Apple Distinguished Educator
福岡市立福岡西陵高等学校
国語科
2020年2月27日(木)の夕刻に職員室で同僚のスマホに飛び込んだ突然のニュースでした。政府による臨時休校の要請。
えっ、聞いてないんですけど…。隣で管理職も同じリアクション。じゃ、仕方ない。
帰宅して考えました。休校措置に備える時間は1日。準備不足で休校突入がほぼ決まった。まずは、生徒に生徒・保護者と学校との連絡体制を整えておく必要がある。
幸い本校は1つのLMSを導入(普段ほとんど使われていませんが…)していたので、生徒のIDとパスワードの確認や保護者のIDの再配布を行えば体制は整います。細かな連絡は休校に入ってからでも何とかなる!
しかし、LMSを整備していなかった学校はどうなるだろう?
先生たちも慌てたり、不安だったりするだろうか?準備不十分で休校に突入した結果、悪くいうと「子どもがほったらかし」になってしまわないだろうか?
そう考え、自分が使ったことのあるLMSをいくつかSNS上で紹介してみました。とにかく時間が無いので児童生徒にメールアドレスも不要で無料のものを列挙。急げ、急げ、朝までに多くの焦っている先生に届いてくれ。
翌朝に数名の先生から直メッセージで問い合わせを頂き、返信しました。自分も勤務校の体制を整えながらバタバタと過ごし、最後のHRは「とりあえず、次はオンラインで会おうね」と生徒に伝えて終了。
生徒は「先生、クラス写真撮ってください」「これで終わりなんて、寂しいです…」「今までありがとうございました」
いや、まだ春休みじゃないし…。勝手に終えないで…。
生徒へのサポートを色々と続けようと思いました。
SNSを見ると、素敵な情報がたくさん飛び交います。自学教材、期間限定無料サービス、便利なツールの使い方解説…。とても、とっても、すこぶる、ありがたい。でも、ICT導入が進んでいなかった学校では、何から手をつけていいのか、逆に混乱してしまうかもしれない…。やったほうが良いことや、気をつけること、役立つものを整理して並べたサイトがあれば、役に立つかもしれないなと思い、本サイトを創り始めました。
こんな時なので、“チャンス”という言葉は合わないと思いますが、今回の臨時休校措置では多くの先生、保護者、子どもが、学びの姿を見直す機会になるのではないでしょうか。その折に、このサイトがこれから学校にICTを導入しようとする先生を応援できると幸いです。その結果として間接的に、先生の目の前(今は学校に来れないけれど…)の児童生徒の学びのサポートにつながると幸いです。
そんな凄いことを私1人の力では到底できないので、尊敬する仲間(ADE)たちに声をかけ、協働しています。
力を借りているのではありません。一緒にこのサイトを創っています。今日もZoomでミーティングをしたのですが、初めて試す機能にワクワクして、みんなでワイワイと楽しみました。
そう、私たちも初めからICTが使えるのではありません。初めてを楽しんでいるのです。どうやって授業で使っていくか、その時の子どもたちの反応を考えてワクワクします。もしかすると、こうやって自分が学ぶことを楽しんでいるだけかもしれません。
でも、その姿を子どもたちに見せてあげるのも大切だと思いませんか?
(その辺りのことは、和田先生にバトンタッチです!)
2020/03/07 吉本 悟
Apple Distinguished Educator
東京成徳大学中学・高等学校
英語科・ICT活用推進部長
こんにちは、Apple Distinguished Educatorの和田です。普段は英語科の教員として都内私立中学校・高等学校に勤務しています。
2020年3月。今、教育現場は未曾有の局面を迎えています。
目には見えないコロナウィルス感染という脅威。いつまで続くのか先行きの見えない休校措置。
本来は多くの感動や涙が生まれるはずであった卒業式や、様々な学校行事の中止や規模縮小。どんよりとしたなんとも言えない閉塞感が日本中を覆いつくしています。
そんな中、SNSやテレビのニュースをなんの気無しに眺めていると、日本全国の先生方をはじめたくさんの大人たちが力を合わせて、ただ退屈した時間を過ごしているであろう子供達に向けて何かできることはないか。知恵を絞り出し、行動に移している様子がたくさん目に入ってきました。
「学校に来れないのならオンラインで職員室と生徒の自宅をつなぐのはどうか。」「学習課題をメールで配信するのはどうか。」「子供達のために学習教材だけでなく、マンガなどの書籍を無料開放しよう。」など、日に日に学校に行きたくても行けない子供たちへのサポートの輪が広がっています。
そして、今回声を掛けてくださった吉本先生の熱意。
顔面を平手打ちされたような衝撃でした。
「お前はグズグズ何してる?今こそ何かアクションすべき時なんじゃないのか?」と。
幸いこの数年間、私自身様々なご縁もありiPadなどテクノロジーを使った英語教育の授業実践をたくさん積むことができました。
今年4月から始まる予定のGIGAスクール構想に向けて、ICT機器を初めて触る先生方でも簡単に真似してもらえるように自分の取り組みをなるべくわかりやすくまとめて発信し始めた最中でしたので、「ICT機器を使って何か子供たちと素晴らしい授業や活動をしてみたい!」と考えている先生方のサポートなら今回自分でもできるのかなとぼんやり考えています。
この3月という期間は普通でしたら学年末の成績処理や新年度のクラス分け、指導要録を書いたりする作業が私たち教員のメインの仕事です。
普段より少し早めに指導要録の記載を終わらせて、その分浮かせた時間でクラスの生徒たちとテレビ電話でホームルームをしてみたり。
休校期間が明けて、新年度にいろんな面白い授業に挑戦するために今の時期は無理をせず、その代わり普段読めなかった本をたくさん読んだり、映画を見たりしてインプットに時間を当てたり。
この困難な状況のなか、今私たちは目の前の生徒たちのために何ができるのか。
一緒に考えて、行動に移して行きませんか?(もちろん自分に合ったペースで!)
ICT機器と教育の面については私たちがサポートします。
子供達へのサポートの輪をどんどん広げていきましょう、よろしくお願いします!
(芥先生、次につなぎます!)
