これはGay Book Reviewsに掲載されている2019年8月のインタビューです。フランス在住のパリス・デュードさんがSkypeを通じて米国のラニヨンさんと話している様子です。
ゲイでもあるパリスさんが
「なんで女性なのに僕たちのことをそんなにわかるんですか……僕たちわかりやすすぎますか?」
ときくところは、最高におもしろいです。
魅力ある男二人のキャラクター作りから、来年から始まる週刊アドリアンのことまで、とにかく楽しそうにおしゃべりしています。邦訳許可をくれたパリスさん、翻訳チェックしてくれたEさんに感謝!
大ニュース!
数日前、ジョシュ・ラニヨンにメールで、Skypeでのインタビューを申し込んだところ、すぐに、よろこんでとの返事をもらってしまった。
そんなわけで、僕(パリス・デュード。フランス在住)は、このためにひっぱりだしてきた、ボタンダウンシャツをそわそわといじっているのだが。
なにもロイヤルファミリーとハイティーするわけではないのだ。もうのるかそるかだ。なにしろ、僕にとって、ジョシュはいわば、MMミステリ界の女王みたいなものなので、多少は服装に気を使わないと、と思ったのだ。シャツにアイロンかけたほうがよかったか、絶対かけるべきだった…と思ったときには、もう遅くて、コールボタンが押されていた。
Skypeがつながったとき、まず、日に照らされた屋外の風景がみえた。きらきらしたプールの横に座っていたのは、僕が本とネットでたまたま見つけたレアな写真でしか見たことのない女性で、優しそうな笑顔を浮かべて、両手にはアイリッシュ・コーヒーらしきグラスがあった。このあとのインタビューのとき、そういってたので、アイリッシュ・コーヒーで当たりだった。画面の中では、かすかな風の音にまじって、遠くで小さく風鈴のような音が鳴っていた。そのチリン、チリンという小さな音が、僕たちの一部始終を楽しげにきいていた。
パリスデュード(満面の笑顔で):こんにちは、ジョシュ。こうして実物にお会いすることができて…、オンラインでのこれを実物といえるならですが
ジョシュ・ラニヨン(軽く手をふりながら):ボンジュール、ダイエター!サ・ヴァ?
PD:(驚いて):サ・ヴァ、メルシ。フランス語を話すんですか
JL:(明るく笑いながら)少しね。ほんと少しだけ。私の目標のひとつ。フランス語を勉強することがね。それもあって、来年の「Salon du Livre*」にむけて練習中です。
それはそうと、これが実現するまで、いろいろあっておまたせしてしまってごめんなさい。ようやくこぎつけましたね。でも、私のことを、締切りのときも、こういう人だと思わないふりはしてください(笑)
PD:(うなずきつつ)ちょうど今は、想像を絶するお忙しさでしょうに、なんとか時間をとってくださって本当に嬉しいです。さっそくですが、(言葉を選びながら)僕にとってジョシュさんは、かなり長い間、謎の人で…、その最大の理由は、フランスのアマゾンサイトでは、プロフィールが男性になってるからなんですよ!どこかでは「ジョン」とよばれてるとかも…
JL(笑いながら自分を指して):そうね、私の認識では、自分は女性なんだけど、出版社のほうは、なにかを刺激しないように、ことさらに神経をつかってるのかもしれませんね。私はどっちでも歓迎です。「ジョン」については…(ウインクして)もちろんありです。
PD:では、ジョシュ・ラニヨンは、ペンネームなんですね。なにから思いつかれたんですか?
JL:「ジョシュ」はちょっと個人的なことなので、横においておきますが、「ラニヨン」は、メアリー・ルノーの古典「馭者 The Charioteer」からです。大学時代に読んで、私の人生を変えたといってもいい本でした。これって、作家がいつの時代も望んでいることよね? 作家が書いたものは、誰かの人生を実際に変えることがある。そこまでいかなくとも、ほんのちょっとは、考えてもらうことができるんです。
PD:まったく賛成です。では、おききしたいんですが、ジョシュさんは、これだけ世に受け入れられる作品を書くことで、生計を立てていらっしゃいますよね。もし作家でなかったら、今なにをしていると思いますか?職業的に、という意味ですが。
JL:どこかの小さな私立カレッジで教職をやってるんじゃないかしら。あ、副業で殺人事件を解決したりしているかも!(楽しそうに笑いながら)
まったく、僕はジョシュがこんなに気さくな人だと知って心の底からほっとしていた。僕は、初対面の人とはシャイになるし、あまり話せないほうだからだ。でもジョシュは、昔から知ってる者同士のようにすぐにうちとけた雰囲気にさせてくれた。
PD:もともとは、なにがきっかけで書き始めたんですか?
