いたずら好きなピコリーノは心優しいゼペットじいさんに作られた、心を持つ木彫りの人形。ある日だまされておじいさんと離れ離れになったあげくに、仙女さまから罰を受け嘘をつくと鼻が伸びてしまうようになる。ピコリーノは、いい子になっていつかゼペットじいさんの家に帰ろうとアヒルのジーナと一緒に旅を続けます。
世界的に有名なイタリアの児童文学「ピノキオの冒険」として知られる有名な原作をアレンジしたアニメシリーズ。カルロ・コッローディ作のこの物語はディズニーのアニメ映画で良く知られていますが、日本でも戦前から翻訳が読まれ続け今も子供たちの手元に届けられています。映像化やリメイク作品も多く、アニメだけでなく実写映画からドラマ、舞台としても幅広く色々な形で表現されてきました。
「みつばちマーヤの冒険」と同様に本作「ピコリーノの冒険」もドイツと共同で製作を行ったため、ドイツ版の劇伴はマーヤで起用されたチェコの作曲家Karel Svobodaが手掛けました。
本作の主題歌・挿入歌の作曲と音楽を手がけたのは、歌謡界のヒットメーカーとして活躍した中村泰士(1939-2020)。
美川鯛二の名でロカビリー歌手としてデビューしたのち、作曲家に転身。「心がわり」「北酒場」(細川たかし)、「喝采」(ちあきなおみ)など日本歌謡史に残る名曲を世に送り出しました。『ピコリーノの冒険』では、ほのかな哀愁を帯びた魅力的なメロディーの楽曲を提供しています。
本作の主題歌・挿入歌の編曲を担当し、オープニングでは「音楽」に次いで「編曲」とクレジットされているのが京建輔(1937-)。
ジャズのクラリネット奏者から音楽出版社勤務を経て作編曲家に転身し、歌謡曲のアレンジや映画『エスパイ』、特撮ドラマ『科学戦隊ダイナマン』等の音楽(劇伴)で活躍しました。歌謡曲的な哀愁とパンチの効いたサウンドが持ち味です。日本アニメーション作品ではテレビアニメ『野球狂の詩』の1エピソード「北の狼・南の虎」(のちに編集されて劇場公開)の音楽を中村泰士とのコンビで担当しています。
本作の音楽録音は全2回。第1回は1976年4月7日、NET朝日501スタジオにて約90曲を収録。第2回はNET朝日スタジオにて約55曲を収録。音楽集では、その中から劇中で印象深い曲を中心に98曲を選んで、全60トラックに編集・構成しました。なお、アーカイブ的観点から本編未使用曲もいくつか収録しています。
本作の音楽には、主題歌・挿入歌のメロディーがたくさん引用されています。キャラクターを表現する特徴的なメロディーもあります。そうしたメロディーを全体に散りばめ、『ピコリーノの冒険』のストーリーをふり返るようなイメージで構成しました。
2025年7月1日 配信開始
Release date 07.01.2025
口笛とチェレスタによる01「口笛と人形」が物語の扉を開きます。主題歌「ぼくはピコリーノ」をアレンジした02「ぼくの名前はピコリーノ」でオープニングの雰囲気を出してみました。
弦合奏とフルートがさわやかな03「緑の丘の小さな家」は第1話の冒頭に流れた曲。04「ひとみに宿る光」は、第1話でゼペットじいさんが人形を作る場面で使用されたオルゴール風のメルヘンチックな曲です。
うまい話でピコリーノを誘惑し、ひともうけしようとたくらむのが、どら猫とぼろ狐のコンビ。08~10は、その二人をイメージした曲です。09「出ました!どら猫とぼろ狐」は永井一郎とはせさん治が歌う挿入歌「どら猫とぼろ狐」のアレンジ曲。46「またまた出ました二人組」も同じメロディーを使った曲です。
ピコリーノが森の中で出会った瑠璃色の髪をした少女。その正体はふしぎな力を持った仙女さまでした。仙女さまは陰ながらピコリーノを見守り、ピコリーノの心の成長を助けます。13「ルリ色の髪の少女」は仙女さまの登場シーンに流れたファンタジックな曲。18「仙女さまが見ている」と57「仙女さまの想い」は仙女さまのテーマです。
録音クレジットで「人間ピコリーノ」と題されていた15「心を持った人形」が、ピコリーノの心に芽生える感情を表現します。
本作では「どら猫とぼろ狐」以外の挿入歌のメロディーも使われています。
16「おじいさんごめんなさい」と47「おじいさんの面影」は大杉久美子が歌う挿入歌「ごめんねおじいさん」をアレンジした曲。21「ピコリーノが心配よ」と43「いっしょに踊ろうよ」はヤング・フレッシュが歌う挿入歌「踊ろうよピコリーノ」のアレンジ曲。33「ごきげんピコリーノ」は大杉久美子とヤング・フレッシュが歌う挿入歌「たのしく行こうよ」のアレンジ曲です。
22~26は、懲りずにまたどら猫とぼろ狐にだまされてしまうピコリーノをイメージしました。
それでも「いい子になりたい」と願うピコリーノの想いを、やさしい曲調の28「きっといい子になるよ」と29「ふるさとは遠く」が表現します。
30「マリオネットの夢」は毎回の次回予告に使われた曲。グノーの「マリオネットの葬送行進曲」を思わせるユーモラスな曲調です。
31~49は、おじいさんを探して旅を続けるピコリーノをイメージした構成。
31「空の旅」は主題歌のフレーズを織り込んだ爽快な曲。大きなハトに乗って旅するピコリーノの場面に流れています。37「愛をさがす旅」はピコリーノの心情描写によく使われた、チェンバロやフルートの音色が味わい深い曲です。
38「月夜のふしぎ」は第32話のふしぎなカタツムリの登場シーンなどに流れた幻想的な曲。
39「おもちゃの国」と40「ロバになったピコリーノ」は、おもちゃの国で遊びすぎたピコリーノがロバになってサーカスに売られるエピソード、第38話~第41話で印象的に使われました。
変わり果てたピコリーノを見て悲しむジーナの場面に流れた41「ジーナの宝物」が心にしみます。
42「ロゼッタおばあさんは魔法使い」は第44話と第45話で流れた曲。
歌謡曲的な曲想の48「この海の彼方に」と49「希望を求めて」は本編未使用曲です。
50~53は、ゼペットじいさんを探すピコリーノが小舟で海へ漕ぎ出し、クジラに呑み込まれるエピソード、第49話~第51話で使用された曲です。
ドリーミーな曲調の52「クジラの腹の中で」は、クジラの腹の中で再会したピコリーノとゼペットじいさんが語らう第51話のシーンで流れています。
55~58は最終回(第52話)のイメージでまとめました。
クジラの腹の中の冒険から生還し、なつかしい家にたどりついたゼペットじいさんとピコリーノ。いい子になったピコリーノの願いを仙女さまがかなえて、ピコリーノは人間の少年になります。ギターが温かく奏でる58「願いがかなう日」は最終回のラストシーンに流れた曲です。
59「おやすみピコリーノ」はエンディング主題歌「オリーブの木陰」のアレンジ曲。主題歌のメロディーを取り入れた希望に満ちた曲、60「新しい旅立ち」でフィナーレとしました。
(モノラル・48kHz/24bit)