2020/03/07 和田 一将
(ICT機器を使った授業作りの始め方・iPadを使ったクリエイティブな授業作りの紹介はこちら)
Apple Distinguished Educator
三田国際学園中学・高等学校
数学科
初めまして。和田先生と同じく、東京の私立中高で数学科の教員をしている芥と申します。今回のこの状況はついに先週にはアメリカまで飛び火した報道もあり、世界中で対応に追われる人、苦しんでいる人が今なお増え続けている状況にあります。皆さんは心身ともに無事で過ごされているでしょうか。
このような体験は以前にもありました。忘れることのできない 3.11 です。あのときも交通機関は混乱し、ニュースで現場のことを知って本当にショックを受けました。あのときの生徒たちも気丈に振る舞っていましたが、表情の裏では相当な不安を抱えていたと思います。今回も本格的な対応に関する報道が始まった頃から、生徒たちは非日常感を持ち、そわそわしていく様子が手に取るようにわかりました。この生徒たちもまた、今までと変わらない態度を取りながらも、休校・試験の中止・修了式・卒業式も中止や縮小、春休みは?新学期は?部活は?どうなるのかなど、いつも通りでない上に見通しも未定であるというこの状況に心理的不安が募ってきていると思います。
さらに得てしてこのような状況の時は、見たくなくとも自然にテレビや SNS から不安を煽るようなニュースが入ってきてしまいます。情報収集はもちろん大事ではあると思いますが最低限に止め、不必要にメディアに触れることから身を守ってほしいと伝えています。また、このような時は一人の時間の確保すること、それと同じように適度に人と関わることがともに重要なので、Zoom で HR を実施しています。必要に応じて希望者向けに Zoom で授業も開催し、会話や学習を楽しむとともに心理的不安を取り除けるといいなと思っています。
ここには、こんな状況だからこそ「みんながハッピー」であるために、我々に何かできることはないだろうかと思っていたときに、吉本先生が旗揚げしてくださって、何か手伝えることはないかと参画させてもらいました。
このような状況に限らず、生徒たちには無限の力が眠っていて、それを引き出すことこそが教育の使命だと思います。生徒たち自身は自分の力を見てくれる安心・安全の環境があり、さらに引き出す手段やツールやタイミングがあれば簡単に大人を超えていきます。そのような現場に容易に出会うことができたのもテクノロジーのおかげです。もちろん手段は様々あると思うのでこれに限ることはないとは思うのですが、テクノロジー(=思考のエンジン)を使えば容易に誰でもその力に出会うことができると思っています。
私がいつも生徒に聞いていること、と同時に自分に問いかけていることは「Why Math?」です。我々はどうして学ぶのか。その答えを探すために、先生も生徒もテクノロジーによって不安を吹き飛ばして、ワクワクして、強みを引き出して、一緒に学んでいきましょう!
2020/03/09 芥 隆司
iPad によるクリエイション の授業事例など
Apple Distinguished Educator
立教小学校
英語科
休校の決断をいち早く(首相の発言の前に)決めた東京都の立教小学校という男子校(日本に3校しかないんですって)で英語科専科教員をしています。
休校⁉︎
2月26日(水曜日)に学校決断し児童と保護者に伝達。
28日(金曜日)から1週間の休校となりました。
休校が決まった日、私が副担任をしている6年生は静かでした。その時点では、「1週間後に会いましょう。春休み中に休校期間の補講をします。」という通達でしたので、比較的平然と受け入れていたのかもしれません。その週までインフルエンザでの学級閉鎖が数クラスありましたし、まぁ、そういうこともある、くらいの反応だったのかもしれません。そして、教員陣も同じ感覚であったと思います。
ある子どもは、2月26日水曜日、下校中にこわもてのおじさんに、「おい、立教か。ニュースで見たぞ。いち早く休校措置か。素晴らしい学校だ。本当に子どもたちのことを思う学校の英断だ。誇りに思え。」と言われて嬉しかったそうです。
あれれ、もう会えないの?
しかしながら、28日に子どもたちを帰したあとに、首相のあの発言があり、これはもしかしたらこのまま4月を迎えるのかな?と、はじめて焦った子どもたちと教員たちがいたのではと、想像しています。
そして3月4日水曜日に、終業礼拝と卒業礼拝の変則的実践、荷物の持ち帰りについてなどに関する執行部の決断があり、緊急メールがまわり、各保護者児童に周知されました。
そして3月9日。本当ならば子どもたちと再会する予定のこの日に臨時教職員会議がオフピーク時にもたれ、成績処理について、そして今後の動きについての報告があり、質疑応答の時を持ちました。各家庭に金曜日に手紙を発送すること、その際学年通信を同封して、もろもろ伝達を徹底すること。終業礼拝は3学年づつ行い、そこで通知票を配布すること、そのため成績処理関係のうんぬんかんぬんはいついつまでに、などなどが確認されました。
更に教職員はよほどのことがない限り出勤はせぬように、との学院の強い要望が伝えられ、私も終業礼拝と卒業礼拝の日以外は1日だけ出勤して、せねばならない仕事をやっつけようかなと、スケジュール帳と睨めっこをしています。
本題。今何ができるか。
前置きが長くなりました。
小学校英語科専科として、この休校期間何をしているか、本題に移ります。
3年生のロイロノートのチェックとコメント。
5、6年生のSeesawに寄せられる投稿のapprove。定期的にフィードバック。
以上です。
実は日常の延長で、平常営業です。
この時期(年度末)に、新しい課題は出さないの?テストは?積み残し、無いの?ツッコミどころ満載ですね。
課題の出し方
新しい課題は出しません。せっかくの休校。学校がある時には出来ないことやって欲しいと思います。けん玉のコツ教えて。新しい漫画キャラ描いたから、名前募集。ハムスター飼ってる人に聞きたいあれやこれや。暇だ、なんか良い本無いか?子どもたちが勝手にやっています。
期末テスト?
テストはしません。小学校英語科なので。知っていることを、どう表現に使用するか、それは少なくとも小学校段階で、数値的にはからなくて良いと思っています。5年生には、もっとシェイクスピアに詳しくなって私に教えてもらいたいと思っていますが、私はといえば、シェイクスピアのテストを作れるほど知識があるかといったら、恥ずかしくてここには書けません。
積み残し⁉︎
積み残し。だらけです。小学校英語ですから、もともと積み残ししかありません。というか、一定速度で特定集団に、何か均質なスキルや知識を積もうと思ったら、この仕事はうまくいきません。それよりも、教わるのを待たずに、自分から言語を獲得する意志こそが外国語習得への近道です。そのモチベーションを一人ひとりにカスタマイズするのが私たちの仕事で、一斉授業的chalk and talk的な授業は、デザインとしてなりたたないのだと、あきらめているのです。
ですから、平常営業。
いちばんの心配…
しかし。学校に行かなくて良くなった今。自分でセルモーターを回せない子どももいて、それが、一番心配です。課題を与えられて、それを「そつなく」「こなす」ことしか学んでいない子が、残念ながら、うちの小学校にもいます。そういった受け身の子どもたちが、エイジェンシーを発揮するために私たちができることを、教壇に立てない今(そもそも教壇には立たないのですが)こそ、真剣に考えています。
ICTは、確かに、今できていることをより効率的に、量的に提供することに長けています。しかし、これまでのteaching主体のインプットペースの授業のあり方ではなくて、learning主体の、学習者のアウトプットペースの教室のあり方を本気で模索しないといけないと思います。その地平を目指さない限り、ICT導入は宝の持ち腐れになるということを、このような事態にあってこそ考えたいと思います。
追記(一緒に学びましょう!)
