メンバー

専門:海洋生態学、沿岸海洋学

研究の興味

・沿岸の生物を介した物質循環

・エコロジカルストイキオメトリー(生態化学量論)

連絡先:komoritaアットpu-kumamoto.ac.jp("アット"を@にかえてください。)

一言:現場で食べる海産物が大好きです。我が家では、現場から頂戴する海産物のことを「お給料」と呼んでいます。

教員:小森田 智大(准教授)

業績の外部データベース

Google Scholar, Publons, KAKEN, researchmap, ResearchGate

ORCID: https://orcid.org/0000-0002-9469-5602

経歴等

2020年4月〜(現在)熊本県立大学環境共生学部・准教授

2018年8月〜2019年8月 イタリア共和国パルマ大学客員研究員

2015年4月〜2020年3月 熊本県立大学環境共生学部・講師

2010年4月〜2015年3月 熊本県立大学環境共生学部・助教

2009年4月〜2010年3月 愛媛大学沿岸環境科学研究センター・機関研究員

2008年11月〜2009年3月 北海道大学・リサーチアシスタント

学生

尾崎竜也(D1)

緑川河口干潟における基礎生産過程に関する研究

本田陸斗(M2)

緑川河口干潟におけるアサリの個体群動態に大型捕食者が及ぼす影響の定量的評価

木庭博(B4)

緑川の鮎生息域における生態化学量論

東矢有加(B4)

八代海において赤潮の規模拡大に寄与する再生栄養塩の影響

林莉紗(B4)

チヌ類によるアサリ捕食量の定量的評価

山下志乃(B4)

緑川ダム内の堆砂を用いた河口干潟の生態系再生

指導方針(2022ー2023年度版)

基本的な指導方針は以下の3つです。

方針1  教育と研究環境にかける投資は惜しみません。

方針2  学生さんも研究チームの立派な一員です。

方針3 研究テーマはなるべく希望に添えるようにします。

このような方針から、以下の教育・研究環境を提供します。

・PCおよび必要なソフトウェアを購入し、貸与します。

・書籍や文具等が必要な場合に、リクエストがあれば随時購入します。

・野外調査などには必要に応じてアルバイト代を出します。

・卒業研究は日本語論文、修士論文は英語論文として投稿します。

・分からないことがあれば、その都度相談に乗ります。

・ゼミは週1回を目処に行います。(その他、希望があれば専門書や統計やデータ解析、プログラミングについての輪読もします。)


研究室で身につく技術

当研究室で、学生さんは沿岸域の海洋生態学に関する研究を通して以下の技術のいずれかを身につけることができます。

・各種フィールド調査:干潟、漁船、調査船(場合によっては河川)、採水・採泥、動物の解剖など沿岸域で必要な基本的技術を網羅します。【使用機器:多項目水質計、バンドン採水器、エクマン採泥器、KK式柱状採泥器など】

・溶存物の測定:栄養塩類(溶存無機態窒素、リン酸塩、ケイ酸塩)、溶存無機態炭素、溶存有機態窒素・リンなど、試料採取から前処理、測定まで習得します。【使用機器:栄養塩自動分析装置、分光光度計、蛍光光度計】

・粒状有機物の測定:懸濁物や堆積物に含まれる炭素、窒素、リンなど、試料採取から前処理、実際の測定までを習得します。【使用機器:元素分析計、安定同位体比質量分析計、分光光度計、蛍光光度計】

・ベントスの同定:試料採取からソーティング、同定までを習得します。

・Rを使った統計解析(目指せ脱エクセル解析!):現代的な統計手法(多変量解析や機械学習など)の習得をめざします。また、再現可能なデータ処理の手法を習得します。

・文章作成、プレゼンテーション:卒論、修論を通してしっかりとこれらの技能を習得します。もちろん、修士まで進む学生さんには学会発表の舞台に立って、研究成果を発表してもらいます。


卒業研究のテーマ

当研究室では干潟と沿岸を主な対象としています。以下は今のところ考えられるテーマですが、実際の論文はまとめやすいようにもう少しシンプルにします。この他にもやってみたいことがあれば可能な限り相談に乗ります。無理なものは無理ですが、なるべく学生さんの興味に応じて研究をアレンジします。

