星に生命が誕生した時、空から第一の使徒ティターチャが現れた。ティターチャはこの星にある全ての生命に母の存在を教えた。この私たちがいるこの空間、宇宙は母の内であり、母そのものである。すべては母によって生みだされ、すべては母の一部であること。また全ての生命は母の愛を平等に受けることができることを教えた。
当時、夜に光を放つものは遥か彼方の星々か、この星の周りを回る小さな無数の岩しか存在しなかった。その為夜になると負のエネルギーが働き、天変地異が頻繁に起こっていた。そこで母はこの星の周りを回る小さな岩を一つに纏めて大きくすると、そこに自身の御霊の一部を宿した。そしてすぐに地上に使徒アラーマを遣わせ、母が生んだ、悪しき魂であるズローイによって災厄が起こることを教えさせた。ズローイとは、母が生んだ火の玉である太陽の光が届かない夜になると、全ての生命や、地上を漂う魂に悪い働きをする。
それは災害であったり、大きな争いであったり、生命に悪事を働かせたりと、手段は様々である。私たちは常に、少なからずズローイの囁きを聞いている。しかし、これからは母自身が夜の間の地上を照らし、ズローイから私たちを守ってくださることを伝えさせた。
しかし空から月が消える晩があり、その一晩だけ今まで以上にズローイが暴れ、地上が抉れ、火の海に包まれる事態が起こった。そこで母は第三の使徒ムーマを遣わせ、およそ三〇の間隔で母はお休みになられること。その晩にはよく用心することを教えた。これが新月である。またこれによって、後々に聖杯と月の雫が作られるようになった。
人々は死を恐れていた。そして死後について誤った考えを持つようになった。母はこれはいけないと考えた。ズローイは恐怖によって力を増し、それにより人々はさらなる恐怖を感じるからである。そこで母は第四の使徒ヨマーを遣わせた。そして以下のことを教えさせた。
全ての生命は魂を持つ。それは元々母の一部であり、母によって生み出されたものである。そして生命がその命を終え、肉体が朽ちる時、魂は母、宇宙へと還るのである。宇宙というのはこの世そのものであり、地球の外という意味ではない。皆務めを終え、安らぎを求め母へと還る。そして母の元で十分に休息を得た魂は、再び肉体に宿るのである。
また、ズローイも元はその魂である。ズローイは、死してなお母に還らず、地上を漂う内に母を忘れ、悪しき魂となったものである。
クラッシナ暦紀元前四〇〇〇年頃のことである。人々は、善い行いが何であるか知らなかった。そこで母は第五の使徒ナルメラを現在のエジプトに遣わせ、九つの善い行いを教えた。
一、神を信じることは善い行いである。
二、神に祈りを捧げることは善い行いである。
三、知ることは善い行いである。
四、敵対する者の言うことに耳を傾け、よく吟味すること。
五、あなたをこの世界に生み出した母親にも感謝し尊重すること。
六、また育ての親にも感謝し尊重すること。
七、母を信じない者も、母の娘である。同じ母の娘として扱うこと。
八、母を信じない者がいたら、母の存在を教えること。
九、皆母のように、愛を注ぐこと。
これらを自ら進んで行う者は大きな災いやズローイからの苦しみから遠ざけられるだろう。そして死後すぐに母の下に還り安息を得ることができることを教えた。
クラッシナ暦紀元前二六〇〇年頃のことである。人々は善い行いは教えられたが、悪い行いは教えられなかった。そのためエジプトの指導者による悪政により苦しむ人々も多かった。そこに第八の使徒モーラが現れ、虐げられていた人々を連れて山へと登り、九つの戒めを記した石碑を人々に授けた。
一、神を信じないこと、これは悪い行いである。それはあなた自身が母から離れていくことである。
二、物事をよく知らずに判断すること。
三、自ら知識を得ようとしないこと。
四、自分が絶対に正しいと思うことは悪い行いである。
五、例え罪を犯した者がいても、憎まないこと。人を憎まないこと。ズローイを憎まないこと。
六、不用意に殺生しないこと。皆母の娘である。
七、姉妹の物を盗んではならない。皆母の娘である。
八、偽証をしてはならない。皆母の娘である。
九、いかなる理由があっても差別をしないこと。皆母の娘である。
もしもこれらを破れば、すなわち自ら母の娘であることを拒むということであり、自ら母の元へ還らないということである。母の元へ還れない魂はズローイへと堕ちてしまうことを教えた。
クラッシナ暦紀元前一〇〇〇年頃、現在のイスラエル、イェルサレムに第七の使徒イェサーが降り立った。人々が偽りの神を信仰し、母を忘れ、愛を忘れ、ズローイとなって母の元に還る魂が減ったためである。イェサーは多くの街を周り、真実の神と、分け隔てのない愛を教えて回った。例え貧しい生まれであろうと、身を売る仕事をしていようと、母の前にみな平等であることを教えた。
しかし母の光を教えた弟子の一人に裏切られ、捕らえられて処刑されることとなった。イェサーは
しかし、三日後に降り立ち、再び母の光を人々に教えた。
クラッシナ暦紀元前四〇〇年頃、イェルサレムに第八の使徒ムハーラが降り立った。ムハーラは当初イェルサレムで母の光について教え広めていたが、母を信じない者たちに迫害され、母の光を思い出した者たちとイェルサレムを出てメディナに移動した。その後軍勢を率いてイェルサレムに戻り制圧すると、言った。「真理は来たり。虚偽は去り。我らが母を
讃えよ。偽りの神の力は我が足下にあり、これにより滅亡する」
アラビア半島の統一が成され、そこから母の光を人々に広めていった。
クラッシナ暦紀元一月一日(西暦九四四年四月二五日)の深夜、現在のロシア連邦、オムスクのダチンイに光の玉が降り立った。その日は月がなく、ズローイに怯えていた人々にとって、とても安心出来る光だったという。急いでその場所に行くと、そこには黒い、薄い布を纏い、ノウノフラーラを髪に飾った人並み離れた美しい女がいた。
その髪は月の光のように輝いており、そのお姿を目にするだけで、心の中の不安などは全て消えさったという。男は「貴方様は一体、どなたなのでしょうか。お見受けする限り、人の身ではいらっしゃらないようですが」と尋ねると、女は「私はノーンナ。我らが母より遣わされし九番目の使徒。最後の使徒である」と答えた。そしてノーンナ様は言った。「終わりが近付いている。人が増え、偽りの光が夜空を照らし、月は光を弱め、ズローイは力を増す。祈りを忘れてはならない。母はあなた方を見捨てないが、あなた方が母を見捨てた時、母の光は届かなくなる」とおっしゃった。ノーンナ様は聖杯と、月の雫を教えた。そして絶えず祈ることを教えた。人々は忘れていた信仰心を取り戻し、強まっていたズローイの力は削がれた。
人々は終わりを告げる月の使徒、ノーンナ様が降臨したことを重く受け止め、その日をクラッシナ歴零年零月零日とし、翌晩をクラッシナ歴元年一月一日とした。