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お父さん、男性保護者の方へ
このページでは、父親・男性保護者の視点から悩みやすいポイントを解説したいと思います。初めての方は、「はじめに」も読んでいただけたら嬉しいです。
不登校の事実、支援機関や公的サービス、進路情報、不登校児の心理などの学術論文、調査資料、統計情報、専門書の内容等を紹介しながら説明しています。ぜひご活用ください。
なお、新ページ「不登校の親体験コラム」でも、親として試行錯誤する中での失敗談、考えが変わった瞬間や周りから支えられたエピソード、息子コタケによるコラムなどもお伝えしています。こちらも合わせてぜひお越しください。(「体験談コラム」ページはこちら)
日本では少子化が進んで生徒数が減少しているにもかかわらず、不登校児童生徒数は増加しています。
文部科学省の令和4年度の調査では、小中学生の不登校生徒が全国に 29万9048人いることがわかりました。前年比22.1%増、54,108人も増えています。児童生徒1,000人あたりの不登校児数は小学校で17.0、中学校で59.8人となり、小学生の約59人に一人、中学生の約17人に一人が不登校ということになります。
不登校は2013年以降増加傾向が続いてきていますが、コロナ禍に見舞われた令和2年度から令和4年度の3年間で10万人増加しました。
さらに民間の調査(2018年実施)では、保健室登校などの「不登校傾向」にある中学生の人数を33万と推計しています。これは約10人に1人が不登校傾向にあるという計算になります。
高校になると通信制や定時制など選択肢が広がりますが、それでも2020年(令2)の文科省の調査では60,575人が不登校になっています。近年は通信制高校の生徒数が急増しているため、通信制高校に転入することで不登校の定義に当てはまらなくなった生徒が一定程度いる可能性もあります。
文部科学省はこの事態に対し、2017年の教育機会確保法*で不登校生徒に合わせた休養が必要とし、さらに2019年10月に出した通知において、「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要があると従来の再登校のみを目指す姿勢から大きく方向転換しました。
教育機会確保法が施行されてから、「無理をせず休ませることも必要」という考えが学校や保護者に広まりつつある一方、「不登校のその先」についてはまだ多くの課題が残っています。学校や行政の対応もまちまちで十分な支援体制はまた、組まれていませんが、最近では国会で「孤独対策」というテーマの中で不登校問題に言及されるようになりました。
日々多忙な保護者の方は、お子さんと接する機会がどうしても少なくなりがちなので、「どうして突然…」「まさかわが子が…」と困惑している方もいらっしゃるかもしれません。不登校をするわが子の姿に、自分のキャリアを否定されたように感じるお父さんもいらっしゃいます。(松本、2005 引用文献1))厳しい経験を耐えて、乗り越えて成功・成長したという自負がある方にとっては、お子さんの不登校は「耐えるべき」経験を避けているように映ったり、「義務」を果たさないように見えて「甘えてはだめだ」とお考えかもしれません。
しかし、不登校のお子さんが、何の我慢も努力もせず不登校になったとは限りません。辛さや葛藤を抱えながらも、親に心配かけたくないなどの思いから人知れず耐え続け、耐えきれなくなった末に崩れ落ちるように不登校になってしまうお子さんもいらっしゃいます。また、心の病や発達上の特性を抱えていても、お子さんに病識や知識が無いために自分を責めたり、誰にも言えずに一人苦しんできた可能性もあります。いじめられていることや、同調圧力の強い環境で「みんなが当たり前にできることが自分だけできない」「みんなは平気なのに自分だけつらい」という事実を親や先生に伝える不安、自分への失望感は想像に難くないと思います。
さまざまな要因が複雑に絡まっていたり、年齢的に自分の気持ちを言葉にするのが難しい場合、「辛い」「こわい」等の漠然とした返事しかできず、周りの理解が得にくいこともあるようです。ある大学の臨床心理学の講義を聞いた際、「不登校になる前にさまざまなことが複雑に絡み合い、子ども自身も自分の心の奥底にある気持ちがわからなくなってしまい、表面的な言葉でしか表現できなくなっていることがある」と解説されていました。また、他の生徒や教師からのいじめや暴力、強要、ハラスメントなどが原因の場合、「親にばらすな」と口止めされていたり、お子さんが報復をおそれたり、恥ずかしいなどの気持ちから、すぐには話せないこともあります。加害する側が教員や顧問などの大人の場合、子ども側に性被害についての知識がなく、先生への信頼や尊敬の気持ちがあることから、被害に気づくことができないこともあります。親子関係が良好でも「心配かけたくない」と考えるお子さんもいます。
不登校中の子に「学校に行きたくないの?」と聞くと、「行きたい」とか「明日は行く」と答えるお子さんもいます。
でも翌朝になると体調を崩して行けない、ということを繰り返すことも。それは「本音は行くのがつらいけれど、親や先生に行きたくないと面と向かって言えない。言っても説得されるかもしれない。でも自分の将来も心配。そのためにも行かなくちゃいけない場所だから、「(行けるものなら)行きたい(でもほんとは無理)」という複雑な気持ちが隠れていることもあるようです。
息子のコタケが不登校の時、私は焦りが募ると「明日の予定はどうするの?」と自分では少しオブラートに包んだつもりのド直球の質問をしてしまったりしました(汗)「無理して行かなくていい」と「できれば行けると良いな」という感情のせめぎあいが続き、親としても辛い時期だったと思います。でも不登校について調べていると、「学校に行けないだけでなぜ子どもがこんな辛い経験をしなければいけないんだろう?」と思うような学校の対応や、全国の学校内で起きるいじめやハラスメントなどの問題を耳にすると、「無理をして心の傷をこれ以上増やすくらいなら、家でのびのび明るく生きていてくれればもう十分だ。家族が健康で笑っているのが一番!」と思うようになっていきました。
そうして心が決まった直後に、「やっぱり学校には行ったほうが良い?」とコタケから聞かれた時、私は気楽に「無理して行かなくていーんじゃない」と答えました。今思い返すと、100%心の底から言えたのはこれが初めてだったと思います。すると、この言葉はこれまで何度も口にしているのに、コタケは初めて「ホントに?ホントに行かなくていいの?」とすがるような声で聞き返してきました。私は改めて「無理しなくていい。学校は苦しんでまで行くところじゃない。勉強どころじゃないだろうし、それなら安心して学べる場所で学んだほうが良い」と答えました。コタケは全身から力が抜けたような声で「ホントに、行かなくていいんだ…」と呟いた後、解放されたような笑顔を見せたのです。私はこの時、私の心の隅っこにある「できれば、学校行けたら良いな」という本音のかけらが息子にはちゃんと見えていたことにようやく気づきました。そして、そんなプレッシャーをかけていたことを反省し、「誰よりもまず親が安心させてあげなくては…」と気持ちを新たにし、この日を境に登校を目標とせず、安心できる家庭環境作りと家庭での学習サポートへと切り替えました。
これが正解というわけではありませんが、一つの体験談としてご参考になれば幸いです。
文部科学省のホームページによりますと…
何らかの心理的、情緒的、身体的若しくは社会的要因又は背景によって、児童生徒が出席しない又はすることができない状況(病気又は経済的理由による場合を除く。)
文科省が毎年実施する「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では、「年度間に連続又は断続して30日以上欠席した児童生徒」を不登校としています。
・統計調査
◎「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」 文部科学省
◎ 「不登校傾向にある子どもの実態調査」日本財団
不登校に関する最近の調査報告。不登校児が16万人(小中)に増えたことや、不登校傾向の生徒が33万人以上(中学のみ)いるという内容が掲載されています。小学校と中学校でデータを分けて見比べると、小学生の不登校児童数の上昇が中学生に比べてより増加傾向にあることがわかります。
・不登校の原因調査(文科省、長野県、NHK)
◎長野県 第2回不登校児童生徒への支援の在り方懇談会 参考資料
不登校の原因は様々あり、一つ以上の背景要因が隠れていることも珍しくないそうです。文部科学省の調査では「教職員との関係」は4%程度であるに対し、長野県やNHKのLINE調査では「担任との関係」が3割近くを占めています。これほど結果に差が出たのは、文部科学省が学校を対象に調査しているのに対し、後者は不登校生徒本人からの直接アンケートを取っているためと思われます。なお、下記のグラフは、文科省、長野県、NHKの各調査結果および文科省の学校基本調査から抽出して作成しています。
文科省はこれまでの調査手法が子どもの実態と乖離していることを念頭に、2020年度に200人程度の不登校児童生徒を対象とした調査を予定しています。
・不登校の急増に関するニュース
◎『小中不登校18万人 過去最多、7年連続増―文科省・問題行動調査』 時事ドットコムニュース 2020年10月22日
◎『社説[コロナと不登校]急増に「危機感」もっと』 沖縄タイムス 2021年7月12日
◎「増える不登校 27人に1人の現状直視を」2019/12/2 西日本新聞
・不登校関連のメディア記事・特集
◎「義務教育の義務って?」どうなってるんだろう? 子どもの法律
「義務教育って子どもが学校に行く義務じゃなかったの⁈」意外と誤解されている「義務教育」の「義務」のお話。弁護士の山下敏雅先生が「どうなってるんだろう?子どもの法律」というブログでわかりやすく解説しています。ちなみにこのブログは本にもなっています。
フィンランドの学校で先生をしている日本人の方のブログ。フィンランドの教育の歴史や制度、学校生活の興味深いお話がたくさん掲載されています。不登校という視点で、フィンランドの学校教育現場の様々な対応を紹介している記事もあります。インスタグラムはこちら→tomofinedu ちかちゃん@フィンランド教育
