2025年1月現在の情報です。最新情報は各自お確かめください。
IB(国際バカロレア)は、1968年に設立された国際的な教育プログラムです。もともとはご家族の事情に伴い国際的に移動する生徒のために考案されました。IBの目的は、生徒が世界の複雑さを理解し、それに対応する能力を育むことにあります。また、生徒に責任ある行動を促し、必要な態度やスキルを習得させることを目指しています。このプログラムを通じて、国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)が取得でき、大学進学の道が広がります。
ヨーロッパで始まったIBは現在、北米やアジアを含む世界中で広く採用されています。IBには以下の4つのプログラムがあります:
PYP(Primary Years Programme):3歳~12歳向け
MYP(Middle Years Programme):11歳~16歳向け
DP(Diploma Programme):16歳~19歳向け(大学入学資格取得可能)
IBCP(Career-related Programme):16歳~19歳向け(キャリア・職業教育関連)
今回は、DP(Diploma Programme)における6つのコア(教科分野)から「言語習得」の「日本語B」と「文学」の「日本語A:独学コース」についてご紹介します。
IB Japaneseを取得するには、以下の2つの方法があります:
IB Diploma取得:6つの教科分野から1科目ずつ選び、計6科目を履修。所定のカリキュラムを2年間(11~12年生)履修後、最終試験を受けて所定の成績を収める。
Certificate取得:日本語Aまたは日本語Bのみを履修し、単科で資格を取得する。
IB Diplomaを取得すると、国際的に認められる大学入学資格が得られるため、世界中の大学進学に有利です。また、大学によっては単位認定や1年次の授業免除が受けられる場合もあります。尚、日本語に関してはHL(Higher level)を受講していることが条件の大学もありますので、各自ご確認ください。
例:ブリティッシュ・コロンビア大学、アルバータ大学、トロント大学、マギール大学
日本語Bのレベルについて
カナダの高校で提供されている日本語のコースは日本語Bとなりますが、日本語Bは下の図のように、さらに3つのレベル(ab initio, SL, HL)に分かれます。IB認定校でIB Diplomaの取得を目指す生徒は、ご自身の日本語の能力に合わせて3つのレベルから1つを選択することになります。ただし、Certificate取得で大学が評価対象とするのはHLのみです。ab initioや SL は、一般的な日本語コースと同等に扱われる傾向があります。
IB認定校に通っていても、学校で日本語Bが開講されていない場合、 日本語A: 文学(Standard Levelのみ)を School-supported self-taught (以下SSST)と言う独学の形で2年間受講し、単位取得を目指すことが出来ます。IBには生徒の母語または家庭言語で書かれた文学作品を尊重するポリシーがあり、例え学習言語が英語であったとしても、生徒の母語または家庭言語も発達させる機会を提供できるようサポートするためのコースです。
日本語A:日本語A「文学」では、夏目漱石などの文学作品を教材に扱うので、日本の中学校同様の教育課程に沿った授業を終えた生徒に適しており、外国語として日本語を学ぶことを目的とした日本語Bとは異なります。目安として補習校で中学部ぐらいまで修了していることが理想です。日本語Bより難易度が上がりますが、英語A と 日本語Aの2つを受講し最終成績7点中3点以上を収めることによりバイリンガル・ディプロマを取得することも可能です。
SSSTのコースでは2年間で9つの文学作品を学習します。(日本語に翻訳された外国文学作品3冊、日本語で書かれた文学作品4冊、生徒が自由に選択して読む文学作品2冊)読書リストは学校のSSST Supervisorの承認が必要です。2年目の終わりには、所属の学校にて2つの筆記試験と、口頭試験を受けます。
また、上記のように「独学」コースにする場合、生徒は学習をガイドするチューターを付ける必要があります。チューターは目標言語(日本語)が堪能な方であることが条件です。大卒であれば教員免許や資格を所持している必要はありませんが、IBの試験についての知識があり、生徒の学習状況を把握し、IBの評価基準に沿ったガイダンスができる方が理想です。チューターは生徒と定期的に対面またはオンラインでミーティングをし、試験対策として文学作品の分析の仕方のコツや、日本語での文章の書き方などについて指導します。チューターは学校が見つけてくれることもあれば、自分で探さなければならない場合もあります。最近ではオンラインで、SSSTの指導を含むIB対策の家庭教師サービスなどもあります。また、チューターへの指導料についても学校が支払ってくれることもあれば、個人で負担しなければいけないこともあるので、それぞれの学校に問い合わせてください。
IBの最終成績は1~7のスコアで評価され、7が最高点です。一般的には4以上で教科をパスとみなされます。
上記のように、最終試験の結果が成績の大半を占めることになります。カナダでIBを受講する場合、最終試験は5月になり、結果は7月に発表されます。
最終試験は2024年現在、すべて手書きで行われています。また、リーディングやリスニングの問題文もすべて日本語で書かれているのがAPと異なる点です。
大学申請の際には、各教科の教員が提示する、予想成績(Predicted Grade)を大学側に提示することができます。Predicted Gradeは11月ごろに出されますが、それよりも以前に大学申請が必要な場合は、学校によって臨機応変な対応も可能です。
また、IBのPredicted Gradeはパーセントで表される学校の成績とは異なるので、選択した教科のレベルに合わせて学校の成績も同様に出されます。従って、生徒によっては大学申請の際にIBのPredicted Gradeを使わずに、学校の成績を利用することもあります。ちなみに、UBC (University of British Columbia)は以下のサイトでIBの成績をパーセントでどのように換算するかの概要を示しています。
International Baccalaureate https://www.ibo.org/
文部科学省IB教育推進コンソーシアム IB(国際バカロレア)とは https://ibconsortium.mext.go.jp/about-ib/
BC Transfer Guide (IBの単位変換@BC州の大学 が調べられます) https://www.bctransferguide.ca/learn-moreabout/international-baccalaureate/
筆者:
宮本麻里 Japanese Language Teacher, Sentinel Secondary School / West Vancouver Secondary School
(2017年からWest Vancouver School DistrictでIBとAPの日本語を担当。)
リベラトリわかな 国際交流基金トロント日本文化センター 常勤講師兼日本語教育アドバイザー