JL:私の場合は変わってて、レアケースだと思いますが、生まれつきの物書き体質なんです。それに、先生に恵まれていました。小学校2年生から大学生のときまで、いつも私を励ましてくれ、書く才能をのばしてくれた複数の先生がいたんです。小学4年生のころには、いずれ自分が「物書き」というものになるんだろうなと確信していました。
PD:どんな子供だったのかきになります。始終動き回っているタイプだったのか、明るいかわいいシャーリーテンプルタイプだったのか、僕みたいに、無口で恥ずかしがり屋で本ばかり読んでるような子だったのか…?
JL:やせてる、金髪、小さい、頭はわるい、今では口にするのはなんだけど、想像上の友達がいる、そんな子でした。内弁慶だったし、妹にけんかをしょっちゅうふっかけることで、家族の中では有名だったんです。
PD(笑いながら)あはは、信じられませんね。そんなカリフォルニア育ちの女の子は何になりたかったんです?そのときから、いつか有名な作家になると思ってましたか。その子の夢はいくつかないました?
JL:大人になったら、もっとたくさんの馬を飼ってると思ってました。(ウインクしながら)間違いなく。でも、結局、私はどこまでもお話を作る作家なんですよね。祖母にいわせると、私は字を読めるようになる前から、本を手にとってはこれがどういう話なのか、赤ちゃん言葉で話してたそうなので。絵本時代になると、色を塗っている間、ずっと、妹や友達に、私が塗っているものについてのお話をしゃべっていたそうです。(余談として)あきらかに、地球一超絶面倒子供賞、ねらえたと思います。
PD:なるほど。では、少しお仕事の話にうつってもいいですか。うちがやっているフランスのサイトlivresgay.frでは、ちょうど、エイドリアン・イングリッシュシリーズが話題になっています。そこで知りたいんですが、このような愛らしい系のアドリアンと、心のささくれだったジェイクといった、二人のメインキャラは、どこから思いついたのでしょうか。また、どういったところからこのような効果的なアイデアを得るんでしょう。たとえば、最後の最後まで、ハッピーエンドのハの字もみせずに、お互いがお互いを恋い焦がれるような?
JL:ちょっと先にこれだけいいかしら。このサイトすごいですね。素晴らしいわ!私がゲイミステリーやMMロマンスを出したころ、こんなサイトはどこにもなかったもの。(思いにふけり、首を横にふりながら)もちろん、私が本を出し始めたころは、ブログやネットのほうが存在していなかったけどね。でも、たった20年やそこらで、LGBTQフィクションがこんなに発展するなんて、驚きよね。
さて、エイドリアンとジェイクね。申し訳ないんだけど、あの二人のキャラクターをどうやって思いついたかは、きちんと覚えていないんです。A&Jの前から、ゲイが主人公の話はたくさん書いていて、その話はのちにMMミステリーの「 I Spy Something Bloody,」「Cards on the Table, 」「The Ghost Wore Yellow Socks」になったんですが。でも、当時、それは単に趣味として書いていたんです。需要があるとは思いもしませんでした。(事実、当時はありませんでした)
言えるのは、私はキャラクターを考えるとき、最初からペアで思いつくということです。私の場合、重要な決断をする場面で、相性が合ったり、合わなかったりする二人の人間が、直感的に出てくるんだと思います。こうすると、つくりものではない、意味のある対立軸ー、とてつもない障害というわけではないのに、リアルで、必ず乗り越えられる本当の難題というものがうまれます。私の経験からいうと、人間関係の難しさというのは、ーすべての人間同士のふれあいを含めてのことですが、コミュニケーションの不足とすれ違いから派生していると思っています。
(笑って)あ、質問がなんだったか、忘れちゃいました!
PD(助け舟):エイドリアンとジェイクのことです。この二人の込み入ったラブストーリーは…
JL:そうでした。エイドリアンとジェイクは、ほとんど一目惚れで、―二人ともこの関係は駄目だなと思ってー、でも二人の間には本当の難題があるんです。ジェイクはシリーズの最初と最後では、考え方も態度もずいぶん変わったと思います。ジェイクの人とのかかわりかた、ーまさに、エイドリアンとの友情が、ジェイクの心情の動線となり、心がわりの可能性を生み出したんだと思います。
現実の世界って、そういうものだと思います。生きていると、自分の見方を広げてくれる人、変える人に会っていくものです。こういうことが、人間を成長させたり進化させる能力につながるんだろうと思います。(半分真面目で半分いたずらっぽい目線を僕に投げながら)誰もが持ってる能力ではないけどね。
この話の感情のぶつかり合いに限っていえば、一人称でかいたことで、心に直にせまって書けたんじゃないかしら?強烈といってもいいかも?
