考察(A)

鳩羽さんによる考察(総合雑談2022/05/08より)の抜粋

カルカミ世界観考察

 


 ここでは「カルカミの領土・人材データ的には中世あたりまでいけそうなのに、どうしてイメージがギリシャ・ローマあたりで浮かぶのか」という疑問について考察していきます。


今回は上記の疑問を軸にするため、

   1.疑問の分解と再考察

   2.実際のゲームデータからの考察

   3.可能な世界観イメージの考察

という順にまとめていきます。

 


1.疑問の分解と再考察


 まず今回のテーマは「カルカミの領土・人材データ的には中世あたりまでいけそうなのに、どうしてイメージがギリシャ・ローマあたりで浮かぶのか」というものです。これは実際のリアルな中世、ギリシャ・ローマ時代の文明ラインとは少し違う「イメージ上のその時代」の認識のため、まずはこのイメージを確認する作業を行います。



 先に「イメージ上のギリシャ・ローマ」がどのようなものかみていきます。


 この疑問を持たれていたしるくろさんと、あとサーバーでカルカミをプレイされているPLの方々の半数くらい…?が、以前私の美術史ラジオに来て頂いていたかと思います。そこでそこそこに文明レベルの解説はしていたのと、藤村シシンさんの古代ギリシャゲームさんぽなどご覧になってる方もいると思うので、古代ギリシャ・ローマの雰囲気はわりと皆さん解像度高く持っていらっしゃるのかな、と思っています。



 そこを踏まえると、古代ギリシャ・ローマのカルカミにチューニングしたイメージは、以下のようなものでしょうか。


・神殿があちこちにある

・国の概念がしっかりしており、複数国家がある

・王や兵士、商人、農民など身分がしっかり別れているが、あまり厳格ではなさそう

・わりと良い感じの科学技術

・人々はわりと自由に楽しく明るく暮らしている

・旅人や交易商人など、遠くを旅する概念がある

・その時々で違う神に祈る(戦のとき、耕すとき、祭りのときなど)ことを自然に行う(=多神教)

・神と人々の距離が近く、「神の言葉を聞いた」が普遍的にある

・(神々も含めて)雰囲気が明るく楽しそう


 こんなところでしょうか。まだあるとは思いますが、ひとまずこれくらいにします。



 ギリシャもローマも多神教なのは有名なので(ギリシャ・ローマ神話ともにそう)、カルカミの世界観と非常に合いやすいのはとても大きいと思います。それに加えて、多神教であるためにあちこちに多様な神の神殿があっても喧嘩をしないのも大きいです。


 たとえばセス様とヨタカ様はどちらも祟り神で役割的には似た、系統の同じ神といえますが、神殿が近くにあっても信者の取り合いにはなりませんよね。

むしろセス様の神殿にはアストラ様も一緒に祀られていてもおかしくないっていうか自然だし。(合祀の概念)


 さらに言うと、「それぞれ別の推し神がいても、何柱の推し神がいても問題ない」もあります。推し友が違う場面で違う神を推していても、特に怒る人はいなさそうだな、という雰囲気があります。



 こういった、ほどほどに友好的でほどほどに文明があり、特に多神教のイメージが強く、おおらかで明るくて楽しそう、というのが一番のカルカミ的特徴かなと思います。



 では次に、中世のイメージをみていきます。


 よく言われる「皆が言う中世は近世」の話がありますが、この面子はCoCダークエイジ等の造詣もあってそこそこガチ中世イメージが強いと思われるので、そちらのイメージを優先して考えていきます。



 ここもどんなイメージがあるか書きだしていきましょう。


・村に教会がある

・農民、騎士、王など身分がかなり厳格に決められている(下克上無理そう)

・生存が厳しそう

・医学がクソ(ダークエイジの回復って…)

・ていうか科学技術がクソ

・魔女狩りとかありそう

・暗い(明度ではなく陰鬱さ)

・魔法はなくとも剣と鎧と盾と泥臭い戦闘


 こんな感じですかね…?こちらは皆さんイメージの差がありそうだなと思うんですが、とりあえずこの辺で…



 ここでカルカミ世界観を考える上で欠かせないのが、ガッハ神族のことです。るるぶにもガッハ神族のイメージがキリスト教やイスラム教とあります。一神教なんですね。実際、ガッハ神族のデータもデータ上は「従神」ですが、説明文を見ると「絶対神ガッハと天使などの従者」になっています。一神教だわ。これがカルカミ世界観を考える上でかなりの制約になっている気がします。


 つまりは「賭け事をするときに運をくれるのも、空の星を造りたもうたのも同じ神」になってしまうからです。

 や、やりづれー!

