読書百遍義自ずから見(あらわ)る
難解な書物でも繰り返し読むうち自然に意味がわかってくるという意味ですが、この読書を「記録」に置き換えてください。
「記録」百遍(相場の)義自ずからあらわる
愚直に山を記録し、谷を記録し、サイクルの起点と終点を記録し、値幅を記録し、節目を割り出し・・・この連続が相場の「意味」を解釈する力を養ってくれます。これが「相場を深く読む」ことの中身です。
一言でいえば、世界が米帝と心中するシステムだ。
1970年代初頭、ドルと金の兌換を停止して以来、全世界が特定強国の通貨政策に依存する金融システムが定着した。
このアメリカ依存体制はトリフィンのジレンマに直面してきた。
米帝はずっと国内外のドル供給を増やす基本政策を施行してきた(低金利イージーマネー時代)⇨世界GDPの拡大(日本のみ蚊帳の外)
しかし経常赤字と政府債務がかさみ体力が弱ってきた(=米帝の経済成長が信用拡大に追いつかない)
そのため2021年、通貨政策を180°転換し、ドル供給を絞り始めた(利上げ⇨QT)。
2020年代はアメリカ帝国(ドル基軸)システムが瓦解していく過程になると考えられるが、投資家は油断している。過去の幻影に囚われ、目先のナラティブに酔いしれている(=危機のマグマ蓄積)。
特定の国の通貨を基軸通貨とする国際通貨制度のもとでは、基軸通貨の供給と信用維持は両立しない。
米帝がドル供給を増やせば世界市場は成長するが、その過程で米帝の国際収支が悪化していく(1980年代以降の低金利イージーマネー時代)。
米帝がドル供給を渋れば世界市場が疲弊する(現状)。2021年、国内経済の延命を優先すべく、米帝はドル供給を絞る通貨政策に転換した(FRBの利上げ開始)。
今後、世界規模で増やしすぎた信用(クレジット)が巻き戻され、世界経済は収縮していく。そして弱いものから倒れていく(世界転戦時代?)。
簡単にいうと、MMT vs ゴールド+石油 ではないか?
つまり、お金を偽装した「負債」の塊とリアルマネーのガチンコ勝負。
鍵を握るのはまたしても日本か?
MMT最後の砦は日銀、日銀がYCCを解除したときMMT時代が終わってしまう。
為政者が是が非でもこれを避けたいと思うなら台湾有事は回避されるはず(日本経済を立て直さないと米帝は物理戦争を戦えない)。
日経の20年サイクルと4年サイクルの終わりが一致するのは2028年頃。
少なくても向こう5年はリアルマネーの時代と考えられる。第四次中東戦争が起きた1973年以降を参照するなら、ゴールドがピークアウトするのは7年後、2030年という計算になる。
天文学の起源は古代バビロニアにあるそうだ。バビロニアに捕囚されていたユダヤ人は、そこで星読みや月読みの技術を習得し、「未来を読む」スキルを磨いたはずである。ユダヤ人はペルシャの影響を受けつつ己の一神教を整備していった。
一神教徒は現代相場の主体である、相場の意思と言ってもよい。彼らが独自の「未来読み」に従って行動している可能性は低くない。どんな行動様式を取ろうと彼らの勝手だが、迷惑なのは一神教の強烈な目的志向である。
彼らは「未来を読む」だけでは満足しない。終末論や最後の審判に深く影響されているから、「神意」を知り、実現するこそがゴールなのである。
彼らは「神に選ばれた」と自負している。「神意」に基づくなら、あらゆる行動が正当化される。彼らは彼らの「神意」解釈に従って現実を改変しようとする。この世界を「設計」し直そうとするのである。
設計と訳される英語のdesignはde+signでできている。deは外部、signは徴(痕跡)。すなわち「己の生きた証を自分の外に残す」ことを意味する。
外に残すために、侵略し殺傷し強奪し征服する。いまのイスラエルを見ても明らかだし、過去500年の一神教徒の暴れっぷりを見ても明らかだろう。
相場に参加するということは、上述のような設計思想と選良意識に導かれる人々を相手にすることに他ならない。ストレスフルであり、一筋縄で解けないのは当然である。彼らは「聖なる目的」(ミッション)のためなら現実を改変することを厭わない(データ粉飾や無用な戦争)。
多くの日本人が悪戦苦闘するのはメンタリティが違いすぎるせいなのだ。けっして勉強が足りないのでも熱意が足りないのでもない。むしろ真面目すぎるのだ。日本人は間違っているとしたら、市場というものを思い違いして、無益な、あまり役に立たない方面の勉強に時間を費やしているからだ。
人が悪くならないと相場では生き残れない。表に出される情報にはつねに裏がある。彼らの意図を汲み取る訓練をしないといけない。
相場の主体である大きな資本の気持ちを想像することだ。さいわい彼らの行動の軌跡はチャートに刻まれている。チャートは嘘をつかない。人間はどんな金持ちでも突飛な行動、不規則な行動はできない。市場には、大きな資本を凌駕する市場の自然力(じねんりき)が働ているからだ。
