療育とは……
教育とは……

療育&教育……同じ漢字【育】が使われる言葉ではありますが、中身は別物であると理解してください。

療育とは端的に表現するなら児童が持つ才能やできることを【見つけ出し、引き出し、伸ばすこと】と理解したほうがわかりやすいのです。

対する教育とは知識や知恵を【与えること】とイメージしてみてください。

言葉は似ていても、内容は全く異なっています。

療育は継続的に支援することで、個々の特徴や特性。長所・短所を見つけ出し、社会に対する適合性、順応性、協調性につながる方向性を定め、児童に適した支援方針をチームプレーで理解・推進していきます。


さまざまなアプローチ
 
教育とは、障がいの有無に関わらずに、その子の成長を促すための取り組み全般のことを言います。
「療育」とは、障害のある子どもたちが、社会的に自立できるようにするために行う治療・教育のことです。 子ども達が抱える困っている特性をできる限り改善し、生かせる長所は伸ばしていく理解・支援を指します。
 もとは肢体が不自由な子どもを対象としたものでしたが、今は発達障害などその他の障害に関しても支援が行われています。発達障害のある子どもが増えている、とは一概には言えませんが、保育園や幼稚園にはいわゆる「気になる子ども」すなわち発達において何らかの心配がある子どもたちがいるのも確かです。
 発達障害に関する認知度も近年上がり、保護者の方の意識も高くなっているさなか。発達障害と向き合い、子どもがより自立した生活を送れるように支援するために、療育の必要性はますます高まっていると言えるでしょう。
  ひとくちに療育と言っても、さまざまなアプローチ方法があります。
 ① 応用行動分析学(ABA)
 行動分析学とはその名の通り、人間や動物の行動を分析する学問のことです。 環境を変えることでどのくらい行動が変わったかを調べることで、行動の「原理」や「法則」が導き出せます。そして法則がわかれば、おのずと行動の「予測」「制御」が可能になります。 この成果を問題行動の解決に応用することを、応用行動分析と呼びます。 この応用行動分析学をで子どもの行動を分析し、問題行動の原因を見つけることで、それを起きにくくしたり新しい行動を学習しやすくしたりする指導の工夫が可能になります。
 ② TEACCH
 TEACCHはアメリカ・ノースカロライナ州で実施されている、自閉症などのコミュニケーションに障害がある子どもやその家族に対する包括的対策プログラムの名称。 自閉症の発達過程を矯正していくことより、一人ひとりの優れた部分を発揮できるように支援していくことに重きを置いたアプローチです。 「パーテーションを立てて何をする空間かを明確にする」 「文字や絵カード等を用いてスケジュールを提示する」 といった『構造化』が大きな特徴で、これによって子どもに何をするべきかをわかりやすく伝えることができます。
 ③ 認知行動療法
 
認知行動療法とは、人間の認知(ものの見方、受け取り方)に働きかけて気持ちを楽にしたり、行動をコントロールしたりする精神療法です。 人はストレスを感じるとネガティブになって、問題解決が難しい状態まで心の状態を追い込んでしまいがちです。認知行動療法ではそうした考え方のバランスを取って、ストレスに対応できるようにしていきます。 特に自閉症スペクトラムの子どもの場合、不安障害を併発しているケースも多いもの。そうした子どもは特に、生活のリズムを振り返ったり認知のゆがみを修正したりしながら、自助力の回復や向上を目指すことが望ましいです。
 ④ SST(Social Skills Training)
 SST(Social Skills Training)とは「生活技能訓練」または「社会生活技能訓練」と訳される、認知行動療法に基づくリハビリテーション技法です。 社会生活を営むために対人関係を良好に維持する技能を身につけさせ、ストレス対処や問題解決がうまくできるようにすることを目的としています。 日常で起こりそうな場面をロールプレイングで疑似体験する中で、気持ちをうまく伝えたり、相手に反応できるようにトレーニングします。
 ⑤ 箱庭療法
 箱庭療法とは、部屋の中にあるおもちゃを自由に箱の中に入れていく心理療法の一種です。 子どもに自由な表現をしてもらうことによって、心の状態を表し、理解や支援につなげていくことができます。 子どもにとって、複雑な概念を理解したり言葉を組み立てて話したりするのはとても難しいことです。 むしろ遊びの中で非言語的な自己表現をする方が有意義な治療だ、とする意見もあります。 絵を描いたり音楽表現をさせたり、物語を作ったりといった創造体験を通じて自己表現させ、コミュニケーションを図る遊戯療法のうちのひとつに数えられます。
 ⑥ 音楽療法
 音楽を聞いたり、楽器を奏でたり、歌ったりすることで、生活の質の向上や、心の解放を行っていきます。音楽療法士が定期的に施設を訪問することもあります。
 ⑦ 作業療法(OT)
 日常の生活動作がスムーズにできるように、手先を使った遊びや体操、レクリエーションなどを通してトレーニングしていく方法です。
 ⑧ 理学療法(PT)
 これは主に身体障害がある場合に多く用いますが、運動療法や、温熱、マッサージなどの物理的な方法で身体機能の改善を図る方法です。


療育の語源は……
 心身に障害をもつ児童に対して、社会人として自立できるように医療と教育をバランスを保ちながら並行してすすめること。東京大学名誉教授の高木憲次(1888―1963)によって提唱された概念で、
「治療をしながら教育する」ことがたいせつであるという意味合いが込められている。
 すなわち「療」とは医療あるいは治療を意味し、「育」とは養育や保育もしくは教育を意味する。「療育」は児童福祉法にもうたわれている概念で、ここでは長期療養を余儀なくされた児童などへの療育に対する指導や公費給付などについて規定されている。
 療育関連の公的給付としては、診察や治療・看護など医療全般ならびに学習、および療養生活に必要な物品が支給される。また知的障害者に対しては、福祉事務所で指導を受けたのちに療育手帳が交付され、決められた障害の等級に応じて給付金や障害基礎年金が受けられる。なお療育センターなどの名称で、療育診療、児童発達支援に携わる施設が各自治体に設置されている

放課後等デイサービスとは……療育の場
 保護者様からよく受ける質問は「子供の学習も見ていただけますか!」「ここに通うと勉強ができるようになりますか!」といった相談ですが、療育の場である放課後等デイサービスは学校の延長ではありませんし、学習塾でもありません。
 
療育とは【健常児に近づけること】ではなく、子どもが日常生活を送りやすくするための方法を自身に学ばせること。その子が成人となって巣立つときに必要とされる社会性、生活力、ルール、モラルを少しでも多く身に着け、社会に溶け込むための術を習得する場なのです。
 学力の向上だけを欲するなら「学習塾」が味方となってくれます。