◎OECD生徒の学習到達度調査(PISA)国立教育政策研究所
OECDが3年に一度実施している調査の結果や要約等が紹介されています。
教育を受ける権利と義務教育について定めている第26条をはじめ、法の下の平等、人権の尊重、学問・思想良心の自由など、人権や教育に関わりのある憲法の条文を紹介しています。
◎「子どもの権利条約 日本ユニセフ協会抄訳 25 ― 32 条」 日本ユニセフ協会
国連の「子どもの権利条約」の中にある、教育を受ける権利について紹介しているサイトです。日本は1994年に批准していて、現在、世界では196の国と地域が締約国となっています。
◎文部科学省通知 2019年11月 「再登校のみではなく、社会での自立を目指す」
文部科学省が2019年11月に出した通知について。学校の不登校対応で長年堅持されてきた「学校復帰」を目指す方針から、再登校のみではなく、「社会での自立を目指す」へと方針が変更されました。
◎文部科学省の通知からの抜粋
「…1 不登校児童生徒への支援に対する基本的な考え方
(1)支援の視点
不登校児童生徒への支援は,「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要があること。また,児童生徒によっては,不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある一方で,学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立へのリスクが存在することに留意すること。…」
(全文はこちら)
◎教育機会確保法
お子さんが「もう学校に行けない」となった時に、必要に応じて休ませる、という考えが広がっています。そうした「休養の必要性」は教育機会確保法という法律によって認められています。また、この法律については様々な意見があり、法案審議の段階では多くの批判的意見が出されました。この法律によって学校の姿勢が変わったケースがある一方、担任が不登校児と積極的に関わりを持たなくなってしまうなどの問題も出てきています。
文部科学省は2021年の秋に2つの不登校に関する調査結果を公表しました。
一つは毎年学校・教育委員会を対象に実施されている「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(以下、学校対象調査)、もう一つは当事者を対象とした調査「令和2年度不登校児童生徒の実態調査」(以下、当事者対象調査)です。
この2つの調査結果を比較したものが左のグラフです。(学校対象調査は小中学校の平均値を使っています。)
学校対象調査ではいじめや先生との関係が原因とする回答は1%前後と極めて少ないのに対し、当事者対象調査では「学校に行きづらくなった理由」という質問に対し、「いじめ(いやがらせやいじめがあった)」と回答したのは小学生で23.0%、中学生で16.2%、「先生のこと(先生と合わなかった、先生が怖かった、体罰があったなど)」と回答したのが小学生27.0%、中学生25.3%となっています。文科省がこれまで毎年行ってきた学校対象調査の結果を踏まえて、各自治体が不登校支援策を検討したり、研究者が分析の土台としてきたことを考えると、実態を適切に把握できないままこれらの調査結果が学校や社会に与えた影響は小さくないと私は考えます。
さらに、学校対象調査では不登校の原因を生徒の「無気力」とする回答が5割近くに上り、全回答項目で最多となっています。当事者対象調査の回答に「無気力」が含まれていないため単純な比較や分析は難しいですが、この結果によって一部の学校や教員が不登校の理由について、「本人の心の問題」と捉えて対応している可能性も考えられます。
ただ、今回公表された当事者対象調査は対象者が絞られており、さらに回答率も10%前後と低かったことから、今回の調査結果で不登校の全体像がわかったとは言い切れないと私は思います。「調査期間中(約1ヶ月間)に学校または教育支援センターに登校・通所しアンケート用紙を受け取った生徒」しか回答できない条件設定が、何の影響もないとは考えにくいとも思います。調査実施期間中に登校も通所もできなかった完全不登校状態の子ども達の声は反映されていないため、調査結果に偏りが生まれてしまっている可能性もあります。あらゆる状況の不登校生徒やその保護者の声が集まるような調査分析が望まれます。
なお、文部科学省は令和4年度概算要求の「いじめ対策・不登校支援等総合推進事業」(要求・要望額104億円)の中に、「いじめ・不登校等の未然防止に向けた魅力ある学校づくりに関する調査研究」(365百万)を盛り込み、その一つとして「…不登校の未然防止等に向けた校内型適応指導教室、スクリーニング、経済的支援の在り方等の調査研究」を掲げています。
引用・参考資料
「令和4年度概算要求のポイント」 文部科学省HP
「不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書」 不登校に関する調査研究協力者会議(第1回)配付資料 文部科学省HP
◎『こども六法』 山崎聡一郎 (著) 弘文堂 2019年
この本を書いた山崎氏は、小学生の時にいじめにあって、中学生になってから「法律を知っていれば、自分を守れたかもしれない」という思いを持つようになり、大人になってからこの本を作ったそうです。イラストは明るく、文体もわかりやすくて読みやすいですが、そこに書かれている内容は子どもの持つ権利とともに、子どもを取り巻く環境がいかに厳しいかを示唆しています。
子供の権利を守ることは当然のことのようで、そのうち大人側が正しく理解し実践できていること、できていないことを確かめる上でも、大人もぜひ読むべき本だと思います。本の企画を始め、協力を求めたりする中で、教育関係者から「子供に法律の知識なんてつけたら御しにくくなる」と言われたこともあるそうです。この言葉は、先生から見て「コントロールしやすい都合の良い」子に育てようとしているかのようにも聞こえます。この本を読むことを通じて、子どもへの接し方を振り返る機会にもなると思います。
下の「こども六法」ホームページには、本の「こども六法」の中にある「いじめで悩んでいるキミに」という山崎さんのメッセージと、いじめから子どもを守るために作られた法律「いじめ防止対策推進法」をわかりやすい言葉で書かれたページがあります。
◎『斎藤環さんに聞く「治癒できる『いじめ後遺症』」』2012年12月21日 朝日新聞
いじめによる心の傷からの回復に関する専門家のインタビュー記事です。筑波大学の斎藤環教授は引きこもりの支援を積極的にやっていて、不登校にもとても詳しい先生です。
◎『いじめのある世界に生きる君たちへ ーいじめられっ子だった精神科医の贈る言葉』中井久夫著 中央公論新書 2016年
いじめについてはその構造について語られることが多いですが、この本はいじめられている子の過酷な心理状態を中心に書かれています。いじめられている子の行動を見ただけでは理解できない心のありさまを、わかりやすく丁寧に解説しています。私はこの本を読んだ時に、徐々に被害者を奴隷化していくようなプロセスに、心が芯から凍るような恐ろしさを覚えました。この紹介文を書くために改めて目を通しましたが、その残酷さに何度も本を閉じてしまうほどです。中井氏は本の中で、『この世に、いじめ方を教える塾があるわけではありません。…一部の家庭と学校は、懇切丁寧にいじめを教える学校といえそうです。』と述べています。やさしい語り口ですが、いじめは大人の問題でもあること、大人が果たすべき役割を果たしていないことを、読む人に突きつけているように感じました。「子どもだからすぐ回復する」「いじめくらいで」とお考えの方にはぜひとも読んでいただきたい一冊です。この本を読んだ後に認識が大きく変わるかもしれません。
◎「いじめと君」朝日新聞
朝日新聞DIGITALが「いじめと君」というトピックで、不登校を支援する医師やいじめ被害経験のあるタレント、ジャーナリストなど、様々な立場の人たちから寄せられたいじめに悩んでいるお子さん向けのメッセージを掲載しています。親が読んでもとても学ぶべきメッセージが多くこめられており、励まされる内容です。親子で読むことをお勧めします。
この特集は本にもなっています。
◎『完全版 いじめられている君へ いじめている君へ いじめを見ている君へ』朝日新聞社編 朝日新聞出版 2012年
◎「STOP自殺 #しんどい君へ」 読売新聞
上記の朝日新聞と同様に、現在テレビなどで活躍されている方で、子どもの頃にいじめ被害にあった方々のインタビューです。子どもへのメッセージだけではなく、被害者としての実体験が詳しく語られているものもあります。なお、タイトルに「自殺」とあることや、深刻ないじめの話も出てくるため、小さなお子さんも読む可能性のある「子どものページ」には紹介しておりません。保護者の方のご判断で、お子さんに紹介される場合はお子さんとご一緒に読むことをお勧めします。
「不登校重大事態に係る調査の指針について(通知)」文部科学省
いじめにより相当の期間(概ね30日が目安)欠席を余儀なくされているとの疑いがあると認める時、学校が調査をするよう文科省から通知が出されています。この調査はいじめ被害により不登校になった児童の学校復帰と再発防止を主な目的としています。この通知は現場の先生がご存じないこともありますので、該当していると思われる方で調査を希望される場合は、先生または教育委員会に申し出てみることもできます。
不登校について相談先をお探しの方、また不登校児を支える中で心が折れそうに感じている方、孤独を感じている方向けの相談先をご紹介します。「誰かに話しても何も解決しない…」「相談を聞くだけでそれ以上何もしてくれない…」とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、少しでもお気持ちが楽になったり、第三者の言葉が前を向くきっかけにつながることを祈っています。
◎人権相談 法務省(電話、LINEなど)
法務局による人権にかんする相談窓口を紹介しています。差別やハラスメント、いじめや暴力など、ご自身だけでなくお子さんに関する人権相談もできます。
