平成十四年

平成十四年

風花や母の微熱のおさまりぬ

病む母の子の名も言へず夜の凍て

凍てる夜も妹背看取りに母眠る

熱つづく座薬一錠凍てる夜

春寒し微熱のつづく恙母

看取りつつ眠れぬ夜の冴返る

褥瘡のまた一つふえ春寒し

もの言へば噎せぶばかり春かなし

同じ名の母も妣へと鳥雲に

初七日に渡る三途は春の川

語りかけ遺影は笑みぬ春うれひ

はらからに遺影は笑みてお中日

お中日僧の説法諄々と

初彼岸墓標の赤字消されたる

里墓や一雨ありて竹の秋