干潟の研究

・砂質干潟における腐食食物連鎖の重要性の解明

砂質干潟では単位面積当たりの二次生産量を同一面積の植物プランクトンと底生微細藻類だけでは維持できない場合があります。これに対する解釈として、(A)海水は動いているので底生動物の生息域の外から有機物が運ばれるのか、それとも(B)光合成生物以外の生物が餌として寄与しているのかの2つが成り立ちます。当然、両者は同時に成り立つこともできますので、実際にはその両極のどこかに位置することになるのでしょうが、ここでは話をシンプルにするために、「底生動物の二次生産量は単位面積当たりの有機物生産量では成り立たない。」と仮説を立ててみます。この仮説が成り立つ、つまり上記の(B)が成り立たないとすれば、やはり水平方向からの移流が重要であると言えます。逆に(B)が成り立つとすれば、これまでに砂質干潟の重要な基礎生産者は植物プランクトンと底生微細藻類であると考えられてきていましたので、かなり面白い発見につながります。具体的には生食食物連鎖ではなく、腐食食物連鎖が主体であると考え、植物プランクトン、底生微細藻類の基礎生産量に加えて、バクテリアの生産量を同時に見積もります。もしもバクテリアの生産量が桁違いに高いのであれば腐食食物連鎖の重要性を認めないわけにはいきません。もしも砂質干潟が腐食食物連鎖の上に成り立っているとすれば、干潟は系全体が従属栄養的であることになります。

 

・干潟は独立栄養性なのかそれとも従属栄養性なのか?

通常、独立栄養、従属栄養という用語は種単位で使われますが、生態学では系全体を指して表現することがあります。評価方法としては、有機物を消費する・栄養塩を再生産する・酸素を消費するといった特徴を有すると従属栄養であり、その逆が独立栄養であると言えます。上記の腐食食物連鎖に関する研究とも関連しますが、干潟には様々な生物が登場しますが、総体としてどのように振る舞うのかを明らかにすることは、個々の生物の生息環境を考える上でも重要です。このテーマでは「干潟全体で考えると干潟は独立栄養的である(=系全体として考えると光合成生物の寄与が大きい)」という仮説を設けます。光条件や栄養塩などによっても変わるはずですので、具体的な方法はコア培養実験やボトル培養実験を通した酸素・栄養塩の収支を調べることで評価します。


・干潟に優占する二枚貝類の代謝過程における元素処理の種間比較

二枚貝はろ過摂食を通して粒子を体内に取り込み、成長します。その過程で餌よりも大きな糞粒と溶存無機態栄養塩を再生産します。そのため、二枚貝が高密度で生息する海域では二枚貝が生元素の動態に大きく影響します。最近、様々な文献を調べてみたところ、二枚貝の種によって排泄物に含まれる窒素やリンの比が異なる傾向が見えてきました。これは室内実験などで同一条件下で実験をしても同じような結果が出ています。近年、有明海ではアサリの代わりにホトトギスガイが干潟の優占種として出現することが増えました。もしもホトトギスガイとアサリの間で、排泄物や軟体部に含まれる元素の組成が大きく異なることが分かると、優占種の変化が海域の生元素循環に大きく影響するこになります。これまで、優占種の変化は濾過量が変わるとか、排泄量が増えると言った量的な変化のみが注目されてきましたので、同じ二枚貝であっても生態系に与える影響が変わる可能性があるという点は非常に新規性が高いです。このようなことが分かると、特定の二枚貝の種を増やすことで海域の生元素比を調整することが可能になります。


・緑川河口干潟におけるアサリ資源回復に向けた統合的研究

緑川河口域では河川を通した砂の供給が途絶えたことから、干潟域の底生動物の生息が困難な状況が続いており、覆砂による環境改善が進められてきました。これまでに網袋実験による覆砂の適地選定方法を開発し、主なアサリの減少要因が捕食または流出であることを突き止めてきました。次は、緑川河口干潟を対象とし、流出や捕食の影響を定量的に評価していきます。さらにドローンなどのUAVによりエイ類の捕食痕を定量することで、広域的なアサリの個体群動態を明らかにします。本研究ではアサリの減少要因を明らかにできるとともに、覆砂域を想定した俯瞰的な調査手法を提案できます。