PD:たしかにそう思います。(考えこんで、手を口にあてながら)僕がいつも驚くのは、ジョシュさんに限らず、ほかの女性作家陣は、男性のゲイの心情をずいぶんよく知っているということなんです。これは奇跡的に感情移入した偶然の産物にすぎないんでしょうか。それとも、文章の見え方をクロスチェックしてくれるゲイの友人がいらっしゃるとか?
JL:私のまわりにつきあいの長い男性達がいるので、それが助けになっているのは確かです。男性優位の業界で働いていますし、指導してくれた人はほぼ男性でした。いい作品というのは、経験したことや、教わったこと、他人に心を寄せることがうまく溶け合ったものなんだと思います。中身のあるストーリーには、この3つを必ずいれないといけません。私見ですが。
(身を乗り出して)実はね、変だなと思ってることがあるのよ。どう説明したらいいのかも、どうしてそうなるのかもわからないんだけど。どういうわけか、私がゲイの登場人物や人間関係をかくと、私が書く女主人公ものの10倍以上の「ホンモノ」になっちゃうの。どこにでもいるようなタイプの女主人公を作ることに、プレッシャーがあるのかしらね?ゲイを書くことのほうが、私には単純化して物事が見えたり、関連づけられたり……、ここでの関連付けるというのは、私の側からみえるだけの範囲ですが。あと、感情と感情のつながりもとらえることができます。
PD:わかります。でも、物理的な体の面、つまり(ウインク)、「やりかた」は想像範囲だとしても、ほかのことすべてもですか?感覚や、いろいろな感情、行為中にどう考えていくかも?僕には、女性側のセックスがどんなものなのか、想像しようがないです。僕たち男性側になにが起こっているかどうやってわかるんですか?(笑いながら)僕たちはわかりやすすぎますか?
JL:作家の中には…、ー女性も男性もこの点については公平にー、セックスのしくみの描写に重きを置く人もいると思います。でも、人はセックスをするとき、技術がどうこうとは考えていないですよね。(冗談です)訂正ね。多分、一番最初のときはー「私これであってる?」だと思います。でも、そのあとは、しくみのことなど深く考えませんよね。(まじめになって)だから、このたがが外れた無我夢中さというものが一番大事で、セックス体験の根幹そのものなんだと思います。
セックスというものは、非常に個人的なもので、親密なものです。でも、万国共通な人間の体験というものもあります。例えば、子供にはふれあいが必要ですが、もし、それが与えられなかったとしたら、感情や心の発達にどんな影響を与えるでしょう。そんなわけで、私は常に場面をかくとき、A、 Bの2点に気をつけています。A:キャラクターに忠実に書くこと。どのキャラクターにもその人なりの歴史と、心理の積み重ねがあるものだから。B:人間一般の体験を、それとわかるように、共感できるように忠実に書くこと。
(笑ってウインクして)じゃあ、そうね、私を描写するなら、成人したセックス可能の女性で、それなりの経験とそれなりの観察眼をもった人ということになるわね!
PD:この言葉が失礼だったら申し訳ないのですが、僕はずっとラニヨンさんを、最強の英国色を持った米国作家だと思っているんです。というのも、作品を読んでいると、アガサ・クリスティーや、怪奇小説作家・E.F.ベンスン、あなたと同国人となる歴史ミステリ作家・エリザベス・ピーターズを思い出すからです。特に、一分の狂いもない会話や、皮肉をこめた笑いのセンスに、それを感じます。作品でいえば、エイドリアンシリーズや、Séance on a Summer’s Night(夏の夜の降霊術会:未邦訳)です。たくさんのイギリス人作家の本を読んだのですか?
