論文あとがき
2022
論文あとがき
2022
今回の論文で、4種を新種として日本と台湾から記載した。そのうちの1種、オオヒゲルリカッコウムシは、分布が日本(青森、山梨、長野)、台湾(南投、花蓮)となっており、国内からの追加記録が期待される。2020年にオオキバミイロカッコウムシ、2022年に本種を記載して、西のオオキバミイロ、東のオオヒゲルリと、東西2大美麗珍種カッコウムシと個人的に位置付けている。こんなに良い種を記載できて、標本提供、博物館タイプ標本検視、個人的な情報共有など協力くださった方々には感謝しかない。
オオヒゲルリの種小名の命名には悩んだ。この種について教示くださった方がいること、採集者が複数名いること、両者どちらも今回の記載には欠かせない存在(もちろん研究者自身も、、、)。優柔不断と思われるが、貢献度なんてものはつけられない。どちらかに献名すると、なぜ自分に献名ではないのか思う方もいるだろうなと考え、献名は避けた。少なくとも自分が採集者または情報共有くださった方の立場であれば、そのように考えてしまいそう。ということで、無難かと思われるが、属内での分布に関連して、ラテン語で北方の意である"borealis"と命名した。和名については、オオキバミイロに似せて付けた。来年の干支が兎年なのでウサミミカッコウムシみたいな時勢にあやかった和名も思い浮かんだが、ウィットのある和名はあまり好きではないので却下とした(勝手に呼ぶ分にはいいと思うけれども)。台湾からの3種については、悩まずに付けられた。台湾のタマムシ研究者への献名で"ongii"。こちらはホロタイプ1個体のみによる記載なので、順当な献名で後ろ指さされる心配もない。あとの2種は雄触角の特徴から"cervus"と"grandis"。この2種は、Teneropsis属に含まれる種と触角形状が大きく異なるが、他の形態形質から本属の種であると考えている。これにより、兼ねてからの目標であった自己採集個体に基づく新種記載を達成できたのも満足。
2023年は、おそらくシノニム処理の論文執筆となる。これまでの論文の内容を振り返ると、新種記載➡シノニムetc➡新種記載、のような執筆サイクルになりつつある。とりあえず論文発表、めでたし、めでたし。
論文公表後、FBでformosanusの色彩変異を裏付ける生態動画がアップされていた。
※余談となるが、このグループは別の研究者により調べられるはずだったが、紆余曲折あり、手元に標本が戻ってきたこともあり、数年前から研究を開始した経緯がある。
アリバチ擬態のTillicera属の2新種記載だけでなく、全既知種の標本写真と検索表を付けた。本属の種は、見てくれが良いので、展脚、撮影していて楽しかった。Twitterで「ゆる募」の標本提供依頼すると、ありがたいことに連絡をいただけた。感謝感謝。
Zookeysへの論文掲載が実現し嬉しかった。APCは共著者のリタイア割なるものと折半してくれたことに助けられた。そうでなければ、「ヒェッ」な金額だった。感謝感謝。