意見陳述書
大阪地方裁判所5民事部合議4B係 御中
2023年3月16日
原 告 〇 〇 〇 〇
私は、大阪大学で勤務する約1100人の非常勤講師を契約更新10年上限で毎年順次、大量に雇い止めにするという今回の事態は、研究・教育の府である大学が、組織的、系統的、しかも大掛かりに基本的人権を蹂躙する、何よりも人間の尊厳の問題だと考えています。
私たち原告4名は、本業や本務校のない、いわゆる「専業非常勤講師」として、長年にわたり大阪大学で授業を担当してきました。専任教員と同じように、授業の計画、実施、成績評価を自らの責任で行っていますが、給与は授業回数分のみで、残業代や研究費などの支給はなく、生計のために複数の大学で授業を掛け持ちし、しばしばアルバイトで補いつつ、懸命に生きています。
私たちの担当する科目は、カリキュラム全体の中で、恒常的、継続的な科目として位置づけられています。にもかかわらず、半年または1年の有期雇用とされているため、契約更新があるかどうか、常に不安を抱えながら学生たちに講義をしています。そんな私たちにとって、無期雇用への転換は、最低限の要求です。
ところが、大阪大学は、無期雇用への転換を頑なに認めようとしません。その理屈は、2021年度まで、労働契約ではなく、「準委任契約」であったからというものです。全国の大学で、準委任契約だから労働契約法の適用がないなどという現場の就労実態とまったく違う口実にこだわっているのは大阪大学だけです。
私の所属する外国語学部では、2022年7月、教授会において突如、非常勤講師の公募制度の導入が決定されました。当事者の私たちには公式の説明会さえ開かれないまま、2022年9月中旬から、来年度(2023年度)の公募が強行されました。この公募では、私たちのような雇い止め対象者は、たとえ応募したとしても、6ヵ月以上のクーリング期間を空けなければ、採用・再雇用は不可とされています。私は、これは、無期転換を回避するための、組織ぐるみの大掛かりな「偽装公募」としか言いようがないと考えています。
先に述べたように、不安定雇用の非常勤講師は、劣悪な労働条件のもと、将来にわたって何の身分保障もないまま、常に生活の不安に苛まれています。その上、大学内部においては、何重もの管理・統制構造(大学理事会→各学部→各専攻→専任教員→非常勤講師)の最末端に置かれています。こうした中で、それぞれの非常勤講師は、理不尽を飲み込み、結局は「自己責任」で、これを機に、大阪大学を去るのか、それとも、不本意にも無期転換権を捨てて、6ヵ月以上のクーリング期間を甘受し、公募に応じるのか、という究極の選択と決断を迫られ、苦悶してきました。
今回、原告は私たち4人ですが、無権利状態の中、声を上げることすらできない、同じ立場の非常勤講師がどれほどいることか、ぜひ想像していただきたいと思います。大学当局の陰湿で画策的な態度を前に、無期転換の申込みすら、ためらう人がほとんどです。労働者の権利であるはずなのに、なぜ、その行使を私たちの側が怯えなければならないのでしょうか。
本来、大学は、広い視野に立ち、誰もが平等・対等、自由闊達に研究・教育を行う場であるはずです。とりわけ苦難の時代にあっては、若い学生たちと真摯に語りあい、明日への光を見出していく希望の場でもあるはずです。その一端を担う教員自身が、このような生活の不安と、精神的隷従に追い詰められていて、どうして、学生たちとののびやかな学びあいの場が保障されるのでしょうか。ともに働き続けてきた非常勤講師の仲間たちは、今まさに3月末をもって、無念の思いを胸に散り散りになっていきます。
私たちはそれぞれ、誠実に研究に励み、学生たちの教育にあたってきました。大阪大学は、大量雇い止めを撤回し、労働契約法第18条で定められた5年無期転換という最低限のルールを守ってほしい。この国に生きる同じ人間として認めてほしい、という思いでいっぱいです。
私たちをいつもの教室に戻らせて下さい。
以 上