地球システム・倫理学会の「研究例会」
地球システム・倫理学会の「研究例会」
■日 時:2026年02月07日(土)16時00分〜18時00分(開場:15時40分)
■会 場:麗澤大学新宿キャンパス(東京・西新宿「新宿アイランドタワー」4階)およびZoom
■講 師:小倉 紀蔵 京都大学名誉教授
■テーマ:日本群島文明論
■要 旨: わたしは2025年6月に『日本群島文明史』(ちくま新書)という本を出した。その後、川勝平太会長から「日本群島については梅棹忠夫先生がすでに語っていましたよ」というご指摘を受け、梅棹先生が「まぼろしの『日本群島』」を述べた著作集のなかの当該箇所もご教示いただいた。そのことを知らなかったわたしは無知の恥をさらした格好になった次第である。
さて、この本で語ったことは、わたしが本学会に所属して勉強を重ねなかったら得られなかった認識で満ち溢れている。伊東俊太郎先生が「交流」という動態的な概念によって文明の本質主義を破壊したこと、川勝平太先生による文明の海洋史観の重要性はもちろんのことだが、服部英二先生の「通底」の概念は東アジアの哲学的関係性を新しく説くために決定的な鍵となった。
本書を要約するならば、以下のとおりである。
日本は群島だ。大陸に開くかあるいは閉じるか、という繰り返しをしながら、群島は文明的に生き残ってきた。したがって群島に「群島文明」という本質があるのではなく、大陸や半島との関係性のなかで瞬時瞬時に文明的な変身を繰り返してきた。
大陸文明は「普遍的」であることを競うのだから、その普遍性の根底となる「人間とはなにか」「生命とはなにか」「善悪とはなにか」「歴史とはなにか」などという観念を宗教や理念ごとに一義的にかっちりと決める。そしてその際に超越性に依拠する必要がある。だが日本群島では、大陸文明の宗教や理念の土台にある超越性への根源的懐疑があるので、「人間」「生命」「善悪」「歴史」などという概念に関して宙ぶらりんの態度を保持してきた。極端な言い方をするなら、日本群島にはひとつの超越性に根拠づけられた一義的な「人間」はいないし、「生命」「善悪」「歴史」もないのである(特定の宗教や理念が社会のなかで一時期優勢を占めることはある)。哲学でいうなら、普遍哲学や通底哲学とは異なる非通底哲学が残存しうる社会システムを持つわけだ。
このことを、より大きな世界秩序という観点から考えてみよう。
近代の世界秩序は東西の3軸(大陸)と南北の3軸(群島)で成り立っている。東西の3軸は、北からロシア、中国、イスラームの順である(前近代にはこのほかにモンゴルがあった)。南北の3軸は西からアメリカ合衆国、イギリス、日本の順である。東西の軸は超越的な理念によって自らの勢力を拡大する。南北の軸はエムピリカルな分析によって他の地域を支配する。前者を「横の理念軸」と呼び、後者を「縦の分析軸」と呼んでもよい。前者は東と西に領土を拡大する。後者は南に向かって植民地を拡大する。前者は拡大の過程で「縦の分析軸」とぶつかって対立する。後者はエムピリカルな統計やエビデンスによって植民地統治や資本主義の拡張をする。これが近代における世界秩序である。世界の紛争は、この東西の軸と南北の軸が接触する地点で起こることが多い。
このなかで日本群島はその文明的役割をいかに果たすことになるのか?
できるだけ論争的に語りたいと思うので、強い反論や批判がたくさん出てくることを期待したい。
■略 歴:小倉 紀蔵(おぐら・きぞう)京都大学名誉教授。1959年東京都生まれ。ソウル大学哲学科博士課程単位取得退学。専門は東アジア哲学、比較文明学。主な著書に『韓国は一個の哲学である』『歴史認識を乗り越える』(以上、講談社)、『朱子学化する日本近代』(藤原書店)、『創造する東アジア』(春秋社)、『入門 朱子学と陽明学』『新しい論語』『朝鮮思想全史』『京都思想逍遥』『弱いニーチェ』『日本群島文明史』(以上、筑摩書房)、『群島の文明と大陸の文明』(PHP研究所)などがある。
■「研究例会」には、当学会に未加入の方も、来場ないしはオンラインで参加頂けます。当学会に未加入の方が来場して参加される場合は、当日、会場受付にて資料代として1,000円お支払いください。(ただし学生・院生は無料です)
■「研究例会」に先立ち、14時30分から15時30分まで「理事・評議員会」を開催します。「理事・評議員会」は、当学会の理事・評議員のみの参加となります。
■「研究例会」および「理事・評議員会」への出欠を、こちらのフォームで、2026年01月29日(木)までにご回答下さい。01月30日(金)以降に参加を申し込まれる場合は、学会事務局長(犬飼孝夫)宛にメールでご連絡ください。メールアドレス:tinukai@reitaku-u.ac.jp
■オンライン(Zoom)で参加希望の方には、開催前日までにZoomのURLとパスコードをお届けします。前日までにURLとパスコードが届かない場合は、学会事務局長(犬飼孝夫)宛にメールでご連絡下さい。メールアドレス:tinukai@reitaku-u.ac.jp
■来場に際しては感染症防止に十分ご留意下さいますようお願い申し上げます。
更新日:2026年01月15日