地球システム・倫理学会の「研究例会」
地球システム・倫理学会の「研究例会」
■日 時:2025年06月28日(土)16時00分〜18時00分(開場:15時45分)
■会 場:麗澤大学新宿キャンパス(東京・西新宿「新宿アイランドタワー」4階)およびZoom
■講 師:尾本 恵市 東京大学名誉教授
■コメンテーター:宮治 昭 名古屋大学名誉教授
■テーマ:アフガニスタンの蝶と人と大仏と
■要 旨:
①1963年6~8月、著名な蝶類収集家の英国人コリン・ワイアットとともに、アフガニスタン北部のヒンドゥークシ山脈にて生物相の調査を行った。『蝶と人と 美しかったアフガニスタン』(朝日新聞出版、2023)。 ②バダフシャン州アンジュマン地区の標高3,~4,000mの高地で、多くの新種・新亜種を含む蝶を採集し、幻の蝶アウトクラトール・ウスバアゲハ(Parnassius autocrator)の生態と幼虫の食草等を解明した。また、マルコポーロ・モンキチョウの新型を発見し、この国の古代仏教王国にちなみクシャーナという亜種名(Colias marcopolo kushana)をつけて記載した。 ③アンジュマン湖(標高3,500m)にマス類の幼魚(15-20cm)が大量に集まっているのを発見し、イナゴを餌に釣りあげて、ブラウン・トラウト(Salmo trutta)と同定した。中央アジアのアラル海より、大河アムダリャを経てアフガニスタンへ、さらにコクチャ川、アンジュマン川の順に遡上した幼魚がアンジュマン湖に達したと考えた。 ④アフガニスタンは多民族国家である。今回の旅では、パシュトゥーン人(馬上競技)、タジーク人(キャラバン、猟師)、ハザーラ人(子供との会話)の3民族と交流・接触があった。 ⑤旅の最後に、バーミヤ―ンの東・西二体の摩崖大仏を観察・撮影した。二体とも、顔面部が刃物で切り取られたように見える古傷(変形)を持つ。当時、大仏製作上の特別の理由によって、頭部を体部とは別に作製する方法があることは周知されていなかった。強烈な違和感を覚えた私は、この傷(変形)が偶像破壊を目論むイスラム教徒の所為ではないと判断した。敵でなければ味方である。私は一人の仏教徒として、大仏を通じて仏陀の心を知りたいと思った。仏陀は、仏教没落の乱世(9世紀)を悲しみ、慈悲と自己犠牲の心によってわが顔面の切除を敬虔な仏教徒たちが実施するように願われたのではなかろうか。
■略 歴:尾本 恵市(おもと・けいいち)1933年5月16日東京にて生まれる。東京大学文学部(独文学)および理学部(人類学)卒業。ドイツ留学のため、東京大学大学院理学系研究科博士課程中退。学位:PhD(ミュンヘン大学)、理学博士(東京大学)。専門:自然人類学、集団遺伝学による日本およびアジア・太平洋地域の先住民族の遺伝的起源を研究。東京大学理学部教授、国際日本文化研究センター教授、桃山学院大学文学部教授、総合研究大学院大学シニア・研究員を歴任。東京大学名誉教授、国際日本文化研究センター名誉教授。国際人類民族科学ユニオン名誉会員。
■略 歴:宮治 昭(みやじ・あきら) 1945年、静岡県生まれ。1968年名古屋大学文学部(美学美術史)卒業。文学博士。名古屋大学・龍谷大学名誉教授。専門はインド・中央アジアの仏教美術史。インド、パキスタン、アフガニスタン、中国の仏教美術の調査研究に従事。69年、名古屋大学アフガニスタン学術調査がバーミヤン石窟の実測と壁画の調査を行った際には、前田耕作氏とともに壁画を担当した。その後(74年~80年の間に4回に及んだ)京都大学中央アジア学術調査隊にも参加。それらの調査時の写真やスケッチをもとに、2023年、バーミヤン大仏仏がん壁画の描き起こし図が作成された。
■「研究例会」には、当学会に未加入の方も、来場ないしはオンラインで参加頂けます。当学会に未加入の方が来場して参加される場合は、当日、会場受付にて資料代として1,000円お支払いください。(ただし学生・院生は無料です)
■「研究例会」に先立ち、14時30分から15時30分まで「理事・評議員会」を開催します。「理事・評議員会」は、当学会の理事・評議員のみの参加となります。
■「研究例会」および「理事・評議員会」への出欠を、こちらのフォームで、2025年06月19日(木)までにご回答下さい。(06月20日(金)以降に参加を申し込まれる場合は、学会事務局長(犬飼孝夫)宛にメールでご連絡ください。)メールアドレス:tinukai@reitaku-u.ac.jp
■オンライン(Zoom)で参加希望の方には、開催前日までにZoomのURLとパスコードをお届けします。前日までにURLとパスコードが届かない場合は、学会事務局長(犬飼孝夫)宛にメールでご連絡下さい。メールアドレス:tinukai@reitaku-u.ac.jp
■来場に際しては感染症防止に十分ご留意下さいますようお願い申し上げます。
更新日:2025年06月02日