論文あとがき
2020
論文あとがき
2020
1985年の原色日本甲虫図鑑第3巻で"記載"されたカッコウムシについての論文。とある種のタイプ標本について、当時EUMJになかったためその行方を追ったのを覚えている。
珍奇なホソカッコウムシEgenocladiscus属の新種記載論文。大家のR博士、W博士、両名とも、メールでこれカッコウムシ?といった反応であった。台湾現地の複数人の標本に基づき記載。採集者それぞれの名前の頭文字をとって、アナグラムにして種小名にしようとも考えたがうまくできず、結局無難な名前にした。争いも起きていないため、良かったと思っている。
2020年5月某日、ある方からメールが届く。日本産のとある既知種に似ているのけれども、見て欲しい標本があるからとのこと。後日、写真を送ってもらうと、明らかに日本未記録種。見覚えのある体色だが、どこで見たかすぐには思い出せず。平日仕事終わりだったが、とりあえず最近出た論文を片っ端から調べていくと、2014年の論文にそれらしい種の標本写真を見つける。該当属が少なくとも日本未記録であることをメール。該当属は1種しか記載されておらず、原記載から記載種とは別種であることは確定したが、他属で記載されている可能性がある。ある程度調べても未記載種でほぼ間違いないと考えたが、念には念を入れて、海外研究者へ問い合わせし、新種であると結論付けた。同年12月末日、無事に新種記載論文が公表される。学名はElasmocylidrus takedaorum、和名はオオキバミイロカッコウムシ。和名は少し悩んだ。吉備の国に因んだ古めかしい和名や鬼〇の刃の流行真っ盛りだったため採集地付近の鬼の逸話に因んだ和名を考えたが、見てくれがよろしいので、奇をてらった和名は無粋と考え、結局外見に因んで付けることにした。論文公表の告知をするとSNSで反響があり、月刊むし"甲虫界"冒頭でも、美麗種の驚きの発見との触れ込みで紹介された。
記載して1か月後、2021年1月某日、別のある方からオオキバミイロカッコウムシの追加記録があるとのメールが届く。記載された岡山から少し離れた兵庫からの記録で、採集された時期も岡山で採れた時期とほぼ同じであった。全くもって野暮であるが、もしこの方からの連絡が先だったらと考えると、人の縁について思慮せざるを得ない。同年5月末日、月刊むし6月号の短報に追加記録報告が掲載された。
さらに、2021年9月末日、今度は韓国から記録される。検視標本は2007年と2020年に採集されたものだった。全くもって野暮であるが、(省略)。実は、web検索で本種の海外産と思しき標本画像が引っ掛かっていたため、日本以外に分布していることは十分ありうると記載前の時点で想定していた。画像の投稿者は分からずじまい(※)だが、今度は東南アジアから記録されるのではと淡い期待を抱いている。さらには生態について詳しく調べられることも期待される。
2023年6月、本種の生態的知見に関する短報原稿の校閲依頼が舞い込む。短報にはもったいない内容だったため、原著論文として投稿するよう提案した。著者間で数回の修正を重ね、9月30日、さやばねニューシリーズ51号に論文として掲載された。
2023年10月、研究倫理上、仔細伏せるが、※の出処が判明。やっぱり運がいいのだろうかと思わざるを得ない。
2024年12月出版の論文にて、中国から記録される。論文あとがき2024へ。
日本・台湾産ホソカッコウムシの再検討論文。標本写真、形態図、分布図の図版はそれなりに良い形にできたと感じている。Twitterでも反響がそれなりにあったため、カッコウムシの認知度アップできたかな?AEMNPに載せてもらい、現時点(20240811)でアクセス数No.1であったが、洞窟種の論文に抜かれていた(20241228)。こういうのは数字じゃないよね。。。
Gastrocentrum属に似るが、なんか違うな?と思う標本をEUMJから見つけたのがきっかけ。Roland博士と初共著論文となり、Picの標本について勉強になった。
宮武先生への個人的な追悼論文となる。ご存命のうちにある程度書き上げており、投稿前まであと少しという段階で訃報を受けた。種小名はもともと献名であったため、後悔の念が残る論文となる。