ビリベルジン還元酵素

哺乳類においてビリベルジン還元酵素は血液中に含まれるヘムを分解する最終段階の反応を担う酵素で、ビリルビンという色素を生成します(図1)。ビリルビンは黄疸の原因となる色素で、特に新生児期の重度の黄疸は、脳性麻痺の原因となります。

図1.黄疸の主な原因

図1.黄疸の主な原因

シアノバクテリアにおいて、通常ヘムの分解物であるビリベルジンはフィコビリンへと代謝されますが、ある種のシアノバクテリアのゲノムDNA中には、哺乳類のビリベルジン還元酵素によく似た配列の遺伝子(ホモログ)がコードされています。我々はこのシアノバクテリア由来ビリベルジン還元酵素に基質と補酵素が結合した3者複合体の立体構造を明らかにしました。これまでに哺乳類由来ビリベルジン還元酵素単体や補酵素が結合した立体構造は報告されていましたが、基質の結合位置は不明で、その反応機構を考えるうえで、大きな障害となっていました。我々は基質も結合した構造を初めての報告し、反応機構を考える構造基盤を明らかにしました。

酵素では通常、一つの基質が一つの基質結合ポケットに結合しますが、非常に珍しいことに、ビリベルジン還元酵素では、二つの基質が一つの基質結合ポケットに結合していました(図2)。

図2.ビリベルジン還元酵素-基質-補酵素の立体構造

図2.ビリベルジン還元酵素-基質-補酵素の立体構造

二つの基質(Distal BV およびProximal BV)と補酵素(NADP+)が同時に結合したビリベルジン還元酵素の立体構造を明らかにしました。

また、哺乳類由来ビリベルジン還元酵素をおいても、酵素反応を行う最適な条件では、二分子の基質が一つの酵素に結合していることを可視吸収スペクトルの変化から明らかにしました。

これらの結果から、Distal BVはProximal BVをビリルビンに変える触媒であることを提唱しました。

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