不登校(ふとうこう)だけではなく、いじめや虐待、LGBT、生活問題など、それぞれの悩みごとに相談先を検索できます。お住まいの地域で検索も可能です。NPO自殺対策支援センターライフリンクが運営しています。
◎「あなたはひとりじゃない」孤独/孤立対策室 内閣官房
内閣官房に設置された。孤独・孤立問題の対策チームが立ち上げた相談先を探せるサイト。18歳未満の人と、大人向けとあります。チャット形式で質問に答えていくと、今利用できる公的支援の窓口等のほか、不安の軽減方法などを紹介しているページが表示されます。
◎「年齢・性別を問わず、LINE・チャット等による相談」 厚生労働省
電話はちょっと…という人には、LINEやチャットで相談できるところもあります。
◎ひとり親世帯の無料家計相談会 ゆうちょ財団
ひとり親(離婚を考えている段階でも相談可能な場合があります)を対象とした無料のオンライン家計相談です。ファイナンシャルプランナーの資格を持つ相談員が相談に応じてくれます。「主な相談な内容」の一つに「不登校」と記載している相談員の方がいます。また、不登校問題ではありませんが、弁護士の方の相談日もあります。
◎ネットトラブルでお困りの方へ インターネット 安全・安心相談 警察庁
ネット上のトラブルに関するサイバー犯罪の相談先や事例紹介が検索できる警察庁のサイト。
各都道府県警本部のサイバー犯罪対策相談窓口の一覧
◎オンラインゲームトラブル 消費者庁
「子どもが知らない間に高額課金してしまった」などのオンラインゲームのトラブルについて、わかりやすいイラスト付きで紹介している消費者庁のサイト。親ができる対策なども載っています。消費者ホットライン(188)の紹介の他、各地域の消費生活センターが検索できます。
◎ネット・スマホの悩みを解決 こたエール 東京都都民安全推進本部
ネットトラブルの相談事例などをわかりやすく解説している東京都のサイト。メールやLINEでの相談も受け付けています。
◎こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト 厚生労働省
さまざまな悩みに対する総合案内サイト。相談窓口や医療機関の検索サイト、お悩み別の専門家によるアドバイスなど内容は多岐にわたります。電話だけでなく、SNS、メールなどでの相談窓口も紹介しています。
・お父さん自身が不安でおしつぶされそうな時
◎よりそいホットライン(電話・チャット・ファックス・SNS)
厚生労働省の補助金を受けて運営されている相談窓口。DV、性暴力、性別への違和感、仕事、生活苦、病気や障がい、ハラスメント、自殺を考えるほど苦しい、などの様々な悩みや困りごとの相談を無料で受け付けています。どなたでも、何歳でも利用できるそうです。「誰かに話を聞いてほしい」というのもOK。電話だけでなく、ファックス、SNSでも相談可能です。通話料無料。被災者相談も対応しています。
◎あなたのいばしょ(チャット)
チャット相談。24時間365日対応。秘密は守られます。誰でも相談可能です。
◎児童家庭支援センター(東京都は「子ども家庭支援センター」)
全国の自治体に「児童家庭支援センター(子ども家庭支援センター)」があります。18歳未満のお子さんとそのご家族が利用できます。相談内容も子育て相談の他、ひとり親家庭の支援や女性相談など多岐にわたります。私の知る限りでは、外出が難しい場合、相談員が家庭訪問してくれる場合もあります。相談員にはソーシャルワーカーの他、心理専門員(カウンセラー)がいることもあります。
不登校には複数の問題や背景が複雑に絡んでいることもあります。悩みが重なって身動きが取れなくなっている時や、誰にも相談できずに孤独で辛いという親の方などは、一人で抱え込まずに地域の公的支援に繋がっておくのもお勧めです。
民間サービスとして、地域に私設の心理相談室、カウンセリングルームなどがあれば、そこを利用する方法もあります。
相談料は有料で、カウンセラーによって50分5~6,000円くらいから1万円以上とかなり幅があります。また地域差があり、全般に大都市は金額が高めになります。
自治体や支援団体などの電話相談は相談員がその都度違うことが多いですが、民間の心理相談室や精神科クリニックでは、基本的に同じカウンセラーが担当し、しばらく継続することが多いです。
いじめや虐待などで心の傷が深い人の場合、トラウマ(心的外傷)治療に対応できるカウンセラーや精神科医が望ましい場合もあります。トラウマに対する心理療法には様々なものがありますが、私の知る限りではEMDRや暴露療法、認知処理療法などをよく耳にします。
カウンセラー選びの参考としては、公認心理師か臨床心理士のいずれかの資格保持者であることが一つの目安になるかと思います。公認心理師は平成29年に新設された国家資格で、臨床心理士は学会認定の民間資格ですが、臨床心理士資格の歴史の方が長く、国家資格保持者のほうがスキルが高いというわけではありません。公認心理師は設立間もないため暫定的にいくつかの資格取得ルートが認められていますが、臨床心理士は大学院の臨床心理士課程終了が主な受験資格となっています。現在は二つの資格のいずれか、または両方を持つカウンセラーがいます。公立校のスクールカウンセラーの応募条件にも、この2つのいずれかの資格保持者を挙げているところが多いです。
個人的な感想としては、こうした資格保持者であっても、カウンセラーはスキル、経験、人間性などでもだいぶ違いがある印象です。お子さんや親御さんの辛さを理解し、支えながら回復に向けて伴走してくれる医師やカウンセラーの方に出会えることを祈っています。
なお、費用を抑えたい場合、臨床心理士を養成している大学院(第一種指定大学院)が学生の実習機関として相談センターを開設していることがあります。料金は少し安く設定されていますが、学生の実習のために臨床心理士との面談に学生が陪席したり、大学院生がカウンセラーとして面談するところもあります。プレイセラピーの場合は大学院生がお子さんを担当することもあります。
いずれの場合も初診は親だけで受診できるところも多いので、子供は行きたがらないけど親は相談を考えているという方は、事前にホームページ等で確認してみてくださいね。
◎大学付属の心理相談室を一覧にして紹介している個人のサイト カウンセリングの海図 大学院付属等のカウンセリング機関一覧
◎心療内科・精神科でのカウンセリング
クリニック内の心理士によるカウンセリングに健康保険が適用されるところもわずかながらあります。私が知る限りでは、クリニック内のカウンセリングはまず医師の診察を受け、必要と判断された場合にカウンセリングを受けることになります。カウンセラーとの面談時間は30分から1時間程度で、クリニックによっては上記の民間相談室と同等の金額がかかる場合もあります。なお、すべての心療内科にカウンセラーがいるわけではないので、事前に調べてみてくださいね。
NHKの福祉情報総合サイト「NHKハートネット」内の発達障害のページです。NHKは総合、Eテレの両方で発達障害について番組等で情報発信をしています。ハートネットでは発達障害の他にも知的障害、精神疾患など様々なテーマの情報が掲載されています。
発達性読み書き障害とも呼ばれているディスレクシア(読字障害)に関する基本的な情報が掲載されています。サイト内では、「読字に困難があると当然ながら書字にも困難があります」と説明しています。ディスレクシアの初期症状をわかりやすい表にして解説しています。
◎カナロコ【ひとすじ】「字が読めないからこそ 恐竜学者・ジャック・ホーナー」 2014年7月21日 神奈川新聞
ディスレクシア(識字障がい:学習障害の一つ)を持つ恐竜博士ジャック・ホーナー氏のインタビューです。ジュラシックパークの主人公の博士のモデルにもなった人で、学習障がいやディスレクシアを理解する上でもおすすめです。ホーナー博士は幼いころ、父親から「お前の人生は終わっている」と言われてしまったというエピソードを、目に涙を浮かべながら語る場面があります。この記事を読んで、親として周りからなんと言われようとも、「わが子最高!」と思って育てようと改めて思いました。ちなみに、ジュラシックパークの監督スティーブン・スピルバーグもディスレクシアなんですよ。
◎「なぜ女子の発達障害は、大人になるまで発覚しにくいのか」岩波 明(昭和大学医学部精神医学講座主任教授) 2020年6月3日 ダイアモンドオンライン
小さなお子さんの発達障害の一つとして、ADHDとASDがありますが、これらは男の子に比べて女の子はその傾向が目立ちにくく、大人になってから診断を受けるケースも出てきています。こうした実態の背景について、医学的な話だけではなく、日本の男女の性別役割分担などの視点からも解説されています。
◎「ようやく手に入れた「識字障害」という名の止まり木 勉強がまったくできない落ちこぼれが、落語家になって」婦人公論 2019年11月08日
落語家・柳家花緑さんがご自身の発達障害についてのこれまでのご経験を楽しくユーモラスに語っています。幼い頃は自身を落ちこぼれと捉え、成人して識字障害に気づくまで学校や生活のさまざまな場面で苦労されてきたそうです。大人になってお子さんに識字障害がある方から「識字障害では」と言われた時は不快に感じられたのが、その後「はたと立ち止まる気持ちに」なり、ご自身で調べて確信された時、「受け入れたとたん、ものすごく大きな変化が起きました。わずか数年前まで、自分はダメだ、できないんだと思っていたのが、そうではない。識字障害のせいだったのだとわかった時の安堵感。精神的にものすごくラクになりましたし、恥ずかしさがなくなりました。」というエピソードが印象的です。まだ幼い子が言葉で表現することが難しいディスレクシア当事者の気持ちを知る一助となるお話です。
◎「知ってほしい! 起立性調節障害のこと」 NHKハートネット
朝が苦手で起きられない、立ちくらみがある、頭痛がするなどの症状があり、朝からの登校が困難になって不登校になるお子さんもいます。日本小児心身医学会によると、中高生の約10%が起立性調節障害(OD)であると推定されています。40人クラスであれば、4人もいることになるのですが、一般的にはまだあまり知られていません。
