ニューロモルフィック
ワークショップ
ニューロモルフィック研究に関するワークショップを開催いたします!
デバイス素子開発、スパイキングニューラルネットワーク(SNN)の理論、デジタル回路でのエミュレーション、集積化の課題など、内容は多岐にわたりますが、こうした研究の全体像がつかめる良い機会になるかと思います。初心者でもエキスパートでも、どなたでも聴講できます(ワークショップの聴講には事前登録は不要です。当日に出席者名簿を作るなどしてお名前を伺うこともありません)。
ワークショップはカジュアルなスタイルで行います。基本的な質問でも、玄人なコメントでも、冷静なご意見も、熱い議論も、すべて大歓迎です。講演は全て日本語です。どうぞお気軽にご来集ください。なお、会場でプログラム等の配布は致しませんので、必要であればプリントアウトするなどしてご持参ください。
- 日時
2020年02月10日 10:30~ (9:30ごろには開場します)
- 場所
産総研共用講堂 中会議室 (茨城県つくば市) アクセスの方法についてはこちらをご覧ください。
- 共催
JST-CREST「スパイキングネットによるエッジでのリアルタイム学習基盤」研究チーム (Twitter)
- 後援
- 懇親会
ワークショップ終了後 17時半から2時間程度。(懇親会のみ参加受付が必要でしたが、すでに締め切りました)
- 連絡先: 井上 公 (いのうえいさお)
--------------プログラム--------------
セッション1 座長:井上 公 (産総研)
10:30
「はじめに」
坂井修一 (東京大学 工学部、JST-CREST「Society 5.0 を支える革新的コンピューティング技術」領域 研究総括)
10:40
「ブレインモルフィックコンピューティングとハードウェアデバイス」
堀尾喜彦 (東北大学 電気通信研究所)
脳に特有な情報処理様式をハードウェアとして創発するためのブレインモルフィックコンピューティングの枠組みとエッジAIデバイスへの応用について述べる。その取り組みの一例として、高次元複雑ダイナミクスを用いたリザバーニューラルネットワーク計算などについて紹介する。
11:30 休憩
セッション2 座長:矢嶋赳彬 (東京大学)
11:45
「1-極大マッチングのための自己安定アルゴリズム」
井上美智子 (奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科)
自己安定アルゴリズムとは、障害から自律的に回復し安定するアルゴリズムである。本講演では、分散システムにおいて、1-極大マッチング問題を解く自己安定アルゴリズムを紹介する。紹介するアルゴリズムでは、自律動作する複数のノードからなる分散システムにおいて、各ノードが自身と隣接ノードの状態のみに基づき状態遷移を繰り返すことで、正当なシステム状態に到達し安定する。
12:35 昼食
セッション3 座長:田村浩人 (東京大学)
13:40
「エッジで動作するリアルタイム学習基盤の提案」
井上 公 (産業技術総合研究所 電子光技術研究部門)
エッジで逐次的に得られるデータを機械学習して法則性を推論する場合、現行の機械学習では、膨大なデータを一度保管し、その一部を抜き出して(ミニバッチ)学習を繰り返して推論するのが主流だが、エッジで得られるデータは個人情報であることが多く、保管には常にリスクが伴う。保管できないデータに対してはミニバッチ処理は使えない。さらに機械学習を「ロジスティック回帰の損失関数を最急勾配法で最適化する」という一般的な方法で行うならば、膨大な論理演算が必要で大電力を消費する。かくして「エッジで学習を行う」のは非常に難しい。そこで我々は、スパイキングニューラルネットワーク(SNN)のニューロン発火連鎖のダイナミクスに目をつけた。これを使えば、エッジでも低消費電力でリアルタイム学習推論が行えるのではないかということを提唱している。今回はその実証に向けた取り組みを紹介したい。
14:20
「SNNをベースとした機械学習アルゴリズム」
藤原寛太郎 (東京大学 ニューロインテリジェンス国際研究機構)
スパイキングニューラルネットワーク(SNN)は、エネルギー効率の点でエッジでのリアルタイム学習に適している。そこで本発表では、SNNをベースとした新しい機械学習アルゴリズムの可能性について議論したい。また、誤差逆伝播法を用いない機械学習アルゴリズムに関して我々が行っている数値実験についても紹介したい。
14:50 休憩
セッション4 座長:山田浩之 (産総研)
15:05
「デジタルSNN回路エミュレーション」
堀田育志 (兵庫県立大学 工学部)
スパイキングニューラルネットワーク(SNN)をベースにした学習システムをエッジデバイス実装するにあたり、(取り敢えずは、これらで何が実現できるかということは置いておいて)まずはシステム具現化の方向性をFPGAを用いたデジタル回路において定めたい。ポイントは、基本となるSNNが「(動的)アトラクタ」と呼ばれる定常状態を持つこと、そのようなSNNをデジタル回路実装すること、また素子間の結合に可塑性をもたせ学習を可能にすることであると我々は考えている。そのようなSNNを構成する素子の候補である代表的なニューロンモデル(Hodgkin-Huxleyモデル、FitzHugh-Nagumoモデル、Izhikevichモデル)のデジタルエミュレーションについて議論する。また、我々が提案する時間緩和型のMcCulloch-Pittsモデルの紹介とその実装についても紹介したい。
15:35
「エキゾチックアナログ素子」
矢嶋赳彬 (東京大学 工学部)
今日のアナログ・デジタル回路技術は、どのような演算処理にも対応できる優れた汎用性を有している。一方で、抵抗変化や相転移といった多彩な材料特性を組合わせることによっても、様々な演算処理を効率的に行うことができる。重要なのは、演算処理を実現することではなく、それをいかに超微小電力・超微小面積・リアルタイム性といった、エッジの極限的な状況下で実現するかである。それには、素子レベルではなく、回路ブロックレベルで材料機能を活用していくための、統合設計が重要だと考えられる。本発表では材料特性を組み合わせて機能設計していく手法と、それを回路技術と融合していく展望についてまとめる。
16:05
「SNN回路の集積化の課題と展望」
飯塚哲也 (東京大学 システムデザイン研究センター)
近年、ニューラルモデルの大規模集積化の報告が複数なされている。本発表では、シリコンCMOS回路においてニューロン動作を模擬する実装方式についてデジタル・アナログの両手法を示し、それらのネットワーク接続を集積回路上に実装した例を紹介するとともに、集積化に向けた課題について議論したい。また、実際にデジタル回路により単一ニューロン動作を模擬した回路実装例についても紹介したい。
16:35
「おわりに」
森 雅彦 (産業技術総合研究所 電子光技術研究部門 研究部門長)