 また、科学というか医学が停滞したイメージや身分が厳しいイメージも拍車をかけている気がします。言い換えると「頑張ってもあまり生活が好転しないので、特に神に祈ってまで必要以上の努力をしようとは思わない」になるのかと。もうこの時点でカルカミ遊ぶのかなり厳しそうです。できなくはないけど。異神に速攻持って行かれそう。つらい。



 まとめると、「一神教で多様な神が認識されにくい上に、社会の自由度が低そう」あたりが中世のぼんやりしたイメージになるかと思います。

 この時点でかなりツラいしもう最初の疑問への答えは出ていると思いますが、では実際のデータからの要素をみていってみましょう。


2.実際のゲームデータからの考察


 次に、実際のカルカミのゲームデータがどのようなものか、どんな時代や世界観で使えそうなのか確認していきます。神のデータ以外には領土と人材がありますから、そこを順番に見ていきます。



 まずは領土から。大まかに3つに分けてみていきます。

 「自然のもの」「人工のもの」「信仰に関わるもの」の順です。


 丘、平原、洞窟、川、荒野、林、山岳、泉、湖、森林、大森林、大洞窟、大水脈…

 このあたりは自然そのものですね。現代でも存在するものなので、あまり厳しく考えなくてもよさそうです。


 ただ、時代が下ると開拓されてモノが減る、というのは考えられます。しかし、おおよそ18世紀くらいまではかなり手つかずで残っていたと考えていいです。未開拓の地を開拓しようという運動は、15世紀から18世紀後半くらいまでがピークといえます。もちろんもっと古くから現代まで続けられていますが、活発なのはこのへんかな…最初は新大陸の発見(コロンブスが有名ですね)、最後は南極や北極点の開拓。極地への探検家の歴史はかなり楽しいので、よかったら調べてみてください。「フランクリン遠征」とか「エレバス号」「テラー号」はオタクの好きなやつです。開拓史は人間がいかにして自然を征服し、神秘を技術と科学の名で書き換えていったのかの歴史といえます。しかし、知れば知るほどその脅威への畏怖、神秘への信仰もともに生まれていったことも事実です。開拓されることによって信仰が消える、とは一概に言えないところが、神様を考える上で解釈の余地をたくさん作ってくれています。



 それから街道、墓地、村、農地、街、鉱床、田園、王城。


 これらが人工のものです。とはいえいずれもかなり古代から現代まで存在するもので、こちらもあまり時代を加味しなくてもいいかと思われます。

 街道はそりゃあ古くから道はありましたが、しっかりと敷かれたのは「往来する人が増えてから」で、特に整備されるのは「お金を出してまで維持してくれる人が出てきてから」です。結果、交易や軍事を行いたい支配者が出てきてから、ということになります。やっぱいつの時代にあってもいいな。そういえばカルカミ、水路はあまり考慮されていないですね。海神イクシュ様いるのに。街道を「水路や運河」と見立てるのも楽しいかもしれませんね。


 町や村の規模なんてほんとうになんとでもなりますから、この辺も特に考えなくてよさそう。あ、鉱床は「人に鉱床として使われてはじめて鉱床(そうでないとただの地面)」なので、ここに入れています。人間が金属を必要とする文明である証左です。


 あと墓地、宗教によって葬り方は様々ですが、ぶっちゃけ「海に撒くなら海に墓地がある」とか「鳥葬するなら空が墓地」とも言えるので、ここも解釈は広くて大丈夫そう。


 唯一気になるのが王城でしょうか。ただ、王城は「民衆の(世俗的)代表者の居る場所」とも読み替えられます。つまり、首相官邸を王城として扱ってもいいわけです。都庁や県庁も王城扱いでよさそうですよね。古代ギリシャは民主制でしたが、完全なる多数決の国だとしても「議会」が王城といえます。そう思うと、どんな時代であっても「王城」は使えそうです。



 最後に聖地、神殿、聖域。

 これはカルカミ的には、人の子との繋がりがしっかりあればいつでも使える。そうでなければかなり限定的、ではないでしょうか。


 神殿は扱いが楽なほうだと思います。「人の子が祈りのために建てた場所」は須く神殿です。寺もそう、教会もそう。これはどんな時代にもあっていい。便利。そして残り2つなんですが…例えば日本には「神のおわす山」とか「神の住処の湖」とかがそこそこあります。ここは「その神にゆえんがあるので聖地」と言えます。


 聖域は言葉の定義から言うとさらに狭く、聖地よりは限定された場所なのかな?とも思います(カードの番号指定やデータからしても)。より神の祝福を受けた場所、神が居やすい場所、とでも言えそうです。これらは「神がここだと言った」「神が場所を選んだ」のに対して、民がしっかりそれを認識してくれないと意味がないので、そういう意味で繋がりが必要といえます。そういった繋がりが薄い時代や世界観を構築する場合、現実にある「聖なる山」とか「聖なる神殿の中庭」とかではなく、世界観やその神にあったフィールドを考え出せば良い感じに使えるんじゃないか…と思っています。たとえばそうだな…現代で考えるなら、「スポーツの神」の聖域は競技場のトラック内、とか そういう感じかなあ…



