【1】ME機器定数配置部署での稼働実績から見た、円滑な機器貸出運用へ向けた取り組み
地方独立行政法人佐世保市総合医療センター 医療技術部 臨床工学室
〇田中 太一朗、矢谷 慎吾、塚本 康平、神宮 裕樹、田邊 義希、今里 航貴、松永 りか、石田 信悟
【はじめに】
当院はME機器センターが56m2と専有面積が狭く、集中治療室などの部署においては、使用頻度が高いME機器を定数配置在庫とした管理運用を行っているのが現状である。それらの背景から、入院患者増加時には、貸出機器が不足する状況が持続しており、定数配置台数を見直すことを検討した。今回、それらの部署の一つである血液浄化センターでのME機器稼働実績を調査し、定数変更を行うことによる病棟貸出台数増加への取り組みを行ったため、ここに報告する。
【方法】
検討前の定数を①(2022年2月以前)、初回の稼働実績調査から定数を変更した時点を②(2022年5月)、長期的運用を行ったあとに再度稼働実績調査した時点を③(2024年4月)とし、定数変更後の実稼働台数の変化について要因を検討した。
【結果】
①の時点では、輸液ポンプ:10台、シリンジポンプ:20台、輸血専用ポンプ:5台で運用していたが、稼働
率は、それぞれ11.8%(最大40%の4台)、9.6%(最大25%の5台)、9.9%(最大60%の3台)であった。
機器稼働率は70%を目標として台数を設定することとし、まずはそれぞれ5台、8台、3台を定数として配置した。定数変更後の②の時点では、稼働率は、18.1%(最大80%の4台)、31.9%(最大100%の8台)、14.5%(最大100%の3台)であった。
定数変更後の台数としては、輸液ポンプ、シリンジポンプの定数増加が必要であると判断し、それぞれ6台、9台、3台を定数として再設定した。
長期的運 用を行った時点の③では、稼働率は、18.9%(最大100%の6台)、12.0%(最大55.6%の5台)、2.1%(最大33.3%の1台)であった。
【考察】
ME機器の定数配置台数を多めに確保することは、緊急時に即座に使用できる環境を維持したいという心理的背景によるものであると推測されるが、今回のように実稼働台数と稼働率を算出し、運用方法の提案を行ったことが、定数配置台数変更への意識改革にも繋がったのではないかと考える。
また、運用方法の変更により、他部署で使用できる機器が増加したという実績を併せて報告することにより、本取り組みが院内全体のME機器運用に対する考え方がプラスに働いたということが実感でき、協力体制の構築に大きく寄与したと考えられた。
【結語】
今回、定数配置部署の一つである血液浄化センターでのME機器稼働率調査を行い、定数変更を行うことにより病棟貸出台数増加への取り組みを行った。医療機器は資産であり、必要な患者へ適切な機器提供を行うためにも、今回のような取り組みを継続することが、必要な機器を患者へ提供できないなどの状況をなくすための危機管理にも繋がると考える。
【2】 当院におけるME機器管理業務への意識改革の効果
地方独立行政法人佐世保市総合医療センター 医療技術部臨床工学室
〇塚本康平 矢谷慎吾 田中太一朗 神宮裕樹 田邊義希 今里航貴 松永りか 石田信悟
【はじめに】
当院でのME機器管理業務は、①機器清掃・点検、②貸出、③患者へ使用後返却の一連の流れの中で、②③に関して看護師もしくは看護補助者が担っている。そのため、使用後の病棟保管から機器返却までに大きな時間差が生じることによる貸出機器不足という事象に長期間さらされてきた。
昨年、ME機器管理業務に従事するスタッフ全員でその事象への対策を協議し、医療機器回収をME機器センター主導で実施することとし、同対応を約半年間実施した。その効果に関して振り返りを行ったのでここに報告する。
【対策内容と方法】
1日のME機器管理業務のうち、午前と午後に各1回ずつ全16病棟を巡回し、使用後のME機器をすべてME機器管理業務担当者が回収することとした。
