一般的に経時変化とは「時間の経過により繊維や染料に化学変化が生じ、性質が変化すること」とありますが、ここでは私の持論と、今まで金属を扱ってきた経験から書かせてもらいます。
金属でいうところの「経時変化」は、金属表面に空気中の酸素が結合して酸化作用を起こし、表面が軽く錆びる現象です。
この酸化作用に大きく関係しているのが、人の汗などです。
人の汗などにより、酸化反応が早まり、触れたところと触れないところの差が顕著に出てきます。
特に、磨いてすぐの時は変化が激しく、銅は朝磨いても、その日の夕方にはハッキリ判るくらい変色しています。
真鍮は最初の黄金色から、だんだん濃い黄金色に。そして、輝きが消えて燻んだ感じなってきます。あまり触れないところは、黒や茶色に変色して、触れている所との濃淡ができて「風合」が出てきます。
銅は、最初の銅本来の赤い金属色から、だんだん色が濃くなって黒味を帯びてきます。特に銅は酸化が早いので、触れた所と触れないところの差が大きく出ます。酸化が進んで1週間くらい経つと、何となく七色の「玉虫色」に近い風合いになり、その後、黒に近い茶色になっていきます。最終的には十円玉でお馴染みの茶色へと変化します。
また、銅の酸化皮膜は弱いので、よく触る部分の皮膜が取れて地色(銅色)が出てきます。よく触れるところと触れないところの差がハッキリ出て「使ってる感」がとても強く出ます。
※掲載している写真の色合いは、ご覧になっているモニターにより変化する場合があります。
左写真の上2本が銅、下2本が真鍮です。
それぞれ、上が磨き立て、下が経時変化したものです。
銅は茶色く、真鍮は燻んだ感じになります。
身近な金属でいうと銅は十円玉、真鍮は五円玉と同じです。お財布の中の十円玉と五円玉を参考にしてください。
左写真の左側が磨き立ての真鍮、右が掲示変化したものです。
燻んで輝きがなくなります。
よく触れるところは艶消しの黄土色、あまり触れないところは黒または茶色に変色します。
人の汗の成分などによって色は違ってきます。
銅の経時変化は非常にドラマチックです。
最初はピカピカの赤い金属色(上の写真)ですが、だんだん玉虫色(かなり黒っぽいです)に変色し、やがて焦茶色へ。
そこから10円玉(銅製です)と同じ色に変化していきます。
変化が終わっても、槌目の凸凹でコントラストが付き、とても風合いのある模様になっていきます(下の写真)。
銅の酸化皮膜は非常に剥がれやすいので、ペンのよく触る部分は地の色(銅本来の色)になりますが、触っていないとまた元の色(茶色)に戻っていきます。
真鍮に比べ、日々の変化を楽しんでいただければと思います。