JL:私の家はいわゆる「スコット系アイルランド」なんですが、(笑いとともに)<高田注:米国ではスコット系アイルランド人は歴史ある一族だとみなされているが、自称も多いそうです>正確には、飲める量からきてるんでしょう。ほかには、ほんの少しずつ、フランス人、イタリア人、ウェールズ人の感情らしさが入っています。私は、南カリフォルニアの、スコット系文化背景で育ちました。(僕の喜んだ顔をみて、以下のように付け加えて)そう、まさにそれです。私と妹は、ハイランドダンス<跳躍の激しいスコットランド伝統のダンス>やフォークダンス、ゲール語も習いました。結成して約30年にになるケルト音楽のバンドにも入っています。イギリス人、主にスコットランド人に囲まれて育ちました。それに、英国ミステリー作家の本を読んで育ちました。ジョーゼット・ヘイヤ―、エリス・ピーターズ, アガサ・クリスティのほか、ミステリ黄金期の作品を読んで、そのあと、ようやく米国ミステリ作家、チャンドラー、 ハメット、ジョセフ・ハンセンを読みました。
PD:今、本を読む時間はあるのですか
JL:今年はもっと読みたいと思ってます。
PD:どんなジャンルの本が好きですか?
JL:ミステリーが一番好きですね。『天使の影』発売前、2000年より前に発行されたゲイミステリ、(多くはレズビアンでしたが)は、文字通りすべて、一冊残らず読みました。私の源は、古風なミステリなんです。特に1940年代に書かれたものですね。実は、夫、ー作家兼批評家のケビン・バートン・スミスーと私は、1960年代以前を舞台とした、架空の夫婦が探偵をする「ミスター・マーダーとミセズ・マーダー」(仮題)という本を共著しているんですよ。
PD:おお、アガサ・クリスティの「二人で探偵を」みたいですね!僕もあの二人が好きです。
JL:正解!あの話、とても好きなの!
PD:では、全然違うことをきかせてください。8月のあたまに最新刊「Mainly by Moonlight」がでますね。僕が正確に数えているならですが、今年に入って4冊目です。MMミステリーロマンスのアンソロジー「Footsteps in the Dark」に寄稿作品はのぞいても。どうやったらこんな多作を維持できるんですか?特別なスケジュールを組んでいるのでしょうか。趣味に費やす時間はどこで…、趣味はありますよね?
JL:趣味は、言葉としてはあるのよ!ガーデニングが好きだし、泳ぐこと、SO(パートナー)と、クラシック映画をみること、うちの手に負えない犬を、家でも庭でもおいかけまわすこと。(事実、ラニヨンさんの背もたれに犬が…、ー雑種のマーロウというそうだー、がまるまっていてラニヨンさんの首の近くでいびきをかいていた)本当はもっと本を読みたいんです。
(とても手にはいらないものをのぞんでいる顔つきになったあと、その表情をふりはらった)今年は多作の年ですね。たしかに、これまでの長い期間の中で、一番の多作の年だと思います。以前、燃え尽き症候群になったので…あれはいつだったかしら。2012年?その前の年、14本の作品と、3作を大手出版社用に書いたんですが、劇的なクラッシュがきて、燃え尽きたんです。書くということを考えることすら耐えられませんでした。なにも、本当になにひとつ考えられなくなりました。恐怖でした。そのあと、私が健康的で適度なスピードだと思えるところに戻ってくるまで、時間がかかりました。
PD:僕は、ラニヨンさんの小説は、校正ミスも誤字もなきに等しいので、編集に時間をかけているんだろうなと思っています。どの小説にもある、意図しないミスや「あるある系」は別としてですが。校正はご自身でやっていますか?それとも、別の人にやってもらってるのでしょうか。もし、後者なら、それはとても光栄な仕事ですね。
JL:(明るい顔になって)メルシ!担当シェフにご意見を伝えておきますね!(ウインクしながら)編集はだいたいケレン・リードにお願いしています。デボラ・ネメスさんもいいですよ。カリナプレス発行の私の本は全てお願いしています。校正はダイアン・セィースに頼んでいます。
PD:次の本はどんな作品ですか?エイドリアン・シリーズの続編の可能性はあるのでしょうか。この質問をするのは私が最初ではないと思いますが…
JL:(おどけた驚き顔で)えええっ??そんなこと思ったこともないわ!!AE小説の新作は今の私にはないですね。でも、来年(2020年)は、『天使の影』の20周年なので、AEシリーズのなにか続きを必ず書きます。エピローグ的なものになるか、短編か、ノヴェラ(中編)かわかりません。そのときになったらで。
PD:それは、待ち遠しいですね!ところで僕のフランス人の彼氏が、フランス語版が少ないことを嘆いています。そういった方面の企画はありますか?もしそうなら、1人の男が泣いて喜ぶんですが…
JL:MxM Bookmarkと「Art of Murder」シリーズ、「 Holmes & Moriarity」シリーズの翻訳をすすめています。いいニュースになるといいんですが。もちろん一社でできることは限られているので、私としては、一緒に仕事ができる2社目のフランスの出版社を待っています。翻訳しなければいけない本がたくさんありますね。
PD:フランスにいったことはありますか?僕はオーストリア出身なんですが、そちらは?