私が勤務している立教小学校ではiPadを3年生から6年生まで、一人一台持たせています。毎日持ち帰らせて、充電をして学校に持ってくることを課しているような学校です。そのことによる大変さはたくさんありますけれど、iPadだからこそできる自己表現のツールとしての活用を、子どもたちに楽しんで欲しいと思っています。
今回はロイロノートとSeesawというサードパーティーのサービスについて言及していますが、iTunes Uやスクールワーク、そしてKeynote、GarageBand、iMovie、さらにはプログラミングを学べるSwift PlaygroundsといったApple純正の優れたアプリを活用した授業は、いつでも立教小学校でオープンにしております。お気軽にh.j.amano@me.comまでお問い合わせください。こうした優れたテクノロジーの可能性を、そして、学校に、教室にわざわざ集める本当の理由を、一緒に深め学びましょう!
翔んで関西。荒谷先生にバトンタッチ!Agencyについて深めてください!
2020/03/09 天野 英彦
Apple Distinguished Educator
同志社国際学院初等部
PYP Coordinator
同志社国際学院初等部でPYP Coordinatorをしております荒谷です。IB(国際バカロレア)のPYP(初等部教育プログラム)認定校で、探究型学習のカリキュラム統括を行なっております。
休校要請への対応
。日本中の学校同様、2月27日に出された要請を受け、翌日28日には勤務校でも子どもたちが教科書等を持ち帰り、かなり慌ただしい形で3学期を終えました。本校では学校のホームページに保護者専用の箇所があるため、週明けに全学年宿題の案内を出しましたが、保護者に対してはメール配信システムを活用し、休校要請が出る前からこまめに情報を流して対応をしてきたため、大きな混乱はなかったように思います。授業とは直接関わりのないことですが、こういった連絡体制もICTがあるからこそ実現できることです。
宿題が出されたけど...
多くの学校では、教科書の内容をまとめたり、ドリルやプリントの問題を解いたりするような宿題が出されたと思います。夏休みと同様の1ヶ月以上の休みが急に決まったことで、その対応に追われ混乱する様子も話題となりました。ドリルやプリントを準備するにも限界があり、書店では総復習の問題集が例年以上に売れていることがニュースになっていました。
その様子を見ていて感じたことは、「出されている課題が知識の確認に限定されていること」に対する危機感でした。こういった長く外出も難しい期間だからこそ、習った知識を活用したプロジェクトやパフォーマンス課題に取り組んだり、教科の内容とは離れて、自分の好きなことや問題に感じていることを追究したりする時間にできないでしょうか。
こんな時だからこそ!
プロジェクトやパフォーマンス課題の場合は教科の学習で得た知識を活用できるような課題です。プリントやドリルで復習したり習ったものをまとめたりしているだけでは、その知識や技能が実生活にどのように関わっているのか、何処で活かすことができるのかが分からないことがあります。そんな場合、児童・生徒に学習する必然性や動機は生まれるでしょうか。課題や好きなことについて考えを深めたり究めたりしようとする探究的な過程こそ、学校がなく多くの時間自宅で過ごさないといけない時期を有意義な時間にできる機会ではないか思います。
本校が取り組んでいるPYPの探究型学習には、Key Concept(重要概念)と呼ばれる7つの視点があります。「原因」であれば「それはなぜそうなのか、起こったのか」、「関連」であれば「他のものとどのようにつながっているのか」、「視点」であれば「どのような見方があるのか」。このような視点で考えを広げ深めることで様々なものが繋がったり、視点を広げたりすることができます。また探究していく中でActionを起こすからこそ理解したといえるというものPYPの考え方です。学んで終わりではなく、どう実生活に活かしたり社会に貢献したりする行動を起こせるか。更にPYPについて詳しく知りたい方は、下記リンク先の下の方にある「PYPのつくり方:初等教育のための国際教育カリキュラムの枠組み」をご覧ください(Key Conceptは21ページ、Actionは29ページ)。
やはり日頃の積み重ね
このような学びを実現するには、普段の授業から変えていく必要があります。児童・生徒が「先生がやることを教えてくれる、ただ教科書を順番にやる、答えまで導いてくれる」という感覚を持っていては、課題を追究したり何かに疑問を持ったりすることが習慣となりません。児童・生徒がエージェンシー(文科省では「自ら考え、主体的に行動して、責任をもって社会変革を実現していく力」と定義)を身につけ発揮できる授業を行うことが、未来を生きる子どもと接する私たちに課されている責任ではないでしょうか。
SNSやニュースではICTを活用した遠隔授業やLMSでの取り組みが紹介され、家にいながら教員の授業や課題に取り組んで学校もあります。ただこういった学校にとってはあまり新しい取り組みではなく、普段の授業で活用してきたからこそ実現できているものです。私たちがなぜ授業を行うのか、どういった力を付けさせたいのか。改めて考えるいい機会ではないかと思います。
こういった点については同じ関西の勝田先生にバトンタッチしたいと思います。
2020/03/10 荒谷 達彦
文部科学省 IB教育推進コンソーシアム
◯いろんなものが「見える化」された
現在の状況を冷静に、見渡してみると、色々なことが見えてきます。
デマに踊らされてスーパーからなくなっていくトイレットペーパーや、入荷するたびに売り切れるマスク・除菌関連用品、営業時間が短くなった店舗、どんどん中止されていくイベントや、普段なら気にしないはずの「咳をしている人に対する周囲の人の視線」も見えてしまうようになりました。
いろんなところで、いろんなひとが、情報を得たり・見たり聞いたりすることができてしまうが故に、敏感に(そしてナーバスに)なっている。これが現在の状況ではないでしょうか。
次に教育業界を見渡してみると、こちらも様々なことが見えてきます。
本・漫画・アニメ・映画の無料公開、教育関連サービスの無料提供、オンライン会議システムによる遠隔授業の実施、登校日や学校行事の中止・規模縮小・・・
おそらく、多くの人が、「学校」として(あるいは一人の教育者として)目の前の課題に対して、差し出された救いの手を用いながら「今、何をすべきなのか?」ということについて考えているのではないかと思います。
◯無意識を意識化する
そんな中、もっとも「見える化されたもの」として、「先生の教育観(教育に対する価値観)」が挙げられると個人的には思っています。
|今まで何気なく送ってきた日常が急に中断された時に、先生・学校は何を確保しようとするのか。|
今までブラックボックスだった先生たちの頭の中が、一連の騒動に対する学校の方策や(先生個人による)SNS上での情報提供という形で「見える化」されてきました。
その「見える化」された方策や情報提供の裏側には先生・学校が「何を大事にしているのか」が見えます。
ーーー
焦って大慌てで残りの授業のプリントを作成・印刷し、子どもたちの家庭に配布し、期限を設けて提出を求める。という行為から見えることは何でしょうか?