この疾患を知らない人からは、「早起きが苦手なだけ」「気の持ちよう」など根性論や気合いでどうにかなることと誤解され、お子さんがさらに辛くなってしまうケースもあるため、まずは正しい知識に基づいた周囲の理解が望まれます。上記のサイトにも出てきますが、学校側の理解が得にくい場合は診断を受けた小児科などで診断書を作成してもらい、それを学校に提出することで理解を促すという方法もあります。
不登校の背景には、こうした生活面で困難を抱えているケースも珍しくなく、学校の先生も疾患や対処法をよくご存じないことがあります。個人的な経験では、親の希望だけでなく、かかりつけの医師やカウンセラーからもらった具体的な対処法を伝えるのも支援につながりやすいと思います。また、朝起きられない理由は起立性調節障害だけではありません。上記のNHKの他、いくつかのサイトを下にご紹介していますので、受診の判断のご参考にしていただければと思います。
◎「こころの病克服体験記 ODになった娘」こころの耳HPより 起立性調節障害(OD)の事例を紹介しています。
◎「小児期発症慢性疾患を有する患者の成人期移行に関する調査報告書」日本小児科学会HPより 「14.日本心身医学会」に「起立性調節障害」(114p)の調査報告があります。
◎『子どものミカタ 不登校・うつ・発達障害 思春期以上、病気未満とのつきあい方』山登敬之 日本評論社 2014年
不登校の相談をしに心療内科などのクリニックを訪れたことがある人もいると思います。この本では医師という立場から、不登校のほか、思春期特有の様々な心の不調について精神科医の山登先生が事例を用いて解説しています。どのお子さんに対しても温かい眼差しを持って書かれていて、思春期の子どもを支える親が知っておきたい疾患の知識やアドバイスがたくさんある本だと思います。山登先生が参加した文部科学省による不登校児の「その後」を調べた調査についても触れています。
◎「今は休養が必要な時期 挽回のチャンスはいくらでもある」 斎藤 環 不登校のすべて
引きこもり支援をされている精神科医の斎藤環先生。不登校にも大変詳しい方です。斎藤先生の「追い詰めず、まずは休養させる」「おだやかに見守り、何か話したくなったときに話せるように、会話を多くする」など、焦るあまりについ忘れてしまいがちな日常の心構えが書かれています。不登校に関する斎藤先生のインタビュー等はこの他にもインターネット上にいくつかありますので、ぜひ検索してみてください。
ヤングケアラーとは「家族にケアを要する⼈がいる場合に、⼤⼈が担うようなケアの責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情⾯のサポートなどを⾏っている18歳未満の⼦ども」としています。(厚生労働省のホームページより)
ヤングケアラーの子どもたちは、その悩みを他の人に話すことができずに一人で抱え込んでいることもあり、また不登校の子どもたちの中にもヤングケアラーが存在すると言われています。令和2年度の厚生労働省の調査では、中学2年制の5.7%、約17人に一人がヤングケアラーの状態にあることがわかりました。また、高校生でも、全日制の4.1%、定時制の8.5%、通信制では11.0%の生徒が家族の世話をしていると回答しています。
一昔前までは「お手伝いの範囲」「家族なら当然」という風潮がありましたが、現在は支援が必要な存在として注目され、国会でも議論されています。親の方も望んでそのような生活状況になっているわけではないのだと思いますが、まずは生活の安定につながる支援に家族が繋がることが、子どもの負担を軽減する第一歩だと思います。
2024年6月には子ども・若者育成支援推進法(通称、ヤングケアラー支援法)が改正されました。もしご家庭にお心あたりがありましたが、ぜひ下記の情報もご活用いただければと存じます。
ここでは、ヤングケアラーに関する基本情報や、ヤングケアラーに関連する支援情報を掲載しています。また、前述の「心理・生活等の相談先」コーナーにも様々な支援機関についてご紹介しています。
◎ヤングケアラーについて こども家庭庁
◎ヤングケアラーについて 厚生労働省 ヤングケアラーに関する基本情報の他、支援情報も掲載されています
◎知ってほしいヤングケアラー NHK首都圏ナビ 当事者の声のほか、専門家の解説もあります。
◎『ヤングケアラーを初めて定義 改正子ども・若者育成支援推進法が成立』福祉新聞、2024年6月
(出典)「ヤングケアラーの実態に関する調査研究について」 令和2年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業 厚生労働省
LGBTQ+の子たちも不登校になることがあります。LGBTQ+の当事者(とうじしゃ)は学校の制服の選択や着替え、友人関係など、学校生活のさまざまな場面で人知れず悩み、周りに変だとからかわれてしまったりして、それがきっかけで学校に行きづらくなってしまいます。親や周囲に伝えられない人の話もよく耳にします。LGBTQ+の人の割合は日本では約7%、13人に一人がLGBTQ+の人だと言われています。今もLGBTQ+の人たちへの差別や偏見は社会に根強くありますが、国連サミットで掲げられた持続可能な開発のためのSDGs17の目標の中にもジェンダー平等が掲げられるなど、世界的にも理解を促進する方向に動いています。
我が子はLGBTQ+かも…と思いながらも肯定的に受け止めるのが難しいと感じる親御さんもいらっしゃるかもしれません。これはとてもセンシティブな問題であり、軽々にアドバイスできることではありませんが、少しでもご参考になればと下記に当事者団体やSDGsに関するサイト、高校生の当事者の体験談などのサイトをご紹介しています。
◎認定NPO法人 ReBit LGBTもありのままでオトナになれる社会へ 「LGBTを含めた全ての子どもが、ありのままの自分で大人になれる社会を目指す」とする団体(だんたい)です。LGBTの人とそうではない人が一緒に活動し、出張授業などの教育活動やLGBT成人式を全国で開催しています。
◎「SDGsの目標:5ジェンダー平等」EduTownSDGs ジェンダーについてわかりやすく解説(かいせつ)しているサイト。ジェンダーやLGBTの話もしょうかいされています。
◎「多様な性を知ってほしい」 高校生新聞サイト内 高校生くらいのLGBTの人たちの体験談などがのっています。
この他にも、貧困や虐待、引っ越しやオヤの離婚等がきっかけで、不登校になるケースもあります。多くの場合、原因や背景は複数あり、それらが重なった末に不登校になりやすいです。親子でははっきりとわからないこともあるので、第三者である医師や教育相談、スクールカウンセラーに相談してみることも方法です。
不登校の子と親の会話は、話し合うつもりが、登校や学習、進路等をめぐって対立的になってしまったり、一方的に叱責するような形になってしまうこともあります。親子関係のあり方、教育方針はご家庭それぞれだと思いますが、ここでは家族の穏やかな関係性の中で、子どもの気持ちを尊重するコミュニケーションに関心をお持ちの方への情報をご紹介しています。ご関心のある方は、ぜひご家族でお読みください。
◎「対話とコミュニケーション」 BSNキッズプロジェクト「はぐくむコラム」 *BSN新潟放送
新潟大学・豊田光世淳教授による親子の対話について書かれたコラム。簡単そうに見える親子の対話の難しさとその価値についてわかりやすく説明されています。豊田先生はコラムの中で「対話では、“当たり前”に固執せずに、“異なる可能性”を模索することが大切 」としています。豊田先生はさらに、「対話は、難しく、勇気も必要としますが、気づきや理解を与えてくれるとても大切なコミュニケーション 」とも述べています。笑みの間ミッションにある「相互に尊重しあう関係性の中での対話」の基本的な考えとも通底しています。ぜひご一読ください。
◎「対談「オープンダイアローグ」に学ぶ 子どもとの対話の持つ可能性」 斎藤環教授(筑波大学)× 高橋暁子(ジャーナリスト)
オープンダイアローグは1980年代にフィンランドで生まれた療法ですが、対談の中で斎藤先生は親子間のコミュニケーションにも使えると述べられています。文字通り「開かれた対話」で簡単そうに思えますが、子どもを相手に試みると「無理をせずに○○してなさい」とか「○○すればいいよ」など、言い方はやさしくても「親が望ましいと思う提案」をしてしまいがちです。斎藤教授は「議論や説得、説明は対話ではなく、モノローグとも言うべきもの」とし、さらに「相手にわからせよう、伝えよう、意見を変えてやろうという意図のやりとりは、すべて対話ではないと考えてください」とも仰っています。コタケからも、「おとなからの提案は、言葉は優しくても子どもからすると指示に近い」と指摘されたこともあります。ちなみに我が家でも「オープンダイアローグっぽいコミュニケーション」を実践してみたことがありましたが、後にコタケに聞くと「アドバイスされるより、辛い気持ちを受け止めてもらえたことで安心できた」と話していました。つい一方的、対立的になりがちな不登校の家族間のコミュニケーションを、穏やかで自由な対話にするヒントが見つかるかもしれません。
また、斎藤先生が新しく出された『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』(医学書院)は実践の場面がマンガで描かれていてわかりやすく、お子さんと一緒に読めるのでこちらもおすすめです。
オープンダイアローグについて、実践されている様子を交えてわかりやすく解説しているサイトがあります。
「【特集】変わり始めた精神医療 (3)“オープンダイアローグ”の可能性」 NHKハートネット 2019年6月
◎『こころのナース 夜野さん(2)』水谷緑 著 小学館 2020年
精神科の看護師「夜野さん」の目線を通して、精神科クリニックやデイケアに訪れる患者とその家族の心の変化を描いている漫画。第2巻のエピソードの中に、不登校の女子中学生とその両親の話があります。娘の不登校をきっかけに夫婦がそれぞれの子育てを見直し、我が子に向き合っていく様子はとてもリアルで、親子の葛藤や夫婦の変化に共感する人も多いのではと感じました。内容はシリアスですが、水野さんのやさしいタッチの絵と、ナースの夜野さんの穏やかなキャラクターに助けられて、読み終えたときには不登校の女の子、お母さん、お父さん、それぞれを応援する気持ちになりました。お子さんとのコミュニケーションに悩む親の方にぜひお勧めです!