JL:ないんです。来年が初のフランス旅行なので、とても楽しみにしてるんですよ。オーストリアには、残念だけどいったことがありません。私にとっては、おとぎ話にでてくる王国みたいなものです。
PD:故郷だからいうわけではないですが、オーストリアは来る価値のあるところですよ。保証します。(手元の質問リストをみながら)ところで、もし1冊タイトルをあげられるとしたらですが、一番好きな本はありますか?これだけは、というような?
JL:その質問に答えられる人がいるのは知ってるけど、私にはないんです。それぞれの本はそれぞれの意味を持って、私の人生のそのときどきに影響を与えたからです。いまだに影響力を持っている本もあるし、なかったものもありますが、どんな本も、いわば、「自分の仕事」はしているんです。私が自分に影響を与えたといえる本は、さっき言った、メアリ・ルノーの「馭者The Charioteer」です。でも、この本ですら、私の一番好きな一冊にはとてもならないと思います。
PD:本を読んでいると、「しまった、なんでこれを自分が書かなかったんだ…」と思わずにいられないときがあります。そう思った本はありますか?
JL:あっ、また残念なお知らせなんだけど…。自分が書けばよかったと思った本を読んだことはないです。私は読むときは、よく読んで、ときには読みすぎて!、作品のインスピレーションとなる部分を読み取ります。好きなところを読んだり、「ふむ、この感情は自分の作品ならどうとらえられるだろう?」と考えたところを読み取ったりします。子供のとき、The Egypt Gameをよんで、こんなおもしろい本を読んだことないと思ったときぐらいだと思います。
PD:次の新作「Mainly by Moonlight」は、練りに練られ魔法的な展開だそうですね。(嬉しさで手をぱちぱちしながら)これ、実は、僕が好きなジャンルのツートップなんですよ!ジョシュさんの「The Darkling Thrush」で、ミステリと超常現象を組にしたミックス話を初めて読んだことを思い出しました。これをきいてよいかどうかわかりませんが、あなたのいつものスタイルから、外れたのはどうしてですか?
PD:「Mainly by Moonlight」は、「ベッドの支柱飾りとほうき」(同名の有名な子供向け映画があります。メアリポピンズのような話です)シリーズの1巻として発表されましたね。もしよろしければ、どんな話なのかきいてもいいですか?
JL:私、この新三部作が本当に、本当に好きで…!笑いもロマンスも、ピリッとするところもある作品だと思ってます。もちろんミステリーとマジックもありますよ。作品のテーマは、愛するということの探求です。お話は魔法使いになってしまったコスモが、魔法が使えないジョンに一目惚れするところから始まります。でも、ひどいのは、それがちっともロマンティックじゃない状況なのね。コスモの親友ーだということをコスモは知らないんですがーが、ジョンに愛の魔法をかけるんです。そんなわけで、二人の関係は、嘘を前提として始まります。ジョンにかけられた魔法がとけるまでは、ジョンは恋をしていると思っているー、恋だと思うはずよね?そして、結婚式まで残り2日というときに、コスモは殺人の疑いをかけられるんです。だから……入り組んだ話になっています。年内の後半には出る二巻目で、ジョンは、コスモが実は魔法使いだったと知るので、話はさらにからみあっていきます。たまっていたものが爆発したとき…、それが文字通りじゃないといいんだけど。(言ったことに笑いながら)
PD:あなたはMMロマンスミステリの分野でとても成功されてますよね。書いてみたいと思う、違うジャンルはありますか?
JL:いつかはノンフィクションに移行すると思います。それが自然な流れだろうと思っています。でも理由がなんであれ、今の私は、創造のルネッサンス期とでもいうべき真っ只中にあって、アイデアとストーリーでいっぱいなんです。今後の課題は、私の頭の中をうるさく走り回っているすべてを書ける時間をみつけることです。
PD:時間といえばー、おお、あっという間に過ぎてしまいましたね。僕はあなたにもっと書いていただきたいと思っています。重ねて、話してくださってありがとうございました。
JL:ありがとう、ダイエター。とてもおもしろくて楽しい質問でした。話していて楽しかったです。
ラニヨンさんが質問に答えてくれました〜!