ある日自動車工場のスクラップ置き場で、大きな卵を見つけた少年ケンが不思議がっていると、卵が割れて中から自動車の赤ん坊・ブンブーが現れます。独りぼっちで生まれたブンブーは仲良くなったケンと一緒にママや仲間の車を探す旅に出発することになりました。生きてる車が欲しくてブンブーを付け狙うモンキー博士に追いかけられながらも、明るく気の合う二人は世界中で元気に冒険を繰り広げます。
1980年代に放送された「へーい!ブンブー」には、子供向けの短編アニメでありながらディキシーランドジャズやレビューショーの音楽を彷彿とさせる生き生きとおしゃれな劇伴が流れます。作曲家の越部信義は「おもちゃのチャチャチャ」や「サザエさん」に代表されるように童謡やアニメ音楽、またCM音楽の作品で良く知られていますが、本格的なスイングやモダンジャズで彩られた映画「上海バンスキング」の音楽で日本アカデミー賞を受賞したほど多彩なジャンルに秀でていて、「へーい!ブンブー」の劇伴でもそのセンスあふれる腕前が惜しみなく披露されました。
『へーい!ブンブー』の音楽(主題歌・挿入歌・劇伴)を担当したのは越部信義。アニメ、CM、子ども番組などの音楽で活躍した作・編曲家です。
越部信義のプロフィールは「リトル・ルルとちっちゃい仲間 音楽集」の解説で詳しく紹介しています。ここでは越部信義が手がけた「乗りもの音楽」について触れたいと思います。
越部信義の作品の中で目を引くのが、車、電車、船、飛行機などの「乗りもの」をテーマにした歌や番組の音楽が多いことです。特に車の歌をたくさん書いています。
1965年にNHK『歌のメリーゴーラウンド』で放送された曲「地球を七回半まわれ」は、モータリゼーション(車社会化)が進む世相を背景に書かれた子どものための歌。疾走する車のスピード感をロックンロール風のリズムで描写して人気曲になり、NHK『みんなのうた』でも時代を越えてくり返し放送されました。
その2年後に越部が手がけたTVアニメが『マッハGoGoGo』(1967)。スリリングなイントロから始まる主題歌「マッハ・ゴー・ゴー・ゴー」やレースシーンに流れる軽快な劇伴など、スピード感たっぷりの音楽が子どもたちの心をつかみました。1974年にはミヒャエル・エンデの児童文学を原作にしたTVアニメ『ジムボタン』(1974)の主題歌と音楽を担当。心を持った機関車と少年の冒険譚を盛り上げるパンチの効いた主題歌が印象的です。
忘れてはならないのが、80年代に子ども番組『ひらけ!ポンキッキ』のために越部が作曲したオリジナルソング「はたらくくるま」。さまざまな分野で活躍する車をテンポよく紹介するこの歌は子どもたちの人気を集め、シリーズ化されました。越部は、ほかにも『ひらけ!ポンキッキ』で「のりたいでんしゃ はしるきかんしゃ」「ぼくはでんしゃ」「そらとぶなかま」などの乗りものソングを書いています。
越部信義が作曲した「地球を七回半まわれ」「マッハ・ゴー・ゴー・ゴー」「はたらくくるま」などは、人々の記憶に残る「乗りものソングのスタンダードナンバー」と言ってもよいでしょう。越部の作品に乗りものの曲が多いのは、ジャズやポップスの影響を受けたノリのよいリズム、CMソングの経験を生かしたキャッチーで親しみやすいメロディなどが、乗りもので移動するスピード感や爽快感を連想させるからではないでしょうか。
『へーい!ブンブー』も越部信義の「乗りもの音楽」の系譜に連なる作品です。放送開始は「はたらくくるま」が登場する1年前ですが、本作の経験が「はたらくくるま」シリーズに生かされたとも考えられます。
ブラスやエレキギターのサウンドが楽しい主題歌「ぼくはブンブー」は、懐かしいアメリカンポップスの味わいを感じる曲。劇中音楽(劇伴)は、主題歌のメロディのアレンジを中心に、ビッグバンド風、カントリー風、ジャズ風、ロック風、クラシック風など、多彩な曲調のものが作られました。本作は生きている車ブンブーと少年ケンがさまざまな土地を訪れるロードムービー・スタイルの作品。バラエティに富んだ音楽が土地の情景や雰囲気を描写し、旅情を添えました。
なかでも、ブンブーとケンがのんびり旅する場面に流れる曲や、ブンブーが疾走する場面に流れる曲が印象に残ります。ブラスやギター、ストリングスなどを駆使した軽快な曲調は、視聴者をブンブーと一緒に走っているような気分にさせてくれます。本作の音楽は、数々の「乗りもの音楽」を手がけた越部信義の持ち味が発揮された、子どもたちのためのドライブミュージックと呼べるでしょう。
本作の劇伴の録音日・スタジオ等は不明ですが、同一Mナンバーのバリエーションを含めて、およそ90曲が録音されています。音楽録音は1回だけだったようです。本音楽集には、その中から64曲を選び、全52トラックに構成して収録しました。
