クロロフィル分解

クロロフィルの分解について

主要な光合成色素であるクロロフィルは、葉緑体を持つ植物細胞の老化や自己細胞死を起こす際(おもに紅葉(黄葉)時や病原菌感染拡大に対する自己細胞死時)に盛んに分解されます。クロロフィルの分解という現象は古くから知られていましたが、その代謝経路の大まかなことが明らかになったのは2000年代に入ってからで、現在でも完全には明らかではありません。

クロロフィルはタンパク質に結合している状態では安定な化合物ですが、遊離状態では光依存的に活性酸素を生じる毒物になります。そのため、遊離したクロロフィルは様々な過程を経て、最終的には色を持たない無害な化合物に変換されます。RCCRはこの代謝経路の後半で働く酵素で、この酵素の働きによって、クロロフィル代謝産物は色を失い、光毒性がなくなります。事実、RCCRを合成できない変異植物では、前駆体であるRCCが蓄積し、細胞死が誘導されることが分かっています。

RCCRの立体構造

RCCRはフェレドキシン依存性ビリン還元酵素の類縁酵素であることが、アミノ酸配列から類推されていましたが、その相同性は10%程度と極めて低く、確実なものではありませんでした。

我々は大阪大学 福山恵一先生、京都大学 河内孝之先生との共同研究でRCCRの立体構造を決定し、二量体を形成しているRCCRのサブユニットとPcyAの立体構造が極めてよく似ていることを明らかにし、両者が確かに類縁酵素であることを確かめました。

さらに立命館大学 民秋 均先生との共同研究により、基質であるRCCとの複合体の立体構造を決定しました。

この立体構造決定により、Glu-154およびAsp-291がRCCRの酵素反応にかかわることが示唆されました。

また、反応の立体特異性が変化する変異RCCRについても立体構造を決定し、変異によって基質の結合方向が若干異なることを示しました。

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