Post date: Dec 15, 2017 1:38:18 AM
東京大学物性研究所教授の押川正毅さんに上記タイトルでの講演をお願いしました。
ハルデン先生と大変親しい押川さんは、ハルデン先生のノーベル賞受賞後に、 2017年5月25日の物性研談話会、および 2017年7月8日の学習院大学理論物理学講演会にて今回と同じタイトルでの講演をされています。
これらが大好評だったため、「ぜひつくばでも」ということになり、この講演会を企画しました。
押川さん自身は多くの分野で活躍されている理論物理学者で、世界中を飛び回っているためなかなか捕まりません。
今回は滅多にない機会ですので、ちょっと長目の講演会ではありますが、わかりやすくお話ししていただく予定です。ご興味のある方はぜひご参加ください。
I asked Oshikawa-san to give this talk in Japanese but he is fluent in English. So, you may ask anything to him not only in Japanese but also in English during and after the talk.
井上 公
講演者: 押川 正毅(東京大学物性研究所教授)
日時: 2018年01月23日(火) 午後3時 ~ 4時45 分 (雪の影響で開始時間を遅らせました。どうぞご了承ください。)
場所: 産業技術総合研究所 第2事業所本館(旧電総研) 8階 第1AV室
講演概要:
2016年のノーベル物理学賞は、「トポロジカル相転移と物質のトポロジカル相の理論的発見」に対して、サウレス、コステリッツ、ハルデンの3氏に授与された。ハルデン氏の主要な受賞業績は、量子反強磁性スピン鎖の定性的な性質はスピン量子数が半奇数か整数かによって全く異なり、整数スピンの場合には励起ギャップ(「ハルデンギャップ」)を持つという予言である。ほとんどの教科書や解説では、ハルデン氏のこの理論的発見は、量子スピン鎖の有効的な場の理論である非線形シグマ模型が持つトポロジカル項に基づいたものとされてきた。
しかし、ハルデン氏本人の回顧や、失われていた「幻の論文」の発見によって、ハルデン氏による当初の発見の経緯はそれとは大きく異なり、同時にノーベル物理学賞の授賞対象となったベレジンスキー・コステリッツ・サウレス(BKT)転移の理論と密接に関係していたことが明らかになった。
本講演では、おそらく当時としてはあまりに斬新すぎたために奇妙な運命をたどったハルデンギャップの発見の経緯とともに、その物理的内容をなるべくわかりやすく解説したい。また、ハルデンギャップの発見がその後の物理学の発展に与えた影響についても議論したい。
本件に関するお問い合わせ: 産業技術総合研究所 電子光技術研究部門 井上 公 (いのうえいさお) メール