音楽会の企画・制作
ひと手間かけたオーダーメイドの音楽会
きょうゆうプロジェクトでは、音楽会の開催を目的とせず、音楽会をきっかけにしてうまれる体験、開催までのプロセスを大切にしています。
ご依頼主様と、抱えている課題や、叶えたい思いを"きょうゆう"することから音楽会づくりが始まります。「こんなことしてあげたいけど、忙しくて…」「雰囲気を変えたいと思っているんだけどな…」そんな声を聞き逃さず、音楽会のテーマにしていきます。
想定される訪問先
病院、医療関連施設、支援学校、個人宅
音楽の樹
好きな曲を書いた付箋を貼り、樹を彩る企画。誰でも参加でき、180枚集まった。3週間設置したのち、音楽会を開催し、寄せられた曲でプログラムを作った。樹の幹は院内学級で作成。
これまで制作した音楽会の中から、実例をご紹介します。
Case1 コロナ禍で面会や行動が制限され、人同士のつながりが希薄になっている
〜大規模総合病院で患者・病院スタッフを対象とした音楽会〜
コロナ禍では、患者さんとご家族の面会が制限されたのはもちろん、病院スタッフの行動も制限され、不安を抱えて病院で過ごされている方が多くいらっしゃいました。病院スタッフへのインタビューで、こういった状況を伺い、わたしたちは「プレゼント」をテーマに音楽会を制作することをご提案しました。
プレゼントは、贈りたい相手のことを大切に思って選ぶものです。また、受け取る側も、贈られた物がどんなものであれ、自分のことを思って選んでくれたということが嬉しいものではないでしょうか。音楽をきっかけとして、こころのやりとりを感じてもらえるよう企画しました。
患者さんや病院スタッフと接する機会が多い副病院長、看護部長に、「あの方に贈りたい曲」と題して、患者さんや病院スタッフに贈りたい曲とメッセージをいただき、リクエスト曲でプログラムを組みました。
演奏する曲は当日のお楽しみ。どんな思いで、この曲を贈ったのか、メッセージを読み上げながら演奏しました。
Case2 コロナ禍を戦い抜いた職員の苦労を労い、心の栄養を蓄えたい
〜大規模小児病院で病院スタッフを対象とした音楽会〜
コロナが5類に移行され、職員は厳しい状況で仕事を続けてきました。医療職として働いてきた自分にも、仲間にも、全職員が幸せを感じる音楽会を企画してほしいというご依頼をいただきました。
病院との対話を繰り返し、「ラジオ」をコンセプトとすることにしました。ラジオは、リスナーから曲をリクエストしてもらい、それにまつわるエピソードを紹介します。誰かのエピソードに共感し、自分を重ねあわせるといった経験もあるかと思います。
"それぞれの「3年」を聴かせてください"をテーマに、曲のリクエストとエピソードを募集しました。そして音楽会では、登壇された方に、コロナ禍にどんな思いを抱えて働いていたか、曲のエピソード、この曲を聴いて同僚にどんな気持ちになってほしいか、インタビューをしました。その後、リクエスト曲を職員との共演も交えながら生演奏しました。当日演奏できなかった曲は、デジタル配信サービス「Spotify」でプレイリストを作成し、職員に公開しました。
リクエストの投稿を呼びかけるポスター。演奏に涙しながら聴かれる方がいらっしゃったほか、院長からは職員への労いの言葉をかけられ、これまでの苦労を思い返し、未来に向けて結束が高まったイベントとなりました。
Case3 体が弱っても、心動かされる時間を持てたら
〜大規模総合病院 緩和ケア病棟での音楽会〜
緩和ケア病棟には、積極的治療はせず、緩和医療に専念されている患者さんが入院されています。ご家族と過ごされる方や、体が思うように動かない方など、さまざまな方がいらっしゃいます。病院は、医療的な環境は整っていますが、心が豊かになる環境かと言われると、必ずしもそうではありません。最期を迎えるにあたり、病院でも、患者さんやご家族に心動かされる時間を送ってほしいという気持ちを緩和ケア病棟の医師から伺いました。
そこで私たちは、演奏を希望される患者さんの病室で、その患者さんのリクエストを演奏することをご提案しました。病棟の特性上、リクエストは開催日直前(2〜3日前)に集めました。また、楽譜をたくさん持ち込み、当日の希望にも対応しました。
病室を訪問しての音楽会。患者さん、ご家族とお話をしながら、リクエストにまつわるエピソードを伺います。昔の記憶を思い起こす方、数日経っても興奮気味に音楽会のお話をされる方など、それぞれさまざまな思いで音楽会を過ごされています。