 次に人材を見ていきます。

 どの時代でも汎用的に使えるもの、限定されるもの、の2つに分けてみてみます。


 まずは戦士、僧侶、農夫、御者、宣教師、道化、商人、発明家、建築家、将軍、君主、英雄。こちらはどんな時代でも汎用的にいけるだろうものです。ほぼほぼ気になるところもないかと思いますが、一部補足を。


 僧侶と宣教師の違いは、「その場で仕事するか、外に広めにいくか」です。大事なのは後者で。広めにいくには「教えを知らない人がいないといけない」からです。開拓や旅の概念と近しいものです。


 それから御者。現代では無理では?と思えますが、データを鑑みてもつまりは「移動のエキスパート」です。現代ならば「運転手やパイロット」と読み替えられます。


 君主と英雄も、かなりその場その場に合わせられます。君主はもちろんヒミコもあてはまれば、総理大臣も当てはまるでしょう。英雄もヘラクレスからシモ・ヘイヘ、ある意味では杉原千畝もそう言えます。杉原千畝、ぱっと出てこなかったらググってみてね。私は彼を英雄だと思います。


 それから魔術師、医師、騎士、聖者。これは時代や設定によってはある程度のお膳立てや読み替えが必要かなと思います。まず魔術師、そりゃそうですね。そりゃそう。でも、現代でもCoC的な魔術師ってアリだと思うので、そういうのはなんか…いいですよね…。ロマンある。


 医師はなんで?となりそうですが、「医師」の概念が時代によって飛びすぎるからです。医学の進歩については割愛しますが、医師の仕事がどちらかというと「薬師」や「切り開きプロ」であった時代もそこそこあります。日本でも平安時代や鎌倉時代は、病気になったら薬師に薬を貰ってあとはずっと祈祷させる、がスタンダードでした。呪術師や祈祷師と読み替えるのもありですね。あとるるぶの医師のイラスト完全に現代や。


 騎士は、これねえ…兵士や将軍と違って、騎士は「身分」なんですよね。武士とほぼ同じと思っていいんですが…「より上位の主君に仕える、戦闘にも長けた地域のローカル支配者」なんですよね。チョト…メンドイ!ゲームで使う分には「戦える貴族」みたいな認識の方が楽かと思います。その方がどんな場面でも使えるから。


 聖者はですねえ…これ、領土でいう聖地と似たようなアレです。「神様の声や言うことを素直に聞いてくれる民衆ありき」になります。でないと頭おかしい人になっちゃうから…。これも、「その時代と神にあわせたスタイルの聖者」を用意してあげたらよさそう。


3.可能な世界観イメージの考察


 以上、イメージしている世界観の再考察と、ゲームデータの考察を行ってみました。

 これらから、どんな時代や世界観が使えるか?と考えていくんですが…


 ぶっちゃけなんでもいける気がしますね!ただ、考えるなら中世よりも現代の方がそのまま簡単にやりやすいのは確かです。古代ギリシャやローマと現代の共通点は「多様性が認められていたこと」です。もちろん差異は大きいですが。


 中世は、「同じ神に祈り、自分の範囲の仕事を行って、過不足なく生きれればよい」みたいな考えだったので…ただ、これもベースにしてファンタジー世界を作ればいいわけで。不都合の多い世界観というのは、逆に言えば「そこから神の導きでどんどん良くして、信仰を得られる」世界観と言い換えられます。ひとひねり入れれば、中世ベースの世界観はかなり面白くなりそうです。たとえば「海に浮かぶ島々からなる村で、水路も多く、水の神と親しい」中世ベースとか、かなりイメージ変わるし楽しそうかなと。


 現代も、多くの人に広範に信仰を得るのはそこそこの難易度になりますが、同じ趣味や地域の人たちから信仰を得る、というのはそう難しくないイメージがあります。離れた場所にいる人たち同士で共同体が作りやすい社会なのもいいですよね。電子機器など今までになかったものも、もちろん絶対楽しいですよ、そういう神様作るの…



 カルカミのデータはかなり汎用が効くように作ってあり、潮屋さんすっごいな…と舌を巻くばかりでした。いや本当に見ていって楽しかった…実際の歴史をベースにしたものだけでなくても、いろんな世界観でのカルカミ、きっと楽しいと思います。いろいろやってみたい!こういうのどうだろう、って思うもの、皆さんのお話もいっぱい聞きたいです。


 このあたりを結びの挨拶にして、終わらせていただきますね。読んで頂きありがとうございました。


総合雑談2022/05/08より