共育講演Ⅰ
タイトル:『日本臨床工学技士会の将来像について』
講師:(公社)日本臨床工学技士会 理事長 本間 崇
臨床工学技士法が公布されてからの医療の進歩や変容は目覚ましいものがあり、特に現代医療には医療機器が不可欠なものとなっており、その役割もますます拡大している。また、社会の多様化に伴い労働者の働き方改革が行われており、医療界においても医師の働き方改革に伴って臨床工学技士法が改正され、臨床工学技士にとって新たなステージへの道が開かれている。医療機器の専門職として治療の質の向上と安全確保に向け、「いのちを支えるエンジニアとして、すべての人の健康と笑顔を追求します」という理念のもと業務を行うことが求められる。
臨床工学技士は、医療の専門知識と技術的なスキルを駆使して、医療機器の性能や安全性、正確性、信頼性を維持するために確実な保守・点検を行い、これらの医療機器を医師の指示の下で、安全に操作することが求められる。患者の治療にあたっては、チーム医療が不可欠であり、臨床工学技士は医療機器の操作を通し支援していかなければならない。臨床業務を安全に行うためには、多様な職種との連携が重要で、調整能力やコミュニケーションスキルを活かし、多職種間で円滑な連携を図ることが求められる。
今後は少子高齢化への対応や、医療DXサイバーセキュリティ対策が急務となっており、医療機器から発生する膨大なデータを安全に管理することや、診療に有効活用されるようにすることも臨床工学技士に求められてくる。このように幅広い業務を行うことで、施設内での臨床工学技士の存在を高めることが重要なことである。臨床工学技士として更なる技術・知識の向上と、患者さんに寄り添うように努力することが将来に繋がると私は思う。
共育講演Ⅱ
タイトル:『このままじゃCE消えるってよ』
講師: 日本臨床工学技士連盟 理事長 肥田 泰幸
「このままじゃCE消えるってよ。」——そんな言葉が現実味を帯びてきた今、私たち臨床工学技士は重大な岐路
に立たされている。高度な専門性を誇る生命維持管理装置の操作と保守管理。それは確かに我々の核であり
誇りである。しかし、時代の変化は容赦なく、特殊性に依存する職域は縮小のリスクと背中合わせにある。
人口減少、医療費削減、業務の多職種分散。あらゆる要因が、国家資格「臨床工学技士」の存在基盤を揺る
がしている。このまま変化を恐れ、行動を起こさなければ、制度の改正や社会的ニーズの変化の中で、我々の
職能が埋没してしまう日が来るかもしれない。
しかし希望はある。医療機器の進化は止まらず、特に在宅医療やウェアラブル、AIを活用したヘルスケア機器
の分野には、臨床工学技士の知識と技術が活かせる無限の可能性が広がっている。今こそ、医療機器の専門
職として、既存の枠を超えて新しい領域に踏み出すときだ。
その実現のためには、職能活動や政策提言といった「現場以外」の場においても、私たち自身が積極的に関わ
る必要がある。政治に無関心でいれば、制度は他人に決められる。だが行動すれば、未来は変えられる。
臨床工学技士という国家資格を未来に残すために、そしてその価値をさらに高めるために、今が最後のチャン
スだ。