ーーー
「学ばせ方」という言葉の根底に流れているのは、どんな価値観なのでしょうか?
ーーー
「子どもたちのためを思って行うこと」とは一体何なのでしょうか?
ーーー
今まで無意識にしていたことや、考えていたことが「行動」という形で「見える化」された時に感じられることは、その先生・学校の根底に流れている「文化」や「教育観」なのだと思います。
今、この時だからこそ「本当にこれでいいのか?」と問い直すことが重要であると考えます。
これまで無意識に行なってきたことを見つめ直し、意識した行動へ変換することが教育の質をより高めることに繋がるのではないかと考えています。
◯UPDATEを図りませんか
これまでの教育が「教育1.0」だとしたら、「教育2.0」へのUPDATEを図るいい機会ではないかと考えています。
「なぜ私たちは授業をしているのか」、「授業を通して伝えたいこと」を今一度考えてみませんか。
具体的な方法としては、サイモンシネックというアメリカのコンサルタントが提唱しているGolden Circle を用いて考えを整理することが良いのではないかと考えています(図)。
TED Talkでは、「リーダーが行動を促すために考えるべきこと」として説明されていますが、教育の文脈では「子どもたちを授業に惹きつけるために考えること」すなわち、「なぜ、今ここで授業をしているのか?を整理するためのツール」と捉えると良いかもしれません。
今、本当に子ども達に身につけさせたいことは何ですか?伝えたいことは何ですか?今、私たちが行なっていることの本質を見つめ直してみませんか。
さあ、ペンを取り、紙にまず「Why」と書いてみてください。
2020/03/12 勝田浩次
図. Golden circle(講演内容をもとに筆者が作成)
*こちらの資料もよければどうぞお読みください(自分で作るGolden Circle について、さらに詳しく載っています)*
JAETニューズレター
情報教育・未来への提言:「Why」からはじめる授業改革 / 勝田浩次
ICT先進校としての責任
私の勤める近畿大学附属高等学校は、西日本一の大規模校で、全校生徒約3000名という、とんでもない大きなのマンモス校です。2003年の新入生から一人一台のiPadを導入し、はや7年が経とうとしています。本校のiPadの利活用方法は、Appleからも評価していただき、「Apple Distinguished School」に日本の高校で初めて選んでいただいています。また、私を含め、6名のADEを抱える学校でもあります。政府の要請を受け、本校も休校期間に入りましたが、日常から授業その他の場面においてiPadが利活用され、生徒・教員のICTスキルも高く、また、Cyber Campusという本校独自のポータルがあるため、連絡事項や、教材の配信は、容易にできる状況にある本校は、おそらく、他校の先生がたが置かれている状況とは、かなり異なるところかと思います。そんな本校には、大規模校だからこそ、そして、日本におけるICT先進校としても、本校が何をするのか、というのは、大きな注目をいただいているものと思っています。そんな中で、本校が今できていることは、まだまだその責任を果たせていないとも思っています。学校に対する働きかけをするためにも、実践事例を積み、校内にも、校外にも発信していくことが、自らの使命だと思い、「できることから、やっていく」そんな日々を過ごしています。
阪神大震災の時のことを思い返す
クラスの多くの生徒が、3/8から3週間、アイルランドへの語学研修に行く予定でいましたが、それも中止となりました。ずっと楽しみにし、準備も重ねてきた研修への参加ができなくなり、失意の底にある生徒に対し、休校前のHRで生徒たちに伝えたことがあります。それは、「平時を保つ」ことの大切さです。
兵庫県西宮市に生まれた私は、小学校4年生の時に、阪神大震災に被災しました。自宅は倒壊までは至らず、身近に亡くなられた方もいなかったものの、その日を境にして、それまでの日常が全て崩れました。ライフラインが途絶え、学校もしばらくの休校となりました。やがて、少しずつ日常が回復し、学校も再開してからの時期のことを、今回のコロナ危機を受けて思い出しました。
ガスはいつまでも復旧しませんでしたが、私の母は、震災前と同じようなごはんを食卓に並べてくれました。カセットコンロやホットプレートをうまく使いながら、それまでと変わらない食事を用意してくれました。一方で、友だちの話を聞くと、毎日レトルトのごはんが続いているような家がほとんどでした。「あれがないから、これもできない」と、多くの人がたくさんの事を諦めているなか、様々な不便がありながらも、何とか平時を保つために、「あれがないなら、こうしよう」と創意工夫してくれた母の姿は、ずっと尊敬しています。また、小学校の先生は、渡り廊下が倒壊し理科室が使えなくなったなか、何かと工夫しながら、教室で理科の実験をしてくれました。そんな姿が幼な心に強く焼き付いています。
平時を保つためのテクノロジーの利活用
日本は、災害列島です。この国に生きている限り、絶対に一生で一度は何かの大規模な自然災害に遭うことでしょう。災害は私たちの日常を奪い、そんな中でも、私たちはすべき事をしていかなくてはなりません。先人たちは、どんな危機的状況でも、手と手を取り合って、社会を建て直してきました。それが、この島国で生きてきた私たち日本人に、DNAレベルで深く刻まれてきたことです。私は、今回のコロナ危機も、自然災害みたいなものだと思っています。学校がなくなったり、外出が難しくなったりするなか、「あれがないから、これもできない」とならず、「あれがないなら、こうしよう」と創意工夫しながら、何とか「平時」を保てるようにしましょう。「これもできない」になるか「こうしよう」になるか、どちらの選択をとる人になるかって、けっこう、人生を左右することだと思います。君たちにとっての「平時」は、学生として、あたり前にすべき勉強をすることです。いま、様々なオンラインの学習サービスが無料にもなってます。君たちの手にはiPadがあり、一年間の学習を通じて、iPadの利活用にも慣れてきました。ともに切磋琢磨できるクラスの仲間もいます。この状況を活かすほかありません。創意工夫しながら、「平時」を保ってください。今は、どんな時でも「平時」を保てる人になる、その練習です。生徒たちへと、そう伝えました。
これからやって行きたいこと
とにかく、「できることから、やっていく」、成功も失敗も含めて、シェアしていく事、これが、自分の使命だと思っています。自分のブログや、FBページで発信していこうと思いますので、皆さんの何かの参考になればと思っています。全国のADEたちのチャレンジに鼓舞されながら、自分もできることから頑張っていこうと思います。ここらで、若さ溢れる今井君のチャレンジを聞いてみたいと思います。福岡の今井君へとバトンを渡します。
2020/3/13・神野 学
◯新型コロナウイルスに関して、子どもたちにどんな話をしますか?
