これからますますAIがコモディティ化し、情報の「平均値」が量産される時代を迎えます。しかし、そんな状況下だからこそ一人ひとりの身体(からだ)固有の感性を大切にし、他者との相互依存性や共通する人間性を再認識することが肝要だと考えます。
私たちの研究室では、身体知—からだを通じて生まれる知—を探究し、内なる変容、創造的表現、そして人間とテクノロジーとの意味ある関係性を築く道筋を研究しています。
「身体知」は、私たち一人ひとりがもつ「からだ」の感覚を通じて生まれる知のことです。脳や論理だけではとらえきれない深く豊かな層に根ざしています。
身体を動かすとき、相手と呼吸を合わせるとき、何かを創造するとき——私たちの内側には言葉にならない気づきや直観が立ち上がり、単なる技術を超えて「いのち」が世界と響き合う瞬間をもたらします。
この身体知は、一方で生まれながらにして備わっているものですが、同時に絶えず生成し続ける「プロセス」でもあります。さらに、個人の内面にとどまらず、社会や文化、テクノロジーとの相互作用によって変容していく特質を持ちます。
評価に縛られない自由なアートの世界に身を委ね、身体感覚のままに創作を楽しむことで、社会から求められる「何者か」であろうとするプレッシャーから解放され、「その人そのもの」としての自己を体現する道が拓かれます。
静かに目を閉じて自分の内側に意識を向けてみると、無数の身体感覚が生まれては消え、生まれては消える様子に気づきます。意識は、実は「わたし」の所有物ではなく、「いのち」そのものが息づいている証ともいえるでしょう。身体がメディア(器)として他のいのちと深く結びついていることを思い出し、自然と安らぎや他者への思いやりが育まれます。
アート・藝道、スポーツ・武道などで養われる「言葉にできない感覚」や「こつ」の熟達プロセス
日常生活における美意識・感性・自己意識の開拓
居心地やファッション、ものづくり、接客などにおける感覚の意味づけ
民藝・土着文化の継承やHuman Libraryなど、身体を通じたコミュニケーション・文化の伝達
各地の風土に生まれた叡智の継承メカニズム
マインドフルネスやセルフコンパッションを、表現芸術療法や教育プログラムに応用する試み
社会的・情動的・倫理的学習(SEE Learning)の日本的展開
観想教育やアートセラピーとの連携・実践例
観想教育や表現芸術療法のための、人間とAIの協働によるインタラクション設計
からだへの気づきを深めるウェルビーイングテクノロジーの開発
本研究室では、自らが実践者となって現象を探究する実践者=研究者というパラダイムを採用しています。身体知は「一期一会の連続のなかで、一人ひとりが異なる身体をもち、各自の内側の感覚を通して立ち上がる現象」であり、従来の客観的アプローチだけでは捉えきれない部分が多くあるからです。
一人称研究
アートベース・リサーチ
オートエスノグラフィー
当事者研究
アクションリサーチ
仏教の聞・思・修の三段階のように、文献から得る知識(聞)や論理的理解(思)だけでなく、実践を通じて体感的に得られる知恵(修)を重視し、自らの身体を使って探究を深めることを推奨しています。
ゼミ室(7D421)
一般ゼミや卒論ゼミを行うメインの学習空間です。
その他活動場所
大学教育研究施設(ウェルビーイングルーム、グラウンド、ギャラリー、近隣の公園など)も随時活用し、多角的に学びと表現を深めています。
主にこの部屋で、一般ゼミや卒論ゼミを行います。
当研究室では、企業さまとの共同研究・学術指導・受託研究を行っております。お手続きやご相談については、筑波大学産学連携本部のページをご確認の上、ぜひお気軽に松原までご連絡ください。
共同研究実績例
楽器演奏時の生体情報の活用
感性データの効率的・安全な収集方法
個人ごとの感性モデルの効率的な推定
学術指導実績例
質的調査法
一人称研究法
演劇表現を用いたワーク
当研究室では、研究活動費のご寄付や研究用物資のご寄贈をありがたく承っております。特に使途が指定されない場合、主に学生の研究成果発表の旅費や広報活動などに活用いたします。
支援者の方には、ご希望に応じて年度末の研究活動報告や、支援者同士・ゼミ生との研究発表兼交流会にもご参加いただけます。
詳しくは以下のページのContactよりお問い合わせください。