2026.03.14
お知らせ
ハラスメント相談窓口|プロジェクト終了のお知らせ
2026.03.14
お知らせ
ハラスメント相談窓口|プロジェクト終了のお知らせ
「ハラスメント相談窓口」につきまして、本日以降の新規相談受付を停止し、プロジェクトを終了いたします。
また、皆さまから広くご意見を頂戴したく、アンケートを実施しております(4月20日(月)24:00締切)。
今後参考とさせていただきますので、よろしければご協力いただけますと幸いです。
福岡市を拠点に演劇作家として活動しています、加茂慶太郎と申します。
2024年に講座を受講し、ハラスメント相談員の認定を取得しました。
せっかくなので有効活用しようと、はじめはnoteで宣言を出し、そのあと相談対応フローなどを整備して、2025年1月に本ホームページ内に「ハラスメント相談窓口」を開設しました。
どなたでも相談できる「フリーの相談窓口」、公演等の主催者と協力して環境を整える「公演つき外部相談窓口」の2種類の窓口で、これまでのおよそ1年間で4件の個別相談、2件の公演つき依頼を受け、対応をおこなってまいりました。
このたび、これ以降の新規相談受付を停止し、窓口を閉鎖することといたしました。
理由としては、キャパシティの限界・無力感・より良いかたちの検討の3つが主となります。
悩みました。おそらく他には誰もなされていない、民間個人による・演劇の現場に特化した・誰でも相談できる窓口です。ただ終了しては、「そういうものをやっていた人がいた」という情報だけが残る気がします(私の影響力ではそれすら残らないかもしれません)。
私のプロジェクトとしては終了いたしますが、この経験を事例として共有し、未来に活かしうる材料にできるチャンスだけでも作るべきかと考え、ここに文章を綴り、アンケートを実施することにしました。
なにかしらの相談窓口は必要だと今なお感じています。現状の公共的な窓口で足りているのか、足りていないとしたらどのようなやり方があるのか、さらなるブラッシュアップの道は? まだまだ議論の余地があると感じます。
いっぽうハラスメント相談窓口というものは、やがて全く必要なくなることが理想かと思います。そういうものに対して、はたしてシーン全体でどれほどのリソースを割けるか⋯⋯。たいへん悩ましいですが、まずはここで共有し、関心をお寄せくださる皆さまからご意見やメッセージを頂戴しながら、何かしらのヒントを掴もうとするところまででも私の方で取り組んでみたいと思っています。
前提
私は演劇作家です。オリジナルの演劇作品やその発表の場を作ることを活動の主としています。
そしてそれらをするための土台を作ること、環境の整備についても活動の範疇だと考えています。アートマネージャーやコーディネーター、プロデューサーなど様々な肩書きで、あるいは肩書きを特に意識せずともそれを専門としている人がいますが、アーティストもまた、必要とする(足りていない)ならば自身でそれをするべきだと考えていて、その一例にすぎませんが、ハラスメント相談窓口は私にとっては必要、との思いでこれまで開設してまいりました。
2024年に受講した講座は会社員(企業内の相談窓口や人事担当者、管理職など)向けのものだったので、演劇関係者向けの相談窓口として機能するよう、私自身で一から仕組みを設計しました。「ひとまず」と前置きをしたうえで無償ボランティアであることを明記し、相談フォームや対応フロー図を作成、留意事項などをまとめて記載したページを用意しました。文章もすべて自力で書いています。ものすごくハンドメイドの窓口です。
キャパシティの限界
窓口はこれまで、加茂慶太郎の“プロジェクト”として運用してまいりました。
プロジェクトというのは、作品づくり・公演開催等と同様の位置づけで、いちアーティストとして「これをやっている」と正式にアナウンスしているつもりのものです。正式に、といっても公共の窓口ではないし、誰の許可を取ったわけでもない民間個人の相談窓口ですが、私の個人名を出して活動をしており、責任が生じます。
開設して1年が経つ今、その責任を負うことが難しくなってしまいました。
今はまだアーティストとして力をつけたい時期でもあり、作品づくりのほかにも「やりたい・やらねば」な事柄がいくつもあります。生活リズム、心身の調子の波もあります。そうした状況で、いつ届くかわからない、けれど届いた場合には迅速かつ正確に対応せねばならないハラスメント相談に割く余力と安定がない、というのが正直なところです。
「フリーの相談窓口」へいちばん最近いただいた相談に対して、どうしても作業時間が取れず、返信まで日数を頂戴してしまいました。残念ながら相談者様からその後の返信はいただけておらず、窓口として全うできなかったこと、覚悟の足りなかったことを痛感しています。たいへん反省し、プロジェクトの終了を決意した次第です。
無力感
1年で計6件の相談、多いでしょうか、少ないでしょうか。主に福岡・九州で活動する方々からのご相談を承る想定のもと開設しましたが、「公演つき」1件のほかは、すべて他地域の方からのご相談でした(一部匿名の方は不明)。これは少々意外でした。
