種籾(たねもみ)の選別は特別厳重に行います。
真面目な人は、比重でいうと1.13の塩水に浸して、沈んだものだけを選りすぐって種とします。
僕たちはさらに厳しく、比重1.17の塩水での選別、あるいはそれと同等の厳しい選別で、特別な種を選びます。
僕は耕運=耕す、ということをしません。ドライブハローという機具で田んぼの表面を浅く削ります。その後、入水したら「代掻き」という作業をせずに苗を植えます。
苗は発芽の時以外は、被覆や加温もすることなく、完全な露地、自然状態で育てます。厳しく、かつ丁寧に観察して、きめ細やかな水管理により最高の苗を育てます。「苗半作」といわれ、健康な苗を育てることが稲作における最大の要とされています。
とはいえ田んぼでの手入れもとても大切です。
一株一株、盆栽をいじる様に手入れをします。草取りの目的もありますが、株それぞれの姿勢を整えるためです。光を受け入れる体制にして光合成が十分に行われるすがたにしあげます。
動力式の除草機も一切使わずにひと株ひと株、丁寧に、優しく草取りをします。稲や、稲の根をなるべく痛めない様に扱いたいからです。茎が太く、葉幅が広い、消化能力、光合成能力も高い(デンプンの生産性が高い)イネ。健康的で、食味、品質の良いお米が穫れそうな姿にします。
有機肥料、化学肥料を一切使用せず育てます。肥料(窒素分)を減らすと玄米中のタンパクは減少します。低タンパクのお米にすることで雑味がなくなるといわれ、それは科学的にもほぼ証明されています。
栄養の供給のためには、自家製の米ぬかのみで土づくりを行います。
無肥料栽培なので一般栽培に比べれば生育量は少ないですが、風通しが良くなり、稲の受光量が多くなるので光合成効率も良くなります。光合成によるデンプンの生産と蓄積がしっかりできたら、デンプンの結晶は密に蓄えられます。
丁寧に育てた稲を、天日干しでしあげます。
刈ったばかりのお米は20%以上水分を含んでいます。太陽と風の力でじっくり時間をかけて一粒一粒のお米を丁寧に乾燥させます。ねばり、コシ、つやを生み出している、糊の層(デンプン粒)にかかる負荷を少なくするためです。もっちり、うまみがぎゅっと詰まった、香り高いお米になります。
収穫後のお米はもみで保存し、ご注文の都度精米しますので、常に新米の様な状態でお届けできます。
最新の稲作技術書物から江戸時代の農書まで幅広く収集し、それらを読み込んで自らの技術に取り入れています。
とくに戦後から昭和の中期ころは、日本人の稲作の熱意と技術が最高潮となった時代です。その頃の技術は今忘れられかけていますが、当時の資料を収集して勉強し、自分の稲作技術としてとりいれています。