私は長年、保育の現場や研究に携わる中で、子育て中の皆さんからさまざまな子育て相談をいただいてきました。どの相談にも、そのご家庭ならではの悩みや願いが込められていて、私自身も多くのことを考えさせられます。
今回は、その中でも私が改めて『子どもとの会話ってなんだろう』と考えるきっかけになったご相談をご紹介します。
『誰かと話をしている最中に「ねぇ、ママ」「パパ見て!」と子どもが話に割って入ってくることがあって、イライラします。コミュニケーション能力が低いからなのでしょうか。どう対応すればいいのでしょうか』という質問をいただいたことがあります。
子どもの「聞いて!」「見て!」が大好きな私としては、新鮮な質問でしたが、だからこそ考えるチャンスになりました。その時、考えたことをお話しします。
子どもが発語するのは1~2歳頃ですが、0歳でも声を聞いていたり、喃語で反応したりします。
はっきりとした言葉を話すことができなくても、「おいしいね」「楽しいね」などの言葉を聞いたり、自分が発した「あー!」という言葉をそばにいた大人が「あー!」と柔らかな声で繰り返したりすることで、「言葉が行き交う」という嬉しさを体験しています。このようにして、身近にいる大人と応答的な関わりを重ねる中で、人と関わる力の基盤が育っていきます。
そして4~5歳頃になると、相手の言うことを理解しようとしたり、伝わるように話そうとしたりなど、話す力が伸びていきます。
だからこそ、お子さんが「聞いて!」「見て!」と言ってくるのは、これまでの育児が効果を発揮している証明であるわけで、小さくガッツポーズをするポイントなのだと思います。(笑)
さらに相談は続きます。『大人の話をしている時だということも伝えたいんですよね。どうすればいいんですか』と。
私は、子どもの話より大事な大人の話を思いつけないのですが、精一杯問いに寄り添ってみました。
会話をしていた相手にちょっと待ってもらって、子どもの話を聞き「もう少しで話が終わるから待っていてくれる?」と提案して元の会話に戻るという案や、今でなくちゃダメという強い意思表示があった時は、大人の話を切り上げてじっくり話を聞くという至極当たり前な対応を伝えているうちに、子どもが大人の話に加わろうとしてくる時の理由についての考えが浮かんできました。
「その話、私も知っている!」「ぼくはこう思うから聞いて!」「ねぇ、ちょっと話が長くない?」など話に加わってきた理由はさまざまですが、大人の会話を邪魔しようと思っているのではなくて、
自分も会話の輪の中に入りたいという積極的な気持ちの表れなのではないか。
大人の話に加わってくるというのは、決してマナーが身についていないということではなく、おしゃべりをしている大人を見て、「人と話すのは楽しそう」と感じたからこそ、「聞いて!」と加わってきたのではないか。
そう考えてくると、「話すっていいね」「おしゃべり最高!」という想いに包まれました。
そこで「話したいことがあるって素敵なこと。どうぞ大事にしてくださいね!」と笑顔で語りかけてこの相談を終えました。
さて、あなたはどう考えますか?