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、政府から休校要請を受けて、多くの教育現場が対応に追われたと思います。まさに青天の霹靂。学校、家庭だけではなく多くの企業にも激震が走りました。先のコラムで神野先生が述べられた通り、まさに私たちは平時を脅かされました。COVID-19という名称が付けられ、WHOはパンデミックを表明し、昨日(3/13)米国は国家非常事態を宣言しました。このコラムを書きながら、今は夕方(3/14)の日本政府の発表を待っています。
政府の判断に対して、様々な意見がありました。批判もありましたが、「英断だ」という意見もありました。政治とは答えのない問題に答えていく行為であり、この手の議論の坩堝に私たちはよく巻き込まれる。
しかし、今回の政府の動き出しに関しては違和感を覚えました。それは、感染ルートや感染元の特定に全力を注いだという点です。その行為はいわば感染元という過去に遡る行為で、感染拡大を防止するという未来を防ぎ得るものではないからです。
今回の政府の対応は「人間側の視点」に基づいて行われたもので、ウイルスはコントロール対象と見なしています。しかし、感染拡大を防止することがプライオリティであれば、今回の対応に関しては「ウイルス側の視点」で対処する必要がありました。ウイルス側からすると、人間は単なる乗り物に過ぎません。私たち人間はウイルスにとって優秀な乗り物とならないよう努めなければならないわけで、その視点に立って考えることができたのであればもっと早期に対策を講じれたはずです。
◯視点を変える、常識を疑う、
前置きが長くなりました。こういった事象に出くわす際に子どもたちによく言うことは、「視点を変える」、もっと掘り下げて言うと「常識を疑う」と言う行為のこと。先のコラムに勝田先生が述べている『無意識の意識化』と通じると(勝手に)思ってるのですが、無意識に潜む思考や常識を顕在化させてそこに別の視点を新たに加えること。授業の中で常識を疑いながら子どもたちの価値観を揺さぶり続けることは教師の大切な役割だというのが個人的な意見です。そしてそんな授業を模索していきたいです。マイケル・サンデルのような授業。(目標は高く。。。汗)
◯オンライン学習における様々な視点
休校措置に伴い、全国的にオンライン学習が注目を浴びるようになりました。私も先日、ZOOMを使って東京・北海道・新潟・福岡の小学生から高校生まで83名の子どもたちが異年齢で学び合う英会話の時間を持つことができ、この期間に有意義な学びがありました。
このような形式のオンラインでの学びでは、画面というフィルターを介してコミュニケーション活動が行われますので、自分の想像以上に相手意識・他者意識を持たないとコミュニケーションにノイズが乗ってしまいます。要するに伝わりづらいのです。メラビアンの法則ではコミュニケーションをVisual, Vocal, Verbal(視覚的、聴覚的、言語的)な側面で切り分けますが、非言語のコミュニケーションこそがこのオンラインというフィルタリングを飛び越えて、繋がる喜び、伝わる喜びを得るために必要不可欠なファクターなのです。そのことを無視しては得られる学びはあまりありません。なぜならば「学び」とは得られる情報量ではなく、学ぶ際に生起する感動や疑問や悔しさ、達成感などだからです。
この視点は話し手だけではなく「聞き手側の視点」にこそ必要な態度であり、そのことをオフライン以上に気付かせてくれるものがオンラインの学びにはあるのかもしれません。
◯正解は必ずしも必要ではない
答えを求める勉強を小さな頃から課すこの国では、何にだって正解を求めてしまう。時には人生にも正解を求めてしまう。そんなものはあるはずもないのに。政府の判断もオンライン学習についても様々述べさせていただきましたが、正解も答えもないはずです。あるのは私たちは自らが選択したものを自らの手で正解にしていくということではないでしょうか。そのためには「大胆さ」とそれに伴う「失敗」がつきもの。その失敗を容認し、学校や組織、社会が失敗に寛容になることが今必要で、その先に子どもたちが幸せを見出せるような教育があるのではないかと想像しています。そして、教師とは自らが幸せであるだけでなく、子どもたちが幸せになれる条件とそのための術を結びつける方法を一緒に探す存在なのかもしれません。
2020/3/14・今井孝治
Apple Distinguished Educator Class of 2015
株式会社 Doit 代表取締役
元小学校教諭・県教委指導主事
コロナショック
政府の発表を聞き、いよいよ来たか、というのが最初の印象でした。年末から続いていたGIGAスクール構想の真っ只中、突如発表された今回の”要請”。私はその時東京にいたのです。その週に控えていた小学校とJAXA、中学校と地元テレビ局をつなぐアバターの打ち合わせをオンラインでしていました。要請を受けて思い浮かんだのは県はどう対応するだろうか?ということと、うちの子どもたちです。そして今後の自分の仕事。その時点で大分県の感染者は0、全て受け入れるのだろうか、と疑問でした。夜中になって県から発表されたのは、翌週から当分の間休校、という知らせでした。
これはとんでもないパニックになるぞ、と直感しました。学校も、教育委員会も途方に暮れているに違いない、何か自分ができることはないだろうか?と考え始めました。高校、中学は間近に卒業、入試を控えていて、小学校は最後の1ヶ月、その週は期末PTAがどの学校でも行われる週です。6年生の次男にとっては卒業までのラスト1ヶ月のカウントダウンの毎日。思い出を作るための仕掛けがきっと全国の小学校でたくさん予定されていたはずです。正直今回一番悲しい思いをしたのは小学校6年生とその担任かもしれません。
誰にも怒りのやり場を持っていきようのないこの現実を、どう受け止め、成長につなげるのか?先生としての無力感を感じていると思います。
家庭で、保護者として
私のスケジュールも、当面ぽっかり穴が開き、突然家族で過ごす毎日がスタートしました。その週末、家族で話し合いをしました。これから始まる1ヶ月は、おそらくこれから経験することのない時間だ、ということ。この時間をどう使うかが問われていて、その先の人生にとっても大切だ、ということを伝え、それぞれ有効に時間を使うためにチャレンジしてみたいことを出し合いました。
英会話、ギター、タイピング、料理などなど、親も含めて色々考え、紙に書き出し、壁に貼りました。地方の公立学校では、あわてて出されたプリントの束と、途中家庭訪問で配布されたドリルの冊子が課題です。あの短時間でできることは本当に少なく、限界だったと思います。ここに登場する日本を代表するADEの皆さんのような実践ができる状況は、極々一部だと感じています。大多数の地方の学校は似たような状況でしょう。そうなればあとは、各家庭、地域でそれをどう補完していくか、という視点も大切です。
これをチャンスに!
