新しいスーパーコンピュータの応用として大規模なグラフ解析やデータ処理が注目を集めています。グラフ解析の応用分野としては大規模災害等での避難誘導計画 、社会公共政策や企業経営等のためソーシャル・ネットワーク等の大規模データの有効活用等が想定されていますが 、非常に計算量やデータ量さらに電力使用量などの規模が大きく従来の手法では処理が困難です。そのためハイパフォーマンスコンピューティング分野の技術を用いて超大規模グラフ処理を実現するための研究を行っています。 平成27年度(国際会議 ISC15 、 2015年 6月)において 、独自に開発したソフトウェアを用いて、大規模なグラフを解くことでスパコン上のビッグデータ処理を計測する Graph500、おいて世界第 1 位の高成績を達成することが出来ました。当研究チームでは国内のスパコン(スーパーコンピュータ富岳、京コンピュータ)を活用して、スーパーコンピュータ富岳、京コンピュータで世界1位 (第8回、第10回から第18回 、 第20回から第25回 Graph500 ベンチマーク) 等の優れた成果を得ています。
また最適化問題の高速計算と実社会への応用にも取り組んでおり 、例えば半正定値計画問題(SDP)は組合せ最適化 、システムと制御 、データ科学 、金融工学 、量子化学など非常に幅広い応用を持ち 、現在最適化の研究分野で最も注目されている最適化問題の一つとなっています。SDP に対する高速かつ安定したアルゴリズムの開発とスーパーコンピュータ上での大規模並列計算によって 、世界最大規模のSDPを高速に解くことに成功しています。数学とコンピュータを用いて実社会の複雑かつ未解決の問題を解くための研究を他の研究機関や企業などと連携しながら現在積極的に推進しています。これらの業績によって 2017年に文部科学大臣表彰 科学技術賞 (研究部門)などを受賞しています。
近年、最新技術の組合せや融合によって、安心、安全、便利ないわゆる超スマート社会(Society 5.0など)を実現するための様々な取り組みが世界中で推進されています。 近年のICTの向上により、実社会で起きている現象を、計算機上で事前にモデル化し、さらに環境変化に対するシミュレーションや最適化を実施することで、ビジネスモデルとしてのサイバーフィジカルシステム(CPS)を実現することができるようになりました。 現在、多くの民間企業などと共同で、CPSを対象として大量のセンサーデータ(ヒト・モノの移動等)やオープンデータ(Wi-Fi 等の移動履歴)などを用いて、サイバー空間での最適化、機械学習、深層学習やシミュレーションを行うCPS モビリティ最適化エンジン(CPS-MOE)の開発を行っており、新しい産業の創出、コストや廃棄物の削減、交通機関の最適制御スケジュールの算出に寄与するサービスの集合体を構築しています。CPS-MOEの実現のために特に以下の3つのモビリティを表現、予測、最適化及び制御するための数理・情報の新技術の提案・開発を推進しています。
1:情報(ヒトの興味、意思)のモビリティ:Webアクセス移動データ及びユーザの潜在的興味度を用いたユーザクラスタリング
2:ヒト・モノのモビリティ:位置情報検出と追跡(深層学習)、混雑検知や流れの最適化及び可視化
3:交通(最適運転)のモビリティ:経路最適化や配送最適化、MaaS (バイクシェアリングなど)
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藤澤 克樹教授 マス・フォア・インダストリ研究所/総合研究院