サイクルが武器になるのはそのためである。
株式は金融市場の中でいちばん目立ちます。目立つがゆえに為政者は株価にいちばん気を遣います。気を遣うというのは株価をかわいがるということです。お金が足りなくなれば、上位市場の国債市場に資金を流します。株式は国債市場の顔色を見ながら動いているので、国債が買われて金利が下げると元気になります。
これが株高メカニズムのほぼすべてです。したがって現代相場において「ファンダが株価を決める」というのはよくできたウソに過ぎません。その筋の人には申し訳ないですがファンダ分析は「労多くして益少なし」なのです。
左のチャートはネットからの拾い物ですが、非常に有益なので活用させてもらいます。
ここからは4年サイクルの閉じ方に関して、いくつか重要な教訓を引き出せます。
サイクルを閉じる調整は、サイクル起点と中間の安値(ハーフサイクル安値)を結んだトレンドライン(青線)を必ず割り込んでいます。今回も例外ではないでしょう。いまの雰囲気からは信じられないかもしれませんが、相場とはそういうものです。時間の支配力を舐めてはいかんです。調整が始まれば去年10月の安値を割り込む可能性大です。ショートの一大チャンスですね。
上昇勾配のきつさから推定すると、調整はクラッシュ型(急落)になる確率が高く、その深度も想像以上の規模になるかもしれません。
2009年のGFCの底は非常に長いサイクルの終点でした(延伸サイクル)。その次のサイクルは短く終わり、早くも2012年に完結しています。もし現在の4年サイクルが48ヶ月を超えて続くなら、その次のサイクルは短めになる可能性が高いです。
サイクル終盤でのブレークアウト/ブレークダウンは持続性がない。ダマシに終わる確率が高い。ダマシに終わった場合、クラッシュ型の調整になる確率も高い。分足、日足、週足、月足、年足を問わない。
2024年2月現在の話だが、米株のATH更新は4年サイクル末期に起きている。これ以上の上昇は無理に無理を重ねるだけ。事後の傷を深める。
イスラエルや中東で起きていることに関して、表メディアでは米帝のプロパガンダか自称専門家のピンボケ解説を垂れ流して人々を現状誤認に導いている。バカの一つ覚えの、いつもの雲上人たちのやり口だ。
戦争を含め「政治」の本音は何を言っているかではなく何をやっているかでわかる。今回の有事に関しても、深い専門的な分析など要らない。米国の行動を見れば狙いは明白だ。なぜサウジでなくイランなのか?なぜイランがBRICS+に加盟した24年1月以降に緊張が高まっているのか?
ドル防衛にほかならない。1970年代以降の「経済秩序」への攻撃を受けたから報復している。米帝にとっては「自衛戦」なのだ。
米国とOPEC諸国の間に取り交わされた協約がこの秩序を生んだ。簡単にいえば「中東の石油を米軍が守る。その見返りにOPECは石油を米ドル建てで売る」。いわゆるペテロダラーの仕組みだ。
この協約が成立して以来、世界中で米ドル需要は急拡大、ゴールドの縛りを解かれて浮遊していた(信頼が揺らいでいた)米ドルの腰が据わった。そして米ドルは基軸通貨の地位を盤石なものとした。
1980年代以降の米帝の繁栄はこの背景なくして考えられない。低金利ゼロ金利のイージマネー時代も。つまり、原油の需要拡大=ドル需要拡大=シニョリッジ拡大=経済成長という黄金方程式が成立していたのだ。
※シニョリッジは通貨発行益と呼ばれる。通貨の製造コストにプレミアム(儲け)を上乗せした価値を「通用させる」政府特権のことだ。たとえば、製造原価10セントのドルを1ドルで受け取らせれば、90セントは米国政府の丸儲けとなる。通貨拡大はビジネス拡大/利潤拡大なのだ。
しかし半世紀の間、米帝に挑戦者がいなくなったわけではない。急先鋒は独裁体制を敷く中国ロシアである。数年前から中露の野心的籠絡にサウジがなびいた。米帝との重大な協約に背く動きをし始めた。BRICS+加盟国通貨による石油決済である。
米帝はこの米ドル排除(脱ドル)の動きを数年間静観していたが、年初のイランBRICS+加盟を「不可逆変化」「point of no return」と受け止めた。だからイラン潰しに動いているのだ。ウクライナやイスラエルは前座であり、本番はこれから起こる。
基本的には株は買われるはずである。
実体経済はよくないし、商業不動産もガタガタだ。そのマイナス分は戦費が埋める。戦火が拡大すれば国債が買われ、金利が4%付近に滞留する。ドルはそんなに上がらない。余剰資金はリスク資産買いに誘導される。
誘導されるがバブル化の気配が高まれば、中銀幹部がすかさず熱冷ましの口先介入を行う。株は微調整のあと、しれっと高値更新へ動き出す・・・少なくても大統領選挙が終わるまで、こんなノリで株高を維持していくつもりなのだろうと思う。