子宮内膜症


概要

子宮内膜症の確定診断は外科手術あるいは腹腔鏡によって直接病変部を確認することが必要です。いずれも侵襲的な手法であるために、容易な診断方法ではありません。そのためにより確実な補助診断法が必要となり、腫瘍マーカーであるCA-125、CA19-9が子宮内膜症の診断に利用されています。

この腫瘍マーカー検査は採血のみによって判明する容易な検査方法です。高値の場合には子宮内膜症の可能性は高くなりますが、低値であるからといっても子宮内膜症を否定できるわけではありません。特異性は高いが、感度は低い検査方法です。


CA-125とは?


CA-125は、卵巣癌細胞培養株に対して作られたモノクローナル抗体OC125によって認識される糖蛋白抗原です。すなわち、OC125に特異的に反応する物質がCA-125です。血液中(血清中)に認められるCA-125の測定が臨床的に応用されています。採血によって検査結果がでるために容易な検査方法であり、悪性腫瘍、特に卵巣癌の診断に最も応用されています。


CA-125の正常値とは?


血中(血清)CA-125の正常値は35U/ml以下とする報告が多いです。しかし、健康な女性では約1%に、また婦人科良性疾患では約6%が陽性を示すとの報告があります。


また、血清CA-125の値は月経期間中は高値になるために、この時期の検査は避けるべきであるとされています。これは非内膜症健常婦人においても子宮内膜症合併婦人においてもともに認められる変化です。


CA-125の臨床応用


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上皮性卵巣癌の診断および治療効果の判定。漿液性の悪性卵巣腫瘍の場合には高値となりますが、良性腫瘍でも時には高値を示します。

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子宮内膜癌(子宮体部癌)特に進行症例患者では高値になることが多いです。婦人科以外の悪性腫瘍では、肺癌、乳癌、消化器癌、腎臓癌で時に高値になります。

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悪性腫瘍以外では、妊娠、骨盤内感染症、子宮腺筋症などでも高値になることがあります。


子宮内膜症とCA-125


CA-125測定値は、以上のような臨床応用がなされていますが、子宮内膜症の補助診断、手術あるいは薬物療法後の観察、および子宮内膜症再燃の診断に利用されています。以下に子宮内膜症とCA-125の関係についての報告をまとめます。


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CA-125が陽性(35U/ml以上)の場合には子宮内膜症の可能性が高いが、必ずしも子宮内膜症でない場合もあります。また逆に陰性(35U/ml以下)の場合にも子宮内膜症の存在を否定できるとは限りません。子宮内膜症の補助診断としての意味合いしかありません。

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子宮内膜症の初期病変では陽性を示すことはほとんど無く、進行例ほど陽性率は高くなるとされています。しかも、その平均値も上昇する傾向を認めます。すなわち重症例ほど高値になる傾向があります。

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子宮内膜症の重症型である卵巣チョコレート嚢胞、深在性子宮内膜症において著明な高値を示すことが多いです。ところが凍結骨盤(frozen pelvis)と呼ばれる癒着の高度な子宮内膜症の場合には陰性症例も認められます。

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CA-125の陽性を35U/mlとすると、子宮内膜症の陽性率は60~70%とされています。その平均値は60U/mlであり、軽度の上昇に限られ、200U/mlを超えることはまれとされています。

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子宮腺筋症ではCA-125の平均値は145U/mlとやや高値を示しますが、500U/mlを超えることはまれとされています。

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子宮内膜症に対する手術療法、薬物療法によりCA-125値が低下し、病状の再燃によって上昇します。このようにCA-125陽性症例の治療効果の判定および治療後の再発のフォローアップに利用されます。

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CA-125値がきわめて高値を示す場合には、子宮内膜症ではなく、悪性病変の存在を疑うべきです。


CA19-9とは?

CA19-9は、結腸癌由来培養細胞株を免役して作られたモノクローナル抗体11116N19-9によって認識される抗原です。すなわち、11116N19-9に特異的に反応する物質がCA19-9です。血液中(血清中)に認められるCA19-9の測定が臨床的に応用されています。

膵臓癌で高い陽性率を示すほか卵巣癌でも腫瘍マーカーとして利用されています。

子宮内膜症とCA19-9

CA-125と同様にCA19-9を子宮内膜症の補助診断として利用しようとする試みがあります。CA19-9はCA-125ほど感度は高くないが子宮内膜症の補助診断として利用されています。子宮内膜症の重症例に陽性になることが多いとされています。

CA19-9は子宮内膜症の補助診断として利用されても、あくまでも補助診断にすぎません。CA19-9が高値ならば子宮内膜症の可能性が高くなりますが、必ずしも子宮内膜症でない場合もあります。逆に、正常値であっても子宮内膜症の存在を否定することは出来ません。