基調講演

基調講演1| 11月14日 | 09:30–10:30 | 言語 [日・英]

海洋におけるビッグデータの獲得と利用-紋別市における時系列データを例に

長井 敏 (国立研究開発法人水産研究・教育機構)

約10年にわたり、日本国内外の異なる海洋生態系に生息する動植物プランクトンの出現種の情報を網羅的に記録するために、メタバーコーディング解析を行い、日本国内では、最北端としてオホーツク海の冷水域、最南端として石垣島周辺海域の亜熱帯域等を対象として、海洋ビッグデータを蓄積してきた。本講演では、紋別市地先において、週1回7年間実施してきた小型真核生物のメタバーコーディング解析の結果を中心に、環境データを含めた生物多様性解析の結果を紹介したい。

基調講演2| 11月14日 | 10:30–11:30 | 言語 [日・英]

生物多様性変化の定量化に挑む

天野 達也 (University of Queensland)

全世界で生物多様性が危機的な状況にある中、多くの科学研究によって生物多様性変化の程度が明らかにされてきた。そこで得られた知見が政策や保全活動への影響を介して状況の改善につながることもあり、科学が生物多様性保全に貢献する一つの道筋を示している。本講演では、まず私がこれまで局所から全世界スケールに渡り、長期モニタリングデータを用いて生物多様性変化(特に鳥類の個体群変化)の定量化を行ってきた研究を紹介する。次に生物多様性変化の定量化から実際の保全に至るまでの障壁について説明し、それらの問題に対する解決策を議論したい。

基調講演3| 11月14日 | 15:00–16:00 | 言語 [日・英]

Uncovering population information from environmental DNA

Dr. Kristy Deiner (ETH Zurich)

Environmental DNA (eDNA) is now widely used for species detection, but what can be learned about populations from eDNA? I will discuss both the possibilities and limitations for inferring population level information from eDNA by illustrating these aspects through example from my own work. Using detection methods for eDNA of single species and through use of high throughput sequencing of eDNA from Lake Tanganyika to the Alps of Switzerland, I will show we can detect population level information. The relevance and accuracy of this information suffers from even greater false negative rates compared with using eDNA for species detection. However, many of these challenges are likely to be overcome with continued method development and advances in long read sequencing technology.

日本語訳

環境DNAから個体群の情報を読み取る

環境DNA(eDNA)は、広く種の検出に利用されるようになった。では、環境DNAを利用することで、個体群についての何を知ることができるだろうか?本発表では、環境DNAを用いて個体群レベルの情報を推測する際の可能性と限界について、私自身の研究の例を挙げながら議論する。 単一種のeDNAの検出法を用い、タンガニーカ湖からスイスのアルプスまでの例を挙げながら、環境DNAの超並列シークエンシングを用いて、個体群レベルの情報が実際に検出可能であることを紹介する。しかし、環境DNAを種の検出に利用した時よりも、偽陰性率がさらに高いため、推測される個体群レベルの情報の妥当性と正確性が損なわれてしまうという問題がある。これらの課題の多くは、継続的な手法の開発とロングリードシーケンシング技術の進歩によって克服される可能性が高いと考えられる。

基調講演4| 11月15日 | 10:30–11:30 | 言語 [英]

微生物叢のインフォマティクスは農業を革新するか?

東樹 宏和 (京都大学)

温暖化や生態系の劣化による悪影響が世界全体で猛威を振るう中、自然生態系や農業生態系における微生物の機能の利用が注目を集めつつある。しかし、無数の種で構成される微生物生態系(微生物叢)を制御すること自体、科学におけるもっとも困難な挑戦の部類に属する。そんな中、各種のインフォマティクスが発展してきたことによって、生態系全体の動態に多大な影響を与え得る中核的な微生物種の組み合わせ(以下、「コア微生物叢」)に関する理解が深まりつつある。本講演では、ゲノム科学・理論生態学・インフォマティクスを融合した研究アプローチを紹介しながら、微生物叢の「分析」・「予測」・「制御」・「設計」をいかに展開できるか、議論したい。

基調講演5| 11月15日 | 15:00–16:00 | 言語 [日・英]

ビッグデータが出た後にどうするか:「解釈」のための二次元オーミクス解析

岩崎 渉 (東京大学)

環境DNA解析などの近年の技術革新は、大規模・高解像度のビッグデータを生態学にもたらしつつある。しかるに、ビッグデータが出た後でそこからどうすれば良いのか、とりわけ、どのように解釈すれば良いか、その方法論の整備は不十分である。本講演では、ビッグデータを解釈につなげるための方法論として、演者らがバイオインフォマティクス分野で取り組んできた「二次元オーミクス解析」を紹介する。