■どんぶり勘定を脱却したい
どんぶり勘定の中小企業では、社長の考え方に特徴があります。
① 決算書は税理士が作るものと思っている、丸投げ
② 決算の数字は決算が確定しないとわからない、直前まで全く把握できない
③ 逆ザヤの案件がある、売掛金が焦げ付いたことがある
どんぶり勘定では、①②の状態で、場合によっては③の状況に陥ります。
私へご依頼頂いた時点で、①②かつ③にも陥った事業者様がいらっしゃいました。
この中小企業では、次のような状況でした。
・決算書は税理士任せ
・社長が決算数値や月次試算表を把握していない
・ある1件の大赤字で利益が吹き飛んだことがある
・そして、ある1件の貸倒損失で、資金繰りが悪化したことがある
このような状況にあると思われた中小企業の経営者は、どんぶり勘定を脱却することをお勧めします。
この事業者様では、管理会計に基づく利益管理の方法や、資金繰り管理の方法について、私から事業者様へ丁寧に説明た上で、それぞれのフォーマットを事業者様の実情に即した様式で作成して、どんぶり勘定を脱却することを進めています。
■しっかりとした経営理念に基づく経営計画の作り方~補助金申請にも活用~
1.経営計画とは
・経営計画とは、現状から将来のあるべき姿に到達するための「道しるべ」となるものです。経営計画は、絶えず変化する環境の中で会社が現在よりも高い水準の目標を設定し、その目標を実現するために、何をするべきかが明確になっています。それによって、自社のあるべき姿を具体的に示し、着実にその姿に到達するために「経営計画」を作成する必要があるのです。(出典:中小企業庁)
・経営計画を作成するときのポイントは2つあります。具体的で、現実とあまり乖離しすぎないものであること、目標額を具体的数値で示すこと、です。
・補助金申請の際にも、経営計画の策定が必要となります。経営計画の策定が出来るようになれば、事業を数値で見る事が出来る、将来を数値で見通すことが出来るようになります。一つ一つ段階を進めていけば良いので、ぜひ挑戦してみてください。
2.経営計画の前に
・「経営計画」を立てる前に、まずは、経営者であるあなたが、自身の会社への「思い」=「経営理念」「経営方針」をここで確認していきましょう。頭の中でいろいろ思い描いていることや理想を実際に紙に書いてみてください。書くことによってその「思い」が明らかになり、これが「経営計画」へとしっかり結び付くのです。
・「経営理念」は、会社をどのように経営していくかという考え方のことで、「経営方針」とは、経営理念をより具体化したもので経営ビジョンや経営姿勢を明示したものです。
・カーボンニュートラル、CO2削減が事業活動に欠かせない視点になっている現在においては、「環境経営方針」を策定することを、私はお客様の中小企業の社長へお勧めしています。環境経営方針を策定することで、環境意識を鮮明に表明して、社内外への行動に基軸の一つに環境面を位置付ける意思表示にもなります。お客様の中小企業の、その得意先企業からも良い取組みであると評価されているとお聞きしています。特に、中堅企業や大企業を得意先とするBtoBの中小企業は、ぜひ取組まれることをお勧めします。
3.経営計画の作り方
・経営理念と経営基本方針が書き出せれば、その「思い」が次のステップ「経営計画」へとつながります。中小企業の経営資源は、「ヒト」「カネ」「モノ」等に分類されます。中小企業は、少ない経営資源をやりくりしながら、戦略的に重要な事業活動を行っています。あなたの会社は経営資源をどのように調達して、どのように活用していますか?
・「経営計画」を作成することは、会社の方針と目標を定め、それを経営幹部や従業員との間で共有し、社員一丸となって事業展開を行っていく上で、極めて重要です。過去の実績と5期年度分の経営計画を作成してみましょう。なお、経営計画のフォーマットは、会社の考え方、業種や規模等により様々です。
■小規模事業者が利益を確保する方法~基本編~
小規模事業者は、中堅企業・中小企業に比べても経営資源が限定的です。私のお客様の小規模事業者でも、例えば製造業では設備改修できず古い設備を長年使い続けている、経営者が製品の製造も担っている、そのような事業者様がいらっしゃいます。
1.先ずは不要な固定費を削減すること
・この事業者様は私が経営支援に入る時点で、驚くべき資金不足状態に陥っていました。資金繰り表はありませんでしたので、預金口座の動きなどから把握すると、毎月驚くべき資金不足額であることが判明しました。
・このような小規模事業者で多額の資金不足の状態であっても、不思議なもので、本当に必要なのかと思われる支出があるもので、先ずは固定費の支出を洗い出し、不要不急の費用を削減していきました。このお客様は、固定費削減額に、後述する価格転嫁・売上単価アップの想定額を加算すると、資金不足の解消に目途を付けることが出来ました。
・ここで固定費とは何かを説明します。固定費とは、売上高や生産量に関わらず、毎月ほぼ一定額発生する費用のことです。固定費を削減できれば、継続的なコスト削減効果が期待できます。例えば、賃料・通信費・保険料などがありますが、事業者によって個々に異なります。自社の固定費とは何か、この把握から始めます。
2.本業の商品・サービスの利益を確保すること
・一個あたりの製品(商品・サービス)の利益を増やす方法は、①価格を上げるか、②原価・経費を下げるか、の二択です。価格を上げることは競争力の低下につながりますし、取引先との価格交渉が必要な場合もあります。製品の仕様やサービスの内容を変えることなく、原価・経費を下げる方法としては、業務の効率化、ロスやムダの削減、生産性向上の設備投資、仕入先の見直しなどが考えられます。
・利益が出なければ、事業を継続することはできません。適正な利益を確保するためには、原燃料価格・人件費等の上昇を価格に転嫁することも必要です。一方で、値上げは競争力を低下させますから、コストダウンにより価格を維持する努力も重要です。具体的には、ITツールを導入して業務効率化をすすめることで販管費を削減することや、生産工程の見直しやミス・ロスの削減、生産設備の能力向上により売上原価の低減を図ることなどが考えられます。(出典:経済産業省)
・前述の支援事例では、商品群別と得意先別に分類の上で、販売単価の引き上げ余地を検討して、2種類の価格転嫁策を実施しました。この価格転嫁による売上上昇想定額を含めて、資金繰りを安定水準まで見通すことが出来ました。
3.利益確保を継続するには利益を把握すること
・利益を継続的に確保するためには、利益を把握することが不可欠です。具体的には、売上から売上原価と経費を差し引いて算出される「利益構造」を把握します。その上で、売上向上(マーケティング、新規顧客獲得など)とコスト削減(変動費・固定費の見直し)の両面から、具体的な対策を講じていきます。
・利益は「売上 - 費用」で計算され、「売上 - 変動費 - 固定費」と分解して考えることができます。商品別、部門別など、どの要素が利益に貢献しているかを分析します。そして、売上総利益率、営業利益率、経常利益率などの利益率を計算し、自社の収益性を評価します。
・どんぶり勘定を脱却する、これこそ利益確保にとって大事な視点です。