第2講|AIの能力を引き出す ーHow TO TUNEUP

いつもの頼み方に、ひと言足してみよう

AIに「文章を作って」「意見を聞かせて」と頼むだけでも、答えは返ってきます。でも、期待と違う答えになることもあります。

そんなときに役立つのが、機能強化につながる下記のようなプロンプトです。難しい用語を覚える必要はありません。「誰に向けて」「何を重視して」「どんな形で」といった一言を足し、出てきた答えを見ながら調整していきましょう。

以下の例は、そのままコピーして試せます。[ ]の中を自分の内容に置き換えてください。


1.「あなたは○○です」で、見る視点を変える

役割を与えるときは、肩書きだけでなく、その立場で何をしてほしいかまで伝えるのがコツです。

「あなたは初心者向け講座の編集者です。次の文章を読み、初めて聞く人がつまずく言葉や、説明が飛んでいる箇所を指摘してください。その後、意味を変えずに分かりやすく書き直してください。」

文章:[ここに貼る]

「あなたはプロの編集者です」だけより、確認する観点がはっきりします。


2.「いいですね」だけで終わらせない

AIの返事が優しすぎると感じたら、評価する基準と、指摘してほしい点を指定します。厳しい言葉を求めるより、具体的な弱点を探してもらうほうが役立ちます。

「次の企画案を、賛成する前提を置かずに評価してください。良い点を2つ、実行時に困りそうな点を3つ挙げてください。指摘には理由を添え、最後に改善案を示してください。根拠のない批判は避けてください。」


3.「ステップバイステップ」で、作業を進める

大きな仕事を一度に頼むと、途中の判断が抜けることがあります。そんなときは、作業を段階に分けて進めるよう頼みます。

「[やりたいこと]を進めたいです。まず必要な作業を3〜5段階に分けて示してください。その後、第1段階から始めてください。私が決める必要のあることがあれば、その段階で質問してください。」

ここで求めているのは、AIの非公開の「頭の中」を表示することではありません。私たちが確認できる作業手順を示してもらうことです。


4.結論だけでなく、判断材料も聞く

答えに納得できるか確かめたいときは、「どう考えた?」と漠然と聞くより、見たい項目を指定します。

「[検討したい問い]について、判断材料を整理してください。「結論」「主な根拠3つ」「その結論が変わり得る条件」「まだ確認できていないこと」の順に答えてください。事実と推測は分けて書いてください。」

AIが示した根拠も、重要な判断に使う前には自分で確認しましょう。


5.足りない情報は、先に質問してもらう

AIがこちらの事情を知らないまま答えると、もっともらしくても使えない提案になりがちです。

「私は[やりたいこと]をしたいです。より役立つ答えにするために必要な情報があれば、先に重要な質問を最大3つしてください。

細かな情報が足りないだけなら、置いた前提を明記して、そのまま提案を進めてください。」


6.「いい感じに」ではなく、仕上がりを指定する

読む相手、長さ、形式を伝えるだけで、使いやすい答えになりやすくなります。

「[テーマ]を、[対象読者]向けに説明してください。最初に結論を一文で述べ、次に身近な例を1つ示してください。専門用語には短い説明を添えてください。全体を約[文字数]字にしてください。」


7.見本を渡して、文体を合わせる

「私らしく書いて」だけでは、AIにその「私らしさ」が分かりません。短い見本を渡してみましょう。これは Few-shot(少数の例示) と呼ばれる方法です。

「以下の見本の文体と長さを参考にして、「新しい内容」を書き換えてください。事実や意味は変えず、見本の文章をそのままコピーしないでください。

見本1:[自分らしい文章の例]

見本2:[別の例]


新しい内容:[書き換えたい文章]

見本は、自分が使ってよい文章を選びましょう。


8.資料を渡し、「資料にあることだけ」で答えてもらう

資料の要約や比較では、AIの一般知識が混ざると困ることがあります。資料と指示を区切って渡します。

「以下の資料だけを根拠に、要点を3つにまとめてください。それぞれ、根拠になる資料中の箇所を示してください。」

「資料だけでは分からないことは、推測で埋めずに「資料では不明」と書いてください。」


--- 資料ここから ---

[資料を貼る]

--- 資料ここまで ---

長い依頼では、こうした区切り線や見出しが役立ちます。特別な記号を覚える必要はありません。

9.最初の答えを、もう一段磨く

一度で完成を目指すより、出てきた文章を材料にして直すほうが簡単なこともあります。

以下の下書きを[対象読者]に伝わるよう改善してください。

まず「分かりにくい箇所」「情報不足」「長すぎる箇所」をそれぞれ最大2点指摘してください。

次に、元の意味と事実を保った改善版を示してください。


下書き:[ここに貼る]

さらに「2段落目を短く」「具体例を1つ加えて」と伝えれば、会話しながら調整できます。

10.AIの答えを、AIと一緒に疑う

前回の「AIを疑う・鍛える」を実践するためのプロンプトです。AIに点検を頼み、確認すべき場所を見つけるために使います。

以下の回答を点検してください。

「確認可能な事実」「根拠が示されていない主張」「条件によって変わる主張」に分けてください。

誤りだと確認できないものは、誤りと決めつけないでください。

最後に、私が確認すべきことを3つ挙げてください。


※AIによる自己点検だけで、正しさが保証されるわけではありません。数字、日付、制度、医療やお金に関わる情報などは、元の資料でも確かめましょう。

覚えておきたいこと

「深津式」「7R」「PREP法」などの型は、頼む内容を整理する助けになります。ただし、毎回すべての項目を埋めたり、型の名前を書いたりする必要はありません。PREP法は特に、結論→理由→具体例→結論という説明の形を指定したいときに便利です。

また、Chain-of-Thought、Self-Consistency、Tree of Thoughts、ReAct、Chain of Densityなどは、AI研究や複雑なシステム設計でも使われる言葉です。日常の利用では、名前を唱えるよりも、「根拠を整理して」「3案を比較して」「資料を確認して」「重要事項を残して短くして」と、してほしい仕事を具体的に伝えるほうが分かりやすいでしょう。

まずは気になるプロンプトを一つ試し、返ってきた答えを見て、もう一言足してみてください。その往復が、いちばん身近なAIのチューンアップです。

参考: OpenAIのモデル向けガイド、OpenAIの非公開の推論に関する説明、Googleのプロンプト設計ガイド、Anthropicのプロンプト作成ガイド。手法の研究上の意味は、Self-Consistency、Tree of Thoughts、ReAct、Chain of Densityを参照。