この未曾有の事態にどう対処していくのか、まさに答えのない問いです。今回のことは学校教育や社会基盤が一気に変わっていくチャンスにもなり得ると感じています。オンラインでできる会議、双方向にやりとりしながら行える授業。環境の整った学校で行われている実践は、蓄積され、集合知になります。逆に何もできなかった学校や、子どもたちの格差は明確になりました。インフラやICT環境の大切さは明確に見えました。働き方、学び方、オンラインの可能性や限界値、必要なインフラ、人としてのモラル・・など私たちはこの状況から、何を学びどう進んでいくのか、冷静に考え、しっかり思考し、今後に生かしていく必要があります。
もう一つ私が考えたことは、この時間を何に使うか、ということです。学校の先生も子どもたちもとにかく疲弊し、麻痺していた部分がたくさんあったと思います。学校行事や教育課程、参観日、通知表、年度末整理、部活、塾、社会体育など、たくさんのものから時間に追われ、それが当たり前だった毎日から、一気に全ての活動を制限され、時間だけがぽっかり与えられたのです。この時間をみなさんはどう過ごしていますか?何に使っていますか?ガリガリ頑張ることも大切ですが、春の空の下散歩をしたり、空気を感じたり、ゆったり本を読んだり、映画を見たり、ただぼんやり時間を過ごすことも必要です。今ならそれはきっとできるはずです。
家族の時間もたくさんあり、生活体験もいっぱい一緒にできるチャンスです。「学び」は勉強や宿題だけではないはず、今この時にできる学びをして、学校が再開した時に、子どもたちにニコニコ話せるように、元気を取り戻し豊かさを取り戻すことも、きっと大切だと思います。頑張らない時間も大切にしましょう。
Apple Distinguished Educator
東京都立石神井特別支援学校
特別支援学校とICTについて
まず私の勤務している特別支援学校について簡単にご紹介したいと思います。特別支援学校は「障害の程度が比較的重い子どもを対象として専門性の高い教育を行う学校」(文科省パンフレット「特別支援教育」)です。5つの種別に分かれていて、視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱のある子どもたちの学校がそれぞれ全都道府県に設置されています。全国に1135校があり、そのうち知的障害のある子どもたちを対象とした特別支援学校が553校(約49%)を占めています(平成29年度現在)。私のいる石神井特別支援学校も知的障害のある子どもたちが通っている学校です。
特別支援学校と聞くと、障害のある子どもたちに合わせたICTの活用が進んでいるイメージが思い浮かぶかもしれません。確かに身体にハンディのある子どもたちの可能性を広げるため、音声での発話が難しい子どもたちへのコミュニケーションツールとしてのICTの活用、遠隔教育での活用、身体が動かせなくても視線さえ動かせれば意思表示をしたりロボットを動かせたりする視線入力装置の活用などが進んできています。最近では、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の方が自宅から視線入力でロボットを遠隔操作し、カフェの接客を行う「分身ロボットカフェDAWN」の取り組みが大きな話題となりました。テクノロジーが身体のハンディキャップを乗り越えて社会への参画を可能にする画期的な試みとして今後もとても注目されています。このように身体のハンディキャップについては、目が見えないとどんな困難があるだろう、車椅子だとどんな困難があるだろう、と比較的イメージがしやすく、どのような道具があるとよいか、それをテクノロジーでどう代替できるかという研究や実践が深まりやすい側面があります。
一方で、知的障害のある子どもたちの通う特別支援学校ではICTの活用が全国的に進んでいません。身体のハンディキャップに比べ、本人の困り感や実態にどうフィットして活用すればいいか、本人が自分で判断して活用ができるかなど、知的なハンディのある子どもたちへの活用はイメージがもちにくい面があるのと、「安易に機械に頼るのではなく手や身体を動かしてスキルを獲得した方がよい」という教育観がまだまだ根強いことも一因にあるように思います。全国の半数近くを占める知的障害特別支援学校は今もそんな状況にあります。
知的障害のある子どもたちへのICT活用
「子どもたちのアイデアや表現って面白いなぁ~」と学校現場で感じることの多かった私としては、アイデアや表現をアウトプットするツールとしてiPadを活用したらきっと面白い、という思いがありました。東京都立の特別支援学校は2016年に共用iPadが配備されたのですが、そこから、オリジナルの物語作り、コマ撮りアニメーション制作、Clipsなどによる映像作品の制作、そんな授業にずっと取り組んできました。子どもたちがワクワクしながら面白いアウトプットを行うこと、内面にはとても豊かな世界が広がっていることなどは授業を通してよく分かります。アイデアをアウトプットするツールとしてiPadは絶大な真価を発揮するのです。ちなみに本校は児童生徒が188名。iPadは31台しか配備されておらず、学校で独自に増やしたりBYODは認められていないのが現状です。そんな中で教員同士が日々融通をしながら授業での活用を進めてきました。私の授業では5人の子どもたちを対象にした授業でiPadを一人一台活用し、一昨年からプロジェクト型学習を試みてきました。授業の視察に訪れたいろいろな方から「海老沢さんの授業でiPadを使っている子どもたちを見ると、特別支援学校にいるというのを忘れてしまいますね。」と言われることもあり、知的障害のある子どもたちの創造性や表現の可能性をICTで広げている気になっていました。
突然の休校
そんな中で訪れた今回の休校措置。iPadは学校配備で持ち出せず、WiFiは教室のみ。授業の中で活用はしていても、教室や学校から外の学びへとつなげることは想定していませんでした。ZOOMで他校とやりとりする授業は行ったことがありましたが、これは教員が操作して一斉授業で行ったもの。子どもたちが自分で体験したものではありませんでした。