相談がないということは、「ハラスメントで困っている人がいない」「すべての現場がハラスメントなく運営されている」ということを示しているワケではないと思います。「顔の見える相手には逆に相談しにくい」という相談窓口そのものの性質、あるいは「何がハラスメントなのかわからない」など知識の問題、「わざわざ相談をするほどのことではない」「苦しんでいるわけではない」「窓口を頼らずとも自分たちで解決できる」といった現場ごと、個人ごとの認識・判断など、背景にはさまざまな理由があると考えられます。
「フリーの相談窓口」へいただいたご相談のうち、窓口として十分に機能できた手応えを感じるものは残念ながら一つもありません。
相談窓口は、相談受付→事情について相談者に聞き取り→行為者に事実確認→事実認定→公演責任者へ連絡(解決に向けた対応)・・・というフローを想定して設計していました。しかしながら、3ステップ目の事実確認まで進むことのできた例はありません。対応途中で連絡が途絶えてしまうケース、相談者様の判断で事情の報告のみに留められたケース、対応対象外のご相談でフローに乗らないケースなどその実態はさまざまですが、制度設計自体に無理があったということなのかもしれません。
とはいえ、相談窓口としてはこれしかやりようがなく⋯⋯。他の相談窓口さまでも、同様のフローで対応なさるのではないでしょうか。
いくら相談員とはいえ、公演外部の人間が突然連絡をよこしてきて、現場事情について当事者にあれこれ聞き取り(事実確認)をしようとするのは、なかなか厳しいことだというのはご理解いただけるかと思います。公的機関ならともかく、いち個人であればなおさらです。
「民間個人のハラスメント相談窓口」というもの自体が、存在に無理のある概念なのだと感じています。
いっぽう、「公演つき外部相談窓口」では、そういった心配は必要ありません。
公演主催者・全関係者の協力のもとスムーズにフローを進めることが可能です。幸いにも担当した2公演ではハラスメント相談がありませんでしたので、この場合は「ハラスメントなく運営された現場だった」と判断できる可能性もたいへん高いと考えます。
ハラスメント事案の解決には、主催者の協力、そして関係者一同の「ハラスメントをしない・なくす・解決に向けて協力する」共通認識が不可欠であると考えています。主催者の依頼を受け、協力体制を敷き、公演関係者にとって共通の相談窓口として振る舞うことができるならば、民間個人であっても“念のための”相談窓口として十分に機能できる可能性があると感じます。
とはいえこちらも「本当に信用できる相談窓口なのか」といった懸念はつきまといます。私が実演家の男性である以上、完全に心配なく相談できるかどうかは人によります。やはり個人で請け負える限界はあるように感じます。
また、そもそものニーズがあまりないのだとも感じています。
公演クレジットに「ハラスメント相談窓口」と記載することはどこか物々しい印象を与えるかもしれません(べつに設置するだけして記載いただかずともよいのですが)。ハラスメントだけでなく人権侵害全般について問題意識をもって扱うべきで、ハラスメントだけを粒だてて対策するのもどうなのか、という気持ちも理解できます。アートノトが、相談対応についてレクチャー動画を上げてくれてもいます。ハラスメントポリシーを作成しているカンパニーは多くあります。わざわざ担当者を座組の外に用意する気持ちには、なかなかなりにくいとは感じます。相談窓口を必ず設置するべきだ、とは私も思いません。関係者一同で先の共通認識を持てていること、解決への道筋を用意していることが大事で、それができているカンパニーが多い、ということなのだと認識しています。
今後について
プロジェクトとしての相談窓口は終了いたしますが、相談員の認定が消失するわけではありませんので、今後も引き続き、必要があれば相談を承ります。どうぞお気軽にメールにてご連絡くださいませ。ただし、可能な範囲での対応となりますことをどうぞご承知おきください。
相談窓口のページについては、ひとまずこのまま残します(相談フォームは閉鎖いたします)。
上述のとおり、民間個人の相談窓口、という存在は難しいと感じています。
それでも、顔や名前の見える相談窓口があったほうが良いのだとしたら⋯⋯、ある程度公共性をもった組織・団体、相談員の連合のようなものを組織できるならば、存在可能なようにも感じます。ただ、ほんとうに申し訳ありませんが、そうした組織づくりの旗振りをする気力、余力は現状の私にはありません。ですが、もし未来にそうした動きがあるならば、最大限協力したいです。
また現状できる協力として、私のこれまでやってきた相談窓口に対してのご意見・ご感想・メッセージを集められたらと思っています。
・舞台芸術専門のハラスメント相談窓口は必要か
・民間個人(顔や名前のわかる相談員)の窓口は必要か
・心理的抵抗や相談のハードルはあるか
などをお伺いしたく、アンケートを作成いたしました。ぜひご協力いただけますと幸いです。
これまでに私の述べてきたことへのご意見などもありましたら、ぜひお伝えください。
回答は4月末頃にすべて公開する予定です。
一つの事例として共有し、未来に活かしうる形にできれば幸いです。
加茂慶太郎