本作は全130話とエピソード数が多い作品です。構成にあたっては、個々のエピソードでの楽曲使用状況にはこだわらず、大きな流れでブンブーとケンの旅をイメージしてもらう内容としました。曲名も劇中の使用場面を参考にしつつ、もっぱら楽曲の印象を重視して付けました。音楽集を聴きながら、ブンブーと一緒にドライブ旅行を体験していただければ幸いです。
2026年7月31日 配信開始
Release date 07.31.2026
01~09は物語の始まりをイメージした構成です。メインキャラクターが登場し、ブンブーとケンの旅が始まります。
01「ブンブーのテーマ」はオープニング主題歌のストレートなアレンジ曲。第2話のブンブーとケンの旅立ちのシーンに流れていました。02「ケンのテーマ」は第1話のケンの登場シーンに流れた曲です。
03「ブンブー誕生」は、毎回のサブタイトル音楽と第1話でブンブーが卵から誕生するシーンに流れた劇伴2曲を編集して収録しました。
04「ブンブーと一緒に」は、旅するブンブーとケンの場面によく流れたミディアムテンポのオープニング主題歌アレンジ曲。第1話のラストシーンを飾りました。
05「モンキー博士のテーマ」と06「生きてる車がほしい!」は、ブンブーを自分のものにしようとしつこく付け狙うモンキー博士の登場場面によく流れたユーモラスな曲。
07「あきらめないぞ」と08「がんばれブンブー」はモンキー博士の追跡と抵抗するブンブーのイメージで収録しました。
09「なんとかなるかもよ」はラストシーンにたびたび使われたハッピーエンド風の曲。ブンブーの口癖を曲タイトルにしました。
10「さわやかな朝」以降は、ブンブーとケンの旅をイメージしてまとめました。さまざまな土地の情景~新しい出会い~トラブル発生~それを解決するブンブーとケン~旅を続けるふたり、といったイメージでいくつかのブロックを作りました。多彩な劇伴音楽のあいだに、ジャジーで小粋な曲想の15「花園のブンブー」、カントリー風の22「西部のブンブー」などのオープニング主題歌アレンジ曲を挟む構成としました。越部信義の生み出した豊かなメロディとアレンジの妙をお楽しみください。
26「勇気をふるって」と27「ありがとうブンブー」は、第127話のロデオ大会のエピソードで使われた曲です。
36「最後の大作戦」と37「ブンブー大暴れ」は、モンキー博士がブンブーを捕らえるための最後の大作戦を実行する第128話で使用されました。「ブンブー大暴れ」はオープニング主題歌のダイナミックなアレンジ曲です。
39「夢みる想い」~41「ママに会いたいな」は、まだ会ったことのないママを探すブンブーの気持ちをイメージして収録しました。「夢みる想い」は第3話でブンブーが街でママを探す場面に流れたリリカルな曲。「やさしい面影」はママの姿を想像するブンブーのイメージ。「ママに会いたいな」は、さびしいブンブーの場面などによく使われた、ストリングスによるオープニング主題歌のしっとりしたアレンジ曲です。
42「ブラックブーあらわる」以降は、ブンブーとケンの物語を締めくくるイメージで構成しました。
42「ブラックブーあらわる」は、第129話で生きている車ブラックブーの登場シーンに流れた曲。古いギャング映画を思わせるジャズタッチのサウンドが「殺し屋」と呼ばれるブラックブーのキャラクターを表現します。ブンブーはブラックブーと対決します。
43「カーレース開幕」~46「サーキットの激走」は、ブンブーがレースに参加する第4話などで使われた、ブンブーの走りをイメージした曲です。第129話では大がかりなレースシーンは描かれませんが、音楽集全体のクライマックスを意識してまとめました。本作の音楽の中でも聴きどころになる楽曲たちです。ブラスロック的なカッコよさを持つ「サーキットの激走」は、これぞ「車アニメの音楽」と思わせる1曲。
50「勝利の大行進」は、レースに勝利して意気揚々と進むブンブーとケンのイメージの曲です。
ブラックブーからママの手がかりを聞いたブンブーは、ママがいるという山へ向かいます。48「切ない夜」は、第130話でケンが「ママに会ったらお別れだね」と寝言でつぶやくのをブンブーが聞いている場面に流れました。
49「愛をさがして」は、第9話でブンブーが洞窟の中でママを探す場面に流れた、哀愁を帯びたドリーミィな曲。
50「ママに会えた!」は、最終回(第130話)でとうとうブンブーがママと会う場面に流れた感動の曲です。
最終回のラストでは、ブンブーとケンの別れは描かれませんでした。ふたりは今も一緒に旅をしているのではないでしょうか……。そんな思いで、ラストは「ケンのテーマ」の変奏である51「ブンブーに乗って」と、シンセやブラスを主体にしたオープニング主題歌の軽快なアレンジ曲52「行こうよブンブー」で締めくくりました。
(モノラル・48kHz/24bit)