カモ類が干潟生態系に与える影響の評価

緑川河口干潟を対象にした研究です。近年、カモ類によるノリやアサリへの食害が問題視されていますが、あまり定量的な議論には発展していません。彼らが干潟で何をどのくらい食べているのかを知ることがまずは先決であると考えています。高次捕食者であるカモ猟に参加して、カモの胃内容物や食性解析をします。また、GPSなどを用いたバイオロギングや定点カメラによる行動観察を行い、カモ類が干潟生態系に与える影響を評価します。


 

沿岸の研究

・有明海の生物生産に対する外海水の影響解明

有明海は河川水の影響が大きい海域であると考えられてきましたが、熊本県海域を含む南部海域では比較的塩分が高く、東シナ海から流入する海水の影響を強く受けていると考えられます。しかし、このことが生物生産にどのように影響しているのかについてはしっかりと調べられていません。季節により異なりますが、「東シナ海から入り込んでくる栄養塩も有明海の生物生産を考える上で無視できない」という仮説を立てています。このことから、「外海から供給される栄養塩の大部分が消費されている」ということが予想されます。この予想を検証するために、現場観測やボトル培養実験を行います。これは人為的な環境改変の影響を探るのではなく、元からある有明海の生物生産メカニズムの解明に寄与する研究です。

 

水俣湾における低次生産過程の解明

水俣湾では有機水銀汚染が発生し、汚染された底泥が除去された後に環境基準をクリアしました。このように環境は改善されたものの、魚や底生動物の生物量が低いことが最近になって分かってきました。この原因を解明するために、まずは植物プランクトンの基礎生産量や海底への沈降フラックスなど沿岸海洋学的な研究を進め、水俣湾における物質循環過程を解明し、低次生産過程の潜在能力を評価します。


・鹿児島湾湾口部における春季ブルーム発生機構の解明

鹿児島湾では毎年春になると植物プランクトンのブルームが発生しており、動物プランクトンや稚仔魚の重要な餌になっています。この海域では、黒潮が鹿児島湾に流入することで湾内の栄養塩が表層に供給されることで植物プランクトンのブルームが発生すると考えられています。既存のデータ解析や船舶による調査を組み合わせて、高い生産を支えるメカニズムの解明を目指します。

共同研究者(アルファベット順・敬称略)

Daniele Nizzoli (Unversity of Parma)、比嘉 紘士(横浜国立大学)、藤井直紀(佐賀大)、速水祐一(佐賀大)、一宮 睦雄(熊本県大)、郭新宇(愛媛大)、梶原 瑠美子(寒地土研)、小林淳(熊本県大)、小針 統(鹿児島大)、久米 元(鹿児島大)、黒木 善之(熊本県水研セ)、Marco Baritoli (Unversity of Parma)、 門谷 茂(北大)、中野 善(西水研)、岡村 和麿(西水研)、折田 亮(佐賀大)、Pierluigi Viaroli (Unversity of Parma)、田井 明(九州大)、杉本亮(福井県大)、高巣 裕之(長崎大)、高橋 徹(熊本保健科大)、堤 裕昭(熊本県大)、内川純一(熊本県水産)、梅原 亮(広島大)、 山北剛久(海洋開発機構)、山下 博和(熊本県水研セ)、山田 勝雅(熊本大)、山田誠(龍谷大)、吉江直樹(愛媛大), Wachira Jaingam (Kasesert Univ.)

過去の所属メンバーはこちら

2016年以降の進路

進学

熊本県立大学大学院(複数)

就職

大学院(修士課程・博士課程)

西日本技術開発株式会社、(公財)くまもと里海づくり協会

学部生

熊本県(水産)、株式会社アットリーフ、株式会社生科研、南九州交通共済協同組合、熊本不二コンクリート工業株式会社、株式会社イノス、株式会社コミクリ、株式会社アウトソーシングテクノロジー、農業協同組合、八代漁協、日研トータルソーシング株式会社、株式会社アプリケーションスペース、アルプス技研株式会社