不登校児の親のお悩みの常連、長時間ゲーム問題。
私も当初はコタケに「学校がやっている時間はゲームはしない」と伝えていました。でも、不登校中にゲームをし続ける子どもたちにとって、それはかなり厳しいことのようです。
不登校の子の体験談を調べると、多くの子が「朝、クラスでは授業をしているのに自分が家にいると思うと辛い」「何もしない時間はとても辛くて悪いことをずっと考えてしまうので、それを振り払うためにゲームにのめり込んでしまう」といった本音を語っています。コタケも「ゲームをしていても一瞬たりとも自分が不登校であることを忘れることはできない。笑い声を上げていても、心は少しも笑っていない」と言っていました。朝からゲームをしているから元気なのではなく、ゲームでもしていなければ辛すぎて自分の心を守れないという切実な背景があるようです。また、オンラインゲームの世界で同じような不登校の子と知り合うこともあり、そのつながりを心の支えにする子もいます。
コタケの場合、パパタケ(コタケの父親)もゲーム好きなので、二人で討伐にでかけたり、一緒にプレイしたりして、父子のコミュニケーションの大事なツールでもありました。
ゲームは学びのない娯楽と思われる方もいますが、意外な効果もあります。ゲーム内で仲間と協力プレイをするなど、リアルとは違う仲間とのコミュニケーションを通じて自信を培えることができたり、海外のプレイヤーに出会うと英語でコミュニケーションを取り、日本以外の世界の存在を感じるチャンスにもなります。ゲームによってはクリエイティブな機能も充実しており、マインクラフトで緻密なデザインの大きな建物物を再現する子もいます。
ゲーム依存症の問題もあるため親御さんのご不安はとてもよくわかります。ネットゲームにハマるあまり、多額の課金をしてしまったり、悪質な大人による被害を防ぐためにも、お子さんだけではなく親自身の自衛する力も必要です。
どうしたら健康を害さず、安全に配慮しながらネットゲームができるか、ご家庭ごとの対応があるかと思います。親として心配のあまりお子さんからゲームを取り上げる前に、学校からの配慮や環境調整が行われたり、お子さんの辛い気持ちに寄り添う親子の対話を重ねる中で、お子さんの不安が軽減されますよう願っています。
インターネット上でのトラブルに関する相談先を、「お母さんのページ」の「心理・生活等の相談」でご紹介しています。そちらもぜひご覧ください。
◎『学校へ行けない僕と9人の先生』 棚園正一 著 双葉社 2015年
この漫画の著者・棚園正一さんは、ご自身の不登校経験を『学校へ行けない僕と9人の先生』に描かれました。当事者の気持ちがとても丁寧に描かれています。私はこのマンガを読んだ後、息子に謝りました。自分なりに懸命に理解してきたつもりでしたが、まだまだ不十分だったことを教えてもらった気がします。ちなみに待望の続編も出されました。
棚園さんのインタビュー記事もあります。
◎「不登校という「色眼鏡」をかけない人との時間が、「フツウ」になれない自分が変えたーー棚園正一さんが漫画『学校へ行けない僕と9人の先生』続編を描く理由 」クリスクぷらす
お子さんが不登校になっただけでもご不安なところに、新型コロナウイルス感染症の流行で在宅勤務などがはじまり、家族で外出もままならない中、新たなストレスが溜まってしまいがちかもしれません。あるカウンセラーの方からいただいたアドバイスに、「飛行機にトラブルが起きて酸素マスクが天井から落ちてきた時、小さな子ども連れの親は子どもより先にマスクを装着しなければいけません。それは、親がきちんと酸素が吸えていないと、子どもを助けている途中で親が倒れ、結果として子供も自分も助けられないからです。それと同じで、まずは親御さんの健康を大事にしてください。」というものがありました。とはいえ、今は新型コロナウイルス感染症の流行の真っ最中のため、心からリラックスするのも難しいかもしれませんが、家族でできるストレスケアのヒントになる情報をご紹介しています。
◎「新型コロナウイルスと子どものストレスについて」 国立成育医療研究センター・こころの診療部リエゾン診療科
不登校の話をすると感情的になりがち、という方には、不登校に直結しないテーマもおすすめです。たとえば「新型コロナの予防対策」などは家族全員にかかわりのあるテーマで、お互いを気遣うなど、前向きなコミュニケーションが図れるかもしれません。その際は、話がお子さんが過度に不安になるような流れにならないよう、配慮してあげてください。
上記のリンクは親子のストレスケアに関する情報が紹介されているホームページです。おとなの方へのおススメは「子育て中のあなたへ」。浮世絵の「鳥獣戯画」に出てくるウサギとカエルが登場し、ユーモラスなイラストで親のストレスへの理解を示しながら、ストレスケアや日常で気を付けた方がよいことを教えてくれます。その他、親子向け、子ども向けに、不安や体調不良への対処法なども紹介されています。子どもとのコミュニケーションの心得なども掲載されていますので、ぜひご家族一緒にご覧ください。
◎「いまここケア -おうちで誰でもできるこころのケア」 東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野
新型コロナウイルス感染拡大防止のために自宅で過ごす方に向けたメンタルヘルスの情報を掲載しているサイト。 マインドフルネスなどを使ったリラクセーション法を紹介しています。マインドフルネスはGoogleが社内の研修に取り入れたことでも有名です。ストレスケアだけではなく、集中力や創造性などを高める効果もあるとされています。我が家でも自律訓練法とマインドフルネスを親子でやってみたことがありますが、コタケは呼吸法が気持ちよくてとても気に入っていました。試す時はお子さんだけにやらせず、最初のうちは親子で一緒にトライしてみるのもおすすめです。
◎「新型コロナウイルス感染症対策(こころのケア)」厚生労働省
SNS上では、不登校の子のお母さん・お父さんの先の見えない不安や焦り、悲しみや絶望が短い言葉や絵文字で表された投稿を見ない日は無く、多くの方が心身ともに厳しい日々を送られていることが伺えます。今の生活の中で気晴らしをする程度ではもうがんばれない、体の不調として出てきてしまっている、そんな方にはより積極的なサポートが望ましいかもしれません。笑みの間ではホームページを通して保護者の方々の支えにつながる情報や専門家のアドバイス等を発信することで、少しでもお力になれたらと考えています。
ここでは、親御さんの心の疲れ度合いやうつ病の兆候をご自身でも理解し、適切な支援や周囲からの協力に結びつけるためのツールや専門家の解説をご紹介します。
「うつ病」、というと身構えてしまう方もいるかも知れません。そのお気持ちはとてもわかります。「今日は疲れてるだけだから…」と思っても、気持ちが沈む日が続いたり、不眠などの体の不調が治らない方は、早めに医療や福祉の支援を受けることを考える段階かもしれません。子供のために一生懸命に過ごされていて、「自分の体調どころではない、まだ私は大丈夫」と思っても、お守り代わりに地域や自治体などの支援サービスに繋がってみてください。
下にうつ病の簡易チェックができるサイトやストレスマネジメントに役立つ本をご紹介します。
◎うつ度チェック こころのスキルアップ・トレーニング(ここトレ)
認知行動療法に関するサイトです。認知行動療法が専門の大野裕先生が監修しています。
◎うつ病 こころとからだ 塩野義製薬・イーライリリー
製薬会社が運営しているうつ病に関する情報サイトです。うつ病に関する知識や病院検索の他、うつ症状の自己チェックができるページがあります。
◎『セルフケアの道具箱 ストレスと上手につきあう100のワーク』伊藤絵美著 晶文社 2020年
公認心理師の伊藤絵美氏が様々な事情でカウンセリングを受けられない人に向けて、自分でできるセルフケアのワークを紹介しているサイト。ワークとある通り、読むだけでなく、読者自身がやってみることが勧められています。伊藤氏は「はじめに」の中で『セルフケアとは、「ひとりぼっちで、孤独に自分を助けること」ではありません。互いに助け合いながらのセルフケアこそが、回復にとっては重要です』と述べています。内容はストレスマネジメント、マインドフルネス、コーピング、認知行動療法、スキーマ療法などがベースになっているそうですが、文章はとてもわかりやすく、一つのワークごとに短くまとめられているので、スキマ時間にちょっとずつ進めることもできます。また、100のワークを全てやらなくてもいいそうです。お休みの日を利用して、ご家族でやってみるのもオススメです。(すでに医師やカウンセラー等の医療者や援助者につながっている方は、事前にこの本に取り組むことを伝え、その方の指示に従ってください、とのことです。)
不登校が始まってから、私は様々な専門職の方にアドバイスをいただきました。そこでよく言われたのが「お子さんにとって家庭が安心基地であることが、外に出る勇気につながる」でした。
一昔前までは「家が居心地がいいから出ないんだ」「あえて居づらくすればいやになって登校する」というものでした。(今でもこのように言う先生がたまにいらっしゃるそうです…)でも、それでは余計にお子さんを追い詰めて、学校だけではなく親子の関係も壊れてしまうリスクがあります。気持ちが落ち着き、家の外に出ようとしたときに、「いざとなったら家で守ってもらえる、親に支えてもらえる」という心のお守りが必要というのは、不登校のお子さんに限らず、どんな子にも大切なことかもしれません。
ちなみに我が家の安心基地の作り方は小鳥の巣作りと同じで、日常のコツコツとした言葉や態度、そして親の「必ず守る」という約束を実行し続けることの積み重ねでできていく感じでした。試行錯誤の繰り返しで完璧な巣ではなかったかもしれませんが、コタケの安心と希望を取り戻すためには必要な努力だったかな、と今となっては思います。特に、パパタケがコタケに何かあると必ず早く帰宅して家の雰囲気を明るくし、家族を支えてくれる姿は、コタケに「うちの最強の最後の砦はパパ」という安心感を与えていました。
笑みの間でご紹介している情報の中に皆さまの安心基地作りに必要な言葉やアイデアが一つでも見つかったら嬉しいです。
