平成二年~五年

平成二年~五年

車押す老の通院秋暑し

医に通ふ手押の媼冬帽子

一畝は母の菜園豆の花

明易し媼手押で菜園に

求め来し七種老母数へをり

子の征途送る像あり花の山

母像は明治の女夕ざくら

杖ついて亡父の墓へ秋彼岸

病よき木犀匂ふ散歩道

病む人に秋冷にはかなる夕べ

もたらせし強飯の温み鵙日和

咳こみし病室の窓鵙高音

行秋や杖にたよりて寺詣

病院の庭の残菊風にゆれ

病む師走老の身にしむ風の音