教育経営(学)における「問い」とは
~教育経営学の論争点を探る(その2)~
【企画趣旨】
1958年の本学会創設を振り返ると、1956年の地教行法制定を受けて、法規中心主義への懸念や対抗軸の模索がその出発にあり、教育学に新たな研究領域としての「教育経営学」を切り拓く必要性が強く意識されていた。そして、例えば次のような論争を通しながら「教育経営(学)」は形成・創出されてきた。「経営主体の所在をめぐる教育行政と学校の関係はどうあるべきか」「学校経営組織は単層か重層か」「教育課程の編成主体とは」「学校経営の近代化論か現代化論か」「教師の教育観と学校経営との関係はどうあるべきか」などである。
しかし、近年、教育経営をめぐる議論の枠組み自体が、見えにくくなってきているのも事実である。例えば、1990年代後半以降の学校の自主性・自律性をめぐる制度環境の変化から四半世紀を経て、教育経営や学校経営が「政策や行政、制度で示された事項を遂行すること」と同じように捉えられる傾向にあったり、教職大学院等の制度環境の変化を受けて、素朴な科学観や合理的な組織観に基づく経営手法が正解として重宝されたりするような傾向があることも否めない。
教育経営について多様に議論する素地が現代には生まれてきてはいるものの、議論が容易には交わらず、自己の研究や実践の立ち位置を確認できない状況が、教育経営学をめぐって生じ、時代状況や世代の認識の違いが関係してさらに困難な状況が生み出されてもいる。このような問題状況を乗り越え、自らの立ち位置を自覚化するためには、互いの対立やずれを避け、見えなくするのではなく、それらを捉える、つまり、論争点を明確にすることで、それぞれの考え方を描いていくことが重要になってくる。そこから概念の論じ方を深め、教育経営学の学問的豊かさを確認していくことが求められているのではないだろうか。
以上の問題意識のもと、今期ラウンドテーブルの一年目にあたる昨年度の第65回大会では、各視点や時代区分など論争の考え方について、問題意識の共有を図ることをねらいとした。学校経営の現代化、学校の「自律性」、学校の自律性の揺らぎという時代区分のもとに本学会の歩みに関する報告を行なうとともに、各時代における教育経営学の主要な研究上の問いや関心が、歴代会長や紀要特集テーマとともに注目され、さらに教育界や社会情勢との関係も踏まえながら考察された。
二年目にあたる今大会では、教育経営学の学問的展開を整理しながら、教育経営(学)の「問い」、その問いに対する立ち位置に注目して、未来に向けて過去や現在の「論争点」を会員の方々と探っていきたい。その中で、教育や学校を豊かに見ていく力や新たな概念を鍛え、議論していきたい。
将来構想ワーキンググループ
曽余田浩史(広島大学)
古田雄一(筑波大学)
末松裕基(東京学芸大学)