自治体にある「不登校相談窓口」や「教育支援センター」、「教育相談」、「スクールカウンセラー」「スクールソーシャルワーカー」が不登校相談などを受け付けていると思います。不登校相談窓口や教育支援センターは地域によってあったりなかったりします。
全国各地に不登校児の親の会があります。当事者の親が集まって気持ちをお互いに語り合ったり、情報を共有したりできます。参加者は女性(お母さん)がかなり多いですが、夜や週末開催ですと男性(お父さん)も参加されている会もあります。名称を「親の会」とせず、「保護者の集い」や「茶話会」等の名称にしているところもあります。小さな会ですとホームページを持っていない場合もあります。そうしたところは加入しているネットワークの中で連絡先を紹介していたりしますので、下記のリンク集なども使いながら探してみてください。住んでいる地域にしばられないオンラインの親の会もあります。自治体が行っている保護者の集いや、教育支援センターで開催していることもあります。なお、フリースクールや民間ボランティア開催では数百円程度の参加費用がかかることが多いです。このほか、大学付属の心理相談室が親の会を開催していることもあります。ごく僅かですが父親の会を開催しているところもあります。
親の会が大きな心の支えになる方がいる一方で、語り合う中で泣き出す方も珍しくなく、こうした場が苦手な方や、情報収集を目的にしたい方もいらっしゃると耳にします。不登校児の保護者の多様なニーズに応える場はまだじゅうぶんとは言えないのが現状です。
「各地の親の会」リスト 登校拒否・不登校を考える東京の会 *東京都内の親の会の紹介サイト。周辺の自治体の親の会も少し載っています。
不登校のお子さんのみならず、保護者の方もお子さんの不登校をきっかけに様々な傷つきを経験されることがあります。そんな時、心療内科で子どもと親の両方の相談にのってくれたりします。また、いじめや暴行、ハラスメント等により深い心の傷を負っている場合は、トラウマ治療ができる医師やカウンセラーが望ましい場合もあります。
発達障がい者支援の総合サイトです。発達障がいに関する情報やイベント案内、相談窓口の案内のほか、各地域の発達障害者支援センターのリストも掲載されています。
不登校児支援の一つに、フリースクールがあります。「不登校の子の居場所」として認知されていますが、施設ごとに理念や方針が異なり、時間割が有り学習に力を入れているところもあれば、利用者が自由に過ごせることを重視するところなどさまざまです。在籍する学校の校長が認めれば、フリースクールに行った日を出席日として数えてくれる場合もあります。フリースクールでのびのび過ごし、心身の健康を取り戻したお子さんの話も耳にしますが、フリースクールが合わなかったというお子さんもいます。
一方、私が保護者として調べたり、コタケの体験を聞く限りでは、フリースクールの中には経営が厳しく、セキュリティやスタッフの質(能力、経験、知識など)にかなりばらつきがあるという印象です。また、公営の教育支援センターと違い、月々や毎回の利用料が発生します。利用料の平均は一か月約33,000円です。これに交通費、イベント等の諸費用、昼食代、入会金が発生する場合もあります。入会当初にかかる支払い額が20万円を超す施設もあります。
不登校の受け皿としてマスコミに取り上げられることも多いですが、フリースクールは比較的都市部に多く、郊外になると子どもが通える距離に無いこともあります。利用者は不登校児童生徒数全体の3〜5%程度です。
フリースクールも集団で生活する場ですので、「不登校の子でもフリースクールなら大丈夫」とは限りません。施設運営者の方針がお子さんに合っていないこともあるかもしれません。また、フリースクールは学校とは違い職員になるのに資格は必要なく、運営が厳しいところも少なくありません。
下記の「お知らせ」にもありますように、フリースクール内の子どもの安全も大きな課題となっています。親としては「早く行き先を」と焦ってしまうかもしれませんが、お子さんに合うかどうか、また施設の安全面も含めて大人の目でよく確かめていただき、親子で一緒に見学に行かれたり、入所体験などを通じて事前になるべく情報を集めて検討されることをお勧めします。
***お知らせ***
今から約20年前に都内のNPO法人が運営する大手フリースクール(以下、当該法人)が他県で運営する施設内で、男性スタッフから性被害を受けた元利用者の方が、当該法人と加害者の元スタッフに対して民事裁判を起こし、2019年7月に和解が成立したという報道がありました。(記事はこちら)その後、当該法人によって外部の人間で構成された第三者委員会が立ち上げられ、そこでの調査検証の報告書の一部の内容が6月24日に報道されました。記事によると、被害者が裁判の原告の方以外にもいたこと、また加害者も複数いたと示唆されていたことが明らかになりました。(記事はこちら・当該法人の発表はこちら)
笑みの間ホームページでは、この件で性被害にあわれた方々への心理的負担や二次加害を防ぐため、当サイト内での当該法人および当時関係が深かった団体・個人等の情報や記事等の掲載は可能な限り控えています。被害にあわれた方々の一日も早い健康回復を心よりお祈りいたします。(2022年2月1日現在)
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お子さんの表情が明るくなってきたり、家族となら外出できたり、学習を再開したいと考え始めると、「そろそろ学校に行けるかも…!」と期待する親御さんもいるかと思います。
お子さん自身も自信を回復し始めていたりすると、再登校に向けて準備を始めたくなるかもしれません。でもお子さんは「元気にはなってきたけど、学校には行きたくない」と思っているかもしれませんし、回復の経過もちょっと良くなったり、ささいなことでまた落ちたりを繰り返すこともよくあるようです。そのたびに親も一喜一憂してしまいがちです。
親から登校への期待を有言・無言で醸し出されると、子どもは心の奥では不登校への罪悪感があったりするので「期待にこたえなければ」と無理をしてしまうかもしれません。子どもは不思議なほど親のそういう「下心」に敏感です(自省を込めて)。ちなみに私がまわりに勧められたのは「いつもどおりに接する」でした。これが難しいんですけどね。
現在、地域によっては外出自粛が呼びかけられているため、密になりやすいスポーツ等の情報はしばらく掲載を控えます。状況が変わり、スポーツイベントや教室が以前とほぼ同様に参加できるようになりましたら積極的にご紹介したいと思います!
NHKの筋トレ動画。体の部位ごとなので、気軽にスタートできます。回によっては難易度がやや高いので、大人はいきなりやると激しい筋肉痛になるかも⁈
◎YUTO NAHATOMO Youtube Channel
コタケ推奨!サッカー元日本代表・長友佑都選手のYouTube。新型コロナの流行で自宅で過ごす人向けに、さまざまな体幹トレーニングやダンス要素のあるエクササイズを長友選手自ら紹介しています。自分より大きな選手にも当たり負けしない、「体幹オバケ」と呼ばれるほど体幹の強い長友選手直伝のエクササイズは大人の方にも大変おすすめです!
◎エアロバイク
自転車好きなお子さんであれば、エアロバイクもおすすめです。マンションなどでも使えるような静音で振動があまりしないタイプ、折り畳みができてコンパクトに収納できるタイプなども販売されています。コタケもエアロバイクとスクワットをしていたためか、不登校中も体力はあまり落ちず、スキーや卓球などのスポーツを楽しめていました。在宅ワークで運動不足の方の健康維持にもおすすめです。
◎ダンス動画・DVD
不登校中、元気になってきた頃に時々親子でダンスをしていました。息子は一人ではやりませんが、私が始めると後ろに立って一緒に体を動かすようになり、毎日続けているうちに少しずつおぼえて、最後まで踊れると親子で盛り上がったりしました。ちなみに私のオススメはチューチュートレインです。これはDVDでしたが、親子で縦に並んでぐるぐるするところが一番盛り上がります。
◎任天堂 リングフィット
ゲーム音痴の私オヤタケがコタケとパパタケに勧められて始めましたが、「これは不登校の子のために開発されたのか⁉」と思うほど、不登校の生活で無理なく取り入れられるおすすめのゲームです!体を動かしながらゲームができる…という単純なものでありながら、それ以前のコントローラーをちょっと動かす程度ではなく、ガチで動かさないとゲームに勝てない、プレーヤーを本気で運動させるためのゲームです。コタケは時々ワールドレコードを目指して滝のような汗をかきながらチャレンジしています。横で見ているとリングが折れるんじゃないかとヒヤヒヤしますが(^_^;)おうちのリビングで元気にゲーム兼運動。しかも家族でも楽しめる。私は任天堂の社員でも回し者でもありませんが、リングフィットは不登校の運動不足解消にうってつけのスグレモノだと思います。
小学校でも2020年から導入されたプログラミング。将来に役立つというのみならず、実際に自分でゲームやCGなどが作れるという楽しくてクリエイティブなスキルです。在宅学習に適した学びやすい講座やソフトもあります。
現在は対面での指導にご不安な方もいらっしゃるかと思いますので、当面は自宅からオンラインで学べるサービスや製品をご紹介します。
☆参考情報
プログラミングキャンプなどを主催する「Life is Tech!」のCEO水野雄介さんのインタビュー記事です。不登校の子のエピソードが出てきます。
・「教えて先輩!ライフイズテック 水野雄介さん 原点は「オタク」たちの会話でした」NHK
メンタルフレンド
自治体によってはメンタルフレンド制度があります。メンタルフレンドとは、大学で心理学などを学ぶ(学んでいた)学生さんや不登校への理解がある若い方がボランティアとして家庭訪問し、不登校の子どもの話し相手や遊び相手になってくれる支援サービスです。自治体が派遣する場合は無料で利用できますが、NPOなどはお金がかかる場合もあります。また自治体の場合、派遣の基準に合致しないと判断されると派遣してもらえなかったり、こちらが継続を希望しても終了になってしまうこともあります。メンタルフレンドという名称ではなかったり、自治体によってはメンタルフレンド派遣を行っていない場合もあるので、ご関心がある方はまずはインターネット等で調べたり、お住まいの自治体に問い合わせてみてください。