情報活用能力って本当はこういう時に必要なんだ…。今回はそのことを痛感させられました。遠隔でもネットにつながっていれば活用できる、メッセージを送ったり読んだりしてやりとりしたり、ビデオでつながったりして学ぶことができる、そんな体験を学校で行っていないといざという時に実際に活用するのは難しい。休校になった途端、学びはプツンと切れてしまいました。
「特別支援学校は一人一人の実態に応じて能力を最大限に伸ばします」と謳ってはいるものの、いざとなるとなんの教育的ニーズにも対応できない。無力感がつのりました。そしてiPadはまだまだ学びのツールというより、動画やゲームといった遊び道具としての捉え方が強い。ややもすると、iPadがご褒美アイテムになってしまい、いい子にしてたら休み時間にYouTube見てもいいよ、そんな使い方になってしまう場面もまだまだ見られます。学びのツールとして、思考や表現のツールとして実感できるような体験をもっともっと学校で行っていかなければ。教師がいなくても子どもたちが自分で学びを進められる種をもっともっと蒔いていかなければ。そして保護者にもそんな活用の仕方を一緒に体験してもらい、子どもたちをサポートしてもらえるようにしなければ…。そんなことを改めて強く感じました。それに加えて公立ではWiFiや端末整備の壁、クラウド活用のできない壁、セキュリティや個人情報の壁、壁、壁。普段から感じているこうした分厚い壁が今回の事態でもずっしりと立ちはだかりました。突然の休校に何もできず悔しい思いをしている教師が全国にたくさんいると思います。
今回の経験を忘れずに、これから実現に向かうGIGAスクール構想の中で、子どもたちがどんな情報活用能力を身につけることが大切なのか、学校で学ぶってどういうことなのか、学びの選択肢はどんな形があり得るのか、学校が再開した暁には、そんなことを考えながら日々子どもたちと接していきたい。そう思っています。
Apple Distinguished Educator
近畿大学附属小学校
突然の休校から早2週間が経ちました。子供たちは元気に過ごしているだろうか? 規則正しい生活を送っているだろうか? 時間を有意義に使えているだろうか? 良くない習慣がついてしまったりはしていないだろうか? 4月の始業式で,元気な顔を見るまで心配は尽きません。
私立小学校として
私が勤務する近畿大学附属小学校は,奈良・大阪・兵庫・京都・滋賀と2府3県に及ぶ広範囲から子供たちが通学しています。学校が休みになると,子供たちは簡単に友達に会うことができない状況になってしまいます。小学生ですから,中学生や高校生のようにスマホなどを使って個人的に連絡を取れる割合もそう多くはありません。地域とつながっている家庭もあれば,私立小学校進学を選んだ時点で地域との関わりが薄くなっている家庭もあります。それゆえに,学校が安心して頼れる「拠り所」にならなくてはいけないと考えています。
休校に挑む学校の対応
2月27日の時点で,翌週から休校になる可能性がありました。そこで,その日の放課後,私の学年では3月のカレンダーを作り,そこに毎日その日にするべき課題を書きました。特別な課題ではありません。休校にならずに授業があったら,その日にする予定だった課題です。そして,休校が決定され,最終登校日にそのカレンダーを配布しました。やったことといえばそれだけです。
本校では5年生,6年生が個人のiPadを所有しています。そして,ロイロノートという学習支援アプリを使っています。これを使えば,家庭でも学校とのやりとりができます。教員は毎朝8時30分,通常の始業時間に合わせてロイロノート内に課題の提出箱を作ります。子供たちはそれに合わせて,家でやった課題を提出するわけです。教員はそれを添削して送り返します。間違いがあれば,子供たちはそれを再提出し,わからないところがあれば質問を送り,教員がそれに答えます。普段の学校でやっていることを,休校中もそのまま続けているだけなのです。たったそれだけのことですが,子供たちにとっては毎日の学習習慣を維持するのに役立ち,教員にとっても毎日きちんと課題が提出できていることでその子が規則正しい生活を送っていることが確認できます。提出が滞ってくると電話で連絡をし,保護者に体調面や生活面について様子を聞いたり助言をしたりします。
学習意欲をつなげる
課題といっても,1日の内のそれは微々たるものです。子供達のiPadにはe-learningのアプリも入っていますから,自分のペースでどんどん学習を進めていくことはできます。しかし,熱心に取り組む子供は限られています。いくら工夫された教材でも,勉強があまり好きでない子供にとって,それはさほど魅力的なものではないようです。
こんな時こそ自由な学びを! ネット上には,休校中の学びについてたくさんの情報が飛び交っていますが,小学生がそれらを見つけて自発的に取り組むのは容易ではなく,家族のサポートが必要ですが,意識の高い家庭でないとそれを実行するのは難しいように思いました。
それではどうする? ということで,各教科の教員で授業動画を配信することにしました。普段の授業のように教員が登場して出題したり,解説したり,その姿を見せることを大事にしました。家でもいつものように先生の授業が受けられる,それが少しでも子供たちの興味を学習に向けさせ,安心させることができるのではないかと考えたからです。授業だけでなく,中止になってしまった社会見学の見学先の紹介動画であったり,教員が縄跳びに挑戦し,子供たちに教員の記録に挑戦させる動画であったり,いろんな提案をしています。子供たちは動画を見て課題に取り組んでそれを提出したり,感想を送ったりします。それに対して教員がリアクションを返す・・・ということで,個人持ちiPadがあるがゆえにできる取り組みによって学習への意欲をつないでいます。
算数
国語
社会
体育
iPadがない学年は?
