしばらくまっすぐに立ち、呼吸を調えてから経行に移ります。

歩き方は一足半歩(いっそくはんぽ)といって、一呼吸する間に、足の甲の長さの半分だけ歩を進め、次の一呼吸で、反対の足を同じく半歩だけ進めます。列の前後を等間隔に保ち、堂内を緩歩します。時間になり、抽解鐘(ちゅうかいしょう)(鐘1回)が鳴るのを聞いたらその場に両足を揃えて止まり、叉手のまま低頭します。その後、普通の歩速で自分の坐位に戻ります。

15.坐禅のおわり

放禅鐘(ほうぜんしょう)(鐘1回)が鳴ったら、まず合掌低頭し、左右揺身をして、組んでいる足を解きます。そして、右回りで向きを変えて立ち上がります。(向きを変えてから足を解く作法もあります)

立ち上がったら向き直り、坐蒲を元の形に整えて、隣位問迅、対位問迅をし、合掌の手を叉手にして入堂の時と逆に歩を進めて退堂します。

坐禅で大切なことは調身(ちょうしん)・調息(ちょうそく)・調心(ちょうしん)です。

調身;姿勢を調える

調息;呼吸を調える

調心;すると自然に心も調う


*細かい作法については、それぞれの道場によって異なる場合があります。詳しくは、指導者の方にお尋ねください。


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