放送・ネット講座
NHKをテレビやパソコン、スマホで視聴できるのであれば、NHK高校講座やNHK for Schoolは無料で利用できて、家庭で学びやすい教材です。豊かな映像と専門家の丁寧な解説もあり、若者に人気のタレントが生徒役をしたりして楽しい雰囲気です。高校講座内では簡単な理解度チェッククイズもあります。テストやレポートの提出期限のプレッシャーを感じずに自分のペースで学習したいお子さんには向いているかもしれません。高校講座の「ベーシック」とつく講座は、中学の基礎の復習用番組なので、中学の途中で不登校になった人も学習しやすいです。NHK高校講座は好きなところから学べますし、不登校の理由の一つが「学校の授業が単純でつまらない」というお子さんには、自分のペースで好きなだけ高校の基礎レベルを学べます。
また、YouTubeでも塾や個人がレッスン動画を公開しています。また、現在は新型コロナウイルス対策で、様々な教育機関が無料で教材や動画を公開しています。
☆参考
英語や数学などの主要教科のほか、論理的思考や働くことに関する番組もあります。
主に小学校の教科学習に役立つ番組動画が掲載されていますが、中高向けや就学前のお子さん向けの動画もあります。
オンライン英会話
フィリピンなどの外国の陽気な先生とのレッスンだと不登校であることを気にしなくていいので割と気楽です。机に向って一人でやる勉強と違って楽しく会話するので、お話し好きなお子さんや英語好きな方なら始めやすいかもしれません。スクールによっては英語以外もあります。オンラインなので感染リスクもなくて安心です。
中学進学の前に、いじめや不登校を理由に指定された中学以外の公立中学に入学したい場合、申請が通れば指定校以外のの中学に越境入学できる場合があります。可否についての判断は教育委員会が行います。申請期間が定められていますので、まずは学校または教育委員会に問い合わせてみてください。
◎就学校の指定変更 文部科学省 様々な自治体の指定校変更基準や制度を紹介しています。
不登校の生徒に合わせたカリキュラムを持つ学校。公立、私立合わせて全国でまだ35校しか設置されていません。中学校が多いですが、小学校、高校もあります。
◎「特例校(不登校児童生徒を対象とする特別の教育課程を編成して教育を実施する学校)について」 文部科学省
不登校を経験した子供の多くが、高校などへ進学しています。今は様々なスタイルの学校があり、学び方を選択できるようになってきました。ここでは、不登校のお子さんが選ぶ学校を中心に学校選びなどについてご紹介しています。
世間一般に言う「ふつーの高校」。不登校だからといって絶対に目指せないということはありません。公立・私立でも対応が違い、公立校については自治体によって方針が異なるようです。
夕方からスタート、または一日に複数の時間枠があり(部)、それぞれの部の時間帯の授業を中心に、決められた単位を取得して卒業する高校。多くは夜間ですが、中には朝から夜まで4部もある学校もあります。通常4年間ですが、単位を積極的に取れば3年で卒業可能な学校もあります。昔は不良の多いイメージでしたが、今は不登校経験経験のある子も多く通っており、穏やかな雰囲気になっているところもあります。
☆参考情報☆
・「「ヤンキー」消えた…夜の定時制高校は今 まるで大学?けど給食あり」WithNews
・「「同じ経験をしている子のためになりたい」 不登校乗り越え、夢新たに」琉球新報
小中学校で不登校を経験したり、高校を中退した経験のある子への支援が充実していた李、小中学校で力を十分に発揮できなかった子が基礎的学力を身に着けることを重視したカリキュラムがあったり、様々な新しいタイプの高校が生まれています。東京都ではチャレンジスクール、エンカレッジスクールがあり、大阪ではエンパワメントスクールという名称で設置されています。
***参考情報***
「これまで設置してきた多様なタイプの学校」 東京都教育委員会*チャレンジスクール・エンカレッジスクールが簡単に紹介されています。
「エンパワメントスクールに関すること」 大阪府
いわゆる「高専」。5年制で、電機や航空工学などの専門性の高い学びを受けられますが、勉強はハードなところが多いようです。
学年による教育課程の区分ではなく、決められた単位を修得すれば卒業が認められる高等学校です。初期は定時制・通信制課程に導入され、現在は全日制課程の学校にも設置されています。
通信制高校とは?:簡単に言うと、主に自宅で学習し、レポート、スクーリング参加、筆記試験で必要な単位を取得すれば、高校卒業資格が得られる高校です。近年、学校数も生徒数も増えてきており、平成30年の生徒数は186,502 人、同年の高校生全体の約17人に1人が通信制高校に通っていることになります(H30学校基本調査資料より算出)。
一方、通信制高校生が学習等の様々なサポートを受けられる施設のことをサポート校といいます。
サポート校:いわゆる学校法人の高校ではなく、通信制高校の学習をサポートするための場になります。塾や予備校と同じような位置づけのため、ここに通って学んだだけでは高校卒業資格は得られません。通信制高校がサポート校も運営していたり、通信制高校とサポート校が提携していたりすることもあります。
いつから入れるの?:新入生として入学する生徒も多いですが、積極的に転入生を受け入れているのも通信制高校の大きな特徴の一つです。転入のタイミングも年に2回程度というところから、随時受け付けている高校もあります。全日制高校に入ったけれど、合わなかったり人間関係につまづいた時の転入先として選ばれることもあります。
通信制高校の入試は全日制と異なり、書類や作文、面接などで審査する高校が多いです。だからといって、生徒が勉強嫌いばかりかと言うとそうでもなく、中には高校生の段階で大学レベルの学びをスタートさせている生徒もいます。
どんな人が通ってるの?:全日制高校と違い、様々な背景、年齢の人が集まるのも通信制高校の特色かもしれません。実際、息子のコタケの高校にも少し年上の子がいますが、他のコースではもっと年齢が高い人もいると聞きます。不登校経験など個別の事情を抱えて入学した生徒も多いようですが、特にそれを隠す必要もなく、自然体でいられるようです。
どんな特色があるの?:学校によって校風も授業内容もさまざまで、中には小説やアニメ、プログラミングの授業など、ユニークなカリキュラムの学校もありますし、大学進学に力を入れている高校もあります。キャンパスライフも様々で、私服・メイクがOKのところや、制服があり、着用を義務付けている学校もあります。部活が熱心な高校もありますが、本校以外の多くの小規模キャンパスには体育館や運動場といった施設が十分に無く、私が実際に話を聞いた高校では、スポーツ系の部活は近くの公共施設を借りて練習しているとのことでした。
学校には一度も行かないの?:通信制高校でもスクーリングの日は学校で対面授業を受けます。スクーリング日数や開催場所は学校によって様々ですが、年間数日程度でOKなコースを持つ学校もあります。積極的に通って対面授業を受けたい人には、学校によっては週に何日(1〜5日間まで様々)か登校するコースもあります。一見、楽そうに聞こえますが、卒業単位を取得するには毎月のレポート提出(教科書の内容に沿った問題などが載っているプリント。多くは月4〜8枚程度)とスクーリング(登校)、テスト(登校またはネットなど)は必須で、自律的に学習を進める力が求められます。丁寧な指導等によって高校卒業率が高い学校がある一方で、近年、学習指導要領等に基づかない杜撰な指導等を行っている通信制高校が問題になっています。
卒業できるか不安…:卒業率・進学率は学校差が大きく、50%に満たない高校もあれば、90%以上が卒業し、進学希望者の7割が進学を実現する学校もあります。また、通信制高校の卒業者の約40%が進学・就職が未定という調査結果もあります。(H29年度文科省調査より算出)大手通信制高校が進学先に浪人生の予備校等も含めて計算し、進学率を高く見せようとしたとする報道がありましたが(2021年3月31日週刊文春)、私が個人的に聞いた中には、生徒の卒業や進級のために先生方が熱心にサポートする高校もあります。
☆参考情報☆
(論文)『通信制高校の現状と卒業率に関わる要因の調査分析』大久保智久 政策研究大学院大学 2017年
論文著者の大久保氏自身は執筆当時に通信制高校に勤務しており、通信制高校の歴史や概要、卒業率、通信制高校の実情について詳述、分析されています。
工業のみならず、調理師や美容師、自動車整備(じどうしゃせいび)、看護など、さまざまな技能を学びます。高校卒業と同等ですが、大学進学を視野に入れるなら、大学入学資格付与指定校に入る必要があります。
☆参考情報☆
科学技術学園高等学校通信課程 連携校一覧
発達障がい等の障がいの状況をふまえ、通常の筆記試験では受験が難しい生徒に対し、「合理的配慮」として学校や教育委員会が別室受験や試験時間の延長等を認めていることがあります。申請方法等は在籍する中学校にお問い合わせください。
(参考)「続・合理的配慮を考える(1)」朝日新聞 2020年10月17日
都立高校受験を控えた学習障害を持つ中学生の方の体験と、各学校での合理的配慮についての記事です。どのようなプロセスかもわかりやすくまとめられています。
(参考)「(8)合理的配慮の提供」文部科学省(PDFファイル)
障がいがある人に対して、学校や店舗等で求められる配慮について絵や図を用いて解説されている資料。平成29年くらいまでの情報をもとに作成された資料のため、現在は変更されている可能性があります。高校入試については8ページと12ページにあります。
(参考)インクルDB インクルーシブ教育システム構築支援データベース
国立特別支援教育総合研究所のインクルーシブ教育に関する様々な情報が掲載されているデータベースのサイト。「Q&A」の「保護者向けのQ&A」ページに入試の合理的配慮に関する記述があります。
高校には通わず、大学入学に必要な資格だけ取ることもできます。女子スキージャンプの高梨沙羅選手は、この資格を半年くらいで取って競技に専念し、その後体育大学に進学しています。