しかし,このようなことができるのは個人持ちiPadがある学年だけです。それ以外の学年では,やはり何ともできないもどかしい思いをしています。せめてできることをということで,定期的に,保護者へのメール配信システムを使って,学年ごとに動画を配信しています。体調を気遣うものだったり,生活面での注意だったり,学習の進め方や自由学習の提案などが主な内容です。遠方から通う子供が多い私立小学校ですから,学校が見える,先生が見える,それが大事だと考えています。そして,教員の姿や笑顔が,子供たちに元気を与えることができると信じています。
休校で分かったこと
個人持ちのiPadがあることで,今回のような不測の事態にも対応ができ,子供と学校がつながれました。これは何よりも大きなことでした。このことから,普段の授業や課題について見直す機会にもなりました。こういう取り組みは普段から続けていこうとか,今までやっていたこの部分は休校中のやり方に変えてもいいのではないかと,慣例で続けていたことを見直す機会にもなりまいた。こうなると,学校でしかできない学びとは何か? というところに目が向いてきます。
個人持ちiPadがない学年も,その有効性と必要性を痛感させられました。私個人的には,小学校の早い段階から学校で有効な活用方法を教える必要があると考えています。そうすることで,保護者や子供が持つゲームや動画の視聴といった「娯楽」のための道具というイメージから,学習ツールとしてイメージを早く確立させられると思うからです。
休校明けに向けて
この休校中,普段から使っていなかったためにできなかった遠隔授業も,次にこのような事態が起こったときには使えるようにと,毎日教員同士がZoomでやりとりをして練習しました。ICT活用のためのスキルアップ研修も連日行っています。学校に来れなかった子供たちが,学校にやってきた時に,先生たちがめちゃくちゃパワーアップしていて,めちゃくちゃ面白い授業をする。子供たちはますます学校が好きになる,学校での学びがもっともっと面白くなる。学校が学校としての意義を再定義する。そんな機会にしたいと思って,この休校中を過ごしています。
Apple Distinguished Educator
近畿大学附属高等学校(理科)
▶︎課題?補習?確かに大事だけど…
新型コロナウイルスの影響で,多くの学校が休校となりました。一部の地域では再開している学校もあるようですが,現状として,まだ多くの学校が通常の状態に戻れていないと思います。
休校となり,自分の学校,知り合いの学校,様々な学校で「オンライン授業」など,ICT を使った取り組みを開始したり,連絡ツールを使って課題の配信をしたりと,必死に工夫を凝らしています。
また,実施できなかった授業の分を,新学期に補習という形で補うなど,埋め合わせの対策を考えている学校も多いことでしょう。
そんな中,ふと「あれ?普段の学校生活より,生徒に負荷がかかってるんじゃないかな…?」と考えることがあります。
休校中で自宅待機とはいえ,生徒は「暇」とは限りません。小さい妹や弟の面倒を見る生徒もいれば,自営業の親の手伝いに精を出している生徒もいます(自分の知り合いがそうでした)。
それぞれの生徒が,それぞれの家庭生活を尊重していく中で,ちょっとだけ学びの機会を与えてあげれる程度の「ゆるい」課題が適しているような,そんな気がしている今日この頃です。
生徒たちの間に不安が広がっている中,先生たちが慌ただしく動くのではなく,ある程度の余裕をもって生徒と接するのも,大切ではないでしょうか。
▶︎教室の中でやるべきことは?
休校が発表されて間もなく,いくつもの動画配信企業が一斉に有料会員の部分まで動画を公開しています。
それらの動画は,塾や予備校で鍛え上げられた講師の先生方が登壇しており,いわば「教えるプロ」達です。
自宅にいながら,そのようなプロの講座を聞くことができるので,生徒たちの中には「あれ?学校行かなくても,教科書の内容は大丈夫じゃね?」と気付いてくるような気がします。
今こそ「教室という同じ空間で,同世代が数十人集まり,授業を受ける」意味を,しっかりと考えなければ!と,自分に言い聞かせています。
▶︎じっくり,しっかり,新年度に向けて…
自分は既に卒業生を送り出し,担任として抱えている生徒達はいません。なので,休校にならなかったとしても,クラスの補習があったわけでもなく,懇談の予定があったわけでもなく,時間には結構余裕がある身分です。(忙しい皆様,誠にスイマセン)
ただでさえ余裕があるのに,今回の新型コロナウイルスの影響で,その余裕っぷりに拍車がかかってきました(笑)
オンライン上で,様々な先生方が様々な活動をされていますが,自分自身は「新年度に向けて盤石な準備を整える」ことに集中しようと考え、ひたすら教材研究に打ち込んでいます。
時間もあることなので,1日に考えるのは,ある1つのクラスに限定し,じっくり…じっくりとアイデアを絞り出しながら計画を作っていきました。
また,4月から新しく自分の担当となる生徒達(もちろん顔も名前も知りませんが)に,どんなHRをすればいいか?どんなスキルを身につけてほしいか?そのためにどんな仕掛けをすればいいか?など,考え(妄想)を膨らましたりもしています。
教師として仕事をしている以上あたりまえかもしれませんが,「あーでもない,こーでもない」と考えながら,時間をかけて授業を設計していくのは,非常に楽しく,ふと気づけば,時間が過ぎているような状態でした。
新年度,きっと学校現場は慌ただしくなります。その慌ただしさが,生徒達の「学び」に対してマイナスにならないよう努めていきたいですね。
▶︎結局,忙しい毎日…?
担任するクラスもなく,授業もないので,暇をもて余しているはずだったのですが,あれこれと授業計画を考えたり,教材を作成したりしているので,結局いつも通り(いや,それ以上?)に忙しくなっている気がします。
また,じっくりと考える時間がある分,やってみたいアイデアなども,通常の3割増ぐらいで出てくるので,それを全て実現しようとすると,さらに時間が掛かることに…
でも,この忙しさは何だか心地よく,苦にならない。
この期間にどれだけ準備をするかによって,次年度の生徒の不安も,少し軽くなればと思っています。
次年度のために考えたアイデアを、学内で共有する時間も持てるといいですね。
(以上,駄文失礼致しました)…φ( ̄ー ̄ )
Apple Distinguished Educator class of 2019
常翔学園中学校・高等学校 キャリア担当
オンラインで、世界観広がる大人との出会い
本校は3月2日よりコロナの影響により休校となり現在もまだ継続中です。私は教師として「子どもたちの進路選択を広げたい」と思い教師をしています。今回は、その一環としてキャリアオンライン という「家にいながら世界が広がる場所」をオンラインで作れないかと思い挑戦しました。どの学校でも生徒たちに講演しにくる大人?職業人っていると思うのですが、そんな講演をしてくれる人をオンラインで生徒たちと繋ごうとした企画です。
期間としては、3月9日〜25日の16日間の開催となりました。授業をしてくれた講師は43名にもなりました。とても濃い内容の授業になりました。
キャリアオンライン ページ
プラットフォームは、Googleサイトで作成しました。サイトのURLを限定公開とし学内で共有しました。
生徒たちは、気になった講師の授業が予定されている時間にサイトを訪れ、「授業参加ボタン」をクリックすることでZOOMに入ることができます。私を入れて講師のコーディネートをしていた教員は3名でそれぞれのZOOMアカウントで授業を実施しました。終了後感想アンケートを実施し、生徒たちからの反応を講師の人へ届けて終了となります。
今回のキャリアオンライン の作成のやり方です。
青・主に、Facebookを利用し講師とのやりとりを行いました。講師たちのグループもメッセンジャーで作成し、講師側の授業ラインをある程度担保するように心がけました。
緑・スケジュール調整をしたのに、サイトにプロフィールを作成します。
赤・生徒たちへ周知する手段として、使用したアプリとサイトになります。ここで生徒たちからの希望職種のリクエストも受けて、青に戻るというサイクルでした。
参加者からのアンケート
延べ人数は300〜400の生徒が参加したことになりますが、アンケートのレスを見ると100名弱の結果となっています。
今後の展開として
現在、この取り組みを継続していく仕組みをさらに模索中となります。
1つは、どの学校でも利用できるようなプラットフォーム化を目指す。
もう1つは、誰でも参加可能な敷居の低いプラットフォームとして展開していく予定をしています。