対象は、ME機器と生命維持管理装置とした。また、部署定数管理としている集中治療室では、定数在庫数の確認を行い、定数不足分の機器台数を事前に把握することにより、複数台の貸出が必要になる可能性などを事前に把握し、点検保管を行うように業務内容を変更した。
【結果】
機器回収を行った時間帯では、人工呼吸器などを含む多数の機器が返却待機状態となっている場合が多かった。
また、他業務が繁忙であることから使用後機器の返却を後回しにしていた。機器回収を行った結果、まとめて返却・貸出を行うなどの事象が減少した。副次的効果として、回収業務で病棟を巡回することでME機器センターでの貸出可能機器に関する問い合わせや機器トラブルの相談などの案件も増加した。
【考察】
ME機器センターと病棟間を往復するためには、エレベーターでの移動等の時間的要因があり、何かの業務のついでに返却するという実態があったのではないかと考える。それらに対して、機器回収をME機器センター主導で行うことにより、貸出・返却の往復にかかる時間と労力の面で、看護師や看護補助者の業務負担軽減にも繋がっていると考えられた。
【結語】
これまで当院にて実行してきたME機器管理業務は、スタッフからの返却に対して清掃・点検を実施し、依頼に基づいた対応を行う「受動的」業務形態であった。しかし、本取り組みのように自ら行動に移す「能動的」な業務形態を徐々に取り入れることで、当初の期待以上の効果が表れている。医師や看護師の業務負担軽減に寄与するだけでなく、職種としての価値を高めていくという意識改革が重要であり、このような「能動的」な取り組みをさらに増やしていけるよう努めたい。
【3】当院におけるda Vinci導入とCEの関わり
社会医療法人財団 白十字会 佐世保中央病院 臨床工学部
〇羽田野修介、福田龍太、谷口一俊、前田博司
【はじめに】
当院では、2024年7月に手術支援ロボットda Vinci Xi(以下da Vinci)を導入し、2024年9月に初症例を行った。専門的なトレーニングを行い、初症例までに様々な準備と経験をしたので報告する。
【経過】
2024年4月15日にda Vinciを導入するチーム会議が開始された。オンライントレーニングを受講した看護師とCEが県内施設2回、県外施設1回の計3回にわたり他施設見学を実施した。da Vinciを使用する手術室は、当院で最も広い手術室(74.18m2)に決定し、7月にda Vinci専用電源を増設するために、6月に2日間にわたり手術室の停電作業を行った。6月に da Vinciが納品され、業者からの説明会を7月中に3回実施した。8月、実際に使用する手術室で機器配置、配線、使用機器、導入の流れからローテーションまで執刀医、麻酔科医、看護師、CEでシミュレーションを3回に分けて行った。
【症例】
現在da Vinciを用いた症例は、消化器外科のみ行っており、2024年9月から2025年1月までに10症(高位前方切除術:4症例、低位前方切除術:1症例 胃切除:5症例)であった。初症例では、2024年9月6日にロボット支援下高位前方切除術を行い、トラブル無く終了した。
【考察】
現在da Vinci業務では、CEが3人体制で準備と片付けを行っている。今後は、症例を重ねて1名対応で業務体制の見直しや効率化を検討していく必要があると考えている。ロールインの際は、ペイシェントカート配線の挟み込みや、専用電源ボックスとの接触に注意しなければならないため、専用電源の保護カバーまたはペイシェントカートの配置を検討していく必要があると考える。
【結語】
今回のda Vinci導入を経験して、今後増加する症例や術式によって、執刀医をはじめとするチーム全体を通して、各機器の配置やシミュレーションを共有する重要性を感じた。 当院では、トラブルによる緊急ロールアウトは起きておらず、今後のトラブルを想定し、緊急ロールアウトのフローチャートを含めたマニュアル作成を行い、改めてチーム全体で共有する必要があると考える。
【4】脳神経外科手術の術中脳波計測とCEの業務、役割について ~てんかん手術の場合~
国立病院機構 長崎医療センター 臨床工学室1)脳神経外科2)
〇八尋智基1)、加来泰志1)杉山哲司1)田代博崇1)小野智憲2)
