あなたはしかることと、怒ることを混同していませんか?
叱る」と「怒る」の違いは?
学校や保育園などから帰ってきた子が、「今日、先生に怒られた」と言うことってよくありますよね?
けれどもこの時、子供が言った「怒られた」は正しい言い方、使い方なのでしょうか?
果たして先生は本当に「怒って」いたのでしょうか?
今回は、「怒る」と「叱る」の違いについて、考えてみたいと思います。
「怒る」と「叱る」の意味の違い
2つの意味をそれぞれ調べると……
「怒る」は、自分の不満や不快な感情を外に出すこと……
「叱る」は、相手によりよい方法を教示すること…… となっています。
つまり、
「怒る」は自分の感情の表現方法で、
「叱る」は相手のことを考えての行動ということになります。
同じ場面で使いそうな言葉ですが、どちらの言葉を使うかで全く意味が変わってくる言葉です。
先生は、「怒っていた」のか「叱っていたのか」では、冒頭の文章について考えてみましょう。
子供が家に帰ってきて、「先生に怒られた」と言ったとします。
この時の先生は、「怒っていた」のでしょうか?それとも「叱っていた」のでしょうか? こどもの行動、先生の指導の仕方、その時の状況を聞かないと「怒られた」のか「叱られた」のかはわかりません。
危険なことやいけないことをやって先生に注意されたのか、何もしていないのに先生がイライラしていたのか、それによって家庭での声かけもかわってきます。
「それは危ないから、もうやってはいけないよ」
「先生、ちょっと疲れてイライラしてたんじゃない?」
の2つでは、全く違ってきますよね。
学校であっても保育園でも幼稚園でも、先生は基本的には「怒って」はいけませんね。子供たちによりよい生活の仕方、生き方を伝えていくことが先生の役割ですから。
家庭でも「叱る」ことが大切
保育・教育現場では「叱る」ことは大切です。
では、家庭ではどうでしょうか?
使ったものを片付けない
ジュースをこぼした
いつまでも寝ないで遊んでいる
下の子をいじめた
もちろん「叱る」ことは大切ですが、ときには「怒り」たくなることもあると思います。
ずっと一緒にいるからこそ、イライラすることもあるだろうし、自分の感情を爆発させたくなる時もあるでしょう。
だからと言って、こどもに対してイライラをぶつけるのはよくないですね。
「怒る」というのは、子供が自分の言った通りに動いてくれなかったときなどに、自分が腹を立てていることを子供にぶつけてしまうこと。 八つ当たりのような感情的なものです。
「叱る」のは、相手をより良い方向に導こうとするために注意やアドバイスをすること。同じ間違いを繰り返さないために話をすること。道筋を立てて話ができる、論理的なものです。
そんな時は、
こどもには「叱って」
一人で「怒る」ことをおすすめします。
「使ったあとはきちんとしまっておかないと、大切なものがなくなるよ」と叱ったあとで、
どこか一人になれる場所で、大声で文句を言って感情を発散させる。
「叱る」ことは相手がいないとできませんが、
「怒る」ことは一人でもできます。
一人でできることに、わざわざこどもを巻き込むことはありませんよね。
先日ファミリーレストランで、母親と小学校高学年らしき女の子を見かけました。どうやら、お母さんが娘さんの塾の成績についてかなりご立腹の様子。
「あなたは何を考えているの? なんのために塾に行かせていると思っているの? この前のスイミングのときもそうだったけど…」と、一方的に強い口調で女の子に話をぶつけていました。しかも、塾の話をしていたのに途中からスイミングの話まで出てきて、お母さん自身が結局何を言いたいのか分からない状態になってしまいました。 周囲の大人が聞いても、話の趣旨が分かりませんでした。
これは、ただ自分の怒りの感情を子供にぶつけて怒っているだけです。
次に、子供を叱るときにやってはいけないことや、上手な叱り方についての話です。
こんな叱り方はNG!
■人間性を否定する
「どうしてあなたはそんなにダメな子なの」 というような言葉は絶対に使ってはいけません。子供は「自分はダメな子供なんだ」と自信をなくすだけです。
■兄弟や友達と比べる
「どうして、○○みたいにできないの?」 「○○はこんなことができるのに!」と他の子と比較をすると、反省するどころか子供は傷つくだけです。
■過去の話をもちだす
これは大人の喧嘩でもありそうなことですが、「この前のピアノのときもそう言ってたでしょ」というように、過去の事例を持ち出すのは良くありません。子供は覚えていない可能性があるので、納得してくれません。
■友だちの前で叱る
これは絶対にNGです。反省よりも恥ずかしい気持ちが先に出てしまいます。
こういった方法は、子供の心を傷つけるだけです。 大人でも、ご主人や奥様に同じことを言われたら辛いでしょう。自分が言われたときのことを想像してみて、言葉を選んでください。
それではどんな叱り方なら効果的で子供のためになるのでしょうか?
●子供のためになる叱り方のコツ
■その場ですぐ叱る…過去のことを持ち出されるのは、大人でも子供でも嫌なものです。
■短く叱る…長々と話をしても、子供は混乱しますし、疲れてしまいます。
■叱った後は、一旦子供から離れる…子供にも一旦自分一人で考える時間を与えましょう。
■人に聞かれないように叱る…子供のプライドを傷つけないようにしましょう。
■大きな声ではなく、静かに低い声で叱る…大きな声を出すと子供は委縮して、話の内容を冷静に理解できなくなります。
■子供の体に触れながら、目をしっかり見る…コミュニケーションをとりながら言葉を発すれば、より伝わりやすくなります。
■本当に大事な話のときは、しっかり子供と会話をする …一方的に自分が話すのではなく、子供の意見も聞きながら会話形式で叱りましょう。
■叱りすぎたら、親が子供に「ごめんなさい」ということも、ときには必要です。
まとめ
子供は、いくつになっても「してはいけないこと」を、し続けるものだと思います。それを抑制するには「してはいけないこと」に「こうしたらいい」という他の方法があることを教える必要があります。それを伝えるために必要なことは、「怒ること」ではなく「叱ること」です
保育、教育、子育てでは、「叱る」ことはとても重要なことです。
だからこそ、「怒る」と「叱る」の違いを日頃から意識して、子供とかかわるようにしましょう