中学で不登校のまま卒業し、もう一度中学の学習をやり直したい人には夜間中学という選択肢もあります。夜間中学校については不登校生徒への支援策の一つとして国会で前向きな検討が進んでいます。少しずつ増えてきており、中学校に併設されている夜間学級ではなく専門の校舎を持つ夜間中学校も生まれていますが、まだ全ての都道府県には設置されていません。夜間中学は戦争や仕事などで中学校に通えなかったり、不登校経験などからじゅうぶん学べなかった人のほか、外国籍の人が多く通っている学校もあります。そうした夜間中学の文化祭はとても国際的なのだそうです。給食も出ます。
◎「夜間中学、不登校の受け皿に 香川・三豊に来春開校予定」朝日新聞 2021年8月27日
香川県三豊市の取り組み。不登校特例校の指定を受けることで不登校生徒も通える夜間中学を目指しているそうです。「だれ一人置き去りにしない、生徒が主役の多様性を尊重する学校」がキャッチコピーとのこと。勇気づけられる取り組みです。
大学の通信教育課程の中には、中退などで高卒資格を持たない人が大学で学ぶための「特修生」制度を持つところもあります。大学によっては別の名称の場合もあります。また、入学資格は15歳以上、18歳以上など、それぞれ条件が違います。詳しくは各大学のHPをご参照ください。
☆参考情報☆
「通信制だけど、仲間もできる――15歳から学べる「放送大学」の利点とは?」
フリースクールの中には、20歳くらいまで通えるところもあります。通信制高校のレポート作成を支援してくれるところもあります。
ハローワーク等の職業紹介
中学校の進路指導担当の先生に就職支援について問い合わせてみてください。
☆参考☆ 新規学校卒業者の採用について 厚生労働省東京労働局
中学卒業後、進学・就職をせずにひきこもり傾向があったり、今は社会とゆるやかにつながるところから始めたい方には、自治体に子ども若者総合相談センターなどの支援施設や相談窓口があります。当事者団体や家族会もあります。ご家族だけで悩みを抱え込まず、行政サービスや他の家族との交流の場などを活用することもご検討ください。
☆参考情報☆
オヤタケのおすすめの本や記事です。子どもの気持ちを理解したり、関わり方を考える上で役に立ちました。
『子どもの脳を傷つける親たち』 (NHK出版新書 523) 友田 明美著 2017年
小児精神科医である友田先生はこの本の中で、不適切な養育(マルトリートメント)によって子どもの脳には深い傷を与えてしまうことを科学的なエビデンスをもとに紹介しています。少し知るのが怖いと感じるかもしれませんが、著者の友田氏は、自身もまた不適切な養育に該当することを我が子にしていたことを打ち明け、子育て中の親たちに共感し、寄り添う言葉を添えています。この本を読む前と後では子供への接し方が変わる方もいるかも知れません。エビデンスに基づく情報も多く、学校の先生や子育て中の保護者の方、子どもの支援をされている方など、ぜひ多くの人におすすめしたい本です。
『子どもの宇宙』河合隼雄著 岩波書店 1987年
河合隼雄氏は日本の分析心理学の発展に貢献した心理学者で、子どもに関する本も多数書いています。この本の「はじめに」の中で、河合氏は『ひとりひとりの子どもの中に宇宙がある』とし、さらに『私は心理療法という仕事を通じて、…実に多くの子どもたちが、その宇宙を圧殺されるときに発する悲痛な叫びを聞いた。…』と述べています。この「圧殺」をしているのは、誰でもない、親を含めた周囲の大人たちではないかと深く考えさせられました。また、読み進めるうちに「親として息子の話をどれほど共感して聞いていただろうか」と反省しました。不登校についてダイレクトに解説している本ではありませんが、子どもの心を理解するための別な視点を与えてくれます。
『自尊感情を持たせて,きちんと自己主張できる子を育てる アサーショントレーニング40-先生と子どもと親のためのワークブック-』リサ M.シャーブ著 黎明書房 2011年
コタケ推奨!アメリカのソーシャルワーカーであるシャーブ氏のワークブック。ちょっと難しい漢字にはふりがながふってあるので、子どもでもだいたい読めますが、一人でやらせず大人の方が一緒に取り組む方が理解が深くなると思います。アクティビティは40個あり、「怒りをコントロールしよう」「自分の権利を守ろう」「じょうだんのからかいと、傷つけるからかい」など、子どもがよく遭遇する場面を想定し、「自分ならどうするかな?」「その子はどんな気持ち?」などの問いがあります。正解は無く、子ども自身が自分なりの答えを見つけていくことを促します。
「ひきこもりで変わり者、分身型ロボットで起業」吉藤健太朗さん 日経ビジネス
ロボット開発者の吉藤健太朗さんは分身型ロボットOriHimeの開発者で、OriHimeは不登校や病気で学校に来れない子の支援の現場ですでに使われ始めています(参考記事はこちら)。ご自身も不登校を経験され、その後さまざまな人との出会いを経て、OriHimeをはじめとするロボット開発の道に進まれます。ここまでユニークな人生を誰しもが歩めるわけではありませんが、吉藤さんの「我慢弱さ」を否定せず、我慢しなくてもすむ方法を追求することで新しいアイデアを生み出していくお話は、弱点を克服するストーリーが称賛された私の子ども時代の教えとは真逆で、私も子どもの頃にその言葉を聞きたかったと思ったほどです。また、まわりと違う道を選んだことで時間がかかっても「子どもが明るく健康に暮らせていれば、自分の好きなことをきっかけに社会に繋がっていけるかも」と考えられるようになり、親としてとても励まされたエピソードです。
「イタリア人医師が考える、日本に引きこもりが多い理由。」パントー・フランチェスコさん Torus
日本語ペラペラのフランチェスコさんが考える「アニメの力を借りた治療」という斬新なアイデアにとても希望を感じます。アニメやマンガは不登校の子どもが一時的でも苦しい気持ちから離れられる心の居場所だったりします。それはゲームも同じです。フランチェスコさんは『日本では「〇〇しなければいけない」という大きな物語がとても多く、そこに当てはまらないことを気に病んでいる人が多いように思います。』と述べていて、とても共感しました。また「全員が同じような人生を、同じタイミングで送れるはずがない」という言葉にもハッとさせられます。ちょっと考えたら当たり前のことなのに、学校となると同じ時間の使い方をして同じことをするのが当然と思ってしまいがちです。子ども時代にアニメに励まされたというフランチェスコさんは、「アニメの物語を通して、患者と対話し、その人自身の物語を作り直せるようになれたらいい。そして、いつかは、症状に合わせたアニメ作品をつくれるようになったら」と結んでいます。それは不登校の子にもすごく良さそうな気がして、今後の研究に期待せずに入られません。ちなみに、フランチェスコさんの日本での指導教授は、上で紹介したオープンダイアローグの本を書かれている斎藤環教授です。
「空気を読んでも従わない」鴻上尚史著
演出家・鴻上尚史氏が中高校生向けの新聞に連載していたエッセイです。中高生向けですが、大人の方にもおすすめの内容です。鴻上さんは日本の社会に今もある「世間」について、わかりやすく丁寧な言葉で紐解いています。著書の中で、鴻上さんは昔の農耕社会の中で生まれた日本特有の「世間」を「神様」みたいなもの、とし、現代になってもなお生活の様々な場面にあるとしています。こうした世間の見えない同調圧力に、感受性の高い子は息苦しさを覚えるのかもしれません。確かに世間もまた目に見えないため、余計に恐ろしくなってしまうこともありますが、そんな世間との向き合い方のヒントを教えてくれる本だと思います。
「完全版 社会人大学人見知り学部卒業見込」若林正恭著 角川文庫
お笑い芸人オードリーの若林(わかばやし)さんが雑誌に連載していた大人気エッセイ。子どものページにも紹介しています。若林さんは自身を「極度の人見知り」で「自意識過剰」とし、行く先々でその高い自意識や人見知りとコミュ力が問われる現実の間でもがきなら、芸人として売れるために試行錯誤する日々を描いた自伝的エッセイです。中でも、学校生活になじめず若林さんのラジオ番組にハガキを送り続けていた若者のエピソードや、あるおじいさんから聞いた「この世に存在する理由は二つあって、一つは何かをしているから存在していいということ、二つ目は生まれてきたらなんの理由もなくこの世界に存在していいということ」という話がとても心に響きました。
世間だけではなく、自らにも辛辣な視線を突き刺し続ける若林さんの話は単に面白いだけではなく、子どもや若者が社会や集団の中で感じる違和感や心理的な壁を前に戸惑う心情を丁寧に言葉にしていて、いつしか何も感じなくなっていた大人として改めて学ぶことも多いと感じ、おすすめ図書に挙げさせていただきました。初版が出たのが平成27年、平成2年には35版まで版を重ね続けています。どんな経験も明るくユーモラスに表現し、多くの人に共感されているこの本の締めくくり、「卒業論文」は必読です。
学校がつらい子にとって、平日の日中の時間帯は、自宅以外ほんとうに居場所が無いことに気づかされました。家庭でさえも居心地が悪い子にとってはなおさら辛い状況だと思います。鎌倉中央図書館のツイートに感銘を受けるとともに、深く考えさせられました。肩書や専門家ではなくてもできることはあるのかも、と考えるきっかけとなった笑みの間の原点の一つです。
1)論文『父親が語る「不登校」問題:親の会に参加する父親を対象にして』松本訓枝 大阪市立大学社会学研究会, 2005.市大社会学, Vol. 6, p. 29-44.
2)論文『父親の自己変容について--不登校の親の会に参加する父親を事例として』加藤 敦也 ソシオロジスト 9(1), 63-90, 2007
3)論文『日本におけるフリースクールの歴史と活動に関する質的研究』斎藤 富由起 吉森 丹衣子 千里金蘭大学紀要14, 21−29(2017)
4)論文『不登校経験者の不登校をめぐる意識とその予後との関連 : 通信制高校に通う生徒を対象とした調査から』慶應義塾大学大学院社会学研究科紀要 : 社会学・心理学・教育学 : 人間と社会の探究 (75), 15-30, 2013
最後までお読みいただきありがとうございます!
笑みの間HPの中に、お子さんの気持ちを理解し、希望を感じられる言葉が一つでも見つかることを祈っています。
(「お母さんのページ」にもぜひお越しください!)
笑みの間メンバー一同