【はじめに】
脳神経外科手術において神経学的脱落の出現や悪化などの症状は、生じてはならない。
これらを未然に防ぐ為、脳神経モニタリングを行い合併症リスク軽減に努めている。
当院は、術中神経モニタリング(SEP・MEP)業務を2016年6月より開始し、新たに乳児から成人てんかん手術モニタリング及び術中脳波計測(てんかんモニタリング)にも参入している。今回は、てんかんモニタリングの内容や計測関連についての、取り組み等を報告する。
【現状】
2021年からてんかんモニタリングを開始し、異常脳波発生領域の離断、切除を行っている。
年間症例は、乳児から成人まで幅広く年間70症例ほど施行しており、CE2名で主に対応している。
【異なる点】
・SEP・MEP
術前検査を行い、手術に備える。術中は身体機能の維持、麻痺や失語等の神経学的脱落を生じさせないように四肢・頭皮上に、針・CS電極を装着し、モニタリングを行う。
・てんかんモニタリング
発作時と発作のない時の頭皮脳波、CT・MRI・SPECT等、事前検査を行い異常領域の仮想断定を行う。その後、術中に脳表電極を使用し直接脳表から脳波を測定し、てんかん発生領域を決定、切除していく。四肢・経頭蓋に電極等はなく、硬膜下、脳表に電極を直接設置し患者の生体脳波を計測する。
【まとめ】
てんかんモニタリングとSEP・MEPでは、術中手技内容はもちろんの事、使用電極や測定方法等、異なる点が多くある。脳波測定を行う前の準備や測定中のノイズ対策、その後の脳波読波等、業務の特殊性が高く、同じ脳神経外科領域でも同等には語れず、人材の確保、育成が難しい。
【5】心臓植え込みデバイス患者に対するMRI撮像に関して当院の現状と今後の課題
地方独立行政法人佐世保市総合医療センター 医療技術部 臨床工学室
◯松永りか 矢谷慎吾 塚本康平 塩屋正昭 草野公史 値賀博章 齋藤保 石田信悟
【諸語】
2012年以降、所定の基準を満たした医療機関では、MRIカードを保有する心臓植え込みデバイス患者のMRI検査が施行されている。当院ではこれまで有害事象等なく安全に施行できているが、昨年の心臓植え込みデバイス患者におけるMRI検査に関する運用指針の改定を受け、当院の運用体制を見直し今後の課題について検討したのでここに報告する。
【現状の運用体制】
当院では現在、①患者がMRIカードと手帳を必ず持参すること、②循環器内科医師(医師)、臨床工学技士(以下:CE)の双方が立ち会うこと、③撮像条件を全て満たしていること、の3つを条件に検査を実施している。しかし、検査実施前後を含む時間は、医師、CEともに他業務に従事出来ないなど、診療への影響など多数の課題を抱えながら実施している。
【運用方法に関する協議内容】
条件付きMRI対応心臓植え込みデバイス患者に対してのMRI撮像に関しては有害事象の報告はほとんどなく、当院での実績でも経験がないことから医師を中心に関連職種での協議を行なった。その中で、CEが撮像時にも立ち会いをこれまで通り継続することを条件に、医師の立ち会い無しで検査を施行する方針となった。ただし、撮像条件を満たすことが出来ない場合などは、院内ルールとして医師の判断による責任のもと実施する必要があるため、その際は医師も立ち会いを実施することとした。
【考察】
今回の協議で方針決定した医師立ち会いの条件付き解除は、CEの立ち会いを条件とすることでの取り決め事項であることからも、CEが診療上の医師業務負担軽減に寄与していると考えられる。しかし、昨年MRI検査に関する運用指針の改定がなされ、過去と比較すると大幅に変更になっている状況を考慮すると、立ち会い基準に関しては情勢を鑑みて適宜検討する必要があると考える。その際は、運用指針や院内ルール等を遵守し、患者と医療者双方が安全に検査実施を可能とするよう努めることが重要だと考える。
【結語】
今回心臓植え込みデバイス患者に対するMRI撮像に関して当院の現状と今後の課題について報告を行なった。ガイドラインやステートメントはどの領域においても改定時には、それらの内容を注視し、適切な対応を検討するよう見直しを図る必要がある。